多細胞性の起源

 多細胞性の起源に関する研究(Li et al., 2026)が公表されました。動物が、単細胞祖先から複雑な多細胞性をどのように進化させたのか、大きな関心が寄せられてきましたが(関連記事)、依然として解明されていません。動物の単細胞近縁種は、クローン分裂、多数の核を持つ多核体の形成あるいは凝集によって、単純な多細胞性を示します。したがって、動物の多細胞性は、これらの挙動の一つ(あるいはその組み合わせ)から進化した可能性があります。じゅうらい、凝集は複雑な多細胞性へ至る手段としては重視されてきませんでした。

 しかし、凝集は現生動物の多くの細胞で起こり、最近では動物に近縁の単細胞生物3種、つまり襟鞭毛虫のサルピンゴエカ・ロゼッタ(Salpingoeca rosetta)およびコアノエカ・フレクサ(Choanoeca flexa)と、およびフィラステレアのカプサスポラ・オウチャルザキ(Capsaspora owczarzaki)においても報告されています。これらの種における凝集が派生的であるか祖先的であるのかは不明で、動物の起源との関連性も分かっていません。

 本論文は、この空白を埋めるために、動物に近縁な別の単細胞生物が凝集できるかどうかを調べました。その結果、海洋性の自由生活種で細菌食性のフィラステレア類ミニステリア・ヴィブランス(Ministeria vibrans)が、再現性のある動態で均質な凝集体を形成し、この凝集体が長期的に安定である、と分かりました。また、摂食と交配の改善がこの凝集をもたらす進化的駆動要因である可能性が示されました。

 注目すべきことに、細胞接着やシグナル伝達や転写調節に関与する、多くの動物多細胞性遺伝子のホモログ(相同体)が凝集過程で利用されている、と分かりました。これは、これらの遺伝子が、動物の多細胞発生に転用される以前に動物の単細胞祖先において、凝集のために用いられていた可能性を示しています。したがって、本論文の結果は、凝集型多細胞性が多細胞動物の遺伝的ツールキットの進化に重要であった、との見解と整合します。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


進化学:動物の起源に凝集型多細胞性を結び付ける単細胞近縁種

進化学:凝集も多細胞性の進化に関与した可能性

 原生生物のフィラステレアであるMinisteria vibransは、多細胞動物の近縁種で、細菌食性である。今回、M. vibransを細菌と共に培養すると、安定な多細胞凝集体を形成し、減数分裂に関連する遺伝子群を発現することが分かった。食餌と有性生殖が、多細胞性の進化を促した可能性があるのだろうか。



参考文献:
Li R. et al.(2026): A unicellular relative links aggregative multicellularity to animal origins. Nature, 656, 8129, 913–923.
https://doi.org/10.1038/s41586-026-10748-5

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