シャチの母親の生活史戦略を検証した研究(Weiss et al., 2023)が公表されました。動物の繁殖戦略はさまざまで、母親が性成熟後の子供の世話をする事例も知られています。たとえばボノボ(Pan paniscus)は、娘よりも息子の世話に熱心で、息子の適応度を上げている、と報告されています(関連記事)。一方、ボノボと最近縁の分類…
足の構造から初期獣脚類恐竜の生活様式を推測した研究(Pittman et al., 2022)が公表されました。獣脚類は3本指の恐竜の分類群で、ティラノサウルス・レックスやヴェロキラプトルや鳥類が含まれます。現生鳥類の足の形状と大きさは、跳躍、止まり木への着地、浅い水中を歩いて渡ること、遊泳、木登り、把持、摂食様式などの能力に対応する…
ハインリッヒイベント(Heinrich Event、略してHE)型の気候変動の両極への影響エピに関する研究(Martin et al., 2023)が公表されました。HEは人類の進化において重要な影響を及ぼした、と考えられています(関連記事)。最終氷期の間、ローレンタイド(Laurentide)氷床では極端な氷山の放出事象が起き、これ…
潜水する捕食恐竜の新種を報告した研究(Lee et al., 2022)が報道されました。この研究は、モンゴルのウムヌゴビ県で出土した化石標本に含まれる遺骸化石を調べて、新種を特定し、ナトベナトル・ポリドントゥス(Natovenator polydontus)と命名しました。この名称は、「多くの歯を持ち、遊泳する狩猟者」という意味です…
ミンククジラ類の体の小ささに関する研究(Cade et al., 2023)が公表されました。ヒゲクジラ類は、突進採餌として知られる採餌戦略を用いています。これは、被食者が豊富に含まれている大量の水を高速で口内に取り込み、ヒゲの「ふるい」で濾過することによる戦略です。この採餌法がエネルギー効率に優れるのは、ひとえにヒゲクジラ類が大量の…
孵化直後のゼブラフィッシュの数的能力に関する研究(Lucon-Xiccato et al., 2023)が公表されました。数的能力は、ヒトだけではなくカワスズメ科やエイの一種などでも確認されており(関連記事)、脊椎動物に広く存在すると考えられます。数的能力の普遍性を説明する興味深い仮説は、すべての脊椎動物が生まれながらにして、数を処理…
島嶼化による人為的絶滅への影響に関する研究(Rozzi et al., 2023)が公表されました。日本語の解説記事もあります。島嶼は地球表面のわずか7%足しか占めていませんが、地理的に孤立しているため、特徴的な進化史に伴う多様性が見られます。島嶼環境における重要な進化的形態である島嶼化は、きょくたんな小型分類群や大型分類群のような形…
カンブリア紀の化石の見直しを報告した研究(Yang et al., 2023)が公表されました。多様な動物門とそれらに関連するボディープランは、5億年以上前のカンブリア紀に起こった単一の爆発的進化事象に端を発しています。群体性の「苔動物」である苔虫動物(コケに似た水生無脊椎動物)門はその例外であり、この生体鉱物化するクレード(単系統群…
脊椎動物における生殖細胞系列の変異率の違いを報告した研究(Bergeron et al., 2023)が公表されました。生殖細胞系列の変異率は、ゲノム進化の速度を決定する一方で、それ自体が進化する媒介変数でもあります。しかし、変異率に関するこれまでの研究の大半は異なる方法論で単一の種に焦点を合わせたものだったので、その進化が何によって…
絶滅鳥類の卵殻から抽出したミトコンドリアDNA(mtDNA)の解析結果を報告した研究(Grealy et al., 2023)が公表されました。マダガスカル島の絶滅鳥類であるゾウドリについては、化石記録における大きな間隙と骨格標本の生体分子保存性の低さから、その系統分類には依然として議論の余地があります。ゾウドリは空を飛べない大型鳥類…
3億1900万年前頃の条鰭類魚類の化石化した脳を報告した研究(Figueroa et al., 2023)が公表されました。脳の構造からは、条鰭類魚類の系統間の類縁関係に関して重要な証拠が得られますが、二つの大きな限界のため、この主要な脊椎動物群の神経解剖学的進化の理解が不明瞭になっています。一方は、最初期に分岐した現生系統がそれらの…
最古のアシナシイモリ類化石を報告した研究(Kligman et al., 2023)が公表されました。現生の両生類(平滑両生類)は、カエル類(無尾類)とサンショウウオ類(有尾類)から構成されるBatrachia(無尾・有尾類)と、肢がなく蠕虫に似たアシナシイモリ類(無足類)が含まれます。無足類と無尾・有尾類の分岐年代は分子的には古生代…
哺乳類の社会組織と寿命との相関について研究(Zhu et al., 2023)が公表されました。社会性と寿命の関係の解明は、動物の生活史がどのように進化してきたのか、より深い理解を可能にします。哺乳類の社会組織は多岐にわたり、単独生活、つがい生活、さまざまな形態の集団生活が観察されています。また、哺乳類の最長寿命は、トガリネズミの約2…
クジラの巨大化をもたらした遺伝子に関する研究(Silva et al., 2023)が公表されました。クジラとイルカとネズミイルカにより構成されるクジラ類は約5000万年前に祖先の小型陸生動物から進化し、シロナガスクジラやナガスクジラなどの巨大な代表種を含む、生物の中で最大級とされる水生哺乳類群です。しかし、巨大化は生物学的な不利益(…
ジュラ紀のトカゲの頭蓋骨化石に関する研究(Brownstein et al., 2022)が公表されました。有鱗目冠群(トカゲの現生種を含む分類群)の進化初期の化石は、数が少ない上に、通常は保存状態もよくないため、押しつぶされていない最古の骨格材料は、白亜紀(約1億4550万~6550万年前)のものとなっています。ジュラ紀(約2億~1…
反芻動物の内耳から過去3500万年間の進化史を推測した研究(Mennecart et al., 2022)が公表されました。外来因子と内在因子が多様性に影響を与え、深い時間規模では、気候や地質などの外在的な影響が重要ですが、あまり理解されていません。この研究は、反芻動物の内耳形状を用いて、適応性の低い解剖学的構造と外来的および内発的変…
エピジェネティック因子によるマウスの食餌性肥満の継承に関する研究(Hoekzema et al., 2022)が公表されました。妊娠はホルモン状態の大きな変化を伴いますが、それがヒトの神経の構造と機能に及ぼす影響については、ほとんど解明されていません。この研究は、妊娠により引き起こされる脳の変化過程を調べるため、40人の女性を対象とし…
ハイイロオオカミ(Canis lupus)の寄生虫感染と群れのリーダーになる確率についての研究(Meyer et al., 2022)が報道されました。この研究は、アメリカ合衆国ワイオミング州のイエローストーン国立公園に生息するハイイロオオカミを調査し、リスクを負う行動とトキソプラズマ症の原因寄生虫であるトキソプラズマ原虫(Toxop…
白亜紀の鳥類化石を報告した研究(Benito et al., 2022)が公表されました。骨口蓋は、現生鳥類の最も古く分岐した2つのクレード(単系統群)であると新顎類(現生鳥類のほぼ全て)と古顎類(ヒクイドリやダチョウやシギダチョウ科など)を判別する特徴です。新顎類は口蓋骨が癒合しておらず、頭蓋が概して動的で、口蓋に関節があるのに対し…
最大級のウミガメの化石に関する研究(Castillo-Visa et al., 2022)が公表されました。既知の最大級のウミガメは、白亜紀末期頃には北アメリカ大陸周辺の海域に生息していました。その一例が、古代に絶滅したアーケロン(Archelon)属で、体長は4.6m、体重は3.2tにまで成長していました。これとは対照的に、既知のヨ…
新生代における哺乳類の「進化の減速」に関する研究(Goswami et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。最初に地球を歩き回った有胎盤哺乳類は小型で、恐らくハツカネズミやトガリネズミほどの大きさでした。しかし現在判明しているように、哺乳類はヒトの親指ほどのキティブタバナコウモリから海に生きる体長約30m…
鳥類の骨格の進化の多様性に関する研究(Navalón et al., 2022)が公表されました。進化の速度および様式の変動が現生種の表現型の多様性をどのように構築してきたか、その特徴を明らかにすることは、大進化研究の中心的な目標です。しかし、そうした研究は通常、少数の形質に限定されており、充分な情報は得られていません。鳥類は生態学的…
爬虫類の進化解明の手がかりとなるジュラ紀の骨格化石を報告した研究(Tałanda et al., 2022)が公表されました。有鱗目(トカゲ類とヘビ類)は爬虫類の分類群の一つで、1万を超す現生種が含まれており、その祖先動物は、有鱗類に最も近縁な現生動物であるムカシトカゲ類(Sphenodon)の祖先から2億4000万年以上前に分岐しま…
脊椎動物における音声コミュニケーションの起源に関する研究(Jorgewich-Cohen et al., 2022)が公表されました。音声コミュニケーションは、多くの脊椎動物の行動(子育てや配偶者の誘引を容易にするための行動など)の基盤となっています。以前の研究で、音声コミュニケーションはいくつかの分類群で独立して進化した、と示唆され…
初期恐竜の分布を形成した気候帯に関する研究(Griffin et al., 2022)が報道されました。中生代および新生代の陸上生態系を形成することになる脊椎動物の系統は、三畳紀のパンゲア超大陸各地で出現しました。この超大陸において、汎存性の「災害動物相」は、後期三畳紀(カーニアン期、約2億3500万年前)までに固有性の高い集合に取っ…
初期哺乳類の生活史に関する研究(Funston et al., 2022)が公表されました。白亜紀末の大量絶滅後、有胎盤哺乳類は急速に多様化して重要な生態的地位を占め、体サイズを増大させましたが、こうした大型化は他の獣類には当てはまりませんでした。この時期に出現した大型草食動物の中では、汎歯目哺乳類が最初期の分類群として知られています…
三畳紀の爬虫類の新たな分類に関する研究(Foffa et al., 2022)が報道されました。翼竜類は動力飛行(羽ばたき飛行)を進化させた最初の脊椎動物で、後期三畳紀に突然出現してから白亜紀末に姿を消すまで、中生代の陸上生態系を構成する主要な動物群でした。しかし、翼竜類の起源と初期進化については、これらの飛行性爬虫類とそれらに最も近…
トリケラトプス(Triceratops horridus)の闘損傷の証拠を報告した研究(D’Anastasio et al., 2022)が公表されました。トリケラトプスは白亜紀の角竜類の恐竜で、頭蓋の頭頂骨と鱗状骨が伸びてできた大きなフリル(襟飾り)を特徴とします。この骨質のフリルについては、別のトリケラトプスとの戦闘中に体を保護し…
動物と菌類の起源に関する研究(Ocaña-Pallarès et al., 2022)が公表されました。動物と菌類の形態は根本的に異なりますが、両者はオピストコンタ(Opisthokonta)という同じ真核生物の巨大系統群内で進化し、菌類は植物よりも動物の方と近縁です。この研究は、オピストコンタの系統発生できわめて重要な位置を占める4…
翼竜の羽毛の色彩パターンエピに関する研究(Cincotta et al., 2022)が公表されました。中生代の化石の保存状態がきわめて良好な軟部組織から、羽毛の進化に関して多大な知見が得られおり、翼竜類の分岐構造を持つ羽毛(ピクノファイバー)に関する新たな証拠から、羽毛が前期三畳紀に翼竜類と恐竜類の祖先である鳥中足骨類(Avemet…
パレオスポンディルスと四肢類祖先との類縁性に関する研究(Hirasawa et al., 2022)が公表されました。中期デボン紀のパレオスポンディルス(Palaeospondylus gunni)はきわめて謎の多い化石脊椎動物の一種で、1890年にスコットランドで発見されて以来、その系統的位置は不明なままでした。この化石には奇妙な形…
エディアカラン紀の刺胞動物に関する研究(Dunn et al., 2022)が公表されました。サンゴやクラゲを含む刺胞動物門という動物群には、疎らながらも古く長い化石記録が存在します。この研究は、イギリスのチャーンウッドの森(Charnwood Forest)で発見された、エディアカラン紀となる約5億6200万~5億5700万年前の刺…
鳥類の骨盤の発生過程に関する研究(Griffin et al., 2022)が公表されました。現生鳥類(鳥綱)の体は、祖先的な爬虫類の状態から著しく変化しています。とりわけその骨盤は、初期の主竜類から現生の鳥類までの移行の中で大きな変化を経てきました。この段階的な変形はきわめて優れた化石記録によりよく立証されていますが、その根底にある…
哺乳類の温血性の進化に関する研究(Araújo et al., 2022)が公表されました。内温性は、多様な環境における哺乳類と鳥類の重要な特徴で、深部体温をほぼ一定に維持することによって多様な環境条件下での生息を可能にし、その生態的優位性を支えています。内温動物は、行動が活発で素早く、遠くまで移動できるのに対して、外温動物(冷血動物…
ペンギンの進化に関する研究(Cole et al., 2022)が報道されました。ペンギンは、6000万年以上前に出現し、海洋に高度に特化したボディープランを持つようになりました。また、ペンギンは極域に氷床が形成されるまでに飛行能力を失い、翼を使って海に飛び込めるようになっていました。先行研究では、ペンギンの現生種の多様化が明確に示さ…
ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)の食性と指の形態に関する研究(Wang et al., 2022)が公表されました。現生ジャイアントパンダは、手の5本の指に加えて親指のような構造を持つ大きな手首の骨を持っており、それを使ってタケやササを扱っています。先行研究では、こうした親指のような構造があったことを…
キリンの長い首の進化の一因に関する研究(Wang et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。地球で最も背の高い陸生動物であり、最も大きな反芻動物でもある現代のキリンの特徴的な長い首は、長い間、チャールズ・ダーウィン(Charles Robert Darwin)が初めて適応進化と自然淘汰という概念を提唱して…
レイビシロアリ科の進化に関する研究(Buček et al., 2022)が公表されました。日本語の関連記事もあります。シロアリはゴキブリの一種で、1億5千万年前頃に他のゴキブリ目から分化し、コロニーを形成して社会生活を営むように進化しました(関連記事)。現在、シロアリにはさまざまな種類が存在し、土の中でつながったトンネルの中で数百万…
暁新世において有胎盤類で脳より先に筋肉が増えたことを報告する研究(Bertrand et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。哺乳類は脊椎動物の中で体の大きさに占める脳の割合が最も大きいものの、その進化過程は詳細には解明されていません。この研究は、アメリカ合衆国のニューメキシコ州サン・ファン盆地とコロラド…
哺乳類における寿命に応じた体細胞変異率を報告した研究(Cagan et al., 2022)が公表されました。哺乳類は、一生の間ずっと変異を獲得します。この過程は癌を生じさせることが知られており、老化に寄与している、と提案されています。しかし、正常組織における体細胞変異率や体細胞変異のパターンは、ヒト以外ではほとんど知られていません。…
スピノサウルス科の水中採餌に関する研究(Fabbri et al., 2022)が報道されました。二次的な水生適応は、陸生脊椎動物祖先からの進化において独立して30回以上生じています。数十年来、非鳥類型恐竜はこのパターンの例外と考えられてきました。非鳥類型恐竜類で、部分的に水生あるいは主に水生であったと仮定されている種はごくわずかです…
初めて飼う犬の反復行動に関する研究(Sulkama et al., 2022)が公表されました。これまでの研究から、イヌの異常な反復行動は、犬と飼い主の関係を損ない、犬の幸福感を低下させる可能性がある、と明らかになっていますが、反復行動と関連する要因は分かっていません。この研究は、2015年2月~2018年9月に22品種4436頭の犬…
ハナバチの採餌に対する人間活動の影響に関する研究(Goulson, and Nicholls., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。ハナバチの効率的な採餌能力は、ハナバチ自身の適応度と野生植物や作物の受粉にとって不可欠です。しかし、この研究は、多数の人間活動が原因でハナバチの採餌は次第に困難になってきている、と指…
石炭紀のタコの祖先の化石に関する研究(Whalen, and Landman., 2022)が公表されました。Vampyropoda分岐群に属する動物は、コウモリダコやタコの祖先に相当します、体の大部分が軟組織であるため化石化することはほとんどなく、起源が明確になっていません。これまでに発見された断片的な遺骸は、約2億4000万年前の…
白亜紀末の大量絶滅をもたらした小惑星が衝突した季節に関する研究(During et al., 2022)が報道されました。約6600万年前に起きた白亜紀–古第三紀の大量絶滅は、現在のユカタン半島でのチクシュルーブ小惑星衝突が契機となりました。この事象はきわめて選択的な絶滅を引き起こし、それにより、全ての非鳥類型恐竜類、翼竜類、アンモナ…