古代DNAデータからバヌアツにおける複数の移住を推測した研究(Lipson et al., 2020)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。太平洋の人類史研究における重要な違いは、ニアオセアニアとリモートオセアニアとの間にあります。ニアオセアニアは西太平洋の一部で、ニューギニアやビスマルク諸島(ニューブリテン…
ヨーロッパの上部旧石器時代の一卵性双生児に関する研究(Teschler-Nicol et al., 2020)が公表されました。4万~3万年前頃、現在のオーストリアのニーダーエスターライヒ州のクレムス(Krems)市中心部を、上部旧石器時代の狩猟採集民が繰り返し利用していました。これらの上部旧石器時代遺跡は、ヨーロッパ中央部の早期現生…
翼竜類の食性に関する研究(Bestwick et al., 2020)が公表されました。食物を噛んだ時、食物に歯型が残るのと同様に歯にも跡が残ります。歯に残る跡は、食物によって異なるため、こうした跡を用いて、さまざまな動物の食生活を推測できます。この研究は、17属のさまざまな翼竜の歯の化石に残されたマイクロメートル以下の跡のパターンを…
翼竜類の飛行効率に関する研究(Venditti et al., 2020)が公表されました。生物多様性の長期的な蓄積の過程では、生物による新たな生態学的機会の利用を可能とする、大規模な進化的移行が繰り返し起きてきました。1億5000万年以上にわたって空を支配し、白亜紀の終わり(約6500万年前)に非鳥類型恐竜と共に絶滅した中生代の飛行…
爆発的な適応放散の生態学的・ゲノム的基盤に関する研究(McGee et al., 2020)が公表されました。種分化の速度は系統間で著しく異なり、新たな適応放散の中で何が種分化事象を次々に駆動しているのか、ということについての理解は、まだ不完全です。カワスズメ科の魚類(シクリッド類)はそうした多様性の顕著な例で、緩やかな種分化を経た系…
古代ゲノムデータに基づくイヌの進化史に関する研究(Bergström et al., 2020)が報道されました。オオカミは、ヒトが相利共生関係を築いた最初の動物でした。イヌの家畜化の年代・起源地・回数について、ほとんど合意はありませんが、考古学的記録はヒトとの長期にわたる密接な関係を証明します。現代のイヌのゲノムは複雑な集団構造を明…
アフリカ人の包括的なゲノムデータを報告した研究(Choudhury et al., 2020)が公表されました。世界規模でのゲノム解析により、現代人で最も遺伝的多様性が高いのはアフリカ人と示されています。こうしたゲノムデータは、医療にも役立てられています。しかし、現在までに、約2000のアフリカの民族言語集団のうちわずかしか遺伝的に特…
チベット高原の更新世堆積物のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析結果を報告した研究(Zhang et al., 2020)が公表されました。種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)は、南シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)遺跡で見つかった手の末節骨の断片から決定されたゲノム配列により初め…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、横浜市の称名寺貝塚遺跡の人類遺骸のmtDNA解析に関する研究(Takahashi et al., 2020)が公表されました。称名寺貝塚遺跡は、縄文時代後期初頭の考古学的指標とされる称名寺式土器で有名です。2017年の発掘では、人類遺骸を伴う25の土坑墓が発見されました。これらの人類遺骸には…
エンドセリン経路の進化と神経堤細胞の多様化に関する研究(Square et al., 2020)が報道されました。魚は最初の脊椎動物で、そこからヒトを含む他のすべての脊椎動物が進化しました。しかし、最初の魚が進化した直後の化石記録にはギャップがあり、それは小さく柔らかい骨格のために化石記録に保存されていなかったからです。そこで、化石で…
アフリカ東部の環境変化と中期石器時代への移行に関する研究(Potts et al., 2020)が報道されました。環境変化と人類の進化を結びつける仮説は、地球規模もしくは地域規模の気候変化と主要な進化基準との間の時間的相関に焦点を当ててきました。アフリカにおける人類の進化に関しては、軌道周期による乾燥化や湿潤化や気候変動の増加が、どの…
高齢の野生チンパンジーの社会行動に関する研究(Rosati et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。社会情動的選択性理論(SST)は、年を取るにつれて人は老い先短いという感覚ゆえに確立されたポジティブな関係を優先させるようになり、新しい友達を作るより最も親密で最も古くからの最も大切な友達と過ごす方を選ぶ…
クローヴィス(Clovis)文化の年代に関する研究(Waters et al., 2020)が報道されました。本論文はクローヴィス文化の各遺跡の信頼性が高い年代を提示していてたいへん意義深く、今後の研究で長く参照されるでしょう。長い間、アメリカ大陸における最古の文化はクローヴィスで、クローヴィス文化からその後の南北アメリカ大陸の技術が…
エジプト第25王朝のミイラのミトコンドリアDNA(mtDNA)結果を報告した研究(Drosou et al., 2020)が公表されました。タカブチ(Takabuti)は、紀元前660年頃エジプト第25王朝下のテーベに住んでいた女性で、そのミイラ化した遺骸と棺は、1834年に北アイルランドのベルファストに運ばれ、現在はアルスター博物館…
ヒトの皮膚由来の個々のメラノサイトのゲノムの全体像に関する研究(Tang et al., 2020)が公表されました。ヒトの全細胞は固有の体細胞変異セットを持っていますが、個々の細胞の遺伝型を包括的に決定することは困難です。この研究は、正常なヒト皮膚において、この障害を克服する方法について報告します。これにより、ヒト皮膚由来の個々のメ…
ホモテリウム属個体のゲノム解析結果を報告した研究(Barnett et al., 2020)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、ネコ科の剣歯虎(マカイロドゥス亜科)のホモテリウム族の1種(Homotherium latidens)のゲノムデータを報告します。この記事では仮に「三日月刀歯虎」と訳して…
アジア南東部における人類も含む大型動物絶滅の環境要因に関する研究(Louys, and Roberts., 2020)が報道されました。アジア南東部は北部のインドシナ地域と南部のスンダ地域で構成されており、広大なフタバガキ科熱帯雨林により特徴づけられ、世界で最も種が豊富な生態系を有します。アジア南東部では、寒冷期に海面が低下するとスン…
都道府県単位の日本人の遺伝的構造に関する研究(Watanabe et al., 2021)が報道され、話題になっているようです。日本語の解説記事もあります。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文では、日本人の遺伝的構造を解明するため、47都道府県単位と、さらに大きな9地域区分(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・…
ヒトの読書能力と下側頭葉皮質のリサイクルの奸計についての研究(Rajalingham et al., 2020)が報道されました。ヒトが読み書きのシステムを開発し始めたのは、過去数千年以内のことです。ヒトの読書能力は他の動物種と一線を画すものですが、数千年はヒトの脳が特に読書に専念する新しい領域を進化させるにはあまりにも短い時間枠です…
鳴禽類では旱魃期に繁殖活動が減ることを報告した研究(Martin, and Mouton., 2020)が公表されました。旱魃の頻度と強度を含む気候変動性は今後の温暖化とともに激化する、と予測されています。一般に寿命の長い種ほど繁殖率が低いため、気候変動による個体の死滅から立ち直る能力が低い、と考えられています。しかし、生存と繁殖はト…
ヒトの空間記憶における高カロリー食品の優先を報告した研究(de Vries et al., 2020)が公表されました。この研究は、食品の位置記憶を測定するための実験を行ない、512人の参加者に対して、食品サンプルまたは食品の香りがする脱脂綿の入った瓶(合計8点)がそれぞれ別々に配置された部屋の中を、決められた順路に従って進むように指…
ユダヤ砂漠南部の上部旧石器時代に関する研究(Barzilai et al., 2020)が公表されました。ユダヤ砂漠地域の上部旧石器時代は、いくつかの洞窟および岩陰遺跡で知られています。20世紀前半の発掘では、アータバン(Taban)遺跡B層やエルクエルアフマール(Erq el-Ahmar)遺跡F~B層やエルハイム(el-Khiam)…
レヴァントにおける30万年以上前の加熱処理による石器製作を報告した研究(Agam et al., 2021)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。細粒の堆積岩である燧石(フリント)は、アフリカや近東やヨーロッパの遺跡の人類により石材として用いられました。実験的・考古学的・民族誌的研究から、燧石の熱処理がその破…
貧困層の人々の富裕層への課税に対する支持に関する研究(Sands, and de Kadt., 2020)が公表されました。心理学研究から、個人の態度形成は仲間や他者との社会的比較によって形作られる、と示されています。人々は、不平等に関する情報を提示されると行動を変え、たとえば、気前が悪くなったり、協力的でなくなったりする、と明らかに…