"読書"の記事一覧

小峰和夫『満洲 マンチュリアの起源・植民・覇権』

 講談社学術文庫の一冊として、2011年2月に講談社より刊行されました。本書の親本『満洲 起源・植民・覇権』は1991年に御茶の水書房より刊行されました。電子書籍での購入です。本書はまず、満洲の定義が困難であることを指摘します。満洲はダイチン・グルン(大清帝国)において発祥地と考えられており、つまりは後にマンジュ(満洲)と呼ばれるジュシ…
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森正人『「親米」日本の誕生』

 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2018年1月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、第二次世界大戦で敗れた後の日本における対米観とその意味を、おもに生活史と文化史の観点から検証します。戦後日本は、米国への憧憬と現実のアメリカ合衆国の言動への嫌悪および反発を同居させながら、「アメリカ的価値観」を内面化し、アメリカに追いつ…
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太田博樹『古代ゲノムから見たサピエンス史』

 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2023年1月に刊行されました。本当は電子書籍で購入したかったのですが、歴史文化ライブラリーは紙版と比較して電子書籍化が遅いようなので、我慢できずに紙版を購入しました。本書は近年著しい古代ゲノム研究の進展について、研究史を整理し、方法論について簡潔に解説しつつ、概観しています。近年刊行さ…
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更科功『禁断の進化史 人類は本当に「賢い」のか』

 NHK出版新書の一冊として、NHK出版から2022年12月に刊行されました。電子書籍での購入です。まず本書は、通俗的というか陥りやすい誤った進化観の見直しを提起します。たとえば、現代人と最近縁の現生分類群はチンパンジー属ですが、現代人とチンパンジー属の最終共通祖先は現生人類チンパンジー属のような形態と行動だった、というような認識で、進…
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『歴史読本』編集部『ここまで分かった! 「古代」謎の4世紀』

 本書は2014年7月に刊行された新人物文庫の電子書籍化で、『歴史読本』2013年12月号の特集「ここまで分かった! 謎の4世紀」の加筆・修正による再編集です。今となってはやや古いと言えるかもしれませんが、古墳も含めて4世紀の日本列島について広範に取り上げられていますし、「謎の4世紀」という表現は10代の頃には馴染み深く懐かしさがあり、…
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吉川忠夫『侯景の乱始末記 南朝貴族社会の命運』

 志学社選書の一冊として、志学社から2019年12月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書の親本『侯景の乱始末記 南朝貴族社会の命運』は、中公新書の一冊として中央公論社より1974年4月に刊行されました。本書は、この親本に「史家范曄の謀反」が補篇として加えられています。本書は、侯景の乱の経緯と、その背景となる南朝貴族社会を叙述する…
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前川一郎、倉橋耕平、呉座勇一、辻田真佐憲『教養としての歴史問題』

 東洋経済新報社より2020年11月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、歴史修正主義が現代日本社会で少なくとも一定以上浸透しており、歴史修正主義の「主戦場」は商業化された大衆文化・メディアの世界なのに、歴史学からの反応はともすれば専門誌・専門書という「内弁慶的な」ものに留まっていた、との認識に基づき、歴史学者としてどう向き合…
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蔀勇造 『物語 アラビアの歴史 知られざる3000年の興亡』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2018年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は都市成立以降のアラビア半島史で、いわゆる無明時代(ジャーヒリーヤ、狭義にはイスラム教の前の約150年間)、つまりイスラム教よりも前のアラビア半島史をとくに知りたくて読んだわけですが、8章のうち4章もジャーヒリーヤに割いているのは意外でした…
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坂野潤治『西郷隆盛と明治維新』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2013年5月に刊行されました。電子書籍での購入です。ネットでは著者は西郷隆盛贔屓だと言われており、かなり癖がある内容なのかな、とも思いましたが、私の西郷隆盛への印象はかなり悪いので、西郷贔屓かもしれないとはいえ、著者が碩学であることは間違いないので、本書で西郷への印象を相対化できるかな、と考えて…
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Emmanuel Todd『我々はどこから来て、今どこにいるのか』上・下

 エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)著、堀茂樹訳で、早川書房から2022年10月に刊行されました。上巻の副題は「アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか」、下巻の副題は「民主主義の野蛮な起源」です。原書の刊行は2017年です。電子書籍での購入です。著者の見解については断片的な情報を得ていましたが、本格的に読んだことはないので…
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Jeremy DeSilva『直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足』

 ジェレミー・デシルヴァ(Jeremy DeSilva)著、赤根洋子訳で、文藝春秋社より2022年8月に刊行されました。原書の刊行は2021年です。電子書籍での購入です。本書はまず、人類系統で二足歩行が選択された理由を検証します。二足歩行は現生分類群では鳥類でも見られるので(本書は爬虫類と爬虫類に含まれる鳥類の二足歩行も取り上げ、人類の…
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岡本隆司『曾国藩 「英雄」と中国史』

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2022年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は曾国藩を矛盾した人物と把握します。同時代において名声を集めた一方で、悪評も高く、実績と実像に比して声威と評判のみ高い、というわけです。曾国藩は湖南省で1811年に生まれました。それ以前の18世紀は、ユーラシア西方が戦争と革命の時代だっ…
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松木武彦『はじめての考古学』

 ちくまプリマー新書の一冊として、筑摩書房より2020年11月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書のヒトの定義は、チンパンジー属系統と分岐して、常習的な直立二足歩行をするようになってからで、700万年前頃とされます。本書では、考古学の対象は「ヒト」の時代の物質資料(物的証拠)で、日本ではおもに第二次世界大戦前後までとされています…
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黒田基樹『家康の正妻 築山殿』

 平凡社新書の一冊として、平凡社より2022年9月に刊行されました。電子書籍での購入です。来年(2023年)の大河ドラマでは徳川家康(松平元康)が主人公で、家康の妻の築山殿(演じるのは有村架純氏)についてはほぼ小説や大河ドラマで得た知識しかなかったので、基本的な情報から得る目的で読みました。築山殿に関する同時代史料は1点だけとのことで、…
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坂野徹『縄文人と弥生人 「日本人の起源」論争』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2022年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は「縄文人」と「弥生人」に関する、進展著しい古代DNA研究も含めて人類学と考古学最新の研究の解説ではなく、おもに1990年代までの「日本人起源論」が、同時代の思潮からどのように影響を受けて提示されたのか、検証した学説史です。本書は、これまで…
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Rebecca Wragg Sykes『ネアンデルタール』

 レベッカ・ウラグ・サイクス(Rebecca Wragg Sykes)著、野中香方子訳で、筑摩書房より2022年10月に刊行されました。原書の刊行は2020年です。本書は原書刊行時に話題になり、原書は日本語版より安いと予想されたので(原書のKindle版は2022年10月時点で1834円、本書は3960円)原書で読むことも考えましたが、…
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岡本隆司『悪党たちの中華帝国』

 新潮選書の一冊として、新潮社から2022年8月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、「悪党」に焦点を当てた中国史です。本書の「悪党」は、悪名高い人物という一般的な意味合いですが、悪評が定着しているような人物でも実は「悪党」ではないとか、悪評がなくとも本当「悪党」だったとか、客観的実像を検証しつつ、悪評の背景も探られています。…
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横山宏章『孫文と陳独秀 現代中国への二つの道』

 平凡社新書の一冊として平凡社より2017年2月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、中国近代史における対照的な二人の人物として、孫文と陳独秀を取り上げ、近代中国の歴史的背景と課題を浮き彫りにします。民族主義と民権主義を主張しながら、愚かな大衆は賢者に導かれるべき存在と考え、国家体制の革命を強調し、現在の用語では「開発独裁」的…
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森恒二『創世のタイガ』第10巻(講談社)

 本書は2022年9月に刊行されました。第10巻は、主人公たち現生人類(Homo sapiens)側とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)側(とはいっても、その指導者は第二次世界大戦の戦場(ドイツとフランスの国境付近)から来たドイツ人ですが)との戦いを中心に描かれました。これまで、現生人類側は盾を持っておりネ…
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井上文則『シルクロードとローマ帝国の興亡』

 文春新書の一冊として、文藝春秋社より2021年8月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、ローマ帝国の興亡はユーラシア大陸規模の出来事と関連しており、それはユーラシアの東西を結んだシルクロード交易盛衰だった、との壮大な想定に基づいており、広範な地域を対象とするだけに各地域および事象について専門家の異議はあるでしょうが、歴史学が…
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井上文則『評伝 宮崎市定 天を相手にする』

 2018年7月に国書刊行会より刊行されました。著者は以前の著書『軍人皇帝のローマ 変貌する元老院と帝国の衰亡』にて、ローマ帝国の変容・衰退を時代の近い漢王朝やもっと広く中華地域の変容と比較し、ローマ帝国の変容・衰退の性格を論じており(関連記事)、宮崎市定氏への傾倒が窺えましたが、東洋史専攻ではないのに宮崎氏の評伝を執筆したのには驚きま…
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高橋のぼる『劉邦』第14集(小学館)

 電子書籍での購入です。第14集は、広武山で劉邦率いる漢軍と項羽率いる楚軍が対峙するなか、項羽が劉邦を弩で射抜いた場面から始まります。劉邦は瀕死状態に陥りますが、何とか回復します。しかし、漢軍兵士の動揺は激しく、案じた蕭何は、兵士の前で無事であると振舞うよう進言し、劉邦は盧綰の助けを借りて何事もなかったかのように兵士の前で振舞います。兵…
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坂野潤治『近代日本の構造 同盟と格差』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2018年5月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は近代日本の基本的な対立を、「日英同盟」と「日中親善」、「民力休養(地租軽減)」と「格差是正」の二つの観点から検討します。本書のこの問題設定は、2010年代の日本の政治経済と外交を強く意識しています。つまり、2012年12月に成立した第二次…
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手嶋泰伸『日本海軍と政治』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2015年1月に刊行されました。電子書籍での購入です。大日本帝国、とくに戦前戦中昭和期の軍部については、頑迷固陋な陸軍と開明的な海軍との通俗的印象はまだ根強いかもしれず、それは陸軍を悪玉、海軍を善玉とするような認識につながりやすい、と言えるでしょう。大日本帝国では、海軍は陸軍よりも政治に関わろうと…
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本郷和人『歴史学者という病』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2022年8月に刊行されました。電子書籍での購入です。著者の提示する歴史像にはどうも納得できないことが多いものの、読みやすく教えられるところが多いので、これまでにも何冊か読んできました。本書は、日本中世史の研究者である著者が歴史学の現状を憂いて執筆した内容と予想されたので、歴史学を専攻したわけでは…
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前田啓介『昭和の参謀』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2022年6月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書でおもに取り上げられている参謀は、石原莞爾と服部卓四郎と辻政信と瀬島龍三と池田純久と堀栄三と八原博通です。本書は昭和期の陸軍参謀について、戦前と戦中だけではなく戦後の生き様も取り上げているのが特徴で、それにより大日本帝国陸軍参謀の性格を浮き…
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黒田基樹『国衆 戦国時代のもう一つの主役』

 平凡社新書の一冊として、平凡社より2022年4月に刊行されました。電子書籍での購入です。国衆を扱った一般向け書籍では、平山優『戦国大名と国衆』をすでに読みましたが(関連記事)、同書は甲信の戦国大名武田家を対象としているのに対して、本書は北条家と上杉家に西日本の大名も対象としているので、読むことにしました。本書は国衆を、戦国時代になって…
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『昭和の戦争、令和の視点』

 中央公論新社より2021年8月に刊行されました。本書は『中央公論』2021年9月号の特集の電子書籍化です。構成は、戸部良一氏と小山俊樹氏との対談(歴史研究から戦争を問い続ける意味)、加藤聖文「満洲事変 国民と軍部を結びつけた起点」、岩谷將「盧溝橋事件 相互不信から生み出された泥沼への道」、庄司潤一郎「第二次上海事変 全面戦争への転換点…
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望月雅士『枢密院 近代日本の「奥の院」』

 講談社現代新書の一冊として、講談社より2022年6月に刊行されました。電子書籍での購入です。まず本書は、大日本帝国憲法と日本国憲法には共通点が少なくないものの、決定的な違いとして、後者では戦争放棄が加えられ、枢密顧問が削除されたことだ、と指摘します。枢密院は、内閣とともに天皇を補佐する最高機関と位置づけられ、「重要の国務」を審議する、…
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岩井秀一郎『服部卓四郎と昭和陸軍 大東亜戦争を敗北に至らしめたものは何か』

 PHP新書の一冊として、PHP研究所より2022年6月に刊行されました。電子書籍での購入です。服部卓四郎は太平洋戦争の大半の期間で参謀本部第一部第二課長を務めました。第一部第二課は作戦を担当する「花形」部署で、服部が太平洋戦争中に一度第二課長の任を解かれながら再度就任したことや、それ以前にノモンハン事件で関東軍首脳部が予備役に編入され…
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桐野作人『織田信長 戦国最強の軍事カリスマ』

 新人物文庫の一冊として、KADOKAWAから2014年12月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は織田信長を「軍事カリスマ」として把握します。信長が尾張を拠点としていた頃に、若い馬廻や小姓集団からの自発的な支持を基盤に、彼らからの人格的帰依と信長からの人格的支配が相互形成されて成立した濃密な主従関係に、信長の「軍事カリスマ」の…
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山田徹、谷口雄太、木下竜馬、川口成人『鎌倉幕府と室町幕府 最新研究でわかった実像』

 光文社新書の一冊として、光文社より2022年3月に刊行されました。電子書籍での購入です。 ●木下竜馬「第一章 部分的な存在としての鎌倉幕府」  まず、鎌倉幕府は全ての領域を支配下に置いたわけではなく、御家人ではない武士たちは天皇や貴族や大規模な寺社勢力に属しており、鎌倉時代の国家的秩序において鎌倉幕府は部分的な存在だったこ…
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上杉和彦『日本史リブレット人025 平清盛 「武家の世」を切り開いた政治家』

 山川出版社から2011年5月に刊行されました。電子書籍での購入です。2012年放送の大河ドラマ『平清盛』の関連本と言えるかもしれませんが、手ごろな価格ですし、手堅い内容だと期待して読みました。本書はまず、平清盛の印象が日本社会において長期にわたって悪く、その要因は『平家物語』にある、と指摘します。清盛は『平家物語』において、「異朝」の…
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遠山美都男『新版 大化改新 「乙巳の変」の謎を解く』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2022年5月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、同じく中公新書の一冊として1993年2月に刊行された『大化改新 六四五年六月の宮廷革命』の改訂版で、この旧版は私も購入しており、本書の購入の検討にあたって久々に本棚から取り出しました。新版のはしがきに、旧版からの大きな変更点が取り上げら…
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平山優『戦国の忍び』

 角川新書の一冊として、KADOKAWAから2020年9月に刊行されました。電子書籍での購入です。日本社会において忍者は創作で重要な地位を占めており、それは近現代に限らず江戸時代に始まります。しかし、虚構としての忍者が浸透するにつれて、実在した「忍の者」の実像は霞んでいき、戦後歴史学では長きにわたって忍の者を解明しようとする動きはほぼ皆…
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高橋のぼる『劉邦』第13集(小学館)

 電子書籍での購入です。第13集では項羽軍に捕らわれた呂雉(呂后)の動向と、項羽軍に対抗すべく羌との提携を画策する劉邦の交渉が中心に描かれました。戚は紀信の子を宿し、劉邦はその子を自分の子として育てることにします。呂雉はそれを項羽軍の見張りの兵士から聞き、激しい憎悪を抱きます。一方韓信は、紀信から戚への好意を聞いていたため、この真相に気…
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Mark W. Moffett『人はなぜ憎しみあうのか  「群れ」の生物学』上・下

 マーク・W・モフェット(Mark W. Moffett)著、小野木明恵訳で、早川書房から2020年9月に刊行されました。原書の刊行は2019年です。電子書籍での購入です。本書は、ヒトの帰属意識形成の前提として、まず社会について取り上げます。社会的であること(他個体と積極的につながること)と、一つの種が何世代にもわたって存続する社会と呼…
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平山優『武田氏滅亡』

 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2017年2月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は武田氏滅亡の過程を、おもに武田勝頼の武田氏の家督継承の頃から取り上げますが、勝頼の誕生の背景と、諏方氏を継ぐべき人物として位置づけられていたことにも序章で言及しています。ただ、諏方家臣団の反発を考慮してか、勝頼の諏方氏当主としての実質的な…
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William von Hippel『われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の…

 ウィリアム・フォン・ヒッペル(William von Hippel)著、濱野大道訳で、ハーパーコリンズ・ノンフィクションより2019年10月に刊行されました。原書の刊行は2018年です。電子書籍での購入です。一部(ではないかもしれませんが)で評判がきわめて悪そうな進化心理学について、まとまった知見を得る目的で読みました。本書はまず、ヒ…
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客野宮治『蘇我氏の研究』

 文芸社より2015年4月に刊行されました。電子書籍での購入です。著者は日本古代史の専門家ではなく医師とのことで、その点は不安でしたが、読み放題だったので、読んでみました。本書の主題は今でも議論のある蘇我氏の出自の解明で、諱に着目しての検証は興味深いと思います。まず本書は、7世紀までの天皇(という称号は7世紀以降でしょうが、皇后などと共…
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本村凌二『剣闘士 血と汗のローマ社会史』

 中公文庫の一冊として、中央公論新社より2016年9月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はおもに帝政期の剣闘士競技に焦点を当てたローマ社会史です。本書の構成でまず驚かされるのが、冒頭で剣闘士ミヌキウスの手記を長く紹介していることです。架空の剣闘士(だと思います)ミヌキウスの手記を「訳す」という体裁は、根拠となる史料が後に明かさ…
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村井章介『古琉球 海洋アジアの輝ける王国』

 角川選書の一冊として、角川学芸出版より2019年3月に刊行されました。電子書籍での購入です。「古琉球」とは伊波普猷の造語で、1609年(以下、西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)に薩摩藩に征服される以前の琉球を指します。古琉球の時代には、琉球は日本の国家領域外にありました。本書は琉球語を採用して、前近代の「日本」を「ヤマト…
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筒井清忠編『大正史講義』

 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2021年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。 ●筒井清忠「はじめに」  まず、大正時代は大衆の登場が始まった時代で、大衆が現れたのは明治末期の日比谷焼打ち事件と指摘されています。この大衆運動において、地方新聞社もしくはその記者が関わり、状況を報じて運動の気勢を高めただけでは…
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山本紀夫『高地文明 「もう一つの四大文明」の発見』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2021年6月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、農耕開始からその発展の時代までを対象して、四つの熱帯高地「文明」、つまりメキシコとアンデスとヒマラヤ・チベットとエチオピアを取り上げます。本書はまず、「四大文明」という概念と、「文明」が大河のほとりで生まれた、という見解に疑問を呈します…
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小林敏男『邪馬台国再考 女王国・邪馬台国・ヤマト政権』

 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2021年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はまず、江戸時代にまでさかのぼって邪馬台国に関する学説史を簡潔に解説し、問題点を整理しており、この点は一般層の読者に親切な構成になっていると思います。本書のこの構成は、邪馬台国に関する重要な論点の多くはすでに第二次世界大戦前に提起されていた、…
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柿沼陽平『古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2021年11月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はおもに秦と漢の日常史を詳しく解説しますが、門外漢には、古代の漢文史料にも当時の庶民の具体的な日常生活を復元できる記述が少なからずあることは意外でした。本書は考古学の成果も踏まえて、当時の日常生活を詳しく復元しており、もちろん現代と当時で…
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芝健介『ヒトラー 虚像の独裁者』

 岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2021年9月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はヒトラーの伝記ですが、ヒトラーがどのように人々に受け止められていたのか、という問題も重視しており、ヒトラーの死後におけるヒトラー像の変遷や多様性にも1章が割かれています。少年時代のヒトラーは、多民族国家オーストリアにおける多民族共生・…
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篠田謙一『人類の起源 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』

 中公新書の一冊として、中央公論新社より2022年2月に刊行されました。本書は日本語で読める人類の古代DNA研究の最新の概説ですが、古代DNAの解析が事実上不可能な時代と地域については、第1章で化石証拠から簡略に解説しています。もちろん今後、著者も含めて多くの研究者により本書の内容は更新されていくでしょうが、古代DNA研究の最新の知見を…
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鷺森浩幸『藤原仲麻呂と道鏡 ゆらぐ奈良朝の政治体制』

 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2020年7月に刊行されました。電子書籍での購入です。藤原仲麻呂と道鏡は、ともに太政大臣(仲麻呂は大師、道鏡は太政大臣禅師)となりましたが、律令制当初には、死後の贈官としての太政大臣の事例と比較して、現役の太政大臣は回避される傾向にあったようです。それは、太政大臣の地位が、天皇から統治権…
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設楽博己『縄文vs.弥生 先史時代を九つの視点で比較する』

 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2022年1月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は縄文時代と弥生時代とを、生業や社会や精神文化の観点から比較し、単に両者の違いだけではなく、縄文時代から弥生時代へと継承されたものについても言及しています。時代区分は、縄文時代については、草創期15000年前頃以降、早期が11300年前頃以降…
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