白亜紀末の海洋の絶滅パターン

 白亜紀末の海洋の絶滅パターンに関する研究(Ying et al., 2026)が公表されました。白亜紀–古第三紀(K–Pg)境界(約6600万年前)におけるチクシュルーブ小惑星の衝突は、壊滅的な環境変化を引き起こすことで、化石記録に認められる生物種の約75%を絶滅させた、と考えられています。しかし、数十年にわたる研究にも関わらず、その環境変化と、海洋の化石記録に認められる選択的な絶滅パターンとを結びつける機構は、まだ解明されていません。

 本論文は、形質に基づく全球規模の生態系モデルを用いて、化石生物群の枠を超えた海洋プランクトン群集に関してこの因果関係を立証した。本論文のモデルは、K–Pg境界直後の100年間における多様性の動態を模擬実験するもので、体サイズに応じて変化する生物量の閾値に基づいて、絶滅を明示的に表現します。このモデルは、K–Pg境界の気候強制下で、浮遊性有孔虫などの動物プランクトンの高い脆弱性、小型の混合栄養生物や植物プランクトンの生存、高緯度域における多様性低下の抑制の可能性など、これまでに観察されている主要な絶滅パターンを再現するのに成功しました。

 解析の結果、小惑星衝突に起因する暗さと体サイズに依存した絶滅の閾値が、観察されている絶滅パターンの大半を駆動した、と示唆されました。これらの結果は、プランクトンの生態学的特性が、エネルギーの需要と獲得における違いを介して、生存を後押しした、と示唆しています。本論文は、絶滅パターンに関する化石証拠と、K–Pg境界における「衝突の冬」仮説との隔たりを埋めるもので、過去の生物多様性危機を理解する上で、形質に基づくモデルが有用であることを浮き彫りにしています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古生態学:白亜紀末の海洋の絶滅パターンは暗さと体サイズによって形作られた

古生態学:白亜紀末のプランクトンの選択的絶滅は暗さが原因だった

 約6600万年前のチクシュルーブ小惑星衝突の後、海洋では一部のプランクトンが絶滅に追い込まれた一方、他のプランクトンは生き延びた。今回、モデル研究によって、そうした絶滅のパターンが、大気中二酸化炭素濃度の上昇や海洋の酸性化ではなく、暗さによって説明できることが示された。



参考文献:
Ying R. et al.(2026): Darkness and body size shaped end-Cretaceous marine extinction patterns. Nature, 655, 8124, 957–962.
https://doi.org/10.1038/s41586-026-10541-4

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