『卑弥呼』第172話「会見」

 『ビッグコミックオリジナル』2026年9月5日号掲載分の感想です。前回は、暈(クマ)国の夜萬加(ヤマカ)で、暈国の実質的な最高権力者である鞠智彦(ククチヒコ)が、ヒルメにニニギ(ヤエト)の出自を問い、それこそがヤノハの最大の弱点になる、と告げるところで終了しました。今回は、那(ナ)国の那城(ナシロ)で、魏の使節団長である建中校尉の梯儁が、那国の様子を書き留めている場面から始まります。梯儁が倭国に到着してから、すでに50日経過しており、倭国の情報を書き記し続けていました。那国に到着したヤノハを案内していたヌカデは、梯儁を食えない男と評価していました。ぼっとした顔で満面の笑みを浮かべるものの、一瞬見せる鋭い表情は不気味というわけです。梯儁が舟を見ているのに気付いたヤノハは、自分の策が見破られたことを悟り、5日後の会見に向けて作戦を修正しなければならない、と考えます。

 越(コシ)国の久比岐(クビキ)海岸では、死者の頭が木の棒に突き刺されていました。ミマアキとともにその様子を見たオオヒコは、ヤツハギなる土蜘蛛は情け容赦もない怪物だ、と言います。ミマアキは浜の様子を見て、ヤツハギの目的は翡翠と推測します。透き籠や棒を持っている大勢の死者は翡翠の採掘夫というわけです。ヤツハギ一味は殺戮や略奪が好きなのではなく、翡翠強奪が目的で、越の兵は翡翠の採掘夫を警固していたとしても、ヤツハギはどのように近づいたのか、ミマアキは疑問、思いオオヒコはヤツハギが高度な訓練を受けているのではないか、と推測します。ミマアキは、ヤツハギ一味がただの土蜘蛛ではなく、百戦錬磨の戦人集団で、背後に日下(ヒノモト)がいるのではないか、と推測します。ミマアキもオオヒコも、この戦では簡単に勝てず、相当な覚悟が必要になる、と考えます。オオヒコは、日下の周囲に山社の同盟国を作る自分たちの本来の目的が達成されたので、ミマアキに帰るよう促します。ミマアキは、ヤツハギを倒すことが越のサクタ王の和議の条件だ、と難色を示しますが、ヤツハギの一掃には長い時間がかかるので、自分に任せてほしい、とオオヒコは申し出ます。ミマアキは山社に必要な人物というわけです。

 那国では、ヤノハが那のウツヒオ王およびトメ将軍と会っていました。ヤノハは10日前から密かに那国に入っており、ヤノハは挨拶が遅れたことを詫びます。ウツヒオ王は、ヤノハから魏の鏡を下賜されたことに感謝し、ヤノハは、魏の使節を招けたのはトメ将軍の力のおかげだ、と感謝します。ヤノハは、明後日に那国の館で魏の使者と会談する前に願いがある、とウツヒオ王に切り出し、トメ将軍を3~5年借りたい、と申し出ます。トメ将軍をまた加羅に送りたいのか、とウツヒオ王に問われたヤノハは、そうだと答えますが、トメ将軍を島子(シマコ)および将軍とした頼りにしているウツヒオ王は、渋い表情を浮かべます。しかし、トメ将軍は嬉しそうな顔で、渡海の目的を尋ねます。ヤノハは、トメ将軍を加羅に派遣している間に絶対に戦が起きないことを渋るウツヒオ王に保証し、新たな国を造ってもらいたい、とトメ将軍に答えます。

 ヤノハと梯儁の会見の日を迎え、ヌカデは張政に、梯儁は緊張しているようだが、日見子(ヒミコ)様(ヤノハ)も人だから、攫って食べるわけではない、と伝えます。そこへ、御簾の向こう側にヤノハが現れ、倭国の王・日見子と名乗ります。する梯儁は、倭の言葉で建中校尉の梯儁と名乗り、驚くヤノハに、倭の言葉を少し話せる、と梯儁は説明します。遠路来たことをヤノハに労われた梯儁は、ヤノハに年齢を尋ねます。すると、ヤノハは百歳と少しと答えて、ヌカデは苦笑します。すると梯儁は驚き、67年前の熹平2年(173年)に卑弥呼様が朝鮮に使者を送ったと言われているが、その時と同じ方なのか、とヤノハに尋ねます。ヤノハが肯くと、梯儁は百歳と聞いて驚いた、と言います。ヤノハから倭の印象を問われた梯儁は、美しい国で、民も淫らではない、と言って不敵な笑みを浮かべます。遠慮なく言うよう、ヤノハに促された梯儁は、たいへん失望しており、魏が倭と同盟を組んだことが間違いだった、と力説します。その理由、倭国には呉まで渡る航海術がなく、魏と呉が全面衝突した場合、倭は呉を側面から突けないからです。梯儁は、魏の皇帝に倭国との同盟を破棄するよう進言するつもりだ、とヤノハに冷静に伝え、ヤノハが沈黙するところで今回は終了です。


 今回は、オオヒコの覚悟と、ヤノハと梯儁の会見が描かれました。オオヒコは四道将軍の大彦命を想起させ、北陸を制圧した、との伝承が活かされる展開になりそうですが、同じく四道将軍を想起させる、本作では日下の王族とされている吉備津彦(キビツヒコ)が、作中で今後どのような役割を担うのかも、注目されます。ヤノハと梯儁のやり取りは期待通りに緊張感に満ちたものになりそうで、ヤノハは会見前に梯儁が倭国の航海術の低さを見抜いたことに気づいていたようですから、この危機をどう乗り切るのか、注目されます。ヤノハの計画変更の一環がトメ将軍の加羅への派遣なのでしょうが、どのように描かれるのか、楽しみです。なお、残念ながら次号は休載のようです。最近は休載が増えてきた感もあり、まだ完結までかなり時間を要しそうなだけに、やや心配ではあります。

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