"読書"の記事一覧

高杉洋平『昭和陸軍と政治 「統帥権」というジレンマ』

 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2020年11月に刊行されました。本書は、現代日本社会ではきわめて評判の悪い昭和期陸軍を、「統帥権独立」という観点から見直します。昭和陸軍は横暴で、政治に介入して国策を誤り、ついには敗戦に至り国家を破局に陥らせた、というのが現代日本社会における一般的な印象でしょうか。さらに、もう少し詳し…
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上横手雅敬『日本史の快楽 中世に遊び現代を眺める』

 角川ソフィア文庫の一冊として、KADOKAWAから2002年5月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は雑誌の連載をまとめた、中世史を中心とした歴史随筆集ですが、著者は日本中世史の碩学だけに、教えられるところが多々ありました。これまで知らなかったこととして、著者は1953年頃に研究者として歩み始めますが、当時は社会主義に共感する…
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石原比伊呂『北朝の天皇 「室町幕府に翻弄された皇統」の実像』

 中公新書の一冊として、中央公論新社から2020年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書が指摘するように、おそらく北朝の一般的な人気は南朝よりも低く、そもそも北朝への関心が低い、と言うべきかもしれません。北朝は足利将軍家(室町幕府)の言いなりで、南朝と比較して魅力というか個性に欠ける、との一般的な印象が強いようにも思います。本…
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関根淳『六国史以前 日本書紀への道のり』

 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2020年6月に刊行されました。本書はまず、古代には『日本書紀』と『古事記』以外にも少なからぬ史書があるのに、膨大な研究蓄積のある『日本書紀』と『古事記』の影響が現代ではあまりにも大きくなっているので相対化する必要がある、と指摘します。『日本書紀』は古代から、『古事記』は江戸時代以来の膨…
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澤田典子『よみがえる天才4 アレクサンドロス大王 』

 ちくまプリマー新書の一冊として、筑摩書房より2020年11月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はアレクサンドロス大王(アレクサンドロス3世)の評伝ですが、アレクサンドロス個人の事績だけではなく、アレクサンドロスの征服活動の基盤となったマケドニア史、さらにはアレクサンドロスが後世どのように語られたのか、ということまで、アレクサ…
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本村凌二『独裁の世界史』

 NHK出版新書の一冊として、NHK出版から2020年11月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、独裁政と共和政と民主政という政治形態に着目し、「政治の失敗」をいかに克服すべきか、歴史的観点から見ていきます。本書が取り上げるのは、古代ギリシア、共和政ローマ、絶対王政からの脱却を図った18世紀以降のヨーロッパで出現した独裁者たち…
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柴裕之『織田信長 戦国時代の「正義」を貫く』

 シリーズ「中世から近世へ」の一冊として、平凡社より2020年12月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、旧弊・旧勢力を破壊し、新たな時代を築いた革新者という通俗的な印象が抱かれている信長を、「同時代人」として把握します。信長はあくまでも当時の社会秩序下で生きた人物だ、というわけです。本書は織田が尾張においてどのような立場にあ…
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加藤聖文『国民国家と戦争 挫折の日本近代史』

 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2017年11月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は近代日本において国民国家がいかに形成されたのか、戦争はそれとどう関わったのか、論じます。まず本書は、**人(民族集団)と**国民とを区別し、同じ民族だから同じ国家に属しているとも、同じ国民だから同じ民族であるとも限らない、と指摘します。…
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Joseph Henrich『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化−遺伝子革命〉』第2刷

 ジョセフ・ヘンリック(Joseph Henrich)著、今西康子訳で、白揚社より2019年9月に刊行されました。第1刷の刊行は2019年7月です。原書の刊行は2016年です。本書はまず、現代人がいかに文化に依存しているのか指摘したうえで、人類の進化における文化の役割の大きさを強調します。人類の「成功」の要因は個体の認知能力ではなく、共…
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平井上総『列島の戦国史8 織田政権の登場と戦国社会』

 吉川弘文館より2020年10月に刊行されました。『列島の戦国史』は全9巻で、すべて読まねばならないところですが、戦国時代の優先順位は以前ほど高くないので、まずは最も関心の高い話題を扱っているだろう本書を読むことにしました。昨年(2020年)半ば頃に電子書籍に移行したので、漫画作品の『卑弥呼』と『創世のタイガ』の単行本を除いて紙の書籍を…
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安藤優一郎『渋沢栄一と勝海舟 幕末・明治がわかる!慶喜をめぐる二人の暗闘』

 朝日新書の一冊として、朝日新聞社より2020年8月に刊行されました。本書は、徳川慶喜をめぐる渋沢栄一と勝海舟との関係から、幕末史と明治史を見直します。慶喜に対する渋沢と勝の姿勢は正反対でした。豪農の長男として生まれた渋沢は、慶喜家臣の平岡円四郎と面識があり、無謀な倒幕計画への追及から逃れる目的もあり、平岡の勧めで一橋家に仕えます。渋沢…
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白峰旬編『関ヶ原大乱、本当の勝者』

 日本史史料研究会監修で、朝日新書の一冊として、朝日新聞社より2020年6月に刊行されました。電子書籍での購入です。関ヶ原の戦いについても20年近く勉強を怠っているので、近年の知見を得るために読むことにしました。 序章●白峰旬「「関ヶ原の戦い」の従来イメージ打破に向けて」  関ヶ原の戦いに関するじゅうらいの通俗的印象…
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原口泉『明治維新はなぜ薩摩からはじまったのか』

 パンダ・パブリッシングより2015年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、薩摩藩が幕末に大きな影響力を有するに至ったことに関して、18世紀にまでさかのぼって検証しています。本書は、薩摩藩が組織として動いたからこそ幕末に大きな影響力を有した、という視点から、家老、とくにそのうちの二人に注目しています。一人は幕府の命により行…
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斎藤成也編著『最新DNA研究が解き明かす。 日本人の誕生』

 秀和システムより2020年8月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はDNA研究による日本人起源論を扱っています。表題には「最新」とありますが、進展の速い分野なので、脱稿後にも関連研究が次々と公表されていくわけで、その意味では、「最新」と謳っているのにあの研究が取り上げられていない、といった否定的感想もありそうです。しかし、この…
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坂野潤治『明治憲法史』

 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2020年9月に刊行されました。電子書籍での購入です。著者は先月(2020年10月)14日に亡くなり、本書が遺著となるのでしょうか。ご冥福をお祈りいたします。本書は、大日本帝国憲法(明治憲法)の構造と機能を分析します。明治憲法が施行されてから昭和戦前期までの政治史を憲法史として再構成します。まず本書…
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光成準治『本能寺前夜 西国をめぐる攻防』

 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2020年2月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、地域としては畿内よりも西、とくに毛利を、年代は織田信長の上洛から本能寺の変までを主要な対象として、織田権力と西国の大名・領主層との関係に着目し、本能寺の変を検証しています。本書から窺えるのは、戦国時代の領主層の自立性と、それがとくに境目…
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川田稔『木戸幸一 内大臣の太平洋戦争』

 文春新書の一冊として、文藝春秋社より2020年2月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、表題にあるように、おもに太平洋戦争期とそこへ至るまでの木戸幸一を満洲事変の頃から取り上げており、前半生は簡潔に言及されています。木戸は戦前・戦中期の昭和天皇の側近の代表格的人物で、昭和天皇の補佐を誤ったとして、一般的にはきわめて評判が悪い…
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廣部泉『黄禍論 百年の系譜』

 講談社選書メチエの一冊として、2020年9月に刊行されました。電子書籍での購入です。近年、中華人民共和国の経済力・軍事力の拡大により、アメリカ合衆国で黄禍論が再燃しつつあるかのように思えたところ、今年(2020年)になって、新型コロナウイルスの流行により、アメリカ合衆国だけではなくヨーロッパでも黄禍論が復活するのではないか、とさえ私は…
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岡本隆司『腐敗と格差の中国史』

 NHK出版新書の一冊として、NHK出版から2019年4月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、現在、中華人民共和国の習近平政権で進められている「反腐敗」運動の歴史的起源を探ります。なぜ中国では最高権力者今が大々的に腐敗撲滅に力を入れているのか、単に共産党の一党独裁体制による腐敗、つまり権力、それも独裁的な権力は必ず腐敗する、…
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岡本隆司『近代日本の中国観 石橋湛山・内藤湖南から谷川道雄まで』

 講談社選書メチエの一冊として、2018年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、近代日本の中国観を、おもに知識人の言説に依拠して検証します。もちろん本書は、知識人の言説だけを取り上げるのではなく、それらが形成されて支持された背景、あるいは受け入れられなかった理由を検証します。具体的に取り上げられる知識人は、石橋湛山・矢野仁…
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伊藤之雄『真実の原敬 維新を超えた宰相』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2020年8月に刊行されました。電子書籍での購入です。著者の講談社選書メチエ『原敬 外交と政治の理想』をいつか読もうと思っていたのですが、分厚いので尻込みしていたところ、本書の刊行を知り、講談社選書メチエよりは気軽に読めるかな、と考えて購入しました。本書も原敬についての堅実な評伝になっていますが、…
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青木健『ペルシア帝国』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2020年8月に刊行されました。電子書籍での購入です。まず、「ペルシア」の語源はシュメール語で「名馬の産地」を意味する「パラフシェ」で、紀元前三千年紀にアッシリア語の「パルスアシュ」となり、イラン高原西北部を指す言葉として定着しました。後の「ペルシア」であるイラン高原西南部は、紀元前三千年紀後半以…
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森恒二『創世のタイガ』第7巻(講談社)

 本書は2020年9月に刊行されました。第7巻は、タイガたちのいる現生人類(Homo sapiens)の集落がネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)に襲撃され、リカとユカなど拉致された女性たちをタイガたちが奪回に行く場面から始まります。タイガにより飼われている狼のウルフが敵であるネアンデルタール人の気配を察知し…
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岩井秀一郎『永田鉄山と昭和陸軍』

 祥伝社新書の一冊として、祥伝社より2019年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。最近5年くらい、以前よりも日本近現代史関連の本を多く読むようになりましたが、それらの本で永田鉄山に言及されることが多かったので、一度評伝的な本を読もう、と考えた次第です。本書で初めて知りましたが(以前他の本で読んで忘れてしまっただけかもしれませんが…
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守屋純『独ソ開戦の真実 『ジューコフ回顧録』完全版が明かす』

 パンダ・パブリッシングより2017年8月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、1939年8月23日に締結された独ソ不可侵条約から、1941年6月22日に始まった独ソ戦までのスターリンの思考・決断を、『ジューコフ回顧録』をしばしば引用しつつ検証します。独ソ不可侵条約のドイツ側というかヒトラーの意図は、ポーランドへの侵攻にさいし…
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一ノ瀬俊也『東條英機 「独裁者」を演じた男』

 文春新書の一冊として、文藝春秋社より2020年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。東条英機については基本的な知識が欠けているので、首相就任前の軍人としての東条英機も詳しく取り上げている本書は、私にとって大いに有益な一冊となりました。東条英機が、その父である軍人の英教から強い反長州閥意識を受け継いだことは知っていましたが、英教の…
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岡本隆司『シリーズ中国の歴史5 「中国」の形成 現代への展望』

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2020年7月に刊行されました。本書はいわゆる明清交代から現代までを扱っています。本書は、17世紀の混乱期に対して、アジア東部ではダイチン・グルン(大清国)が広範な地域の安定化をもたらした一方で、ヨーロッパでは諸勢力の競合がもたらされ、これが近代における東西の違いにつながった、との見通しを提示…
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天野忠幸『松永久秀と下剋上 室町の身分秩序を覆す』

 シリーズ「中世から近世へ」の一冊として、平凡社より2018年6月に刊行されました。電子書籍での購入です。随分前に読んだ本か記事では、松永久秀は出自不明とされていたように記憶しています。本書では、久秀の出自は摂津国の五百住の土豪だった可能性が高い、とされています。久秀は当時としてはそれなりの身分の生まれだったようですが、父の名前も伝わっ…
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川戸貴史『戦国大名の経済学』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2020年6月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、大名領国の収入と支出の分析から、戦国時代の日本経済の構造、さらにはアジア東部および南東部とのつながりまでを対象としており、戦国大名の領国経営という一見すると細かい主題ながら、広い視野を提示しているように思います。こうした一般向け書籍では…
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大津透『律令国家と隋唐文明』第2刷

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2020年4月に刊行されました。第1刷の刊行は2020年2月です。本書は、律令の導入を中心に、古代日本が隋と唐から文化・制度をどのように受容していったのか、概説します。碩学の著者らしく、その射程は律令に留まらず仏教や儒教にも及んで、広くまた深く掘り下げられており、新書とはいえ、たいへん密度が高…
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檀上寛『シリーズ中国の歴史4 陸海の交錯 明朝の興亡』

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2020年5月に刊行されました。一般向けの中国通史で、10巻以上の構成ならばともかく、本シリーズは5巻構成にも関わらず明に1巻を割いており、かなり大胆だと思います。本書は、明初の体制が、大元ウルス治下の14世紀前半における、気候変動に伴う大きな社会的不安定化への対処によりもたらされた統治の厳格…
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森祇晶『責任者の條件 勝利への九つの設計図』

 青春文庫の一冊として、青春出版社から1999年3月に刊行されました。本書は、同じ題名で青春出版社から1997年4月に刊行された単行本の文庫化です。本書の刊行時期は、著者が西武の監督を退いて横浜の監督に就任する前で、著者は一般的には名将として高く評価されていたように思います。もっとも、本書刊行の前年に、著者が巨人監督に就任するという話が…
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野村克也『野球は頭でするもんだ!』

 朝日文庫の一冊として、朝日新聞社から1985年9月に刊行されました。本書は、同じ著者でともに朝日新聞社から刊行された、『プロ野球の男たち』(1982年)と『プロ野球・野村克也の目』(1983年)の中から、著者の考える野球とは何か、そのエッセンスを抜き出し、加筆・再構成して刊行されました。本書を古書店で購入したのは随分と前のことで、まだ…
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小林道彦『近代日本と軍部 1968~1945』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2020年2月に刊行されました。本書は近代(1868~1945年)日本陸軍の通史です。陸軍に焦点を当てているとはいえ、日本近代の通史を一人で執筆することには多大な労力が必要だったでしょう。膨大な研究蓄積があるだけに、一人での通史執筆となると、本書の個々の見解への異論は少なくないかもしれませんが、日…
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大隅洋『日本人のためのイスラエル入門』

 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2020年3月に刊行されました。本書は現代イスラエルの多面的側面を一般層向けに分かりやすく解説しています。日本に限らないでしょうが、イスラエルへの印象は政治的信条に基づくものになりがちで、イスラエルに対してひじょうに悪い印象を抱いている人は少なくないかもしれません。それは、反ユダヤ主義的側面もあるで…
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中村計『佐賀北の夏 甲子園史上最大の逆転劇』

 新潮文庫の一冊として、新潮社から2011年8月に刊行されました。本書の親本は、同じ題名でヴィレッジブックス社から2008年7月に刊行されました。先月(2020年5月3日)、NHKのBS1で2007年に開催された第89回全国高校野球選手権大会決勝戦(佐賀北対広陵)が再放送されたので、以前古書店で購入したままになっていた本書を思い出し、読…
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保阪正康『幻の終戦 もしミッドウェー海戦で戦争をやめていたら』

 中公文庫の一冊として、中央公論新社から2001年7月に刊行されました。本書の親本は、同じ題名で柏書房から1997年6月に刊行されました。本書は、ミッドウェー海戦後に太平洋戦争が終結していた可能性を探る、思考実験的な歴史書と言えるでしょうが、小説的な性格も多分にあるように思います。本書はまず第一部にて、ミッドウェー海戦へと至る経緯を、軍…
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鈴木眞哉『戦国時代の計略大全』

 PHP新書の一冊として、2011年6月にPHP研究所より刊行されました。奇襲・水攻め・火攻め・伏兵・内応などといった、合戦における奇策・計略の事例を紹介しています。軍記物や講談が出典の話も多いので、単に紹介するだけではなく、創作の可能性が高いなどといった評価もなされています。戦国時代の事例が中心なのですが、南北朝時代や平安時代末期など…
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古松崇志『シリーズ中国の歴史3 草原の制覇 大モンゴルまで』

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2020年3月に刊行されました。本書はおもに、紀元後4~14世紀のユーラシア内陸部東方を対象としています。比較的乾燥した「中央ユーラシア」は、文字記録の多く残るアジア東部および南西部やヨーロッパよりも軽視されてきたところがありますが、前近代、とくに海域交流が比重を増してくる16世紀以前において…
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池上英洋『血みどろの西洋史 狂気の1000年』

 光文社新書の一冊として、光文社より2007年11月に刊行されました。本書はまず、ヨーロッパには『ヨーロッパの歴史』という共通教科書があり、ヨーロッパの相互の利害関係を排除した中立的視点で歴史を把握しようとしているものの、ヨーロッパをあまりにも美化していることが決定的欠陥である、と指摘します。このヨーロッパ共通教科書は、日本語版で400…
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丸橋充拓『シリーズ中国の歴史2 江南の発展 南宋まで』第2刷

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2020年2月に刊行されました。第1刷の刊行は2020年1月です。本書はおもに江南を対象に、新石器時代から南宋の滅亡までを取り上げています。江南は華北で形成されていった「中華世界」の視点からは、当初外縁的な位置づけでした。それが、前漢後期から後漢前半にかけて成立していった「古典国制」に江南も次…
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小山俊樹『五・一五事件 海軍青年将校たちの「昭和維新」 』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2020年4月に刊行されました。本書は五・一五事件の具体的な経過とともに、その背景について対象を広くとって考察しています。また、五・一五事件後の首謀者、とくに三上卓の動向が詳しく取り上げられているのも本書の特徴です。そもそも、五・一五事件の具体的な経過を詳しく読んだことがなかったので、本書の簡潔な…
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桐野作人『明智光秀と斎藤利三』

 宝島社新書の一冊として、宝島社から2020年3月に刊行されました。表題にあるように、本書は本能寺の変における斎藤利三の役割を重視しています。まず不明な点の多い明智光秀の前半生ですが、やはり確実な史料はないようで、本書も後世の編纂史料などから推測するに留まっています。本書から窺えるのは、光秀は美濃土岐氏もしくは土岐明智氏のなかなか有力な…
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加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』第10刷

 朝日出版社より2009年11月に刊行されました。第1刷の刊行は2009年7月です。本書は中学生と高校生を対象とした著者の5日間の講義の書籍化です。対象となるのは日清戦争から太平洋戦争までですが、日清戦争の前史としての日清関係も詳しく取り上げられており、「戦争を選択した」という観点からの大日本帝国史とも言えそうです。本書の特色は、同時代…
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渡辺信一郎『シリーズ中国の歴史1 中華の成立 唐代まで』第2刷

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2019年11月に刊行されました。第1刷の刊行は2019年11月です。『シリーズ中国の歴史』の特色は、単純な時代区分による通史になっていないことです。本書は新石器時代から安史の乱までを扱っていますが、主要な対象は中原で、江南への言及は少なくなっています。江南は第2巻で扱われるそうですが、こちら…
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Emmanuel Todd『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』第2刷

 エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)著、堀茂樹訳で、文春新書の一冊として、文藝春秋社から2015年6月に刊行されました。第1刷の刊行は2015年5月です。本書は著者への複数のインタビューで構成されており、本書自体すでに5年近く前の刊行と古いのに、インタビューは2011年11月から2014年8月までのものですから、今になっ…
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福留真紀『将軍と側近 室鳩巣の手紙を読む』

 新潮新書の一冊として、新潮社から2014年12月に刊行されました。本書は、室鳩巣の視線を通して、江戸時代中期、6代将軍家宣~8代将軍吉宗の時代までの幕府政治史を検証しています。本書は、将軍個人に仕え、将軍の交代とともに失脚することもある側近と、幕府官僚として将軍が交代しても政権中枢にい続ける老中とを対比させ、この期間の幕府政治史を描い…
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関幸彦『戦争の日本史5 東北の騒乱と奥州合戦』

 吉川弘文館より2006年11月に刊行されました。本書は、前九年合戦・後三年合戦・奥州合戦(源頼朝が奥州藤原氏を攻め滅ぼした戦い)を扱っています。一般書ながら、研究史の把握・整理が多いのが特徴となっています。本書は、東北地方と河内源氏という共通点を有するこれら三合戦から、中世的世界の成立の経緯・背景・その意味、頼朝の御家人たちの間で共有…
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千葉聡『進化のからくり 現代のダーウィンたちの物語』

 講談社ブルーバックスの一冊として、講談社から2020年2月に刊行されました。本書は一般向けを意識してか、進化の実態や仕組みといった学術的な解説だけではなく、進化学に関わった研究者たちの人間模様話も取り上げており、単に進化学の解説書というだけではなく、読み物としても優れていると思います。たとえば、ガラパゴス諸島が進化論発祥の聖地というよ…
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益尾知佐子『中国の行動原理 国内潮流が決める国際関係』

 中公新書の一冊として、中央公論新社から2019年11月に刊行されました。本書は、中国の対外行動(国際関係)が、国内の政治潮流、さらに根本的には中国の社会構造に規定される、と論じます。その社会構造とは外婚制共同体家族で、家父長が家族に対して強い権威を有します。息子たちは家父長に服従し、家父長の地位を継承すべく兄弟たちと激しく競争します。…
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