大相撲夏場所千秋楽

 今場所は大混戦となり、優勝争いが読みにくい展開となりました。その要因は、照ノ富士関が本調子ではなく、大関3人が全員不振だったからですが、照ノ富士関の膝の状態はかなり悪そうで、押し相撲への脆さが見られ、もう横綱昇進前後のような圧倒的強さを示すことは難しそうです。相撲関係者も相撲愛好者も、何よりも照ノ富士関自身も、横綱として長く務めることは難しいと考えていたでしょうが、いよいよ引退が見えてきた感もあります。もちろん完治はないとしても、2場所くらい休場して立て直しにかけてもよいのではないか、とも思いますが。

 それでも、照ノ富士関の地力はさすがで、大関3人が総崩れとなる中で、千秋楽まで優勝争いに残りました。その照ノ富士関に勝ち、終盤になって優勝争いの先頭に立ったのが隆の勝関で、関脇での勝ち越しもあるものの、三役での二桁勝利はなく、もう1年以上三役での勝ち越しがなかっただけに、上がり目はないかな、と思っていました。それだけに、今場所の活躍はやや意外でしたが、大関昇進は難しいとしても、三役で再度勝ち越すことは可能でしょうし、また優勝争いに絡むこともあるでしょう。

 優勝争いは、14日目が終わった時点で、3敗の照ノ富士関と隆の勝関、4敗の大栄翔関と佐田の海関に絞られました。まず、隆の勝関と佐田の海関が対戦し、掬い投げで佐田の海関が勝ちました。隆の勝関は優勝を意識し過ぎたのでしょうか。次に大栄翔関が志摩ノ海関と対戦し、叩き込みで大栄翔関が勝ち、優勝決定戦進出の可能性を残し、結びの一番を待つことになりました。結びの一番では照ノ富士関が御嶽海関と対戦し、照ノ富士関があっさりと寄り切って勝ち、7回目の優勝を果たしました。今場所の御嶽海関の不調と、照ノ富士関がじょじょに調子を上げてきたことから予想通りの結果でしたが、それにしても出場している以上、御嶽海関にはもっと何とかしてもらいたかったものです。

 先場所優勝の若隆景関は勝ち越したものの9勝6敗と期待に応えられず、やはり大関昇進は難しそうです。次の大関の最有力候補は豊昇龍関だと思いますが、今場所は8勝7敗と勝ち越したものの、優勝争いに絡めませんでした。まだ力不足といった感は否めないものの、照ノ富士関の引退が見えてきただけに、豊昇龍関には年内には大関昇進を決めて、早く横綱に昇進できるだけの実力を着けてもらいたいものです。豊昇龍関が伸び悩むようだと、横綱空位期間はかなり長くなりそうです。

 総崩れとなった大関3人は深刻で、御嶽海関は序盤で負傷したのか精彩を欠く取り組みが多く6勝9敗と負け越してしまい、正代関は先場所のように前半が大不振で5勝10敗と大きく負け越し、貴景勝関は相撲内容に大きな差があり、千秋楽にやっと勝ち越しを決めました。大関3人の不振を見ると、近いうちに全員が大関から陥落しても不思議ではありません。こうなると、四つ相撲の朝乃山関が不祥事で6場所出場停止となり大関から陥落したのは本当に痛かった、と思います。朝乃山関は来場所おそらく三段目で復帰となり、すぐに幕内まで復帰できるでしょうが、大関に復帰できるかとなると、微妙なところです。

 可能性は低そうですが、近いうちに照ノ富士関が引退し、現在の大関3人が全員陥落するか引退して、大関昇進の基準を満たせなくとも、関脇から2人が大関に昇進するかもしれません。若手がなかなか一気に大関、さらには横綱に昇進しないことを不甲斐ないと責める人も少なくないかもしれませんが、今でも日本出身力士が圧倒的に多く、少子高齢化が進展している中で、以前よりも入門する力士の素質というか身体能力が劣っているのかもしれません。近年では、以前よりも高齢の幕内力士の活躍が目立つように思いますが、それも少子高齢化社会と関連しているのではないか、と考えています。さらに、以前よりも八百長が激減しているのだとしたら、若手力士が大関に昇進するのはなかなか難しそうですし、もちろん横綱に昇進するのはそれ以上の難易度です。横綱不在や大関の不振を嘆く相撲関係者と相撲愛好者は多そうですが、混戦に慣れてきたので、混戦が長く続いても相撲を楽しめそうです。

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