哺乳類の温血性の進化に関する研究(Araújo et al., 2022)が公表されました。内温性は、多様な環境における哺乳類と鳥類の重要な特徴で、深部体温をほぼ一定に維持することによって多様な環境条件下での生息を可能にし、その生態的優位性を支えています。内温動物は、行動が活発で素早く、遠くまで移動できるのに対して、外温動物(冷血動物…
絶滅したステラーカイギュウ(Hydrodamalis gigas)のゲノムを報告した研究(Duc et al., 2022)が公表されました。更新世において、地球には広く多様な大型動物種がおり、マストドンやマンモスや巨大ラクダやクマや数種のネコ科が含まれます。これらの多くは後期更新世と前期完新世に突然消滅しました。したがって、これらの…
ペンギンの進化に関する研究(Cole et al., 2022)が報道されました。ペンギンは、6000万年以上前に出現し、海洋に高度に特化したボディープランを持つようになりました。また、ペンギンは極域に氷床が形成されるまでに飛行能力を失い、翼を使って海に飛び込めるようになっていました。先行研究では、ペンギンの現生種の多様化が明確に示さ…
ホッキョクグマの古代ゲノムデータを報告した研究(Wang et al., 2022)が公表されました。更新世を特徴づける氷期と間氷期との間の移行など気候変化は、種の範囲の縮小や断片化や拡大、種分化と適応の機会をもたらす可能性があります。集団ゲノムデータから明らかになっているのは、気候に起因する範囲変化によっても、完全な生殖隔離がまだ進…
過去10万年間の古代オオカミのゲノムからイヌの起源を推測した研究(Bergström et al., 2022)が公表されました。ハイイロオオカミ(Canis lupus)は家畜個体群を生じた最初の種で、他の多くの大型哺乳類種が絶滅した最終氷期を通して広く分布し、それを生き延びました。しかし、過去のオオカミ個体群の歴史およびそれらが絶…
ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)の食性と指の形態に関する研究(Wang et al., 2022)が公表されました。現生ジャイアントパンダは、手の5本の指に加えて親指のような構造を持つ大きな手首の骨を持っており、それを使ってタケやササを扱っています。先行研究では、こうした親指のような構造があったことを…
キリンの長い首の進化の一因に関する研究(Wang et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。地球で最も背の高い陸生動物であり、最も大きな反芻動物でもある現代のキリンの特徴的な長い首は、長い間、チャールズ・ダーウィン(Charles Robert Darwin)が初めて適応進化と自然淘汰という概念を提唱して…
レイビシロアリ科の進化に関する研究(Buček et al., 2022)が公表されました。日本語の関連記事もあります。シロアリはゴキブリの一種で、1億5千万年前頃に他のゴキブリ目から分化し、コロニーを形成して社会生活を営むように進化しました(関連記事)。現在、シロアリにはさまざまな種類が存在し、土の中でつながったトンネルの中で数百万…
暁新世において有胎盤類で脳より先に筋肉が増えたことを報告する研究(Bertrand et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。哺乳類は脊椎動物の中で体の大きさに占める脳の割合が最も大きいものの、その進化過程は詳細には解明されていません。この研究は、アメリカ合衆国のニューメキシコ州サン・ファン盆地とコロラド…
哺乳類における寿命に応じた体細胞変異率を報告した研究(Cagan et al., 2022)が公表されました。哺乳類は、一生の間ずっと変異を獲得します。この過程は癌を生じさせることが知られており、老化に寄与している、と提案されています。しかし、正常組織における体細胞変異率や体細胞変異のパターンは、ヒト以外ではほとんど知られていません。…
スピノサウルス科の水中採餌に関する研究(Fabbri et al., 2022)が報道されました。二次的な水生適応は、陸生脊椎動物祖先からの進化において独立して30回以上生じています。数十年来、非鳥類型恐竜はこのパターンの例外と考えられてきました。非鳥類型恐竜類で、部分的に水生あるいは主に水生であったと仮定されている種はごくわずかです…
初めて飼う犬の反復行動に関する研究(Sulkama et al., 2022)が公表されました。これまでの研究から、イヌの異常な反復行動は、犬と飼い主の関係を損ない、犬の幸福感を低下させる可能性がある、と明らかになっていますが、反復行動と関連する要因は分かっていません。この研究は、2015年2月~2018年9月に22品種4436頭の犬…
ハナバチの採餌に対する人間活動の影響に関する研究(Goulson, and Nicholls., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。ハナバチの効率的な採餌能力は、ハナバチ自身の適応度と野生植物や作物の受粉にとって不可欠です。しかし、この研究は、多数の人間活動が原因でハナバチの採餌は次第に困難になってきている、と指…
石炭紀のタコの祖先の化石に関する研究(Whalen, and Landman., 2022)が公表されました。Vampyropoda分岐群に属する動物は、コウモリダコやタコの祖先に相当します、体の大部分が軟組織であるため化石化することはほとんどなく、起源が明確になっていません。これまでに発見された断片的な遺骸は、約2億4000万年前の…
白亜紀末の大量絶滅をもたらした小惑星が衝突した季節に関する研究(During et al., 2022)が報道されました。約6600万年前に起きた白亜紀–古第三紀の大量絶滅は、現在のユカタン半島でのチクシュルーブ小惑星衝突が契機となりました。この事象はきわめて選択的な絶滅を引き起こし、それにより、全ての非鳥類型恐竜類、翼竜類、アンモナ…
イヌの悲嘆行動に関する研究(Uccheddu et al., 2022)が公表されました。悲嘆行動は鳥類やゾウ類などさまざまな動物で報告されていますが、イエイヌ(Canis familiaris)が悲嘆に暮れるかどうかは、明らかになっていません。この研究は、2匹以上のイヌを飼っていて、そのうちの1匹が死んでしまったことのあるイタリアの…
蚊の学習に関する研究(Sougoufara et al., 2022)が公表されました。殺虫剤は、蚊が媒介する病気の感染拡大を抑えるために用いられています。過去数十年間で、殺虫剤耐性を獲得した蚊が増加していますが、それが、どの程度蚊の行動に起因するのかは分かっていません。この研究は、蚊を駆除するための一般的な殺虫剤(マラチオン、プロポ…
コウモリ類の内耳神経構造の進化に関する研究(Sulser et al., 2022)が公表されました。コウモリ類は従来、ココウモリ類(小翼手類、反響定位を行う小型の種)とオオコウモリ類(大翼手類、視覚を多用してナビゲーションを行う果実食の大型の種)に分類されてきました。2000年に系統ゲノミクスから、オオコウモリ類と一部のココウモリ類…
海洋無脊椎動物のゲノムの安定性に関する研究(Simakov et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。ゲノムとは、細胞の中に存在する取扱説明書のことで、DNAのコードで書き込まれています。生物が機能するために必要な情報全てが含まれているこの取扱説明書は、染色体という章に分かれており、さらに遺伝子という各ペ…
海底下の微生物の代謝能力に関する研究(Beulig et al., 2022)が公表されました。地表下の海洋堆積物には地球上に生息する微生物が大量に含まれている、と考えられています。以前の調査では、南海トラフの沈み込み帯から堆積物コアを回収して、そこを生息地とする生物の範囲が調べられました。この調査地点では、最深部の堆積物の温度が12…
エピジェネティック変化に基づくハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)の加齢測定に関する研究(Horvath et al., 2022)が公表されました。ハダカデバネズミは、同じ身体サイズの齧歯類の中できわめて長寿で、37年が最長寿命の記録になっており、加齢に関連した疾患にかかりにくい。これまでの研究では、ハダカ…
シロアリの進化に関する研究(Mizumoto, and Bourguignon., 2021)が公表されました。日本語の解説記事もあります。シロアリは、進化系統樹においてゴキブリ系統に属しており、1億7千万~1億5千万年前頃となるジュラ紀の終わりに、姉妹群であるゴキブリから分岐しました。有力説では、シロアリは分岐後から現在に至るまで徐…
裸子植物の進化とゲノム重複に関する研究(Stull et al., 2021)が報道されました。動物では2本以上の染色体を持つ「倍数体」は珍しいものの、植物ではよく見られます。一般的に食べられている果物や野菜のほとんどは、近縁種同士の交配によって生まれた倍数体で、小麦やピーナッツやコーヒーやオーツ麦やイチゴなど、多くの植物は、DNAの…
ヨーロッパの葡萄酒用ブドウの起源に関する研究(Magris et al., 2021)が公表されました。ブドウの栽培は、地中海東部で4000年近く、ヨーロッパ西部で2000年近く行なわれてきました。しかし、メルロやシャルドネやソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールなどの品種を含むヨーロッパの葡萄酒用ブドウの起源については論争があります…
中生代の巨大魚竜に関する研究(Sander et al., 2021)が公表されました。日本語の解説記事もあります。現在、クジラは地球最大の生物ですが、5500万年というその進化史の約90%の期間をかけて、現在のような巨大海洋生物へと進化しました。最初に海を泳いだ巨大海洋生物はクジラではありませんでした。この研究は、アメリカ合衆国ネバ…
ヘビ毒と哺乳類の唾液タンパク質の共通起源に関する研究(Barua et al., 2021)が公表されました。日本語の解説記事もあります。ヘビや一部のトカゲ、さらに一部の哺乳類には、噛みついて毒液を出すものがおり、これらの系統は3億年以上前に分化した、と推測されています。以前の研究で、哺乳類の唾液腺とヘビの毒腺では制御遺伝子の一群の活…
ヒトの原腸形成に関する研究(Tyser et al., 2021)が公表されました。原腸形成は、全ての多細胞動物の基本的な過程で、初期胚(胞胚)が3つの胚葉を持つ胚(原腸胚)に変化する、初期胚発生における決定的な瞬間です。原腸形成により、基本的なボディープランが最初に定められます。原腸形成は、空間的なパターン形成と協調した細胞多様性を…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ヘモグロビンの進化に関する研究(Song et al., 2020)が報道されました。赤血球は哺乳類に特有ではありません。この色は、脊椎動物だけではなく環形動物(最も有名なメンバーがミミズであるワームファミリー)、軟体動物(とくに池のスネイル)、甲殻類(ミジンコ)の循環系にも見られる、酸素の…
チリで発見されたアンキロサウルスの新種に関する研究(Soto-Acuña et al., 2021)が報道されました。装甲を持つ恐竜(装盾類)は、剣竜類の対をなす棘や、進化した曲竜類(鎧竜類)の重い棍棒状の構造など、尾に特殊化した武器を進化させたことでよく知られています。かつてパンゲア超大陸の一部だった北方のローラシア大陸で発見された…
意思決定における不確実性の解消に関する研究(Mukherjee et al., 2021)が公表されました。視床背内側核と前頭前野の間の相互作用は、認知にきわめて重要です。ヒトでの研究から、これらの相互作用が意思決定において不確実性を解消している可能性が示されていますが、前頭前野に投射する視床領域には複数の細胞タイプがあり、これらの異…
中華人民共和国新疆ウイグル自治区で発見された新たな恐竜に関する研究(Wang et al., 2021)が公表されました。この研究は、以前に新疆ウイグル自治区のトルファン-ハミ盆地で発見され、白亜紀前期(1億3000万~1億2000万年前頃)と推定された3点の化石断片(脊椎骨と胸郭)を分析し、この遺骸化石の特定の特徴(脊椎胸郭構造)を…
中華王朝の崩壊と火山噴火との関連に関する研究(Gao et al., 2021)が公表されました。産業革命以前の時代には、火山の噴火が主因となった気候の突然変化により、農作物の生育期の気温が低下し、降水量が減少して、農業生産性の低下がよく起きました。907年の唐王朝の崩壊と1644年の明王朝の崩壊は、旱魃現象と寒冷化現象に結びついてい…
カンブリア紀前期における苔虫動物の出現を報告する研究(Zhang et al., 2021)が公表されました。外肛動物としても知られる苔虫動物は、水生で大部分が固着性の濾過摂食する触手冠動物で、モジュール式の群体(クローン)が有機質または石灰質の外骨格を構築します。苔虫動物は海藻に似た(起立性の)群体あるいは被覆性の群体を形成し、見過…
ゾウにとって密猟が強力な選択圧になることを報告した研究(Campbell-Staton et al., 2021)が公表されました。日本語の解説記事もあります。この現象は以前から報道されていました。この研究は、モザンビーク内戦(1977~1992年)中とその後、モザンビークのゴロンゴーザ(Gorongosa)国立公園に生息するアフリカ…
シベリアにおけるイヌの進化に関する研究(Feuerborn et al., 2021)が公表されました。北極圏シベリアのジョホフ(Zhokhov)島の早期の考古学およびゲノムの証拠から、異なる系統に分類されるイヌが9500年以上にわたって北極圏の生活では不可欠な構成要素だった、と示唆されます。人々とイヌとの間のこの緊密なつながりは、コ…
ネコの毛皮の模様の遺伝的基盤に関する研究(Kaelin et al., 2021)が報道されました。これまでの研究から、しま模様のタビーなどイエネコの毛色のパターンは、体毛の成長期に隣接する毛包から構成される毛包群よりそれぞれ異なるタイプのメラニン色素が産生されて出現する、と明らかになっています。しかし、毛包から産生されるのが黒色メラ…
鱗竜類の起源に関する研究(Martínez et al., 2021)が公表されました。双弓類爬虫類の初期進化については、主竜形類(ワニ類や鳥類や非鳥類恐竜類)と鱗竜形類の間で、起源および初期進化に関する理解に顕著な差異が存在する、という特徴があります。鱗竜類は有鱗爬虫類で、有鱗目(トカゲ類とヘビ類)とニュージーランドで見られる爬虫類…
一卵性双生児に特異的なエピジェネティック・シグネチャーに関する研究(van Dongen et al., 2021)が公表されました。全ての妊娠の12%は多胎妊娠として始まると推定されていますが、多胎出産に至るのは全妊娠のわずか2%です。こうした状態は、バニシングツイン症候群として知られています。一卵性双生児が発生する原因は未だに解明…
白亜紀-古第三紀の大量絶滅後にヘビの多様化が進んだことに関する研究(Klein et al., 2021)が公表されました。6600万年前頃となる白亜紀-古第三紀の大量絶滅事象は、地球上の生物種の推定76%の消失をもたらしましたが、その後、脊椎動物のいくつかの分類群で種の多様性が増大しました。しかし、大量絶滅事象がヘビの進化に及ぼした…
孵化直後の翼竜類の飛行能力に関する研究(Naish et al., 2021)が公表されました。翼竜類は、三畳紀とジュラ紀と白亜紀(2億2800万~6600万年前頃)に存在していた空を飛ぶ爬虫類の一種です。化石化した翼竜の卵と胚はほとんど見つかっておらず、孵化したばかりの個体と小さな成体を区別することも難しいため、孵化したばかりの翼竜…
北極マンモスの生涯にわたる移動に関する研究(Wooller et al., 2021)が報道されました。日本語の解説記事もあります。マンモスは最も広く研究されている氷河期を象徴する動物の1種であるにも関わらず、化石からだけだと、マンモスの生活における静的で特異的でありがちなことしか推測できないため、自然界でのその生活史についてはほぼ分…
ハチの個体数減少に対する農薬の影響に関する研究(Siviter et al., 2021)が公表されました。広範に報告されている花粉媒介者の減少は、世界的に懸念されています。それは、世界の食料安全保障と野生生態系にとっての脅威だからです。ハナバチの個体群に対しそれぞれが単独で有害となる人為的ストレッサー(農薬や寄生虫や栄養的ストレス要…
昆虫のコミュニケーションの起源に関する研究(Schubnel et al., 2021)が公表されました。多くの昆虫は、翅の形や色に加えて、翅が発する音を使って、交尾相手を引き寄せたり、捕食者から逃れたりしています。こうした行動が、いつ、どのようにして進化したのか、まだ分かっていません。それは、コミュニケーションに使われている構造と他…
ブチハイエナの社会構造に関する研究(Ilany et al., 2021)が公表されました。日本語の解説記事もあります。動物の社会的ネットワークの構造はあらゆる社会過程、および健康状態と生存と繁殖成功に重要な役割を果たしているにも関わらず、野生において社会構造を決める一般的な仕組みは依然として解明されていません。社会的相続と呼ばれる提…