ヒト進化研究ヨーロッパ協会第14回総会で、クロアチアで発見されたネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)のゲノムデータを報告した研究(Sümer et al., 2024)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P169)。ネアンデルタール人の詳細な遺伝的歴史もしくはさまざまなネアンデルター…
ザンビアのバトゥア人(Batwa)の遺伝的歴史に関する研究(Breton et al., 2024)が公表されました。本論文は、ザンビアのバトゥア人の比較的孤立した2集団の遺伝的歴史を、現代人と古代人のゲノムデータから推測しています。分析の結果、バトゥア人は、バントゥー諸語話者集団的な遺伝的構成要素とともに、過去に現在のザンビアに存在…
ヒト進化研究ヨーロッパ協会第14回総会で、種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)とアジア東部のホモ属の系統関係についての研究(Gousset et al., 2024)が報告されました。本論文は、デニソワ人とアジア東部で発見された中期~後期更新世の分類に議論があるホモ属遺骸との系統関係を検証しています。この研究の要約…
中原の周代の人類のゲノムデータを報告した研究(Wu et al., 2024)が公表されました。本論文は、中華人民共和国河南省滎陽(Xingyang)市高村(Gaocun)郷の官荘(Guanzhuang)遺跡で発見された周代の人類11個体のゲノムデータを報告しています。この11個体は黄河流域新石器時代人類集団との顕著な遺伝的連続性を示…
古代ゲノムデータに基づいて、イースター島としても知られているラパ・ヌイ(Rapa Nui)の人口史を検証した研究(Moreno-Mayar et al., 2024)が公表されました。ラパ・ヌイは世界でも有数の孤島で、南アメリカ大陸の西方約3700kmに位置し、最も近い有人島の西方1900km以上に位置しています。モアイと呼ばれる巨石…
フランス地中海地域の後期ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)のゲノムデータを報告した研究(Slimak et al., 2024)が公表されました。本論文はすでに昨年(2023年)4月、査読前に公開されており(関連記事)、分析結果や論旨の大きな変更はないと思われますが、この間の最新研究の成果も取り入れるなど…
古代ゲノムデータに基づいて、新石器時代以降の黄河下流域の人口史を推測した研究(Du et al., 2024)が公表されました。本論文は、おもに山東省から構成される現在の中華人民共和国山東省の新石器時代から7世紀頃(5410~1345年前頃)までの人類69個体のゲノムデータを、山東省全域の現代人325個体や、他の既知の古代人および現代…
フランス南部の後期新石器時代の墓地被葬者のゲノムデータを報告した研究(Arzelier et al., 2024)が公表されました。本論文は、フランス南部ガール(Gard)県コルコンヌ(Corconne)のアヴェン・デ・ラ・ブークル(Aven de la Boucle、略してBOU)遺跡の集団埋葬の被葬者のゲノムデータを報告し、当時の…
古代ゲノムデータと同位体データを用いて、ローマ帝国崩壊後のヨーロッパの農村社会の展開を検証した研究(Tian et al., 2024)が公表されました。中世前期のローマ帝国後のヨーロッパの形成において、大規模および小規模両方の水準で上流階層はひじょうに重要な役割を果たしました。イタリアのコッレーニョ(Collegno)における6~8…
中世イベリア半島北部の人類遺骸のゲノムデータを報告した研究(Rodríguez-Varela et al., 2024)が公表されました。本論文は、イベリア半島北部の中世のネクロポリス(大規模共同墓地)であるラス・ゴバス(Las Gobas)で発見された、7~11世紀にかけての33個体を分析し、その家族関係や健康状態が調べられました。…
ドイツ南部で発見された紀元前千年紀の人類のゲノムデータを報告した研究(Gretzinger et al., 2024)が公表されました。アルプス山脈以北のヨーロッパの鉄器時代は、ハルシュタット(Hallstatt)文化(紀元前800~紀元前450年頃)とララ・テーヌ(La Tène)文化(紀元前450~紀元前50年頃)という二つの文化…
中国南西部に位置する貴州省の明代の人類のゲノムデータを報告した研究(Zhang et al., 2024)が公表されました。本論文は、貴州省貴陽(Guiyang)市の大松山(Dasongshan、略してDSS)遺跡で発見された人類7個体のゲノムデータを報告し、現代人のみならず、上部旧石器時代(Upper Palaeolithic、略し…
新石器時代におけるヒトとイヌへのペスト感染を報告した研究(Susat et al., 2024)が公表されました。ペスト菌(Yersinia pestis)は完新世において人類に大きな影響を及ぼしており、高い関心を集めてきました。ペスト菌は歴史時代の感染がとくに有名ですが、先史時代においてもすでに新石器時代(Neolithic、略して…
ストーンヘンジ(Stonehenge)の祭壇石の産地に関する研究(Clarke et al., 2024)が公表されました。ストーンヘンジはイングランドのウィルトシャーのソールズベリー平原に位置する、イギリスにおける最大級の後期新石器時代~青銅器時代にかけての墓地遺跡で、世界的に有名な観光地にもなっています。ストーンヘンジに関しては、…
新石器時代スカンジナビア半島の社会構造とペスト感染に関する研究(Seersholm et al., 2024)が公表されました。本論文は、新石器時代スカンジナビア半島の108個体のゲノムデータを報告するとともに、この集団は約120年間に少なくとも3回、異なるペスト感染を経た、と示しました。こうした繰り返しのペスト感染が、ヨーロッパ新石…
中世シチリア島の人類集団の学際的分析結果を報告した研究(Monnereau et al., 2024)が公表されました。本論文は、中世シチリア島西部に位置するセジェスタ(Segesta)遺跡のキリスト教徒とイスラム教徒の中世の墓地被葬者の、放射性炭素年代測定結果とゲノムデータと同位体データを報告しています。この学際的分析により明らかに…
現在の中華人民共和国広西チワン族自治区の洞窟で発見された近世の被葬者のゲノムデータを報告した研究(Guo et al., 2024)が公表されました。本論文は、広西チワン族自治区のバイタイシャン(Baitaishan)およびフアトゥドン(Huatudong)洞窟で発見された、大元ウルス後期~明代にかけての被葬者4個体のゲノムデータを新…
古代ゲノムデータからウマの家畜化と現代のウマ系統の遺伝的起源を検証した研究(Librado et al., 2024)が公表されました。本論文は、現代の家畜ウマ系統につながる家畜化が始まったのは、紀元前2700年頃以降に始まった深刻なボトルネック(瓶首効果)後で、現代の家畜ウマ系統につながる繁殖管理は、近親交配と世代時間短縮によって紀…
スラウェシ島の洞窟壁画の新たな年代測定結果を報告した研究(Oktaviana et al., 2024)が公表されました。本論文は、スラウェシ島の具象的な洞窟壁画の年代が5万年以上前までさかのぼることを示し、これは具象的表現としては現時点で最古となります。こうした具象的表現は現時点で現生人類(Homo sapiens)でしか確認されて…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、匈奴の墓地被葬者のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析結果を報告した研究(Kim et al., 2024)が公表されました。本論文は、2000年前頃となる匈奴のエリート層の墓地6基の被葬者のmtDNAを解析し、mtDNAハプログループ(mtHg)を決定しました。これら6個体のmtHgで同…
持久走による狩猟の効率性に関する研究(Morin, and Winterhalder., 2024)が公表されました。ヒトには哺乳類では稀な二つの特徴があり、歩行運動筋は疲労耐性繊維が優勢で、発汗により長く激しい活動で生成された代謝熱を効率的に発散します。これらの特徴の有力な進化的説明が持久力追跡(endurance pursuit、…
古代人と現代人のゲノムデータに基づくシベリアの人口史に関する研究(Gill et al., 2024)が公表されました。本論文は、ユーラシア北部東方を中心として、既知の古代人および現代人のゲノムデータの再分析により、おもに完新世以降のシベリアの人口史を再構築しています。本論文はとくに、バイカル湖地域とヤクーチア(Yakutia、サハ共…
レバノン北部の人口史に関する研究(Platt et al., 2024)が公表されました。本論文は、現代のレバノン北部のコウラ(Koura)地区住民の人口史を、近隣地域も含めて現代人と古代人のゲノムデータから推測しています。コウラ地区は現代のレバノンにおいて、他地域と比較してギリシア正教の信者が顕著に多く、それが近代の移住に由来するの…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、スカンジナビア半島中石器時代狩猟採集民の口腔内の健康状態に関する研究(Kırdök et al., 2024)が公表されました。先史時代の噛み跡のある樹脂は、ヒトおよびその口腔微生物叢の両方からの、古代DNAの有用な供給源である、と証明されてきました。本論文は、9890~9540年前頃となる、スウェ…
メロヴィング朝期フランドルの人類集団のゲノムデータを報告した研究(Sasso et al., 2024)が公表されました。北海を横断する交易および文化網の確立への中世前期の人口移動の程度と影響は、何世紀にもわたって議論の対象となってきました。フランドル沿岸の古代人のゲノム解析により、メロヴィング朝後期の共同体で2つの異なる祖先系統(祖…
マヤ文化の有名な都市であるチチェン・イッツァ(Chichén Itzá)の被葬者のゲノムデータを報告した研究(Barquera et al., 2024)が報道されました。チチェン・イッツァはメキシコのユカタン半島に位置し、マヤ文化の古典期後期および末期(600~1000年頃)における最大級の都市とされています。本論文は、チチェン・イ…
ヒト脳の進化と速度に関する研究(Lindhout et al., 2024)が公表されました。現生人類(Homo sapiens)の脳の進化には分子と細胞の独特な特殊化が伴っていましたが、こうした特殊化は、さまざまな認知能力を支えるだけではなく、神経疾患への脆弱性を高めてもいます。こうした特徴には、ヒトに特異的なものもあれば、類縁種と…
ヨーロッパの初期現生人類(Homo sapiens)の形態について、今年(2024年)3月20日~23日にかけてアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス市で開催された第93回アメリカ生物学会(旧称はアメリカ自然人類学会)総会で報告されました(Bejdova et al., 2024)。この報告の要約はPDFファイルで読めます(P15…
言語の機能に関する研究(Fedorenko et al., 2024)が公表されました。言語はヒトを定義づける特徴ですが、言語が果たす機能(あるいは複数の機能)については何世紀にもわたり議論が続いています。本論文は、神経科学と関連分野から得られた最近の証拠を提示し、ヒトは言語を思考のために使うという有力な考えに反して、現生人類(Hom…
ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の炉床の新たな年代測定方法を報告した研究(Herrejón-Lagunilla et al., 2024)が公表されました。旧石器時代のヒトの活動の期間を明らかにすることは、先史考古学的における屈指の難題です。これは、年代測定技術の分解能に限界があるためで、放射性炭素年代…
後期新石器時代ヨーロッパ人類集団における遺伝的構成の大きな変容を報告した研究(Parasayan et al., 2024)が公表されました。後期新石器時代のヨーロッパにおいては、ポントス・カスピ海草原(ユーラシア中央部西北からヨーロッパ東部南方までの草原地帯)を中心にヨーロッパ草原地帯からの大規模な人口移動により、人類集団の遺伝的構…
チンパンジーの社会的学習に関する研究(Leeuwen et al., 2024)が公表されました。文化の累積的進化は、現生人類(Homo sapiens)の生物学的成功に重要なヒトに特有の現象と主張されてきました。累積的な文化進化出現の一つの妥当な条件は、社会的学習を使用して、自身では容易に確信できない方法を獲得する個体の能力です。チ…
類人猿の性染色体の完全な配列を報告した研究(Makova et al., 2024)が公表されました。当ブログでは、以前にはヒトも類人猿に含めており、非ヒト類人猿という用語も使いましたが、最近では、その語源から類人猿にヒトを含めるのは妥当ではない、と考えるようになりました。類人猿を単系統群(クレード)と定義せねばならない合理的な理由は…
古代ゲノムデータに基づく青銅器時代ユーラシア北部の人口史と文化との関連を検証した研究(Childebayeva et al., 2024)が公表されました。本論文は、とくにロシアのオムスク州のロストフカ(Rostovka、略してROT)遺跡とムルマンスク州のコラ(Kola)にあるボリショイ・オレニー・オストロフ(Bolshoy Ole…
エジプトの東部砂漠の前期石器時代と中期石器時代の石器を報告した研究(Leplongeon et al., 2024)が公表されました。エジプトについては、古王国以降の歴史がよく知られているでしょうが、現生人類(Homo sapiens)だけではなく他の人類のアフリカからの拡散経路においても、重要な役割を果たしたと考えられます。エジプト…