脊椎動物の脳の進化

 脊椎動物の脳の進化に関する研究(Zhu et al., 2026)が公表されました。脊椎動物の複雑な脳は、脊椎動物に最も近縁な生物の脳よりも多くの細胞タイプを持つ。脊椎動物の初期進化の過程では全ゲノム重複(Whole-genome duplication、略してWGD)が起こりましたが、そのさいに生じた重複遺伝子(オオノログ〔ohnologue〕)が細胞タイプの進化を促進したかどうかは、明らかになっていません。

 本論文は、ヒト、マウス、トカゲ、ヤツメウナギ、ナメクジウオという5種類の脊索動物について、脳の単一細胞トランスクリプトームを使用し、脊椎動物においてコア転写因子が保存されている多くの細胞タイプファミリーが、ナメクジウオの細胞タイプとは1対1の相同性を示さないことを報告します。さらに、オオノログ、とくに最初のWGDに由来するオオノログは、脊椎動物の細胞タイプ進化において、小規模重複によって生じたパラログよりも重要でした。

 本論文は、オオノログがこの過程に機構的に重要であるかどうかを調べるため、祖先的な細胞タイプ状態を予測し、それをナメクジウオの細胞タイプと比較するとともに、マクログリアを実験的に調べました。その結果、オオノログが脊椎動物初期の細胞タイプ多様化において役割を担っていたことが示されました。本論文はさらに、細胞タイプ間および種間でパラログの発現を調べて、発現変化はおもに遺伝子量選択と機能分割によって駆動されたことを示します。

 また本論文は、さまざまな解剖学的スケールおよび細胞タイプのスケールにおける細胞多様性を、オオノログと関連づけました。本論文の知見は、脊椎動物初期の脳の複雑性の進化においてWGDが重要であったことを実証するとともに、その結果生じたオオノログが、生じた後も長期にわたり細胞タイプ進化を可能にし続けた、と浮き彫りにしています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


分子進化学:全ゲノム重複が脊椎動物の脳における細胞タイプの進化を形作った

分子進化学:オオノログが促した脳の細胞タイプの多様化

 今回、脊椎動物に特異的な全ゲノム重複の過程で生じたオオノログ(ohnologue)が、脊椎動物の脳における細胞タイプの進化に寄与したことが報告されている。



参考文献:
Zhu Y. et al.(2026): Whole-genome duplication shaped cell-type evolution in the vertebrate brain. Nature, 656, 8128, 659–669.
https://doi.org/10.1038/s41586-026-10629-x

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