アドリア海の人口史に関する研究(Raveane et al., 2022)が公表されました。イタリア半島南部は、ヨーロッパにおいて現生人類(Homo sapiens)が最初に生息した地域の一つでした。現生人類のものとされる最古の考古学的遺物はプッリャ州のカヴァッロ洞窟(Grotta del Cavallo)で発見されており(45000…
ペンギンの進化に関する研究(Cole et al., 2022)が報道されました。ペンギンは、6000万年以上前に出現し、海洋に高度に特化したボディープランを持つようになりました。また、ペンギンは極域に氷床が形成されるまでに飛行能力を失い、翼を使って海に飛び込めるようになっていました。先行研究では、ペンギンの現生種の多様化が明確に示さ…
ホッキョクグマの古代ゲノムデータを報告した研究(Wang et al., 2022)が公表されました。更新世を特徴づける氷期と間氷期との間の移行など気候変化は、種の範囲の縮小や断片化や拡大、種分化と適応の機会をもたらす可能性があります。集団ゲノムデータから明らかになっているのは、気候に起因する範囲変化によっても、完全な生殖隔離がまだ進…
井原泰雄、梅﨑昌裕、米田穣編『人間の本質にせまる科学 自然人類学の挑戦』所収のコラムです。1970年代に雄山閣から刊行された『人類学講座』では、「霊長類の遺伝的研究は、系統や進化と密接にかかわりあっている」とありました。「霊長類の遺伝学」を「霊長類の分子進化学」に読み替えると、アラン・ウィルソン(Allan Charles Wilso…
過去10万年間の古代オオカミのゲノムからイヌの起源を推測した研究(Bergström et al., 2022)が公表されました。ハイイロオオカミ(Canis lupus)は家畜個体群を生じた最初の種で、他の多くの大型哺乳類種が絶滅した最終氷期を通して広く分布し、それを生き延びました。しかし、過去のオオカミ個体群の歴史およびそれらが絶…
中国南西部で発見された後期更新世人類のゲノムデータを報告した研究(Zhang et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。遺伝学および考古学両方のデータは、解剖学的現代人(Homo sapiens)のアジア東部南方への65000~50000年前頃となる初期侵入を裏づけており(関連記事)、先…
アフリカ南部のアウストラロピテクス属化石の年代を見直した研究(Granger et al., 2022)が公表されました。南アフリカ共和国のアウストラロピテクス属の分類と系統と年代は長い間議論となっており、その中心はスタークフォンテン(Sterkfontein)洞窟遺跡です。「人類の揺り籠」のスタークフォンテンとマカパンスガット(Ma…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、中部旧石器時代南部のイベリア半島南部の洞窟壁画に関する研究(Martí et al., 2021)が報道されました。AFPでも報道されています。芸術の制作は、人類の文化的進化における大きな飛躍とみなされています。それは、複雑な象徴的表現を永続的方法で記録し、伝える手段を表します。しかし、何世代にもわ…
ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)の食性と指の形態に関する研究(Wang et al., 2022)が公表されました。現生ジャイアントパンダは、手の5本の指に加えて親指のような構造を持つ大きな手首の骨を持っており、それを使ってタケやササを扱っています。先行研究では、こうした親指のような構造があったことを…
ミクロネシアへの人類の移住に関する研究(Liu et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。現生人類(Homo sapiens)は近オセアニア(ニアオセアニア)に遅くとも47000年前頃に到来し、オーストラリアとニューギニアとビスマルク諸島とソロモン諸島へと広がりました。3500~3000年前頃以後、ヒトは…
朝鮮半島の三国時代の伽耶の人類のゲノムデータを報告した研究(Gelabert et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。最近の研究では、アジア東部人口集団には新石器時代にたどれる遺伝的連続性がある、と明らかにされています。現代朝鮮人は、特徴的な遺伝学的および言語学的特色を有するアジア東部…
ウルグアイの先スペイン期個体のゲノム解析結果を報告した研究(Lindo et al., 2022)が公表されました。歴史的にウルグアイの自己認識は、16世紀から19世紀までのヨーロッパ人との接触におけるこの地域の先住民集団の絶滅により特徴づけられてきました。絶滅は一連の軍事作戦を通じて行なわれ、1831年のサルシプエデス(Salsip…
生育環境へのナビゲーション能力の影響に関する研究(Coutrot et al., 2022)が公表されました。環境の文化的および地理的な性質は、認知やメンタルヘルスに深く影響を及ぼす、と示されています。緑地の近くでの生活はひじょうに有益と分かっており、一部の研究では、大都市に見られる密な社会経済ネットワークが鬱を緩和することが示唆され…
キリンの長い首の進化の一因に関する研究(Wang et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。地球で最も背の高い陸生動物であり、最も大きな反芻動物でもある現代のキリンの特徴的な長い首は、長い間、チャールズ・ダーウィン(Charles Robert Darwin)が初めて適応進化と自然淘汰という概念を提唱して…
先スペイン期アマゾン川流域の集落を報告した研究(Prümers et al., 2022)が公表されました。農業を基盤とする低密度都市の考古学的遺物は、アジア南東部やスリランカや中央アメリカの熱帯林の下に存在する、と報告されています。しかし、アマゾン川流域南部の相互に接続したいくつかの大規模集落を除けば、先スペイン期のアマゾン川流域に…
中世ヨーロッパの黒死病の起源に関する研究(Spyrou et al., 2022)が公表されました。中世の黒死病大流行(1346~1353年)の起源は、これが人口動態に及ぼした大きな影響と、その長期にわたる悪影響から、長年の研究課題となってきました。これまで、過去の記録と古代DNAと現代のゲノミクス技術を用いた大規模な研究にも関わらず…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、後期更新世のマンモスステップ(独特な植生群落と野生動物群集の中でマンモスが生息していた環境)の環境DNAを報告した研究(Wang et al., 2021)が公表されました。最後の氷期・間氷期周期において、北極生物相は大きな気候変動を経ましたが、そうした変化に対する生物相の応答の性質や規模や…
イスラム教勃興期におけるアラビア半島の気候に関する研究(Fleitmann et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。約300年にわたりアラビア半島で強大な勢力を誇っていたヒムヤル王国の経済は農業と貿易に基づいており、アフリカ東部と地中海地域を結んでいました。しかし、ヒムヤル王国の政治的・経済的・宗教的支…
下部旧石器時代のレヴァントにおける火の使用に関する研究(Stepka et al., 2022)が公表されました。火の技術は、人類の適応と社会と技術と生物学的進化の発展において重要な要素でした。人類を火と関連づける証拠は50万年以上前となる遺跡では稀で、世界規模では一握りの事例に限られています。具体的には、南アフリカ共和国(関連記事)…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、ティワナク遺跡とその周辺の先コロンブス期人類集団のゲノムデータを報告した研究(Popović et al., 2021)が公表されました。小規模な社会から定住生活(つまり村や都市)への移行を形成する動機と意図は、考古学の主要な問題の一つです。チチカカ湖の畔の近くの海抜3850mに位置するティワナクは…
先史時代ヨーロッパの人口史についての見解(Choin, and Quintana-Murci., 2022)が公表されました。本論文はおもに最近の研究(関連記事)の解説です。化石遺骸から抽出されたDNAに焦点を当てた古代DNA研究の時代は、19世紀後半に絶滅したアフリカ南部のシマウマであるクアッガからのミトコンドリアDNA(mtDNA…
ヒトの計画能力に関する研究(Ho et al., 2022)が公表されました。ヒトの認知機能の最も顕著な特徴の一つは、計画を立てる能力です。ヒトの計画能力の二つの際立った側面は効率と柔軟性です。計画は複雑な環境で立てなければならないことが多く、ヒトは認知資源が限られている中でも多くの日常的な問題に対してうまく解決策を計画できるという点…
イヌの家畜化と関連する遺伝子に関する研究(Tonoike et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。通常は社会的行動に影響するホルモンを制御している複数の遺伝子の変異がイヌの家畜化に関係している、と考えられていますが、どのような遺伝的変異が起きたのか、正確には解明されていません。この研究は、624頭のイエ…