青銅器時代ヨーロッパの経済行動

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、青銅器時代ヨーロッパの経済行動に関する研究(Ialongo, and Nn., 2024)が公表されました。ヒトは常にモノを売買してきたのでしょうか?この一見すると些細な問題は、文化的進化の理解における最も顕著な盲点の一つ、つまり、現在において「現代的な」経済的行動と認識されるものの出現を浮き彫りにします。本論文で検証される仮説は、おもに青銅器時代と重なる先史時代ヨーロッパ(紀元前2300~紀元前800年頃)における消費パターンが対数正規分布し、日常的な支出が供給および需要および収入と相関する、と予測する標準的な経済理論によって説明できる、というものです。

 青銅器時代のヨーロッパの考古学に関するこれまでの研究では、身分の高い個人が生産と貿易を管理し、社会内のほとんどの個人世帯はめったに商品を交換しなかった、と仮定されることが多くありました。これは、多くの世帯が少数の高価な買い物をしていたことになり、より多くの安価な買い物をする現代の経済とは異なります。しかし、青銅器時代のヨーロッパ社会における、地位の高くない個人の経済行動と比較してどうなのかについては、ほとんど知られていない。

 ヨーロッパ北部および南部(イタリア、スイス、オーストリア、スロベニア、ドイツ)にまたがる遺跡から発見された、紀元前2300~紀元前800年頃の銅および銅合金の大規模なデータベース(23711点)に基づくと、これらの物体の質量が、紀元前1500年以降(計量技術の発明と普及の後)には一貫して10グラムの倍数に従っている、と分かりました。さらに、その全体的な分布は、重量規制貨幣に関する現代経済理論の予測と一致することも分かりました。これらの金属断片は貨幣的に使用され、消費の代用指標として扱われた、というわけです。

 2通りの代替的な想定を模擬実験すると、(1)無作為行動では考古学的データで観察された分布は生じず、(2)現代的な経済的行動が先史時代の消費に最適なモデルを提供する、と示されます。青銅器時代のヨーロッパでは、金属だけが支払手段ではなかったものの、計量技術の普及によって、物々交換など他の制度よりも貨幣的な金属断片が取引の主要な手段になった、と推測されます。紀元前三千年紀以降の他地域との比較の進展も期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


考古学:先史時代のヨーロッパにおける経済行動は現代の消費行動に似ていた

 青銅器時代のヨーロッパ(紀元前2300年–800年)の経済取引は、現代の経済行動と類似していた可能性があるという考古学的証拠に基づいた論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。この発見は、経済行動が最近の人類史を通じて驚くほど一貫していた可能性を示唆している。

 青銅器時代のヨーロッパの考古学に関するこれまでの研究では、身分の高い個人が生産と貿易を管理し、社会内のほとんどの個人世帯はめったに商品を交換しなかったと仮定されることが多かった。これは、多くの世帯が少数の高価な買い物をし、より多くの安価な買い物をする現代の経済とは異なる。しかし、青銅器時代のヨーロッパ社会における、地位の高くない個人の経済行動と比較してどうなのかについては、ほとんど知られていない。

 Nicola IalongoとGiancarlo Lagoは、ヨーロッパ北部と南部(イタリア、スイス、オーストリア、スロベニア、ドイツ)の遺跡から発見された、紀元前2300年から前800年の間に作られた23,711個の銅と銅合金の品々を調査した。著者らは、これらの物体の質量が、紀元前1500年以降(計量技術の発明と普及の後)、一貫して10グラムの倍数に従っていること、そしてその全体的な分布が、重量規制貨幣に関する現代経済理論の予測と一致していることを発見した。著者らは、統計モデルを用いて、銅合金のサンプル内の重さの分布はおそらくランダムな状況によるものではないと判断し、銅合金が紀元前1500年以降ヨーロッパで貨幣として使用されていたことを示唆した。

 さらなるシミュレーションの結果、著者らはさらに、(これらの金属製品が貨幣として流通していたと仮定して)現代の経済理論でその分布を説明できると結論づけた。著者らは、青銅器時代のヨーロッパにも、現在と同様に、家庭レベルの需要と地域市場が重要な経済的原動力であったことを示唆している。

 IalongoとLagoは、青銅器時代のヨーロッパでは、金属だけが通貨や支払手段ではなかったことを認めている。しかし、著者らは、計量技術の普及によって、物々交換など他のシステムよりも貨幣が取引の主要な手段となったことを指摘している。




参考文献:
Ialongo N, and Lago G.(2024): Consumption patterns in prehistoric Europe are consistent with modern economic behaviour. Nature Human Behaviour, 8, 9, 1660–1675.
https://doi.org/10.1038/s41562-024-01926-4

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