ハクジラ類(シャチ、シロイルカ、イッカクなど)の閉経の進化に関する研究(Ellis et al., 2024)が公表されました。ひじょうに稀な減少である閉経が進化した経緯や理由を明らかにすることは、さまざまな分野で長年にわたる課題となっています。雌は一般に、成体期の全体にわたり生殖を行なうことで、繁殖成功を最大化させることができます。…
ヌタウナギのゲノムと脊椎動物の進化に関する研究(Marlétaz et al., 2024)が公表されました。ヌタウナギ類とヤツメウナギ類は、現存する唯一の無顎類系統として、脊椎動物の初期進化を探るためのきわめて重要な手がかりを提供します。本論文は、クロヌタウナギ(Eptatretus atami)の染色体規模のゲノム塩基配列を用いて…
現生人類(Homo sapiens)のアフリカからの拡散におけるイラン高原(ペルシア高原)の重要性を示した学際的研究(Vallini et al., 2024)が公表されました。本論文は、私が大いに参考にしてきた2年前(2022年)の論文(Vallini et al., 2022)の改訂版とも言えそうで、現生人類のアフリカからの拡散を…
マルハナバチの社会的学習に関する研究(Bridges et al., 2024)が公表されました。文化とは、社会的に学習され集団内で経時的に維持される行動を指します。動物の文化にも、ヒトの文化のように累積的で、過去の新機軸に立脚する連続的な新機軸を特徴とするものがある、と示唆する証拠が増えています。しかし、ヒトの累積的な文化に関わる行…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、鮮卑の遺伝的起源に関する研究(Cai et al., 2023)が公表されました。本論文は、長きにわたって議論されてきた鮮卑の起源について、古代ゲノムデータに基づく解明を試みています。本論文の結論は、鮮卑の起源はアムール川地域の大興安嶺山脈周辺にある、というものです。また本論文は、鮮卑が南下して中原…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、新石器時代における黄河流域からの農耕民の移住に関する研究の解説(Bellwood., 2024)が公表されました。本論文はおもに、中国南西部の後期新石器時代遺跡の人類のゲノムデータを報告した研究(Tao et al., 2023)の解説で、考古学と言語学の研究成果も取り上げています。本論文の著者は、…
梅毒の起源に関する研究(Majander et al., 2024)が公表されました。性病性梅毒やベジェルとして知られる非性病性梅毒など、さまざまな種類のトレポネーマ病の起源は長い間不明で、とくに、ヨーロッパで15世紀後半に最初の梅毒の感染症が突然始まったことから、コロンブスの遠征に伴ってアメリカ大陸から到来した、という仮説が提示され…
河西回廊の人口史に関する研究(Xiong et al., 2024)が公表されました。本論文は、河西回廊の漢代から魏晋南北朝時代を経て唐代までの人類30個体のゲノムデータを報告するとともに、既知の古代人および現代人のゲノムデータと統合し、先史時代から現代にかけての河西回廊の人口史を推測しています。河西回廊の人類集団においては、新石器時…
現代人も含まれるヒト上科(他にはチンパンジーやゴリラやオランウータンやテナガザルなど)の尾の喪失の遺伝的基盤に関する研究(Xia et al., 2024)が公表されました。ヒト上科はボンネットマカク(Macaca radiata)など他の霊長類種と異なり尾を有しておらず、進化の過程で尾が失われた、と考えられています。尾の喪失は現生ヒ…
フランス大西洋地域の最後の狩猟採集民のゲノムデータを報告した研究(Simões et al., 2024)が公表されました。本論文は、フランス大西洋地域のブルターニュのテヴィエック(Téviec)遺跡およびオエディック(Hoedic)遺跡と、フランス北東部のシャンピニー(Champigny)のモン・サン=ピエール(Mont Saint…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、ユーラシア中央部青銅器時代人類集団の社会構造に関する研究(Blöcher et al., 2023)が公表されました。これまで、先史時代の社会における家族組織の生物学的側面に関する知識は限られていました。とくに、村落もしくは家族水準でのユーラシアにおける青銅器時代社会の構造についてはほとんど知られて…
喫煙が免疫応答に及ぼす持続的影響に関する研究(Saint-André et al., 2024)が公表されました。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染後に観察された臨床転帰の多様性からも分かるように、免疫応答(細菌感染、ウイルス感染など)は個人ごとに大きく異なり、その固有の変動性では年齢や性や遺伝的要因が大…
ヒト脳の成熟が遅い理由に関する研究(Ciceri et al., 2024)が公表されました。ヒト脳の発達速度は、他のほとんどの種と比較してひじょうに遅い、と分かっています。大脳皮質ニューロンの成熟はとくに遅く、成人の機能が発達するのには数ヶ月から数年を要します。時間的調節がこのように長期にわたるのは、ヒト多能性幹細胞(human p…
アムール川流域の後期更新世の石器群を報告した研究(Yue et al., 2024)が公表されました。本論文は、中華人民共和国黒竜江省双鴨山(Shuangyashan)市饒河(Raohe)県の小南山(Xiaonanshan)遺跡の16500~13500年前頃となる石器群を、新石器化との関連で検証しています。アムール川流域には、1400…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ダウニア人(Daunian)の起源に関する研究(Aneli et al., 2022)が公表されました。本論文は、イタリア南部の鉄器時代のダウニア人の遺伝的起源を、古代ゲノムデータから検証しています。ダウニア人は、ローマが共和政から帝政にかけて版図を拡大し、「帝国」となっていく過程で、版図の…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、古代ゲノムデータに基づいて中期青銅器時代ヨーロッパ中央部東方の人類社会を推測した研究(Chyleński et al., 2023)が公表されました。本論文は、おもに現在のポーランドとウクライナを対象に、文化的変容の見られる中期青銅器時代の人類集団が、比較的高い割合の狩猟採集民と関連する遺伝的構成要…
総合的な古代DNAデータの報告(Mallick et al., 2024)が公表されました。2010年以降の古代DNA研究の進展は目覚ましく、世界中から多数の古代人のゲノム規模データデータが報告されてきました。これら多数の古代人のDNAデータは公開されていますが、研究の利便性のため、データ形式の統一やデータ品質の基準や関連情報(DNA…
アルタイ地域のネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の石器群と行動に関する研究(Kolobova et al., 2024)が公表されました。本論文は、アルタイ地域のネアンデルタール人の所産と考えられる石器群から、ネアンデルタール人の行動を推測しています。アルタイ地域のネアンデルタール人は、恐らくヨーロッパ東…
アマゾン川上流域の初期の都市化に関する研究(Rostain et al., 2024)が公表されました。日本語の解説記事もあります。アマゾンの密林は、人為的影響がさほどなければ、徒歩でも走査技術でも入り込むのは困難です。しかし、過去数年間で、改良されたLIDAR(light detection and ranging、光検出及び測距)…