中世ヨーロッパの洪水

 14世紀半ばのヨーロッパの洪水に関する研究(Kiss et al., 2026)が公表されました。ヨーロッパはここ数十年間、きょくたんな洪水に見舞われています。しかし、それらをさらに上回る規模の洪水が起こる可能性もあり、洪水の危険性管理においてそれらを考慮する必要があります。そうした洪水の特徴は、記録が残っている中で最も大規模な洪水を分析することによって、明らかにできます。ヨーロッパ中央部では、1342年7月のマグダレーナ洪水が過去1000年間で最大と見なされることが多いものの、その特徴に関する知識は不充分です。

 本論文は、1341年後半から1343年までの間にヨーロッパの広範な地域で16件の大洪水事象が起こったことを示します。これらの事象のうち4件、つまりマグダレーナ(Magdalena)洪水とバーソロミュー(Bartholomew)洪水とキャンドルマス(Candlemas)洪水とヤコブ(Jacob)洪水の再来周期は500~1000年でした。マグダレーナ洪水はこれまで、1342年にヨーロッパで発生した唯一の極端な洪水であると考えられていましたが、本論文の新しい文献史料データセットは、マグダレーナ洪水がより広範な一連の洪水の一部だったことを示唆しています。

 過去700年間できょくたんな洪水の発生件数が最も多かった年は1342年で、1343年も上位10位に入ります。このきわめて異例な一連の洪水は、ヨーロッパにおける洪水緩和策のパラダイムシフトをもたらすなど、大きな社会経済学的影響を及ぼしました。一連の火山噴火に加えて、北極の海氷が数年にわたって後退したことが、この一連の洪水の原因と思われます。数ヶ月以内にきょくたんな洪水が集中して発生する事態は、危険性管理においてはほとんど考慮されていません。こうした起こり得る事態を考慮した、迅速で予防的な危険性戦略が必要です。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


水文学:1342〜1343年にヨーロッパ全土で起こった大陸規模の連鎖的な洪水

水文学:ヨーロッパにおける大陸規模の連鎖的な洪水

 今回、中世ヨーロッパを、大洪水が連鎖的な波としてどのように襲ったかが文献史料に基づいて追跡され、気候リスクが1回だけの極端事象ではなく、危険な連鎖として起こり得ることが示された。これは、現在の計画がこうした事象をまだ過小評価していることを浮き彫りにしている。



参考文献:
Kiss A. et al.(2026): Cascading continental-scale floods across Europe in 1342–1343. Nature, 656, 8128, 638–645.
https://doi.org/10.1038/s41586-026-10888-8

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