ホモテリウム属個体のゲノム解析結果を報告した研究(Barnett et al., 2020)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、ネコ科の剣歯虎(マカイロドゥス亜科)のホモテリウム族の1種(Homotherium latidens)のゲノムデータを報告します。この記事では仮に「三日月刀歯虎」と訳して…
アジア南東部における人類も含む大型動物絶滅の環境要因に関する研究(Louys, and Roberts., 2020)が報道されました。アジア南東部は北部のインドシナ地域と南部のスンダ地域で構成されており、広大なフタバガキ科熱帯雨林により特徴づけられ、世界で最も種が豊富な生態系を有します。アジア南東部では、寒冷期に海面が低下するとスン…
都道府県単位の日本人の遺伝的構造に関する研究(Watanabe et al., 2021)が報道され、話題になっているようです。日本語の解説記事もあります。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文では、日本人の遺伝的構造を解明するため、47都道府県単位と、さらに大きな9地域区分(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・…
ヒトの読書能力と下側頭葉皮質のリサイクルの奸計についての研究(Rajalingham et al., 2020)が報道されました。ヒトが読み書きのシステムを開発し始めたのは、過去数千年以内のことです。ヒトの読書能力は他の動物種と一線を画すものですが、数千年はヒトの脳が特に読書に専念する新しい領域を進化させるにはあまりにも短い時間枠です…
鳴禽類では旱魃期に繁殖活動が減ることを報告した研究(Martin, and Mouton., 2020)が公表されました。旱魃の頻度と強度を含む気候変動性は今後の温暖化とともに激化する、と予測されています。一般に寿命の長い種ほど繁殖率が低いため、気候変動による個体の死滅から立ち直る能力が低い、と考えられています。しかし、生存と繁殖はト…
ヒトの空間記憶における高カロリー食品の優先を報告した研究(de Vries et al., 2020)が公表されました。この研究は、食品の位置記憶を測定するための実験を行ない、512人の参加者に対して、食品サンプルまたは食品の香りがする脱脂綿の入った瓶(合計8点)がそれぞれ別々に配置された部屋の中を、決められた順路に従って進むように指…
ユダヤ砂漠南部の上部旧石器時代に関する研究(Barzilai et al., 2020)が公表されました。ユダヤ砂漠地域の上部旧石器時代は、いくつかの洞窟および岩陰遺跡で知られています。20世紀前半の発掘では、アータバン(Taban)遺跡B層やエルクエルアフマール(Erq el-Ahmar)遺跡F~B層やエルハイム(el-Khiam)…
レヴァントにおける30万年以上前の加熱処理による石器製作を報告した研究(Agam et al., 2021)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。細粒の堆積岩である燧石(フリント)は、アフリカや近東やヨーロッパの遺跡の人類により石材として用いられました。実験的・考古学的・民族誌的研究から、燧石の熱処理がその破…
貧困層の人々の富裕層への課税に対する支持に関する研究(Sands, and de Kadt., 2020)が公表されました。心理学研究から、個人の態度形成は仲間や他者との社会的比較によって形作られる、と示されています。人々は、不平等に関する情報を提示されると行動を変え、たとえば、気前が悪くなったり、協力的でなくなったりする、と明らかに…
マウスの性決定遺伝子に関する研究(Miyawaki et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。哺乳類には雄と雌の性があります。どのように性が決まるのか、古代ギリシア時代より議論されており、性決定の研究分野は生物学の大きな主題の一つです。哺乳類の性は性染色体の組み合わせで決まる、と知られています。XX型は雌…
ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)由来の遺伝子に起因する新型コロナウイルス症の重症化に関する研究(Zeberg, and Pääbo., 2020)が報道されました。日本語の解説記事もあります。この研究はオンライン版での先行公開となります。今年(2020年)、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の世…
カンブリア紀の寄生の証拠に関する研究(Zhang et al., 2020)が公表されました。腕足動物は小さな貝殻のような海洋動物で、軟体動物の二枚貝類に似ています。現生腕足動物は約450種ですが、化石記録からは12000種以上が知られています。この研究は、中国雲南省で発見され、約5億1200万年前と推定されたカンブリア紀の腕足動物(…
ポルトガルにおける4万年前頃までさかのぼるオーリナシアン(Aurignacian)の痕跡に関する研究(Haws et al., 2020)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文の見解の概要は、すでに人間進化研究ヨーロッパ協会第9回総会で報告されていました(関連記事)。以下の年代は、基本的に放射性炭素年代…
信頼性を伝える顔の特徴に関する研究(Safra et al., 2020)が公表されました。社会的信頼は、積極的な社会的成果(経済実績の向上や犯罪率の低下など)に関連しています。しかし、信頼が何によって生じるのか、明確になっていません。その理由の一つは、社会的信頼の変化を長期間にわたって定量的に記録することが困難であるためです。この研…
ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)のY染色体DNA解析に関する研究(Petr et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。本論文はすでに今年(2020年)3月、査読前に公開されていました(関連記事)。その時と内容は基本的…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、青銅器時代レヴァント南部集団のゲノム解析に関する研究(Agranat-Tamir et al., 2020)が報道されました。紀元前3500~紀元前1150年頃となる青銅器時代は、現在のイスラエルとヨルダンとレバノンとパレスチナ自治政府とシリア南西部を含むレヴァント南部の形成期でした。この時期には、…
淡水生態系の健全性にとって重要な腐肉食性のカメに関する研究(Santori et al., 2020)が公表されました。コイは、オーストラリアの多くの地域で有害生物とされ、その死骸が分解して生じる副産物であるアンモニアは、高濃度になると動物に対して毒性を示します。この研究は、ホークスビュー環礁で捕獲された雄の淡水性のカメ(Emydur…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、新石器時代から青銅器時代の近東人類集団の遺伝的構成に関する研究(Skourtanioti et al., 2020)が報道されました。農耕開始以降、近東は複雑で初期国家水準の社会の形成において影響力のある地域で、19世紀以来大きな考古学的関心を集めてきました。過去10年の古代DNA研究の発展により、…
アラビア半島内陸部における海洋酸素同位体ステージ(MIS)5の現生人類(Homo sapiens)の足跡に関する研究(Stewart et al., 2020)が報道されました。アジア南西部はアフリカとユーラシアの間の重要な生物地理学的出入口なので、アフリカとユーラシア全域における人類と動物相の拡散および進化の理解に重要です。アフリカ…
ヴァイキングのゲノム解析に関する研究(Margaryan et al., 2020)が報道されました。ヴァイキング(Viking)は、襲撃・探検・略奪などを意味する「víking」という古ノルド語(古北欧語)に由来します。紀元後750~1050年頃となるヴァイキング時代の事象は、ヨーロッパの政治・文化・人口地図を変えました。スカンジナ…
チンパンジーの行動多様性と環境に関する研究(Kalan et al., 2020)が公表されました。生物種や生物個体群において発達する行動特性と文化特性は、その生物種や生物個体群が生息する環境によって形成される場合もあります。たとえば、行動の種類が多ければ、長期間にわたって環境の変動性に対処する上で役立つ可能性があります。この研究は、…
家畜ウマのアナトリア半島起源説を検証した研究(Guimaraes et al., 2020)が公表されました。5500年前頃となるウマの家畜化は、古代世界で最重要の技術革新の一つです。馬力の利用により、ウマは輸送に革命を起こし、交易・戦争・移住のパターンに影響を及ぼしたので、古代世界の政治・経済・社会関係は変化しました(関連記事)。考…
人間進化研究ヨーロッパ協会第10回総会で、コーカサスの25000年前頃の人類のゲノムデータに関するPDFファイル(Gelabert et al., 2020)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P49)。近年では、環境DNA研究の古代DNA研究の応用により、遺跡の堆積物から、後期および中期更新世のさまざまなホモ…
人間進化研究ヨーロッパ協会第10回総会で、イスラエルの旧石器時代遺跡の堆積物のDNA解析に関する研究(Slon et al., 2020)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P110)。古代DNA研究の進展により、ユーラシアにおいて更新世人類のDNA解析に成功したため、中部旧石器時代と上部旧石器時代の人類集団の…