喫煙が免疫応答に及ぼす持続的影響に関する研究(Saint-André et al., 2024)が公表されました。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後に観察された臨床転帰の多様性からも分かるように、免疫応答(細菌感染、ウイルス感染など)は個人ごとに大きく異なり、その固有の変動性では年齢や性や遺伝的要因が大…
ヒト脳の成熟が遅い理由に関する研究(Ciceri et al., 2024)が公表されました。ヒト脳の発達速度は、他のほとんどの種と比較してひじょうに遅い、と分かっています。大脳皮質ニューロンの成熟はとくに遅く、成人の機能が発達するのには数ヶ月から数年を要します。時間的調節がこのように長期にわたるのは、ヒト多能性幹細胞(human p…
アムール川流域の後期更新世の石器群を報告した研究(Yue et al., 2024)が公表されました。本論文は、中華人民共和国黒竜江省双鴨山(Shuangyashan)市饒河(Raohe)県の小南山(Xiaonanshan)遺跡の16500~13500年前頃となる石器群を、新石器化との関連で検証しています。アムール川流域には、1400…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ダウニア人(Daunian)の起源に関する研究(Aneli et al., 2022)が公表されました。本論文は、イタリア南部の鉄器時代のダウニア人の遺伝的起源を、古代ゲノムデータから検証しています。ダウニア人は、ローマが共和政から帝政にかけて版図を拡大し、「帝国」となっていく過程で、版図の…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、古代ゲノムデータに基づいて中期青銅器時代ヨーロッパ中央部東方の人類社会を推測した研究(Chyleński et al., 2023)が公表されました。本論文は、おもに現在のポーランドとウクライナを対象に、文化的変容の見られる中期青銅器時代の人類集団が、比較的高い割合の狩猟採集民と関連する遺伝的構成要…
総合的な古代DNAデータの報告(Mallick et al., 2024)が公表されました。2010年以降の古代DNA研究の進展は目覚ましく、世界中から多数の古代人のゲノム規模データデータが報告されてきました。これら多数の古代人のDNAデータは公開されていますが、研究の利便性のため、データ形式の統一やデータ品質の基準や関連情報(DNA…
アルタイ地域のネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の石器群と行動に関する研究(Kolobova et al., 2024)が公表されました。本論文は、アルタイ地域のネアンデルタール人の所産と考えられる石器群から、ネアンデルタール人の行動を推測しています。アルタイ地域のネアンデルタール人は、恐らくヨーロッパ東…
アマゾン川上流域の初期の都市化に関する研究(Rostain et al., 2024)が公表されました。日本語の解説記事もあります。アマゾンの密林は、人為的影響がさほどなければ、徒歩でも走査技術でも入り込むのは困難です。しかし、過去数年間で、改良されたLIDAR(light detection and ranging、光検出及び測距)…
ソコトラ島の前近代の人類遺骸のゲノムデータを報告した研究(Sirak et al., 2024)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、現在イエメン領となっている、インド洋北西部のソコトラ島の650~1750年頃の人類遺骸のゲノムデータを報告しています。本論文は、これらソコトラ島の前近代人類が、レヴァ…
古代と現代のゲノムデータからヒグマヒグマ(Ursus arctos)の進化史を推測した研究(Segawa et al., 2024)が公表されました。2010年代以降の古代ゲノム研究の進展は目覚ましく、やはり自身の由来に直結するとともに、医療など「実用的」分野への応用も期待されることから、ヒトを対象とする古代ゲノム研究が最も盛んでしょ…
ヨーロッパの歴史時代の人類遺骸から得られた新たなゲノムデータを報告した研究(Antonio et al., 2024)が公表されました。本論文は、ヨーロッパと地中海地域の歴史時代の人類遺骸から得られた新たなゲノムデータを既知のゲノムデータとともに分析し、ユーラシア西部において歴史時代には人類の高い移動性が見られるものの、ユーラシア西部…
日本列島の縄文時代と奈良時代のイヌのミトコンドリアゲノムを報告した研究(Xiaokaiti et al., 2024)が公表されました。本論文は、日本列島では最古級となるイヌ遺骸を含めて縄文時代のイヌ5個体と、8世紀後期の日本のイヌ7個体のミトコンドリアゲノムを報告しています。縄文時代のイヌは母系遺伝となるミトコンドリアゲノムでは、中…
黒死病前後のイングランドの人類集団の局所的な遺伝的歴史を報告した研究(Hui et al., 2024)が公表されました。ペスト菌(Yersinia pestis)を原因とする黒死病はユーラシアにおいて人類に大きな打撃を与えてきており、中でも14世紀のヨーロッパにおける大流行は当時のヨーロッパ社会にとって大打撃となり、その後の歴史に大…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、単一細胞水準での重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)への応答の地域集団間の差に関する研究(Aquino et al., 2023)が公表されました。SARS-CoV-2感染後のヒトの臨床症状は、個人間で大きな差異が見られ、その遺伝学的基盤や免疫学的基盤が解明され始めており、ネ…
現代人と古代人のゲノムデータからアフリカにおけるバントゥー諸語話者の拡大を推測した研究(Fortes-Lima et al., 2024)が公表されました。本論文は遺伝学的観点から、アフリカにおけるバントゥー諸語話者拡大の様相を検証しています。本論文は、これまでゲノムデータが得られていなかったバントゥー諸語話者117集団も対象としてお…
古環境の変化からギガントピテクス・ブラッキー(Gigantopithecus blacki)の絶滅要因を推測した研究(Zhang et al., 2024)が報道されました。ギガントピテクス・ブラッキーは史上最大の類人猿(ヒト系統を除くヒト上科)とされており、中期更新世の後半に絶滅しました。ギガントピテクス・ブラッキーはオランウータン…
カエルの体色の機能に関する研究(Laumeier et al., 2024)が公表されました。小規模な研究により示されてきたのは、体色の明度差は外温動物において重要な生理学的意味を有するかもしれず、色の濃い種ほど加温速度が急で、病原体や光酸化損傷に対する保護がある、ということです。両生綱無尾目(カエルやヒキガエル)は、5000種以上か…
古代ゲノムデータにより現在のデンマークに相当する地域の人口史を推測した研究(Allentoft et al., 2024)が公表されました。本論文は、デンマークの中石器時代~前期青銅器時代の7300年間にわたる古代人100個体のゲノムデータを用いて、デンマークの人口史を推測しています。デンマークでは、新石器時代への移行がヨーロッパ中央…
ヨーロッパの現代人に多い多発性硬化症(Multiple sclerosis、略してMS)の起源に関する研究(Barrie et al., 2024)が公表されました。本論文は、古代ゲノムのデータセットの一部と現代のイギリス在住のヨーロッパ系「白人(自己申告)」約41万人のゲノムを比較し、ヨーロッパ現代人におけるヨーロッパ古代人集団由来…
ユーラシア西部古代人における選択と現代人への遺伝的影響に関する研究(Irving-Pease et al., 2024)が公表されました。本論文は、ユーラシア西部古代人の大規模なゲノムデータを用いて、ユーラシア西部の古代人集団における選択と、現代人への遺伝的影響を検証しています。たとえば、糖尿病とアルツハイマー病の危険性に関連する遺伝…