イベリア半島北東部の更新世人類化石のゲノム
先月(2026年9月)17~19日にかけてスペインのブルゴスで開かれたヒト進化研究ヨーロッパ協会第16回総会で、スペインのカタルーニャ州のジローナ(Girona)県のバニョラス(Banyoles)で発見された人類化石の遺伝学的研究(Szymanski et al., 2026)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P270)。[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。
バニョラス下顎は、1886年にバニョラス(イベリア半島北東部の)の町と湖の近くにある石灰岩採石場で発見されました。バニョラス下顎は考古学的背景を伴わない孤立した古生物学的発見ですが、周囲の石灰華の年代測定とエナメル質および象牙質断片の直接的な年代測定から、73000~41000年前頃に位置づけられています。形態学的には、現生人類(Homo sapiens)に派生的な特徴(たとえば、明確な顎)がバニョラス下顎には描けており、1915年以降、バニョラス下顎はネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)もしくは中期更新世ホモ属に分類されました。最近の形態計測研究は、バニョラス下顎を初期現生人類に分類しました。
バニョラス個体の分類学的および人口集団水準の類似性を明らかにするために、古代DNA(deoxyribonucleic acid、デオキシリボ核酸)用に右側第三大臼歯から6点の部分標本が採取されました。DNAは各部分標本から抽出され、一本鎖DNAライブラリへと変換され、それがヒトのmtDNA(mitochondrial DNA、ミトコンドリアDNA)および核DNAでさらに濃縮されました。
バニョラス個体のDNA保存状態は概して悪いと分かりましたが、より深い歯の内部から採取された部分標本では、真正の古代DNA断片の割合がより高くなりました。すべての部分標本は高水準の現代人のDNA汚染(60%超)を示し、下流分析では厳格な選別戦略の適用が必要となりました。
mtDNAと核DNAの両方で、現生人類とネアンデルタール人と種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)の系統に固有の診断可能な部位が検証されると、現生人類の多様体の裏づけのみが見つかり、最近の形態学に基づく分類が支持されました。性染色体の分析はX染色体とY染色体両方の等しい裏づけを示し、バニョラス個体は男性と示唆されます。、mtHg(mtDNA haplogroup、ミトコンドリアDNAハプログループ)はUと分かり、これはLGM(Last Glacial Maximum、最終氷期極大期)の前後の旧石器時代人口集団において一般的な系統です。
現代人のゲノム(124万参照パネル)における124万ヶ所の可変部位[5]を用いて、バニョラス個体が現生人類集団と比較されました。バニョラス標本について示唆されていた年代とは異なり、バニョラス個体は、チェコのコニェプルシ(Koněprusy)洞窟群で発見された洞窟群の頂上の丘にちなんでズラティクン(Zlatý kůň)と呼ばれる個体や、シベリア南部西方のウスチイシム(Ust’-Ishim)で発見された個体といった、4万年前頃に生存していた現生人類の個体群とはまとまりません。むしろ、バニョラス個体のゲノムは、コステンキ・ボルシェヴォ(Kostenki-Borshchevo)遺跡群の一つであるコステンキ14号(Kostenki 14)遺跡個体など33000~23000年前頃の個体群や、ヨーロッパのオーリナシアン(Aurignacian、オーリニャック文化)やグラヴェティアン(Gravettian、グラヴェット文化)と関連するその後の個体群の方と、より近くなっています。このより新しい位置づけは、ネアンデルタール人と初期現生人類との間の混合事象により近い時期に生存していた個体群で予測される、バニョラス個体における長いネアンデルタール人由来断片の欠如によってさらに裏づけられます。
まとめると、遺伝学的証拠は、バニョラス個体が以前に考えられていたよりも新しい上部旧石器時代の男性個体であることを示しています。しかし、バニョラス個体には、その古代型の形態、および遺伝的データと以前の問題測定の試みとの間の不一致があり、将来の研究に多くの問題が残されています。
参考文献:
Szymanski M. et al.(2026): Ancient DNA analyses of the Banyoles mandible. The 16th Annual ESHE Meeting.
[5]Mathieson I. et al.(2015): Genome-wide patterns of selection in 230 ancient Eurasians. Nature, 528, 7583, 499–503.
https://doi.org/10.1038/nature16152
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バニョラス個体のDNA保存状態は概して悪いと分かりましたが、より深い歯の内部から採取された部分標本では、真正の古代DNA断片の割合がより高くなりました。すべての部分標本は高水準の現代人のDNA汚染(60%超)を示し、下流分析では厳格な選別戦略の適用が必要となりました。
mtDNAと核DNAの両方で、現生人類とネアンデルタール人と種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)の系統に固有の診断可能な部位が検証されると、現生人類の多様体の裏づけのみが見つかり、最近の形態学に基づく分類が支持されました。性染色体の分析はX染色体とY染色体両方の等しい裏づけを示し、バニョラス個体は男性と示唆されます。、mtHg(mtDNA haplogroup、ミトコンドリアDNAハプログループ)はUと分かり、これはLGM(Last Glacial Maximum、最終氷期極大期)の前後の旧石器時代人口集団において一般的な系統です。
現代人のゲノム(124万参照パネル)における124万ヶ所の可変部位[5]を用いて、バニョラス個体が現生人類集団と比較されました。バニョラス標本について示唆されていた年代とは異なり、バニョラス個体は、チェコのコニェプルシ(Koněprusy)洞窟群で発見された洞窟群の頂上の丘にちなんでズラティクン(Zlatý kůň)と呼ばれる個体や、シベリア南部西方のウスチイシム(Ust’-Ishim)で発見された個体といった、4万年前頃に生存していた現生人類の個体群とはまとまりません。むしろ、バニョラス個体のゲノムは、コステンキ・ボルシェヴォ(Kostenki-Borshchevo)遺跡群の一つであるコステンキ14号(Kostenki 14)遺跡個体など33000~23000年前頃の個体群や、ヨーロッパのオーリナシアン(Aurignacian、オーリニャック文化)やグラヴェティアン(Gravettian、グラヴェット文化)と関連するその後の個体群の方と、より近くなっています。このより新しい位置づけは、ネアンデルタール人と初期現生人類との間の混合事象により近い時期に生存していた個体群で予測される、バニョラス個体における長いネアンデルタール人由来断片の欠如によってさらに裏づけられます。
まとめると、遺伝学的証拠は、バニョラス個体が以前に考えられていたよりも新しい上部旧石器時代の男性個体であることを示しています。しかし、バニョラス個体には、その古代型の形態、および遺伝的データと以前の問題測定の試みとの間の不一致があり、将来の研究に多くの問題が残されています。
参考文献:
Szymanski M. et al.(2026): Ancient DNA analyses of the Banyoles mandible. The 16th Annual ESHE Meeting.
[5]Mathieson I. et al.(2015): Genome-wide patterns of selection in 230 ancient Eurasians. Nature, 528, 7583, 499–503.
https://doi.org/10.1038/nature16152
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