ヨーロッパの歴史時代の人類遺骸から得られた新たなゲノムデータを報告した研究(Antonio et al., 2024)が公表されました。本論文は、ヨーロッパと地中海地域の歴史時代の人類遺骸から得られた新たなゲノムデータを既知のゲノムデータとともに分析し、ユーラシア西部において歴史時代には人類の高い移動性が見られるものの、ユーラシア西部…
日本列島の縄文時代と奈良時代のイヌのミトコンドリアゲノムを報告した研究(Xiaokaiti et al., 2024)が公表されました。本論文は、日本列島では最古級となるイヌ遺骸を含めて縄文時代のイヌ5個体と、8世紀後期の日本のイヌ7個体のミトコンドリアゲノムを報告しています。縄文時代のイヌは母系遺伝となるミトコンドリアゲノムでは、中…
黒死病前後のイングランドの人類集団の局所的な遺伝的歴史を報告した研究(Hui et al., 2024)が公表されました。ペスト菌(Yersinia pestis)を原因とする黒死病はユーラシアにおいて人類に大きな打撃を与えてきており、中でも14世紀のヨーロッパにおける大流行は当時のヨーロッパ社会にとって大打撃となり、その後の歴史に大…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、単一細胞水準での重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)への応答の地域集団間の差に関する研究(Aquino et al., 2023)が公表されました。SARS-CoV-2感染後のヒトの臨床症状は、個人間で大きな差異が見られ、その遺伝学的基盤や免疫学的基盤が解明され始めており、ネ…
現代人と古代人のゲノムデータからアフリカにおけるバントゥー諸語話者の拡大を推測した研究(Fortes-Lima et al., 2024)が公表されました。本論文は遺伝学的観点から、アフリカにおけるバントゥー諸語話者拡大の様相を検証しています。本論文は、これまでゲノムデータが得られていなかったバントゥー諸語話者117集団も対象としてお…
古環境の変化からギガントピテクス・ブラッキー(Gigantopithecus blacki)の絶滅要因を推測した研究(Zhang et al., 2024)が報道されました。ギガントピテクス・ブラッキーは史上最大の類人猿(ヒト系統を除くヒト上科)とされており、中期更新世の後半に絶滅しました。ギガントピテクス・ブラッキーはオランウータン…
カエルの体色の機能に関する研究(Laumeier et al., 2024)が公表されました。小規模な研究により示されてきたのは、体色の明度差は外温動物において重要な生理学的意味を有するかもしれず、色の濃い種ほど加温速度が急で、病原体や光酸化損傷に対する保護がある、ということです。両生綱無尾目(カエルやヒキガエル)は、5000種以上か…
古代ゲノムデータにより現在のデンマークに相当する地域の人口史を推測した研究(Allentoft et al., 2024)が公表されました。本論文は、デンマークの中石器時代~前期青銅器時代の7300年間にわたる古代人100個体のゲノムデータを用いて、デンマークの人口史を推測しています。デンマークでは、新石器時代への移行がヨーロッパ中央…
ヨーロッパの現代人に多い多発性硬化症(Multiple sclerosis、略してMS)の起源に関する研究(Barrie et al., 2024)が公表されました。本論文は、古代ゲノムのデータセットの一部と現代のイギリス在住のヨーロッパ系「白人(自己申告)」約41万人のゲノムを比較し、ヨーロッパ現代人におけるヨーロッパ古代人集団由来…
ユーラシア西部古代人における選択と現代人への遺伝的影響に関する研究(Irving-Pease et al., 2024)が公表されました。本論文は、ユーラシア西部古代人の大規模なゲノムデータを用いて、ユーラシア西部の古代人集団における選択と、現代人への遺伝的影響を検証しています。たとえば、糖尿病とアルツハイマー病の危険性に関連する遺伝…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、道徳が低下したとの見解を検証した研究(Mastroianni, and Gilbert., 2023)が公表されました。事例証拠から、「人々は道徳が低下しつつあると考えている」、と示されています。本論文は、記録保管所データと一次データ(1249万2983点)を用いた一連の研究で、世界中の少なくとも6…
ABO式血液型からアメリカ大陸への人類の移住を推測した研究(Hobgood., 2023)が公表されました。本論文は、ABO式血液型関連遺伝子からアメリカ大陸への人類の移住過程を推測し、それを補強する遺伝子として、シャベル型切歯と関連する遺伝子であるエクトジスプラシンA受容体(ectodysplasin A receptor、略してE…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、アジア南東部の古環境と人類の進化に関する研究(Bacon et al., 2023)が公表されました。本論文は、ラオスを中心にアジア南東部の古環境と、種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)などの非現生人類(Homo sapiens)ホモ属や現生人類の進化との関連を検証しています。デ…
景観の動態と顕生代における生物圏の多様化に関する研究(Salles et al., 2023)が公表されました。生物圏の長期的な多様化は、物理的な環境の変化に応答します。しかし、顕生代の初期において、大陸で生命の多様化が始まったのは海洋よりも遅い時期で、それはほぼ単調なものでした。これに対して、海洋の生命は時代とともに多数の属の増減を…
オーストラリア先住民の遺伝的構造に関する二つの研究が公表されました。一方の研究(Silcocks et al., 2023)は、オーストラリア先住民のゲノムにおける構造の深さと新規多様体の豊富さを報告しています。オーストラリア先住民には、言語および文化的に豊かな歴史があります。こうした歴史が遺伝的多様性にどのように関係しているのかは、…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、イタリア東部アルプスの古代末期~中世初期の被葬者のゲノムデータを報告した研究(Coia et al., 2023)が公表されました。本論文は、イタリア東部アルプスの1ヶ所の墓地で発見された、古代末期~中世初期の20個体(4~7世紀)のゲノムデータを報告し、その遺伝的構成と親族関係を分析しています。そ…
タイ北西部の鉄器時代集団のゲノムデータを報告した研究(Carlhoff et al., 2023)が公表されました。本論文は、丸太棺(Log Coffin、木棺)により特徴づけられるタイ北西部の鉄器時代の33個体のゲノムデータを報告しています。これらのデータは、先行研究(関連記事)でも明らかにされていた、新石器時代にアジア東部から南下…
現代日本人男性におけるY染色体ハプログループ(YHg)の最新版と頻度分布を報告した研究(Inoue, and Sato., 2023)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。YHgへの関心は現代日本社会でも比較的高いようで、YHgを特定の文化もしくは民族の分類と関連づけて、人類進化史や現生人類(Homo sap…
縄文時代の人類集団の遺伝的構造と非縄文文化圏への遺伝的影響に関する研究(Jeong et al., 2023)が公表されました。本論文は、新たな縄文時代の人類(縄文人)のゲノムデータを報告しているわけではありませんが、既知の「縄文人」や「縄文人」的な遺伝的構成の古代人のデータを再検証し、「縄文人」集団の遺伝的構造を明らかにするとともに…
ローマ期ブリテン島の個体の学際的な研究(Silva et al., 2024)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、ローマ期となる2~3世紀のブリテン島の農村部の個体に、サルマティア人からの遺伝的影響があったことを報告しています。歴史学において、マルコマンニ戦争勃発後の175年に、ローマ帝国がサルマ…