パレオスポンディルスと四肢類祖先との類縁性に関する研究(Hirasawa et al., 2022)が公表されました。中期デボン紀のパレオスポンディルス(Palaeospondylus gunni)はきわめて謎の多い化石脊椎動物の一種で、1890年にスコットランドで発見されて以来、その系統的位置は不明なままでした。この化石には奇妙な形…
マレーシア先住民の起源に関する研究(Aghakhanian et al., 2022)が公表されました。アジア南東部は、アジア本土から、アンダマン海と南シナ海とインド洋へと広がる多数の島々にまでまたがる11ヶ国から構成されます。この地域には歴史と文化と宗教と生物学の印象的な多様性があります。マレーシア先住民はかなりの表現型と言語学と人…
ヨーロッパにおける乳糖耐性の歴史に関する研究(Evershed et al., 2022)が公表されました。ヨーロッパの人口集団、および多くのアフリカと中東とアジア南部の人口集団において、ラクターゼ(乳糖分解酵素)活性持続(LP)は、過去1万年間に進化した単一遺伝子形質のうち最も強力に選択されたものです。LPの選択と先史時代の乳の消費…
朝鮮半島三国時代の古代ゲノム研究(関連記事)の解説(Wang R, and Wang CC., 2022)が公表されました。過去10年間、古ゲノミクスは、時空間的規模でアジア東部における過去の人口史の理解を進めてきました。完新世において、アジア北東部人の形成は、3つの遺伝的系統の広範な混合により特徴づけられました。それは、アムール川流…
エディアカラン紀の刺胞動物に関する研究(Dunn et al., 2022)が公表されました。サンゴやクラゲを含む刺胞動物門という動物群には、疎らながらも古く長い化石記録が存在します。この研究は、イギリスのチャーンウッドの森(Charnwood Forest)で発見された、エディアカラン紀となる約5億6200万~5億5700万年前の刺…
鳥類の骨盤の発生過程に関する研究(Griffin et al., 2022)が公表されました。現生鳥類(鳥綱)の体は、祖先的な爬虫類の状態から著しく変化しています。とりわけその骨盤は、初期の主竜類から現生の鳥類までの移行の中で大きな変化を経てきました。この段階的な変形はきわめて優れた化石記録によりよく立証されていますが、その根底にある…
初期現生人類(Homo sapiens)の頭蓋内進化に関する研究(Zollikofe et al., 2022)が公表されました。現代人の脳の大きさは最近縁の現生分類群である大型類人猿の約3倍で、ヒトの脳はとくに言語など複雑な認知作業に関わる領域で顕著な構造的違いを示します。しかし、いつどのようにヒトの脳の独特な特徴が進化したのか、議…
ヒトの一生にわたる脳の成長曲線についての研究(Bethlehem et al., 2022)が公表されました。この数十年間で、脳画像化法はヒト脳の基礎研究や臨床研究で広く利用されるツールになりました。しかし、身長や体重などの人体計測学的特徴を用いる成長曲線とは異なり、脳画像計測では継続的に個人差を定量するための参照規準はこれまでありま…
哺乳類の温血性の進化に関する研究(Araújo et al., 2022)が公表されました。内温性は、多様な環境における哺乳類と鳥類の重要な特徴で、深部体温をほぼ一定に維持することによって多様な環境条件下での生息を可能にし、その生態的優位性を支えています。内温動物は、行動が活発で素早く、遠くまで移動できるのに対して、外温動物(冷血動物…
絶滅したステラーカイギュウ(Hydrodamalis gigas)のゲノムを報告した研究(Duc et al., 2022)が公表されました。更新世において、地球には広く多様な大型動物種がおり、マストドンやマンモスや巨大ラクダやクマや数種のネコ科が含まれます。これらの多くは後期更新世と前期完新世に突然消滅しました。したがって、これらの…
アドリア海の人口史に関する研究(Raveane et al., 2022)が公表されました。イタリア半島南部は、ヨーロッパにおいて現生人類(Homo sapiens)が最初に生息した地域の一つでした。現生人類のものとされる最古の考古学的遺物はプッリャ州のカヴァッロ洞窟(Grotta del Cavallo)で発見されており(45000…
ペンギンの進化に関する研究(Cole et al., 2022)が報道されました。ペンギンは、6000万年以上前に出現し、海洋に高度に特化したボディープランを持つようになりました。また、ペンギンは極域に氷床が形成されるまでに飛行能力を失い、翼を使って海に飛び込めるようになっていました。先行研究では、ペンギンの現生種の多様化が明確に示さ…
ホッキョクグマの古代ゲノムデータを報告した研究(Wang et al., 2022)が公表されました。更新世を特徴づける氷期と間氷期との間の移行など気候変化は、種の範囲の縮小や断片化や拡大、種分化と適応の機会をもたらす可能性があります。集団ゲノムデータから明らかになっているのは、気候に起因する範囲変化によっても、完全な生殖隔離がまだ進…
井原泰雄、梅﨑昌裕、米田穣編『人間の本質にせまる科学 自然人類学の挑戦』所収のコラムです。1970年代に雄山閣から刊行された『人類学講座』では、「霊長類の遺伝的研究は、系統や進化と密接にかかわりあっている」とありました。「霊長類の遺伝学」を「霊長類の分子進化学」に読み替えると、アラン・ウィルソン(Allan Charles Wilso…
過去10万年間の古代オオカミのゲノムからイヌの起源を推測した研究(Bergström et al., 2022)が公表されました。ハイイロオオカミ(Canis lupus)は家畜個体群を生じた最初の種で、他の多くの大型哺乳類種が絶滅した最終氷期を通して広く分布し、それを生き延びました。しかし、過去のオオカミ個体群の歴史およびそれらが絶…