取り上げるのが遅れてしまいましたが、複雑形質の遺伝的構造に関する研究(Souaiaia et al., 2026)が公表されました。複雑な形質は高度に多遺伝子性で、それらの遺伝率は、小さな効果を持つ数百のありふれた多様体と大きな効果を有する稀な多様体によって説明されます。しかし、この遺伝的構造が形質の連続体に沿ってどのように変化するの…
絶滅したケブカサイのゲノムデータを報告した研究(Lei et al., 2026)が公表されました。日本語の解説記事もあります。[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。ケブカサイのゲノムデータはこれまで、おもにユーラシアの高緯度地帯の遺骸から得られてきました。本論文は、ユーラシアの中緯度地帯…
最初期ヘビ類の脳と生態の多様性に関する研究(Simões et al., 2026)が公表されました。ヘビ類の生態学的起源を理解することは、1世紀にわたって課題であり続けてきました。初期の化石記録がきわめて乏しく、また、発見されている化石種の生態の解釈が相反するものであるため、理解が妨げられてきたわけです。ヘビは中ジュラ紀(約1億60…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、現代中国人のゲノムデータを報告した研究(Wang et al., 2026)が公表されました。汎ゲノムは、複雑な多様性があるゲノム領域を解明する能力に、革命をもたらしています。しかし、既存のヒト版ゲノムには標本規模の小ささという制約があり、遺伝医学や集団遺伝学の応用では有用性が限られています。本論文…
多細胞性の起源に関する研究(Li et al., 2026)が公表されました。動物が、単細胞祖先から複雑な多細胞性をどのように進化させたのか、大きな関心が寄せられてきましたが(関連記事)、依然として解明されていません。動物の単細胞近縁種は、クローン分裂、多数の核を持つ多核体の形成あるいは凝集によって、単純な多細胞性を示します。したがっ…
14世紀半ばのヨーロッパの洪水に関する研究(Kiss et al., 2026)が公表されました。ヨーロッパはここ数十年間、きょくたんな洪水に見舞われています。しかし、それらをさらに上回る規模の洪水が起こる可能性もあり、洪水の危険性管理においてそれらを考慮する必要があります。そうした洪水の特徴は、記録が残っている中で最も大規模な洪水を…
脊椎動物の脳の進化に関する研究(Zhu et al., 2026)が公表されました。脊椎動物の複雑な脳は、脊椎動物に最も近縁な生物の脳よりも多くの細胞タイプを持つ。脊椎動物の初期進化の過程では全ゲノム重複(Whole-genome duplication、略してWGD)が起こりましたが、そのさいに生じた重複遺伝子(オオノログ〔ohno…
鋏角類の鋏角と書鰓の起源に関する研究(Liu et al., 2026)が公表されました。鋏角類は陸生および水生の節足動物から構成される多様な分類群ですが、その起源と初期進化に関しては議論が続いています。さまざまな仮説の1つに、鋏角類の、鋏角として知られる第1付属肢はカンブリア紀のメガケイラ類の短い大付属肢(short great a…
真核生物誕生過程に多様に微生物が関わったことを報告した研究(Bernabeu et al., 2026)が公表されました。真核生物の起源は生物学における中心的な謎です。議論は続いていますが、アルファプロテオバクテリアとアスガルドアーキアの共生がきわめて重要な役割を果たした、との点では一致しています。しかし、共生のパートナーとなった可能…
苔虫動物門の起源に関する研究(Song et al., 2026)が公表されました。主要な動物のボディープランはカンブリア爆発の時期に出現しましたが、苔虫動物門(外肛動物門)はこのパターンの顕著な例外であり続けてきました。プロトメリッシオン・ガテホウセイ(Protomelission gatehousei)の最初の発見によって、苔虫動…
ツシマヤマネコのゲノムデータを報告した研究(Matsumoto et al., 2026)が公表されました。最近、短い尾のツシマヤマネコ1個体が捕獲されました。そうした形態はこれまでツシマヤマネコでは確認されておらず、イエネコで見られるため、イエネコからツシマヤマネコへの遺伝子流動があったのではないか、と考えられました。そこで本論文は…
北アメリカ大陸の絶滅したダイアウルフのゲノムを報告した研究(Gedman et al., 2026)が公表されました。[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。本論文は、72000年以上前と13000年前頃のダイアウルフ個体から得られたゲノムデータを、他のイヌ科と比較し、イヌ科の進化系統樹にダ…
初期真核生物の生息環境に関する研究(Lechte et al., 2026)が公表されました。真核細胞の進化は、地球上の全ての複雑な生命の出現への道を開きました。その重要性にもかかわらず、初期の真核生物の進化がどのような環境で起こったのかは、ほとんど分かっていません。本論文は、地質記録を用いて、既知で最古となる約17億5000万~14…
真社会性哺乳類における繁殖抑制についての研究(Khallaf et al., 2026)が公表されました。真社会性は哺乳類ではきわめて稀であり、その至近機構は依然として充分には理解されていません。ハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)はその顕著な例で、地下に大規模なコロニーを形成し、繁殖は1個体の女王だけに限定…
白亜紀末の海洋の絶滅パターンに関する研究(Ying et al., 2026)が公表されました。白亜紀–古第三紀(K–Pg)境界(約6600万年前)におけるチクシュルーブ小惑星の衝突は、壊滅的な環境変化を引き起こすことで、化石記録に認められる生物種の約75%を絶滅させた、と考えられています。しかし、数十年にわたる研究にも関わらず、その…
絶滅したホラアナライオンのゲノムデータを報告した研究(Stanton et al., 2026)が公表されました。本論文は、10万年以上にわたるホラアナライオンのゲノムデータ12点を用いて、現生ライオンとホラアナライオンが異なる進化的系統をたどってきた、と示しています。これらのホラアナライオンのゲノムデータには、平均被覆度(cover…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、朝鮮半島の古代のイヌのゲノムデータを報告した研究(Kim et al., 2026)が公表されました。[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。本論文は、韓国で発見された紀元前3世紀~紀元後6世紀のイヌの、被覆度(coverage、網羅率)が0.3~0.73…
海底で発見されたクジラの死骸堆積を報告した研究(Peng et al., 2026)が公表されました。鯨骨(whale fall)は海底における生物多様性のオアシスで、多種多様な生物を支える複雑な局所生態系を生み出すことがあります。しかし、海洋から得られるそれらの記録はわずかで、断片的です。既知のクジラの死骸堆積のほとんどは水深数十メ…
ミツバチの女王の発生に関する研究(Fang et al., 2026)が公表されました。社会性昆虫の巣の構造は多くの場合、隠れ家や貯蔵場所を提供する静的な構造要素と見なされます。しかし、こうした構築された環境が、生物学的形質をどの程度能動的に形作っているのかについては、ほとんど理解されていません。ミツバチのカースト決定を駆動する遺伝的…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、最古級の羊膜類の足跡に関する研究(Long et al., 2025)が公表されました。陸棲動物の進化における重要な段階は、四肢を持つ生物(四肢動物)が海から陸に出現することでした。羊膜類(現生の爬虫類と鳥類と哺乳類を含む一群)は四肢動物の中で唯一陸上において繁殖する系統で、真の陸上動物となったこと…
小型恐竜の進化史に関する研究(Makovicky et al., 2026)が公表されました。本論文は、アルヴァレスサウルス類(alvarezsauroids)と呼ばれる小型分類群の新たな標本を報告しています。アルヴァレスサウルス上科は、おもに小型の獣脚類恐竜からなる謎の多い分類群で、その大部分はアジアと南アメリカ大陸のジュラ紀から白…
ペルム紀の初期爬虫類のミイラ化した化石を報告した研究(Reisz et al., 2026)が公表されました。肋骨による吸引呼吸は、羊膜類(哺乳類と爬虫類と鳥類およびそれらの共通祖先)が陸域を征服する上で不可欠な進化的新機軸でした。現生の羊膜類は、肋間筋によって生じる吸気と呼気のために、統合された胸郭骨格を用いていますまが、これは、よ…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、真核生物の進化系統樹に関する研究(Williamson et al., 2025)が公表されました。eToL(The eukaryote Tree of Life、真核生物の系統樹)はすべての真核生物の関係を表し、その根は、現生の複雑な生物すべての起源となって、LECA(Last Eukaryoti…
カンブリア紀の新たな軟体節足動物を報告した研究(Lerosey-Aubril, and Ortega-Hernández., 2026)が公表されました。現生の鋏角類は12万種以上からなる著しく多様な節足動物のクレード(単系統群)で、サソリ類やクモ類やダニ類といった生態学的および経済的にきわめて重要な、よく知られた分類群を含んでいます…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、ヘビ類の起源に近いジュラ紀の新たな化石有鱗類を報告した研究(Benson et al., 2025)が公表されました。有鱗類(トカゲ類とヘビ類)は約12000の現生種から構成されており、その生態はひじょうに多様で、クラウン群の起源は約1億9000万年前にさかのぼります。形態的特徴と分子系統学的特徴の…
多細胞化の過程に関する研究(Ros-Rocher et al., 2026)が公表されました。多細胞生物は多くの細胞から構成され、多細胞性は真核生物において独立して複数回進化した、と考えられています。多細胞性には、クローン性(姉妹細胞の分離を伴わない連続的な細胞分裂)と集合(別個の細胞が集合して多細胞体を形成する)という2通りの異なる…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、最古のアンキロサウルス類(ankylosaurs)を報告した研究(Maidment et al., 2025)が公表されました。装甲を持つアンキロサウルス類(曲竜類、鎧竜類)の恐竜は、後期白亜紀の北半球の生態系のものが最もよく知られていますが、前期~中期ジュラ紀におけるその初期進化については、化石記…
統合失調症の集団間の差異に関する研究(Bigdeli et al., 2026)が公表されました。統合失調症および関連する精神病は、あらゆるヒト集団で発生し、「黒人」およびおもにアフリカ系集団で診断率が最も高くなっています。数十年にわたる研究で、統合失調症には高度に遺伝性で多遺伝子性の基盤がある、と明らかにされており、その基盤の多くは…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、大規模群衆によって生み出される振動運動に関する研究(Gu et al., 2025)が公表されました。コンサートやフェスティバルのような密集した群衆は、現代社会における最も危険な環境の一つです。危険は、制御されていない集団運動から生じ、壁への圧迫や窒息や死亡事故につながります。群衆動態に関する現状の…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、マウスにおける鉄欠乏と性別決定についての研究(Okashita et al., 2025)が公表されました。二価鉄(Fe²⁺)は、DNAやタンパク質の脱メチル化のようなさまざまな酸化還元酵素反応に関わっており、あらゆる真核細胞にとって不可欠な要素です。哺乳類における雄の性決定のさいに、発生中の生殖腺…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、モンゴルで発見された白亜紀前期のパキケファロサウルス類を報告した研究(Chinzorig et al., 2025)が公表されました。ドーム状の頭を持つパキケファロサウルス類は、ひじょうに謎めいた恐竜の一群です。頭蓋冠が肥大していて精巧な頭蓋装飾を有するこのクレード(単系統群)の恐竜は、複雑な社会的…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、アルゼンチンで発見された恐竜化石を報告した研究(Hechenleitner et al., 2025)が公表されました。パンゲアの陸上生態系は後期三畳紀(約2億3700万~2億100万年前)に激変し、それが哺乳型類やワニ形類や恐竜類の出現と多様化につながりました。南アメリカ大陸のカーニアン(Carn…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、哺乳類の顎関節の進化に関する研究(Mao et al., 2025)が公表されました。単一の歯骨から構成される下顎と、歯骨の関節丘および鱗状骨の関節窩の間の二次的な頭蓋下顎関節の進化は、脊椎動物におけるきわめて重要な新機軸で、哺乳類を特徴づける形質と考えられてきました。本論文は、二次顎関節の新規な形…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、有顎脊椎動物の姉妹群における頭部と胴部の境界の新規構に関する研究(Miyashita et al., 2025)が公表されました。有顎脊椎動物の起源に関する標準的な仮説では、複雑な感覚系、血流量の多い心臓、開口筋と頭胸部蝶番の統合といった一連の解剖学的な新機軸によって促進された、底生性のグレーザー(…
後期白亜紀ヨーロッパの角竜類を報告した研究(Maidment et al., 2026)が公表されました。後期白亜紀のヨーロッパは群島で、多様性の低さや遺存性や島嶼性矮小化などの島効果で特徴づけられる恐竜動物相が存在しました。この地域の恐竜群集は、典型的なローラシア大陸あるいはゴンドワナ大陸の恐竜類と類縁な分類群と、独自の固有種が独特…
後期更新世~初期完新世のユーラシア西部のイヌのゲノムデータを報告した研究(Marsh et al., 2026)が公表されました。[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。本論文は、ユーラシア西部の後期更新世~初期完新世のイヌの新たなゲノムデータを報告し、遺伝的に均一なイヌ個体群が遅くとも14…
上部旧石器時代以降代のヨーロッパのイヌの新たなゲノムデータを報告した研究(Bergström et al., 2026)が公表されました。[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。本論文は、旧石器時代および中石器時代のヨーロッパの216点のイヌ科遺骸を分析し、そのうち141点でオオカミ(ハイイ…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、獣脚類の手根に関する研究(Napoli et al., 2025)が公表されました。鳥類の手根(手首)には複雑な進化史があり、それには手根骨の縮小を伴っていたことが以前から知られていて、最近では、1個の手根骨(尺側手根骨)の別の手根骨(豆状骨)によるトポロジカルな置き換わりが含まれることも示されてい…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、指の進化に関する研究(Hintermann et al., 2025)が公表されました。椎動物の進化における鰭から肢への移行は、発生がいかに進化的変化の基盤となっているかに関する研究の中核となってきました。この文脈では、新しい特徴の起源を説明するために、Hox遺伝子調節の機能解析を用いた進化の軌跡の…
真核生物の進化に関する二つの研究が公表されました。一方の研究(Kay et al., 2026)は、遺伝子重複の年代推定から真核生物の進化史を明らかにしています。生命の歴史において、真核生物の起源は形成的であるもののあまり理解されていない事象です。真核生物の誕生(eukaryogenesis)に関して現在提唱されている仮説には、おもに…
カンブリア紀の脊椎動物の眼に関する研究(Lei et al., 2026)が公表されました。脊椎動物の視覚はおもに、側方にある一対の像形成カメラ眼が担っており、非哺乳類脊椎動物では、背側の松果体複合体(松果体および副松果体)が、光受容器官および/もしくは内分泌器官として機能することで、これを補完しています。松果体複合体は、側方眼と共通…
チーターの古代ゲノムデータを報告発見した研究(Boug et al., 2026)が報道されました。[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。本論文は、サウジアラビアの複数の洞窟で発見されたチーターのミイラ化を含めた遺骸から得られた古代ゲノムを分析し、最新の1個体がアジアチーターと遺伝的にクラ…
硬骨魚類の起源に関する二つの研究が公表されました。一方の研究(Zhu et al., 2026)は、前期シルル紀の地層から発見された、関節がつながった最古の硬骨魚類標本を報告しています。硬骨魚類は肉鰭類と条鰭類から構成されており、現生脊椎動物の生物多様性の大部分を占めますが、それらのデボン紀以前の化石記録は依然として少なく、断片的です…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、既知で最古の鱗竜類と鱗竜類の摂餌適応の起源に関する研究(Marke et al., 2025)が公表されました。鱗竜類は、陸上に生息する脊椎動物の中で最も種数の多い生物群である。この生物群には、約1万2000種のトカゲ類とヘビ類(有鱗類)、およびニュージーランドに生息する1種のムカシトカゲ類(Sph…
小型ティラノサウルスの化石を報告した研究(Zanno, and Napoli., 2025)が公表されました。ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex)は、絶滅した脊椎動物の中で最も研究が進んでいる動物の一種で、恐竜の古生物学のモデル系です。最後まで生き残った非鳥類型恐竜の一種として、ティラノサウルスは、地球の生…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、真核生物の起源に関する研究(Zhang et al., 2025)が公表されました。アスガルドアーキアの形態と生理とゲノミクスの研究によって、真核生物の進化史に関する貴重な手がかりが得られています。以前の研究で、真核生物は古細菌のヘイムダルアーキア綱(Heimdallarchaeia)内に含まれる、…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、全ゲノム重複による多細胞の適応進化についての研究(Tong et al., 2025)が公表されました。WGD(Whole-genome duplication、全ゲノム重複)は真核生物全体に広く見られる現象で、適応進化を促進することがあります。しかし、新たに形成された倍数体ゲノムの不安定性を考える…