『卑弥呼』第173話「新しい国」
『ビッグコミックオリジナル』2026年10月5日号掲載分の感想です。前号は休載だったので、久々の感があります。前回は、那(ナ)国の那城(ナシロ)で、ヤノハが魏の使節団長である建中校尉の梯儁と会見し、倭国には呉まで渡る航海術がなく、魏と呉が全面衝突した場合、倭国は呉を側面から突けないので、魏の皇帝には倭国との同盟を破棄するよう進言する、とヤノハに伝えたところで終了しました。今回は、梯儁が倭国での観察を回想し、ヤノハに、倭国には呉まで渡れる性能を有する舟がない、と指摘する場面から始まります。倭国の舟は丸太を刳り貫いて作った、二人から四人乗りの丸木舟がほとんどで、残りは、丸木舟の前後を継ぎ合わせて補強した、七人乗り程度の複材刳舟で、舷側板を継ぎ足した大型の準構造舟はほとんどなく、ましてや帆船がないので、その程度の船団では呉の側面を突くのはとうてい無理というわけです。呉を攻めるには最低でも一万人の兵、つまり十人乗りの舟が千艘必要で、そのうち何艘が無事に大海を渡れるのか、と梯儁はヤノハを問い質し、故に同盟の破棄を希望する、と通告します。
ヤノハは冷静に、琉求(沖縄諸島でしょうか)まで七つの島、夷州(台湾でしょうか)まで十の島があり、島伝いならば呉まで行けないことはないだろう、と返答します。遠回りになる、と梯儁に指摘されたヤノハは、そう言われると思ってすでに手を打っており、加羅に人を送ったので、一年待っていただければ、倭の新しい国をつくる、と返答します。ヤノハは二日前に、新たな国をつくってもらいたい、とトメ将軍に指示していました。ゴリとともに加羅へと渡り、その周辺にある大勢の倭人の邑を統合して新たな国として独立し、倭国の駐屯地にしたい、というわけです。ヤノハにその策を進言したのはミマアキでした。ヤノハはさらに、遼東郡に倭軍の駐屯地を置かせてもらいたい、と梯儁に提案します。そうすれば、呉の側面は突けずとも、東から魏に進軍する呉軍を食い止めることは可能というわけです。すると梯儁は、いやまいった、と言って笑みを浮かべます。しかし、魏と倭の同盟は問題ないのだな、とヤノハが念押ししても、再考には値する、と梯儁は答えます。
淡海(琵琶湖)に到着したミマアキとオオヒコは、その大きさに驚いていました。オオヒコはここでミマアキと別れて、越(コシ)国で日下(ヒノモト)が派遣していると思われるヤツハギと戦い、ミマアキは山社(ヤマト)へと変えることになります。淡海の西岸を行けば日下の手勢と遭遇することはなく、そこから山背(山城)国と武庫(ムコ)国を抜けて海に出ることを、オオヒコはミマアキに勧めます。越国のサクタ王の書状は、すでにヤノハへと送られていました。ヤツハギとは厳しい戦いになる、とミマアキは案じますが、考えようによっては山社にとってよい話で、日下が挙兵したさいに越にいれば背後を突ける、とオオヒコは言います。それでもミマアキは、日下の動向を案じていました。自分たちが堂々と日下の周囲の国々を訪れても動かないことが、不審というわけです。厲鬼(レイキ)、つまり疫病でそれどころではないのだろう、とオオヒコは考えますが、もっと別な理由があるのではないか、とミマアキは推測していました。ミマアキはトメ将軍とともに日下を訪れたさい、恐ろしい手練れに追われましたが、タギシ王の末裔である阿多(アタ)のチカトから、その追手は伊香(イカガ)のシコオが率いている、と聞いていました。タギシ王とは、記紀に伝わる神武天皇の長男で弟(綏靖天皇)に討たれた手研耳命(タギシミミノミコト)でしょうか。そのシコオは、ミマアキとオオヒコを淡海の対岸から監視していました。ミマアキたちが総勢三十名ほどで、そのうち山社に帰るのは十名、残りの二十名は見送りで、頭の若い方(ミマアキ)が山社に戻るようだ、と配下から報告を受けたシコオは、どうするか思案します。ミマアキの帰路を推測したシコオは、山背の国座会で待つことにします。舟で横断して一気に殺してはどうか、と進言されたシコオは、実は殺したくない、と答えます。それは、吉備津彦(キビツヒコ)がミマアキをできれば生け捕りたい、と考えているからでした。
トメ将軍とゴリは、加羅へと渡る舟の上で、ヤノハに感心していました。新たな国には筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)の同盟国から各百人の戦人が派遣され、ゴリは、まずヒホコとイセキの力を借りて、加羅周辺の人々を説得しなければならない、と考えています。ヤノハは、力づくは避けるよう、トメ将軍に指示していました。新たな国の名は、すでに決まっている、とトメ将軍はゴリに伝えます。トメ将軍が、国造りの構想はミマアキの思いつきなので、那とミマアキからミマナにしたい、とゴリに伝えるところで今回は終了です。
今回は、ヤノハと梯儁の駆け引き、ミマアキの動向、加羅での建国構想が描かれました。ヤノハは倭と魏の同盟に懐疑的な梯儁に、加羅での建国を提案し、ひとまず同盟破棄を思いとどまらせることに成功しましたが、梯儁はしたたかで、ヤノハの提案を全面的に信用したわけではありません。今後、加羅での建国も注目されます。ミマナについては、その評価に議論がありますが、本作はあくまでも創作娯楽であることを前提とせねばなりません。ミマアキが無事に山社に帰還できるのかも気になるところで、ミマアキが日下に捕らわれる展開も考えられます。ミマアキが『日本書紀』の御間城入彦五十瓊殖天皇、つまり崇神天皇となるのではないか、と以前から予想しているので、最終的にはミマアキが日下に寝返る展開も考えられますが、あるいは、ミマアキの仲介によって山社連合と日下が政治的に統合されるのかもしれません。そうなるとしても、描かれるのは本作最終盤となりそうです。山社連合と暈(クマ)、さらにはヤノハとその実子であるヤエト(ニニギ)との関係など、まだ描かれることは多そうなだけに、完結はずっと先になるのではないか、と予想しています。当初から期待していた通り、大陸情勢も絡んでひじょうに面白くなっているだけに、できるだけ長く本作を読みたいものです。
ヤノハは冷静に、琉求(沖縄諸島でしょうか)まで七つの島、夷州(台湾でしょうか)まで十の島があり、島伝いならば呉まで行けないことはないだろう、と返答します。遠回りになる、と梯儁に指摘されたヤノハは、そう言われると思ってすでに手を打っており、加羅に人を送ったので、一年待っていただければ、倭の新しい国をつくる、と返答します。ヤノハは二日前に、新たな国をつくってもらいたい、とトメ将軍に指示していました。ゴリとともに加羅へと渡り、その周辺にある大勢の倭人の邑を統合して新たな国として独立し、倭国の駐屯地にしたい、というわけです。ヤノハにその策を進言したのはミマアキでした。ヤノハはさらに、遼東郡に倭軍の駐屯地を置かせてもらいたい、と梯儁に提案します。そうすれば、呉の側面は突けずとも、東から魏に進軍する呉軍を食い止めることは可能というわけです。すると梯儁は、いやまいった、と言って笑みを浮かべます。しかし、魏と倭の同盟は問題ないのだな、とヤノハが念押ししても、再考には値する、と梯儁は答えます。
淡海(琵琶湖)に到着したミマアキとオオヒコは、その大きさに驚いていました。オオヒコはここでミマアキと別れて、越(コシ)国で日下(ヒノモト)が派遣していると思われるヤツハギと戦い、ミマアキは山社(ヤマト)へと変えることになります。淡海の西岸を行けば日下の手勢と遭遇することはなく、そこから山背(山城)国と武庫(ムコ)国を抜けて海に出ることを、オオヒコはミマアキに勧めます。越国のサクタ王の書状は、すでにヤノハへと送られていました。ヤツハギとは厳しい戦いになる、とミマアキは案じますが、考えようによっては山社にとってよい話で、日下が挙兵したさいに越にいれば背後を突ける、とオオヒコは言います。それでもミマアキは、日下の動向を案じていました。自分たちが堂々と日下の周囲の国々を訪れても動かないことが、不審というわけです。厲鬼(レイキ)、つまり疫病でそれどころではないのだろう、とオオヒコは考えますが、もっと別な理由があるのではないか、とミマアキは推測していました。ミマアキはトメ将軍とともに日下を訪れたさい、恐ろしい手練れに追われましたが、タギシ王の末裔である阿多(アタ)のチカトから、その追手は伊香(イカガ)のシコオが率いている、と聞いていました。タギシ王とは、記紀に伝わる神武天皇の長男で弟(綏靖天皇)に討たれた手研耳命(タギシミミノミコト)でしょうか。そのシコオは、ミマアキとオオヒコを淡海の対岸から監視していました。ミマアキたちが総勢三十名ほどで、そのうち山社に帰るのは十名、残りの二十名は見送りで、頭の若い方(ミマアキ)が山社に戻るようだ、と配下から報告を受けたシコオは、どうするか思案します。ミマアキの帰路を推測したシコオは、山背の国座会で待つことにします。舟で横断して一気に殺してはどうか、と進言されたシコオは、実は殺したくない、と答えます。それは、吉備津彦(キビツヒコ)がミマアキをできれば生け捕りたい、と考えているからでした。
トメ将軍とゴリは、加羅へと渡る舟の上で、ヤノハに感心していました。新たな国には筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)の同盟国から各百人の戦人が派遣され、ゴリは、まずヒホコとイセキの力を借りて、加羅周辺の人々を説得しなければならない、と考えています。ヤノハは、力づくは避けるよう、トメ将軍に指示していました。新たな国の名は、すでに決まっている、とトメ将軍はゴリに伝えます。トメ将軍が、国造りの構想はミマアキの思いつきなので、那とミマアキからミマナにしたい、とゴリに伝えるところで今回は終了です。
今回は、ヤノハと梯儁の駆け引き、ミマアキの動向、加羅での建国構想が描かれました。ヤノハは倭と魏の同盟に懐疑的な梯儁に、加羅での建国を提案し、ひとまず同盟破棄を思いとどまらせることに成功しましたが、梯儁はしたたかで、ヤノハの提案を全面的に信用したわけではありません。今後、加羅での建国も注目されます。ミマナについては、その評価に議論がありますが、本作はあくまでも創作娯楽であることを前提とせねばなりません。ミマアキが無事に山社に帰還できるのかも気になるところで、ミマアキが日下に捕らわれる展開も考えられます。ミマアキが『日本書紀』の御間城入彦五十瓊殖天皇、つまり崇神天皇となるのではないか、と以前から予想しているので、最終的にはミマアキが日下に寝返る展開も考えられますが、あるいは、ミマアキの仲介によって山社連合と日下が政治的に統合されるのかもしれません。そうなるとしても、描かれるのは本作最終盤となりそうです。山社連合と暈(クマ)、さらにはヤノハとその実子であるヤエト(ニニギ)との関係など、まだ描かれることは多そうなだけに、完結はずっと先になるのではないか、と予想しています。当初から期待していた通り、大陸情勢も絡んでひじょうに面白くなっているだけに、できるだけ長く本作を読みたいものです。
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