アフリカの過去の気候データからさらなる乾燥化を示唆した研究(Baxter et al., 2023)が公表されました。人為起源の気候変動は、全球の水循環、とくにモンスーンの降雨に依存する農業が経済の基盤となっている熱帯地域に、深刻な影響を及ぼすと予測されています。アフリカ大陸の最東端に位置する「アフリカの角」では、温度の上昇とともに降…
最古となるコムギのゲノムデータを報告した研究(Ahmed et al., 2023)が公表されました。ヒトツブコムギ(Triticum monococcum)は、最初に農耕が行なわれるようになったとされる近東の肥沃な三日月地帯で初めて栽培化されたコムギ種で、新石器時代革命の中心的な栽培種でした。野生ヒトツブコムギは、レヴァントにおいて…
アフリカ南西部の現代人のゲノム解析からアフリカ大陸の現代人の深い遺伝的構造を明らかにした研究(Oliveira et al., 2023)が公表されました。アフリカは現代人の遺伝的多様性が最も高い地域ですが、ヨーロッパなどと比較して現代人のゲノム研究が遅れているため、現代人の遺伝的多様性の把握が妨げられています。本論文は遺伝学的にこれ…
ヒト進化研究ヨーロッパ協会第13回総会で、スペイン北部の中部旧石器時代の堆積物のDNA解析結果を報告した研究(Mesa et al., 2023)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P17)。中部旧石器時代から上部旧石器時代の意向は、考古学的記録における道具と装飾品の複雑さと洗練の大きな変化と関連しています。し…
ヒト進化研究ヨーロッパ協会第13回総会で、ヨーロッパ最古級の現生人類(Homo sapiens)のゲノムデータに関する研究(Sümer et al., 2023)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P122)。これまで、ユーラシアにおける中部旧石器時代から上部旧石器時代への移行にまたがる現生人類を特徴づける利用…
ヒト進化研究ヨーロッパ協会第13回総会で、LRJ(Lincombian-Ranisian-Jerzmanowician)の担い手に関する研究(Hublin et al., 2023)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P59)。LRJは中部旧石器時代と上部旧石器時代との間の移行期の技術複合で、イギリスからポーラ…
ジュラ紀の新種の鳥群獣脚類に関する研究(Xu et al., 2023)が公表されました。鳥類は後期ジュラ紀の非鳥群獣脚類恐竜を祖先としますが、この進化過程の最初期に関しては化石記録が極めて少なく、時空間的に限定されているため、解明が進んでいません。鳥群系統で初期に分岐した種に関する情報は、鳥類の特徴的なボディープランの進化を理解し、…
ヒトY染色体の詳細な塩基配列解読を報告した二つの研究が公表されました。一方の研究(Rhie et al., 2023)はヒトY染色体の完全な塩基配列を報告しています。ヒトのY染色体は、長いパリンドローム配列、縦列反復配列、分節重複といった複雑な反復構造のために、塩基配列の解読とアセンブリがひじょうに難しい、と知られています。そのため、…
1991年にアルプス山脈で発見されたアイスマン(Iceman)と呼ばれるミイラの高品質なゲノムデータを報告した研究(Wang et al., 2023)が公表されました。アイスマンはエッツィ(Ötzi)とも呼ばれており、その良好な保存状態からひじょうに有名な紀元前四千年紀後半のミイラです。アイスマンのゲノムデータは以前にも報告されてい…
中原の後期新石器時代の陶製排水体系を報告した研究(Li et al., 2023)が公表されました。中国の中原の現在の行政区分では河南省周口市淮陽区に位置する平糧台(Pingliangtai)遺跡は温帯モンスーン気候で、気温と降水量が劇的に変化し、夏の月間降水量は500mmを超えることもあります。平糧台遺跡の集落は氾濫原に位置していた…
白亜紀の小型哺乳類による恐竜の捕食を報告した研究(Han et al., 2023)が報道されました。恐竜と哺乳類は2億3千万年ほど共存しました。両者は三畳紀後期に誕生し、中生代から新生代にかけて多様化しました(恐竜は鳥類の形で)。両者が様々な形で相互作用していたことは間違いありませんが、その相互作用を示す直接的な化石証拠は稀です。本…
超自然的な説明に関する研究(Jackson et al., 2023)が公表されました。世界中の人々は、自分たちの世界を説明するため、超自然的な信仰を利用しています。超自然的な信仰は、世界についての理解の間隙を埋めるために生まれた、と考えられています。有力な一説では、ある現象に関する明確な原因がなく、超自然的な存在や超自然的な力が地球…
ペルー南部で発見された古代の巨大クジラを報告した研究(Bianucci et al., 2023)が報道されました。クジラ目(イルカ、クジラ、ネズミイルカを含む哺乳類の亜目)の化石記録は、陸上動物がどのようにして極端な適応を獲得し、完全な水中生活様式への移行を遂げたのか、明らかにしています。クジラ類では、これは最大体サイズの大幅な増大…
ポーランドの鉄器時代と中世の人類集団のゲノムデータを報告した研究(Stolarek et al., 2023)が公表されました。近年の古代ゲノム研究の進展は目覚ましく、ヨーロッパは最も古代ゲノム研究の蓄積が多い地域と言えるでしょう(関連記事)。古代ゲノム研究は、歴史時代よりも文献のない先史時代の方が優先されている感もありますが、古代ゲ…
樹木の年輪解析により中世フェノスカンジアの気を示した研究(Björklund et al., 2023)が公表されました。地球システムモデルやさまざまな気候代理指標の情報源によって、地球温暖化は少なくとも紀元後において前例がない、と示されています。しかし、樹木の年輪は、数世紀にわたる気候の変化を反映する指標として使用でき、極端な気候の…
サハラ砂漠におけるキツネの適応に関する研究(Rocha et al., 2023)が公表されました。砂漠への動物の適応の進化的過程の解明は、気候変動への適応的反応を理解するのに重要です。キツネ属(Vulpes)の中には、世界最大の高温砂漠であるサハラ砂漠に生息するオジロスナギツネ(Vulpes rueppellii)やフェネック(Vu…
北アメリカ大陸における更新世末の大型動物の絶滅要因に関する研究(O’keefe et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。更新世末には、世界各地に生息していた地球の大型哺乳類の約2/3が絶滅しました。更新世大型動物絶滅の(複数かもしれない)要因は、部分的には化石記録の低い時空間的解像度が考古学および環境の…
カナリア諸島先住民の古代ゲノムデータを報告した研究(Serrano et al., 2023)が公表されました。カナリア諸島は大西洋の比較的低緯度に位置していますが、その入植が紀元後と遅かったこともあり、DNAの保存状態はそれなりに良好なようで、古代DNA研究が進められています。カナリア諸島への関心は、古代DNA研究が進められている地…
ネオンテトラ(Paracheirodon innesi)の避難行動に関する研究(Larrieu et al., 2023)が公表されました。群衆運動は、昆虫から哺乳類まで、および運動性細胞のような非認知体系システムにおいて、異なる種間と異なる規模で観察されます。狭い開口部から脱出を余儀なくされた場合、ほとんどの陸生動物は粒状物質のよう…
古代ゲノムデータからフランス新石器時代の社会構造を推測した研究(Rivollat et al., 2023)が公表されました。古代ゲノム研究はヨーロッパにおいてとくに発展しており、親族関係や社会構造についての解明も進んでいます。本論文は、フランスの新石器時代の遺跡を対象に、大規模な家系図の復元を提示しています。これら新石器時代住民は核…
始新世の小柄なクジラを報告した研究(Mattila et al., 2023)が公表されました。クジラが小型の陸生偶蹄類の祖先から出現して間もなく、その基底部系統(古鯨類)はより特殊な水生の生態系に生息するようになり、完全な水生の生活様式の採用までに至った驚異的な適応放散を経ました。この適応戦略は、地理的に広く分布する絶滅したバシロサ…
石器時代ヨーロッパ中央部および東部の古代人のゲノムデータを報告した研究(Mattila et al., 2023)が公表されました。近年の古代ゲノム研究の発展には目覚ましいものがあり、ヨーロッパは最も進んでいる地域と言えるでしょう(関連記事)。農耕の開始は人類史における一大転機で、考古学でも古くから注目されており、古代ゲノム研究でも世…