アドリア海の人口史

 アドリア海の人口史に関する研究(Raveane et al., 2022)が公表されました。イタリア半島南部は、ヨーロッパにおいて現生人類(Homo sapiens)が最初に生息した地域の一つでした。現生人類のものとされる最古の考古学的遺物はプッリャ州のカヴァッロ洞窟(Grotta del Cavallo)で発見されており(45000…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第29回「ままならぬ玉」

 今回は、梶原景時失脚後の鎌倉の暗闘が描かれました。景時が討ち取られる場面は描かれず、冒頭で鎌倉に景時も含めて梶原一族の首が送られてきて、源頼家たちが検分していました。今回序盤で三浦義澄と安達盛長も退場となり、ともに初回から登場しており、作中では比較的温厚だったので、これからの権力闘争の激しさを予感させます。頼家は所領をめぐる紛争で強引…
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現生人類の起源に関する議論

 現生人類(Homo sapiens)の起源に関する議論を検証した研究(Meneganzin et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。まずは本論文で重要となる用語の解説を述べて起きます。 ◎異所性種分化  遺伝的交換の機会が制約される、(外部的障壁に起因する)地理的分離の結果とし…
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『昭和の戦争、令和の視点』

 中央公論新社より2021年8月に刊行されました。本書は『中央公論』2021年9月号の特集の電子書籍化です。構成は、戸部良一氏と小山俊樹氏との対談(歴史研究から戦争を問い続ける意味)、加藤聖文「満洲事変 国民と軍部を結びつけた起点」、岩谷將「盧溝橋事件 相互不信から生み出された泥沼への道」、庄司潤一郎「第二次上海事変 全面戦争への転換点…
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荻原直道「ヒトはなぜ直立二足歩行を獲得したのか 身体構造と運動機能の進化」

 井原泰雄、梅﨑昌裕、米田穣編『人間の本質にせまる科学 自然人類学の挑戦』所収の論文です。常習的な直立二足歩行は、ヒトと他の霊長類を区別する最重要の特徴です。そのため、常習的な直立二足歩行の起源について、大きな関心が寄せられてきました。本論文は、運動学と生体力学の観点から直立二足歩行の進化を検証します。直立二足歩行は、体幹を垂直に立て、…
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ペンギンの進化

 ペンギンの進化に関する研究(Cole et al., 2022)が報道されました。ペンギンは、6000万年以上前に出現し、海洋に高度に特化したボディープランを持つようになりました。また、ペンギンは極域に氷床が形成されるまでに飛行能力を失い、翼を使って海に飛び込めるようになっていました。先行研究では、ペンギンの現生種の多様化が明確に示さ…
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古人類学の手法と用語に関するまとめ

 これまで古人類学関連の記事において、さまざまな手法や用語の解説をその都度述べることがありましたが、煩雑なので、おもに集団遺伝学関連の手法と用語について、この機会に一度まとめておきます。おもにアジアへの現生人類(Homo sapiens)拡散の総説(関連記事)に依拠し、祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)については…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第28回「名刀の主」

 今回は梶原景時の失脚が描かれました。景時が多くの御家人から恨みや反感を買っていたことはしっかりと描かれてきたので、違和感はありません。景時を重用した源頼朝の死後、立場が危ういことは景時も自覚していたでしょうから、頼朝の後継者となった源頼家に取り入ろうとして、御家人でも自分だけは頼朝が信用していた、などと頼家に吹き込んでいたわけですが、…
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大相撲名古屋場所千秋楽

 今場所は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により途中から休場が相次ぎ、何とも悲惨な事態になってしまいました。これならば開催しない方がよかったとも言えるかもしれませんが、今場所が始まる直前から感染者数が急増したので、開催となったことは仕方のないところだと思います。優勝争いは、14…
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ホッキョクグマの古代ゲノム

 ホッキョクグマの古代ゲノムデータを報告した研究(Wang et al., 2022)が公表されました。更新世を特徴づける氷期と間氷期との間の移行など気候変化は、種の範囲の縮小や断片化や拡大、種分化と適応の機会をもたらす可能性があります。集団ゲノムデータから明らかになっているのは、気候に起因する範囲変化によっても、完全な生殖隔離がまだ進…
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望月雅士『枢密院 近代日本の「奥の院」』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2022年6月に刊行されました。電子書籍での購入です。まず本書は、大日本帝国憲法と日本国憲法には共通点が少なくないものの、決定的な違いとして、後者では戦争放棄が加えられ、枢密顧問が削除されたことだ、と指摘します。枢密院は、内閣とともに天皇を補佐する最高機関と位置づけられ、「重要の国務」を審議する、…
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『卑弥呼』第91話「最強の武器」

 『ビッグコミックオリジナル』2022年7月20日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハが穂波(ホミ)の国境にある謎めいた漢人(という分類を作中の舞台である紀元後3世紀に用いてよいのか、疑問は残りますが)の邑を一人で訪れ、徐平(ジョヘイ)という長老らしき男性と会見し、長老がヤノハの見識に感心するところで終了しました。今回は、金砂(カナスナ)…
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石田貴文「霊長類の遺伝」

 井原泰雄、梅﨑昌裕、米田穣編『人間の本質にせまる科学 自然人類学の挑戦』所収のコラムです。1970年代に雄山閣から刊行された『人類学講座』では、「霊長類の遺伝的研究は、系統や進化と密接にかかわりあっている」とありました。「霊長類の遺伝学」を「霊長類の分子進化学」に読み替えると、アラン・ウィルソン(Allan Charles Wilso…
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石原裕次郎がテレビと出会った時「太陽にほえろ!の時代」

 BSプレミアムで放送されたので視聴しました。BSプレミアムのドキュメンタリーはBS4Kでも放送されることが多いので、最近ではBSプレミアムの番組を録画して視聴することはほとんどなくなり、この放送を危うく見逃すところでしたが、ネットで情報を得て録画しました。出演者は、プロデューサーの岡田晋吉氏と梅浦洋一氏、脚本家の四十物光男氏と鎌田敏夫…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第27回「鎌倉殿と十三人」

 前回で源頼朝が完全に退場し、後鳥羽上皇が成人役で今回初登場となったことで、今回からが後半と言えそうです。今回は、頼朝急逝後の鎌倉の有力者の思惑と駆け引きが描かれました。梶原景時が新たな鎌倉殿となった源頼家に取り入り、北条と比企との対立も深まって、一方で頼家を擁していると自負していた比企が、頼家から絶対的な信頼を得ているわけではないこと…
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過去10万年間の古代オオカミのゲノムから推測されるイヌの起源

 過去10万年間の古代オオカミのゲノムからイヌの起源を推測した研究(Bergström et al., 2022)が公表されました。ハイイロオオカミ(Canis lupus)は家畜個体群を生じた最初の種で、他の多くの大型哺乳類種が絶滅した最終氷期を通して広く分布し、それを生き延びました。しかし、過去のオオカミ個体群の歴史およびそれらが絶…
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中国南西部で発見された後期更新世人類のゲノムデータ

 中国南西部で発見された後期更新世人類のゲノムデータを報告した研究(Zhang et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。遺伝学および考古学両方のデータは、解剖学的現代人(Homo sapiens)のアジア東部南方への65000~50000年前頃となる初期侵入を裏づけており(関連記事)、先…
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岩井秀一郎『服部卓四郎と昭和陸軍 大東亜戦争を敗北に至らしめたものは何か』

 PHP新書の一冊として、PHP研究所より2022年6月に刊行されました。電子書籍での購入です。服部卓四郎は太平洋戦争の大半の期間で参謀本部第一部第二課長を務めました。第一部第二課は作戦を担当する「花形」部署で、服部が太平洋戦争中に一度第二課長の任を解かれながら再度就任したことや、それ以前にノモンハン事件で関東軍首脳部が予備役に編入され…
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アフリカ南部のアウストラロピテクス属化石の年代の見直し

 アフリカ南部のアウストラロピテクス属化石の年代を見直した研究(Granger et al., 2022)が公表されました。南アフリカ共和国のアウストラロピテクス属の分類と系統と年代は長い間議論となっており、その中心はスタークフォンテン(Sterkfontein)洞窟遺跡です。「人類の揺り籠」のスタークフォンテンとマカパンスガット(Ma…
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第26回参院選結果

 各党の確定議席数は以下の通りで、()は公示前の改選議席数です。 自民党:63(55) 立憲民主党:17(23) 公明党:13(14) 日本維新の会:12(6) 国民民主党:5(7) 共産党:4(6) れいわ新選組:3(0) 社会民主党:1(1) NHK党:1(0) 無所属・その他:6(8)  この結果、各…
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『卑弥呼』第10集発売

 待望の第10集が発売されました。第10集には、 口伝71「本物の日見子」 https://sicambre.seesaa.net/article/202109article_19.html 口伝72「生命の選択」 https://sicambre.seesaa.net/article/202110article_6.h…
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太田博樹「縄文人のゲノム解読 古代ゲノム学による人類の進化」

 井原泰雄、梅﨑昌裕、米田穣編『人間の本質にせまる科学 自然人類学の挑戦』所収の論文です。本論文は古代ゲノム研究の概説で、「縄文人」のゲノム解読結果も取り上げています。古代DNAは長い年月を経て劣化し、分子数も整然と比較して激減しているので、その解析は現生個体と比較してひじょうに困難です。また、分析対象の古代の個体(標本)のDNAなのか…
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中山一大「自然選択によるヒトの進化 形質多様性と遺伝的多様性」

 井原泰雄、梅﨑昌裕、米田穣編『人間の本質にせまる科学 自然人類学の挑戦』所収の論文です。形質や疾患と遺伝子との関連には、1つの多型の遺伝子型で決定される場合(単一遺伝子形質)と、多数の多型と非遺伝的要因(年齢や生活習慣など)の組み合わせで決定される場合(多因子遺伝形質)があります。単一遺伝子形質については、家系標本を用いた連鎖解析の長…
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中部旧石器時代のイベリア半島南部の洞窟壁画

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、中部旧石器時代南部のイベリア半島南部の洞窟壁画に関する研究(Martí et al., 2021)が報道されました。AFPでも報道されています。芸術の制作は、人類の文化的進化における大きな飛躍とみなされています。それは、複雑な象徴的表現を永続的方法で記録し、伝える手段を表します。しかし、何世代にもわ…
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桐野作人『織田信長 戦国最強の軍事カリスマ』

 新人物文庫の一冊として、KADOKAWAから2014年12月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は織田信長を「軍事カリスマ」として把握します。信長が尾張を拠点としていた頃に、若い馬廻や小姓集団からの自発的な支持を基盤に、彼らからの人格的帰依と信長からの人格的支配が相互形成されて成立した濃密な主従関係に、信長の「軍事カリスマ」の…
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ジャイアントパンダの食性と指の形態

 ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)の食性と指の形態に関する研究(Wang et al., 2022)が公表されました。現生ジャイアントパンダは、手の5本の指に加えて親指のような構造を持つ大きな手首の骨を持っており、それを使ってタケやササを扱っています。先行研究では、こうした親指のような構造があったことを…
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ミクロネシアへの人類の5回の主要な移住

 ミクロネシアへの人類の移住に関する研究(Liu et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。現生人類(Homo sapiens)は近オセアニア(ニアオセアニア)に遅くとも47000年前頃に到来し、オーストラリアとニューギニアとビスマルク諸島とソロモン諸島へと広がりました。3500~3000年前頃以後、ヒトは…
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『卑弥呼』第90話「秦の邑にて」

 『ビッグコミックオリジナル』2022年7月20日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハが穂波(ホミ)の国境にある謎めいた漢人(という分類を作中の舞台である紀元後3世紀に用いてよいのか、疑問は残りますが)の邑を一人で訪れ、長老らしき男性から邑に入ることを許可されたところで終了しました。今回は、穂波(ホミ)の国境にある漢人の邑を訪れたヤノハが…
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三国時代の伽耶の人類のゲノムデータ(追記有)

 朝鮮半島の三国時代の伽耶の人類のゲノムデータを報告した研究(Gelabert et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。最近の研究では、アジア東部人口集団には新石器時代にたどれる遺伝的連続性がある、と明らかにされています。現代朝鮮人は、特徴的な遺伝学的および言語学的特色を有するアジア東部…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第26回「悲しむ前に」

 今回は、源頼朝の後の鎌倉の体制をどうすべきか、さまざまな人物の思惑と駆け引きが描かれました。これまでの人物描写を踏まえた話になっており、『真田丸』を見ても、こうした比較的狭い範囲内のやり取りは脚本家の得意とするところでしょうから、今後も面白さには期待できそうです。今回、頼朝は意識を失ったままであるもののまだ没しておらず、そのことで主要…
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ウルグアイの先スペイン期個体のゲノム解析

 ウルグアイの先スペイン期個体のゲノム解析結果を報告した研究(Lindo et al., 2022)が公表されました。歴史的にウルグアイの自己認識は、16世紀から19世紀までのヨーロッパ人との接触におけるこの地域の先住民集団の絶滅により特徴づけられてきました。絶滅は一連の軍事作戦を通じて行なわれ、1831年のサルシプエデス(Salsip…
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山田徹、谷口雄太、木下竜馬、川口成人『鎌倉幕府と室町幕府 最新研究でわかった実像』

 光文社新書の一冊として、光文社より2022年3月に刊行されました。電子書籍での購入です。 ●木下竜馬「第一章 部分的な存在としての鎌倉幕府」  まず、鎌倉幕府は全ての領域を支配下に置いたわけではなく、御家人ではない武士たちは天皇や貴族や大規模な寺社勢力に属しており、鎌倉時代の国家的秩序において鎌倉幕府は部分的な存在だったこ…
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ナビゲーション能力に影響を与える生育環境

 生育環境へのナビゲーション能力の影響に関する研究(Coutrot et al., 2022)が公表されました。環境の文化的および地理的な性質は、認知やメンタルヘルスに深く影響を及ぼす、と示されています。緑地の近くでの生活はひじょうに有益と分かっており、一部の研究では、大都市に見られる密な社会経済ネットワークが鬱を緩和することが示唆され…
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キリンの長い首の進化の一因

 キリンの長い首の進化の一因に関する研究(Wang et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。地球で最も背の高い陸生動物であり、最も大きな反芻動物でもある現代のキリンの特徴的な長い首は、長い間、チャールズ・ダーウィン(Charles Robert Darwin)が初めて適応進化と自然淘汰という概念を提唱して…
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先スペイン期アマゾン川流域の集落

 先スペイン期アマゾン川流域の集落を報告した研究(Prümers et al., 2022)が公表されました。農業を基盤とする低密度都市の考古学的遺物は、アジア南東部やスリランカや中央アメリカの熱帯林の下に存在する、と報告されています。しかし、アマゾン川流域南部の相互に接続したいくつかの大規模集落を除けば、先スペイン期のアマゾン川流域に…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第25回「天が望んだ男」

 今回は源頼朝の死が描かれました。頼朝の死は本作の山場となりそうなので、大いに注目していました。本作と舞台がほぼ重なる1979年放送の大河ドラマ『草燃える』は全51回放送で、頼朝の死は第32回でした。本作が全何回になるのか知りませんが、近年の大河ドラマでは恒例だった季節ごとの休止がないので、2017年放送の『おんな城主 直虎』以来久しぶ…
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中世ヨーロッパの黒死病の起源

 中世ヨーロッパの黒死病の起源に関する研究(Spyrou et al., 2022)が公表されました。中世の黒死病大流行(1346~1353年)の起源は、これが人口動態に及ぼした大きな影響と、その長期にわたる悪影響から、長年の研究課題となってきました。これまで、過去の記録と古代DNAと現代のゲノミクス技術を用いた大規模な研究にも関わらず…
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熱帯林の人類史

 熱帯林の人類史に関する総説(Scerri et al., 2022)が公表されました。 ●ヒトの深い過去の辺境としての熱帯林  開けた草原とサバンナがヒトおよびその祖先の生態学的「発祥地」だった、との認識は、野外調査の地理的文脈、および初期人類の進化と拡散と文化的発展に関する支配的な物語の両方を形成してきました。対照的…
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上杉和彦『日本史リブレット人025 平清盛 「武家の世」を切り開いた政治家』

 山川出版社から2011年5月に刊行されました。電子書籍での購入です。2012年放送の大河ドラマ『平清盛』の関連本と言えるかもしれませんが、手ごろな価格ですし、手堅い内容だと期待して読みました。本書はまず、平清盛の印象が日本社会において長期にわたって悪く、その要因は『平家物語』にある、と指摘します。清盛は『平家物語』において、「異朝」の…
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後期更新世のマンモスステップの環境DNA

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、後期更新世のマンモスステップ(独特な植生群落と野生動物群集の中でマンモスが生息していた環境)の環境DNAを報告した研究(Wang et al., 2021)が公表されました。最後の氷期・間氷期周期において、北極生物相は大きな気候変動を経ましたが、そうした変化に対する生物相の応答の性質や規模や…
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アラビア半島の旱魃とイスラム教の勃興

 イスラム教勃興期におけるアラビア半島の気候に関する研究(Fleitmann et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。約300年にわたりアラビア半島で強大な勢力を誇っていたヒムヤル王国の経済は農業と貿易に基づいており、アフリカ東部と地中海地域を結んでいました。しかし、ヒムヤル王国の政治的・経済的・宗教的支…
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下部旧石器時代のレヴァントにおける人類の火の使用

 下部旧石器時代のレヴァントにおける火の使用に関する研究(Stepka et al., 2022)が公表されました。火の技術は、人類の適応と社会と技術と生物学的進化の発展において重要な要素でした。人類を火と関連づける証拠は50万年以上前となる遺跡では稀で、世界規模では一握りの事例に限られています。具体的には、南アフリカ共和国(関連記事)…
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『卑弥呼』第89話「不死の邑」

 『ビッグコミックオリジナル』2022年7月5日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハが穂波(ホミ)の国境にある謎めいた漢人(という分類を作中の舞台である紀元後3世紀に用いてよいのか、疑問は残りますが)の邑へと向かうべく出立しところで終了しました。今回は、ヤノハがイクメとともに穂波の国境にまで来た場面から始まります。そこには木簡に書かれた漢…
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大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第24回「変わらぬ人」

 今回は、今回は『曽我物語』で有名な富士の巻狩りの余波が描かれました。源頼朝は、自分の生死が不明だった時に鎌倉殿であるかのように振舞った弟の範頼への疑念を募らせ、範頼は伊豆の修善寺に幽閉となります。頼朝はその立場上猜疑心が強くなっていき、けっきょは範頼の殺害を命じますが、そのことに苦悩しているようです。こうした業の深さは北条義時にも通ず…
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ティワナク遺跡の先コロンブス期人類集団のゲノムデータ

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、ティワナク遺跡とその周辺の先コロンブス期人類集団のゲノムデータを報告した研究(Popović et al., 2021)が公表されました。小規模な社会から定住生活(つまり村や都市)への移行を形成する動機と意図は、考古学の主要な問題の一つです。チチカカ湖の畔の近くの海抜3850mに位置するティワナクは…
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遠山美都男『新版 大化改新 「乙巳の変」の謎を解く』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2022年5月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、同じく中公新書の一冊として1993年2月に刊行された『大化改新 六四五年六月の宮廷革命』の改訂版で、この旧版は私も購入しており、本書の購入の検討にあたって久々に本棚から取り出しました。新版のはしがきに、旧版からの大きな変更点が取り上げら…
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先史時代ヨーロッパの人口史

 先史時代ヨーロッパの人口史についての見解(Choin, and Quintana-Murci., 2022)が公表されました。本論文はおもに最近の研究(関連記事)の解説です。化石遺骸から抽出されたDNAに焦点を当てた古代DNA研究の時代は、19世紀後半に絶滅したアフリカ南部のシマウマであるクアッガからのミトコンドリアDNA(mtDNA…
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ヒトの計画能力

 ヒトの計画能力に関する研究(Ho et al., 2022)が公表されました。ヒトの認知機能の最も顕著な特徴の一つは、計画を立てる能力です。ヒトの計画能力の二つの際立った側面は効率と柔軟性です。計画は複雑な環境で立てなければならないことが多く、ヒトは認知資源が限られている中でも多くの日常的な問題に対してうまく解決策を計画できるという点…
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イヌの家畜化と関連する遺伝子

 イヌの家畜化と関連する遺伝子に関する研究(Tonoike et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。通常は社会的行動に影響するホルモンを制御している複数の遺伝子の変異がイヌの家畜化に関係している、と考えられていますが、どのような遺伝的変異が起きたのか、正確には解明されていません。この研究は、624頭のイエ…
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