ハイイロオオカミ(Canis lupus)の寄生虫感染と群れのリーダーになる確率についての研究(Meyer et al., 2022)が報道されました。この研究は、アメリカ合衆国ワイオミング州のイエローストーン国立公園に生息するハイイロオオカミを調査し、リスクを負う行動とトキソプラズマ症の原因寄生虫であるトキソプラズマ原虫(Toxop…
環境DNA200から万年前頃のグリーンランドの生態系を明らかにした研究(Kjær et al., 2022)が報道されました。後期鮮新世および前期更新世(360万~80万年前頃)の気候は、将来の温暖化で予測されている気候に近いものでした。古気候の記録からは、強い極域増幅と、現代よりも11~19度ほど高い年平均気温が明らかになっています…
人間進化研究ヨーロッパ協会第12回総会で、ホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis)の中足骨に関する研究(Tsegai et al., 2022)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P171)。謎めいたホモ・フロレシエンシスは、頭蓋と頭蓋後方(首から下)の独特な組み合わせを示しており、ホモ属の…
白亜紀の鳥類化石を報告した研究(Benito et al., 2022)が公表されました。骨口蓋は、現生鳥類の最も古く分岐した2つのクレード(単系統群)であると新顎類(現生鳥類のほぼ全て)と古顎類(ヒクイドリやダチョウやシギダチョウ科など)を判別する特徴です。新顎類は口蓋骨が癒合しておらず、頭蓋が概して動的で、口蓋に関節があるのに対し…
ドイツの中世ユダヤ人のゲノムデータを報告した研究(Waldman et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、14世紀のドイツのエアフルト(Erfurt)の中世ユダヤ人墓地における回復発掘調査で得られた、アシュケナージ系ユダヤ人(AJ)のゲノム規模データを報告します。エアフルト個…
最大級のウミガメの化石に関する研究(Castillo-Visa et al., 2022)が公表されました。既知の最大級のウミガメは、白亜紀末期頃には北アメリカ大陸周辺の海域に生息していました。その一例が、古代に絶滅したアーケロン(Archelon)属で、体長は4.6m、体重は3.2tにまで成長していました。これとは対照的に、既知のヨ…
ハンガリー王国のフニャディ(Hunyadi)家のDNA解析結果を報告した研究(Neparáczki et al., 2022)が公表されました。フニャディ家は、14~16世紀のヨーロッパ中央部の歴史において、最も影響力のあった家系の一つです。フニャディ家の威信は、ハンガリー王国の摂政の地位にまで上り詰めた、トルコを撃退したヨハネス・フ…
ブラジルの新たな古代人のゲノムデータを報告した研究(Santos et al., 2022)が公表されました。考古学およびゲノムの証拠の増加は、ヒトによるアメリカ大陸の複雑な移民過程を示唆してきました。これはとくに南アメリカ大陸について当てはまり、予期せぬ祖先の兆候が、南アメリカ大陸のさまざまな地域への初期移住について困惑させるような…
新生代における哺乳類の「進化の減速」に関する研究(Goswami et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。最初に地球を歩き回った有胎盤哺乳類は小型で、恐らくハツカネズミやトガリネズミほどの大きさでした。しかし現在判明しているように、哺乳類はヒトの親指ほどのキティブタバナコウモリから海に生きる体長約30m…
フランス南部の新石器時代における農耕民と狩猟採集民との相互作用に関する研究(Arzelier et al., 2022)が公表されました。考古学的研究では、新石器時代の拡大はヨーロッパ西部に到達するとより複雑な転換が起き、在来の狩猟採集民(HG)と侵入してきた農耕民との間の相互作用の対照的な全体像を描く、と示されています。これらの過程…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、古代DNAデータから両親の親族関係を推測した研究(Ringbauer et al., 2022)が公表されました。現代人の両親の親族関係は世界各地でかなり異なりますが、その過去についてはほとんど知られていません。本論文は、両親の親族関係が同型接合連続領域の形態でゲノムに痕跡を残すことを活用し…
黒死病と関連する免疫遺伝子の進化に関する研究(Klunk et al., 2022)が公表されました。感染症は、ヒトの進化を駆動する最も強い選択圧の一つです。これには、有史時代における唯一最大の大量死事象で、一般に「黒死病」と呼ばれる、ペストの第二次パンデミック(世界的大流行)の最初のアウトブレイク(集団発生)が含まれる。黒死病はペス…
鳥類の骨格の進化の多様性に関する研究(Navalón et al., 2022)が公表されました。進化の速度および様式の変動が現生種の表現型の多様性をどのように構築してきたか、その特徴を明らかにすることは、大進化研究の中心的な目標です。しかし、そうした研究は通常、少数の形質に限定されており、充分な情報は得られていません。鳥類は生態学的…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、現生人類(Homo sapiens)の拡散におけるペルシア湾(本論文はアラブ側の主張にも配慮してか、アラブ・ペルシア湾と表記していますが、以下ではより一般的なペルシア湾で統一します)の役割に関する研究(Ferreira et al., 2021)が公表されました。アラビア半島は、アフリカから…
新石器時代移行期の上メソポタミア(メソポタミア北部)の人口史に関する研究(Altinişık et al., 2022)が公表されました。アジア南西部における新石器時代移行期において、上メソポタミアは象徴主義と技術と食性での顕著な革新を通じて、重要な役割を果たしました。本論文は、ティグリス川流域の先土器新石器時代チャヨニュ(Çayön…
爬虫類の進化解明の手がかりとなるジュラ紀の骨格化石を報告した研究(Tałanda et al., 2022)が公表されました。有鱗目(トカゲ類とヘビ類)は爬虫類の分類群の一つで、1万を超す現生種が含まれており、その祖先動物は、有鱗類に最も近縁な現生動物であるムカシトカゲ類(Sphenodon)の祖先から2億4000万年以上前に分岐しま…
ヒトの身長に関連する遺伝的多様体についての研究(Yengo et al., 2022)が公表されました。成人の身長は遺伝性の形質で、容易に測定できます。以前の研究で、おもにヨーロッパ系の集団において、身長に関連する高頻度の遺伝的多様体(骨格障害に関連する遺伝子を含みます)が数多く同定されました。身長は、観察可能なヒトの形質(表現型)の…
ヒトの核DNAにおけるミトコンドリアDNA(mtDNA)由来の配列に関する研究(Wei et al., 2022)が公表されました。細胞質内の細胞小器官から細胞核へのDNA移行は内部共生事象の遺産であり、核内mtDNA断片(NUMT)の大半は、ヒトの種分化より前に生じた、太古のものと考えられています。NUMTをmtDNAの多様体と解釈…
人間進化研究ヨーロッパ協会第12回総会で、氷期ヨーロッパ西部におけるオーリナシアン(Aurignacian)とマグダレニアン(Magdalenian)との間の遺伝的関連についての研究(Villalba-Mouco et al., 2022)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P183)。以下、年代は較正年代です…
脊椎動物における音声コミュニケーションの起源に関する研究(Jorgewich-Cohen et al., 2022)が公表されました。音声コミュニケーションは、多くの脊椎動物の行動(子育てや配偶者の誘引を容易にするための行動など)の基盤となっています。以前の研究で、音声コミュニケーションはいくつかの分類群で独立して進化した、と示唆され…
三国時代の朝鮮半島の甕棺に埋葬された複数個体のゲノムデータを報告した研究(Lee et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。家族関係は過去の社会の構造の理解に重要ですが、その考古学的復元はほぼ、状況証拠に基づいています。考古遺伝学的情報、とくにゲノム規模データは、古代人の家族関係を正確に…
ブリテン島の上部旧石器時代後期の2個体の異なる遺伝的構成を報告した研究(Charlton et al., 2022)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究はすでに、人間進化研究ヨーロッパ協会第12回総会で概要が報告されていました(関連記事)。上部旧石器時代ヨーロッパの遺伝学的調査は、ヒト集団の移動と複…
初期恐竜の分布を形成した気候帯に関する研究(Griffin et al., 2022)が報道されました。中生代および新生代の陸上生態系を形成することになる脊椎動物の系統は、三畳紀のパンゲア超大陸各地で出現しました。この超大陸において、汎存性の「災害動物相」は、後期三畳紀(カーニアン期、約2億3500万年前)までに固有性の高い集合に取っ…
人間進化研究ヨーロッパ協会第12回総会で、ブリテン島における後期氷期旧石器時代人類の遺伝的構成に関する研究(Charlton et al., 2022)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P24)。以下、年代は暦年代です。近年、多数の研究でユーラシア西部における最初期ヒト集団の一部の遺伝的歴史が調べられ、農耕出…
初期哺乳類の生活史に関する研究(Funston et al., 2022)が公表されました。白亜紀末の大量絶滅後、有胎盤哺乳類は急速に多様化して重要な生態的地位を占め、体サイズを増大させましたが、こうした大型化は他の獣類には当てはまりませんでした。この時期に出現した大型草食動物の中では、汎歯目哺乳類が最初期の分類群として知られています…