ツシマヤマネコの進化史

 ツシマヤマネコのゲノムデータを報告した研究(Matsumoto et al., 2026)が公表されました。最近、短い尾のツシマヤマネコ1個体が捕獲されました。そうした形態はこれまでツシマヤマネコでは確認されておらず、イエネコで見られるため、イエネコからツシマヤマネコへの遺伝子流動があったのではないか、と考えられました。そこで本論文は、この短い尾の1個体を含めて、ツシマヤマネコのゲノムデータを他のネコ科と比較し、明確なイエネコ的な遺伝的祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)が確認されなかったことから、近い過去におけるイエネコからツシマヤマネコへの遺伝子流動はなかった、との見解を提示しています。この短い尾は、ツシマヤマネコを含めてベンガルヤマネコ属において最初の報告となります。

 以下の略称は、DNA(deoxyribonucleic acid、デオキシリボ核酸)、mtDNA(mitochondrial DNA、ミトコンドリアDNA)、SNP(Single Nucleotide Polymorphism、一塩基多型)、PC1(first principal component、第一主成分)、PC2(second principal component、第一主成分)、ROH(runs of homozygosity、同型接合連続領域)、PCA(principal component analysis、主成分分析)、LD(linkage disequilibrium、連鎖不平衡)、K(系統構成要素数)、STI(short-tailed individual、尾が短い個体)、mm(millimetre、ミリメートル)、km(kilometre、kilometer、キロメートル)です。本論文で取り上げられる主要な遺伝子は、TBXT(T-box transcription factor T、Tボックス転写因子T)、HES7(Hes Family BHLH Transcription Factor 7、ヘス族BHLH転写因子7)です。

 本論文で取り上げられる主要なネコ科動物は、ツシマヤマネコ(Prionailurus bengalensis euptilurus、Tsushima leopard cat、略してTLC)、対馬島のイエネコ(domestic cat from Tsushima Island、略してDOM)、アムールヤマネコ(Prionailurus bengalensis euptilurus)、ALC(leopard cats sampled in Amur、アムール地域で標本抽出されたヤマネコ)、ベンガルヤマネコ(Prionailurus bengalensis)、イエネコ(Felis catus、Felis silvestris catus)、リビアヤマネコ(Felis lybica)、アジアゴールデンキャット(Catopuma temminckii)、フロリダパンサー(Puma concolor coryi)、ヨーロッパヤマネコ(Felis silvestris silvestris)、チーター(Acinonyx jubatus)です。


●要約

 日本の対馬に固有の島嶼性ネコ科動物であるツシマヤマネコは、日本のレッドリストの絶滅危惧ⅠA類に指定されており、推定集団規模は約100個体です。最近、短い尾の1個体が見つかり、そのような表現型はヤマネコでは報告されていないものの、イエネコでは比較的一般的なので、雑種の可能性について懸念が提起されました。しかし、この表現型がイエネコからの遺伝子移入か、それとも野生個体群内の差異を反映しているのかどうかは、依然として不明です。そこで、焦点の1個体と追加のツシマヤマネコ15個体と対馬のイエネコ5個体と大陸部の野生個体の参照としてアムールヤマネコ4個体の、全ゲノムデータが分析されました。PCAは焦点の1個体をツシマヤマネコのまとまり内に位置づけました。ADMIXTUREは焦点の1個体をほぼ完全にツシマヤマネコの祖先系統構成要素に割り当て、f₃およびf₄混合統計はどちらも最近のイエネコからの遺伝子移入を裏づけませんでした。mtDNA分析では、焦点の1個体はツシマヤマネコとハプロタイプを共有しており、イエネコ単系統群とは異なっていた、と示されました。同じパターンは標本抽出された個体群全体で観察され、焦点の1個体もしくは近くのヤマネコにおける実質的な最近の交雑の証拠はありません。本論文が把握している限りでは、これはベンガルヤマネコ属における短い尾の個体の最初の報告です。これらの調査結果は、絶滅危惧種のヤマネコでの疑わしい交雑の事例の解決における、ゲノム規模評価の価値を浮き彫りにしています。



●研究史
 家畜動物との交雑が保全遺伝学において大きな懸念であるのは、交雑によって小さく孤立した野生個体群の進化的独自性が侵食されるかもしれないからです。この懸念は野生のネコ科にも当てはまり、交雑と疑われる個体は、保護や監視や繁殖の状況では困難な管理の判断を誘発するかもしれません。じっさい、そうした疑いは異常な表現型から生じることが多いものの、形態のみでは集団内の差異あるいは稀な発達上の形質との契機となると交雑祖先系統を確実に区別することはできません。

 ツシマヤマネコは日本の対馬のみに存在するヤマネコの島嶼部個体群です。ツシマヤマネコは日本の環境省のレッドリスト2020年版に絶滅危惧種として指定されています。分子系統発生分析は、ツシマヤマネコを、ロシア極東や朝鮮半島や近隣の日本列島にまたがって分布するアムールヤマネコ亜種内に位置づけてきました。この個体群は現時点で、この北方系統の地域的な孤立と認識されています。九州と朝鮮半島との間に位置する対馬の陸地面積は、約700km²です。しかし、ツシマヤマネコは小さく脆弱な集団として存続しており、最新の個体数調査では、北部本島の上島で約90~100個体と推定されており、下島では少なくとも17個体が確認され、最近ではツシマヤマネコが分布を拡大しました。最近の全ゲノム分析も、大陸部のヤマネコ個体群と比較して、長期にわたる個体群の衰退、異型接合性の顕著な減少、ゲノム近親交配の増加を明らかにしました。ツシマヤマネコは、範囲が限られ、人為的圧力に継続的に暴露されているため、この個体群の遺伝的一体性は中心的な保護の優先事項です。

 イエネコは、放し飼いと野生化した個体を含めて、対馬に生息しています。イエネコは、種間病原体伝染や対馬の野生生物へのより広範な生態学的影響を含めて、保護の危険性と関連づけられてきました。イエネコによる遺伝子移入の可能性は、対馬では生物学的に妥当な懸念です。明らかな尾の異常を有する少なくとも3個体のツシマヤマネコが、2024~2025年に対馬全域で実行された野外調査で確認され、そのうち1個体のみが臨床およびゲノム調査のため捕獲されました。複数個体における尾の異常発生から、すべての事例について外傷などの独立した後天的原因で説明するのは節約的ではなく、共通の遺伝的もしくは発達上の基盤の可能性が提起されます。本論文が把握している限りでは、この表現型(尾の異常)はツシマヤマネコもしくは他のヤマネコ個体群では報告されてきませんでしたが、短い尾はイエネコでは比較的一般的です。ベンガルヤマネコとイエネコとの間の交雑の生物学的能力は、ベンガルネコ品種の存在によって証明されており、ベンガルネコ品種では、少なくとも一部の雑種系統には繁殖能力があり、一部の個体はヤマネコと類似した表現型の特徴を保持しています。したがって、同じ島の景観内でのヤマネコとイエネコの共存から、交雑起源は合理的仮説で、直接的なゲノム評価には正当な理由があります。

 ネコ科では、尾の異常は、尾の欠損、つまり尾が完全にないことや、尾椎が少ないことと関連する尾の長さの縮小を伴う短い尾や、捻じれた尾、つまり角張った尾の奇形が椎骨の奇形に起因することを含めて、さまざまな尾部の表現型で報告されてきました。イエネコでのそうした報告に加えて、尾の異常はいくつかの野生ネコ科で報告されてきており、それには、チーターやヨーロッパヤマネコやアジアゴールデンキャットやフロリダパンサーが含まれます。フロリダパンサーでは、捻じれた尾や他の形態学的異常が、高度に近親交配の個体群では一般的で、遺伝的保護の後で減少しました。イエネコでは、短くて捻じれた尾の表現型は、TBXTやHES7など遺伝的に独立した遺伝子座における変異から生じています。イエネコにおける別々の変異事象を通じての短い尾の表現型の繰り返しの発生から、体軸の発達経路の混乱から、この形態が繰り返し生じるのかもしれない、と明らかになります。同様の変異が野生ネコ科で自然に起きるのかどうかは、依然として不明です。しかし、根底にある発達上の経路は哺乳類で保存されており、自然に発生する尾部の異常は複数の脊椎動物分類群で報告されてきました。遺伝的原因に加えて、尾が短くなることは、外傷とその後の治療によって生じるかもしれません。

 表現型の異常だけでは、雑種祖先系統を、代替的な発達や遺伝や外傷の原因と確実に区別できないので、異常な個体の解釈には集団水準のゲノム評価が不可欠です。この手法は、直接的に管理の決定に情報をもたらすことができる、正確な保護環境においてとくに重要です。しかし、表現型的に異常な個体を近隣の同種個体の状況に位置づける集団水準のゲノム評価は依然として限られており、疑わしい遺伝子移入が焦点の1個体に限られるのか、あるいは局所的集団内のより広範な遺伝子流動を反映しているかどうか、不明になっています。本研究では、核ゲノムおよびmtDNAデータを用いて、短い尾のツシマヤマネコ(STI)が最近のイエネコからの遺伝子移入の証拠を示すのかどうか、交雑のゲノム兆候が同じ局所的状況から標本抽出された近隣の同種でより広範に検出できるのかどうか、評価されました。さらに、ゲノムデータが異常な尾の形態と関連する候補多様体の検査によって、尾の異常性に知見を提供できるのかどうか、調べられました。


●標本と手法

 短い尾の個体を含めて、ツシマヤマネコが最近のイエネコからの遺伝子移入の証拠を示すのかどうか、調べるために、4集団に割り当てられる25個体からゲノム規模のSNPデータが分析されました。これには、比較一式として用いられたツシマヤマネコ15個体、短い尾の1個体(図1A)、対馬のイエネコ(DOM)5個体、アムール川地域で標本抽出されたアムールヤマネコ4個体(ALC)が含まれています。STIは数個体確認されましたが、日本の環境省の許可を得て、調査計画の一環として1個体のみ捕獲され、外見区とX線検査が行なわれました。ツシマヤマネコの尾の長さは通常245.0±20.14mmですが、STIでは約104mmです。X線検査では、尾椎遠位部が不明瞭で、第9~第10尾椎周辺で病変もしくは損傷の可能性があり、以後は途切れていて、尾椎は長い尾のツシマヤマネコの19個や、イエネコで通常報告されている約20~24個の半分程度です(図1B~D)。STIには、明らかな外傷の兆候はありませんでした。X線検査では、尾椎の一部で骨折の可能性が示唆されましたが、臨床所見のみでは短い尾の原因を判断できませんでした。以下は本論文の図1です。
画像

 DNAは、組織もしくは血液から抽出されました。LD間引き後に、112184ヶ所のSNPが、PCAと親族関係分析とADMIXTURE分析と混合統計に保持されました。混合統計には、完全に高品質のSNPデータセットが用いられました。ゲノム近親交配はFROHとして要約され、ROH内に含まれる常染色体の割合として計算されました。mtDNAの最尤系統発生分析が行なわれ、STI個体が母系で位置づけられました。ADMIXTURE分析はK=1~6で行なわれ、交差検証誤差を用いて、最も裏づけられる分類が特定されました。f統計のうち、3集団統計ではf₃形式(DOM;ALC、X)が用いられ、XはSTIもしくは他のTLCを表しています。個体に基づくf₄統計では、f₄形式(DOM、ALC;X、Y)が用いられ、Xは参照個体を表します。


●STIはPCAではTLCとまとまり同程度のゲノム近親交配を示します

 15個体のTLCと1個体のSTIと5個体のDOMと4個体のALCを含めて、25個体のゲノム規模データが分析されました。全ゲノム配列決定の結果、ALCでは9.36~10.46倍、DOMでは8.84~15.14倍、TLCでは12.86~27.64倍、STIでは36.06倍の平均被覆度のデータが生成されました。多様体選別後に、最終的な高品質のデータセットには3879588ヶ所のSNPが含まれました。

 PCAはDOMとTLCとALCを分離しました。PCAでは、ALCを含めて(図2A)、DOMとTLCはPC1沿いに分離しました。一方で、ALCは独特なクラスタ(まとまり)を形成しました。PCAでは、ALCを除いて(図2B)、DOMとTLCは依然として分離していました。両解析では、STIはTLCとDOMとの中間的な位置ではなく、TLCクラスタ内に収まりました。その配置は他のTLCで観察された差異と一致し、DOM祖先系統へのゲノム規模の移動は示唆されません。以下は本論文の図2です。
画像

 同様に、対での血関係分析では、STIはTLCの比較一式から逸れていなかった、と示されました(図2C)。STIとDOMとの間の親縁係数は低く、他のTLCとDOMとの間の観察と同等でした。STIの密接な血縁は、TLC個体群では特定されませんでした。FROHとして測定されるゲノム近親交配は、DOM(平均0.126、0.097~0.213の範囲)およびALC(平均0.172、0.065~0.409の範囲)よりもTLC(平均0.585、範囲は0.544~0.636)の方で高くなっていました(図2D)。STIは同水準のゲノム近親交配を示しており(FROHが0.587)、TLCの比較一式で観察された範囲内に収まりました。


●mtDNAに基づく系統発生はSTIとTLCを単系統群に位置づけます

 79ヶ所のミトコンドリアSNPの最尤系統発生分析では、主要な3集団が明らかになりました(図3A)。DOMは、すべてのTLCおよびALCと異なる、強く裏づけられた単系統群を形成しました。STIを含めてすべてのTLCは単一の単系統群内に位置し、同じミトコンドリアハプロタイプを共有していました。ALCはTLC単系統群の姉妹群を形成し、これはDOMとよりもベンガルヤマネコの方と近い系統発生的類似性と一致します。DOM単系統群内ではなくTLC単系統群内のSTIの位置は、この個体におけるDOMの母系祖先系統を裏づけませんでした。


●ADMIXTUREはK=2を裏づけてSTIをほぼ完全にTLC構成要素に割り当てます

 112184ヶ所のLD間引き後のSNPのデータセットが、ADMIXTURE分析に用いられました。交差検証は、データセットの最適な区分としてK=2を支持しました(図3B)。この区分では、DOMとTLCは明確に分化した祖先系統クラスタを形成しました。教師無と教師有の両方の分析では、STIはほぼ完全にTLCの祖先系統構成要素に割り当てられました(図3C)。教師有分析では、STI集団における推定DOM祖先系統は0.01%未満でした(図3D)。残りのTLCは同じ全体的パターンを示しており、標本抽出された局所的個体群ではDOM関連祖先系統は検出されませんでした。以下は本論文の図3です。
画像



●混合統計はSTIにおける最近のDOMからの遺伝子移入を裏づけません

 次に、STIが混合の形式的なゲノム痕跡を示すのかどうか、検証されました。f₃形式(DOM;ALC、X)のf₃統計では検証対象の全個体で正の値が得られ、それにはSTI(f₃=0.803)と他のTLC15個体(f₃=0.729~1.026)すべてが含まれ(図3E)、TLC09とTLC01がそれぞれ最低と最高のf₃値を示しました。f₃統計は一貫して正で、STIは参照TLCで観察された範囲内に収まりました。この構成は対象としてSTIでの形式的な混合f₃検定ではありませんでしたが、その結果は、STIが最近のDOMからの遺伝子移入と一致する例外的なゲノム規模類似性を示した、との証拠を提供しませんでした。

 STIが個々のTLCと比較してDOMとの例外的な類似性を示したのかどうか評価するために、固定参照としてf₃値がそりぞれ最高と最低だったTLC02およびTLC09を用いて、f₄(DOM、ALC;TLC参照、X)が計算されました。f₄(DOM、ALC;TLC02、X)については、|Z| ≥ 2に達した唯一の比較はX = STIでした(f₄は−0.00179, Zは−2.02)。負の値から、STIは、DOMとのより大きな類似性ではなく、DOM-ALCのアレル(対立遺伝子)頻度の対比沿いでTLC01よりもわずかに少ないDOM関連アレル共有を示した、と示唆されました。f₄(DOM、ALC;TLC09、X)については、STIは有意ではありませんでした(f₄は−0.00147, Zは−1.73)。これらの結果から、STIはDOM-ALCアレル共有パターンに関して外れ値ではなく、同等もしくはより強い異質性が参照TLCには存在する、と示唆されます。


●予測された機能的影響を伴う候補多様体はTBXTもしくはHES7では検出されませんでした

 TBXTの遺伝子転写領域内では、4個の多様体がSTIで特定されました。高度もしくは中程度の影響を有する、と予測された多様体はなく、すべては修飾遺伝子多様体と分類され、介在配列もしくは3’UTR多様体として注釈づけされたので、タンパク質配列を変えるとは予測されませんでした。HES7では、品質選別された多様体では、該当する多様体は検出されませんでした。これらの結果は、STIにおけるSTI表現型は、以前に報告されたDOMにおけるSTIと関連する高影響度の多様体を含めて、TBXTもしくはHES7のタンパク質を変える多様体によって説明できない、との証拠を提供しません。


●考察

 本論文のミトコンドリアおよび核のゲノム規模分析は一貫して、STIを含めて標本抽出されたTLCにおける最近のDOMからの遺伝子移入を裏づけることができませんでした。すべての分析で、焦点の個体【STI】DOMとではなくTLCとクラスタ化し(まとまり)、PCAおよびADMIXTUREでは検出可能なDOM関連祖先系統を示さず、f統計に基づくいずれの検定でも混合として裏づけられませんでした。これらの一致した結果から、異常なSTIの表現型はDOMとの最近の交雑のゲノム規模痕跡を伴っているわけではない、と示唆されます。野生ネコ科におけるDOMとの交雑は、遺伝子移入が広範で複雑な管理判断となり得るヨーロッパヤマネコなど、野生ネコ科体系における保全上の問題として認識されています。したがって、表現型的に異常なTLCの雑種起源の可能性への懸念は妥当です。しかし、本論文の事例では、STIは検出可能なDOM祖先系統と一致しませんでした。この区別は積極的な保全管理下の小さく孤立した個体群であるTLCにとってとくに重大で、誤った表現型に基づく推論は、管理上の判断に不釣り合いなほどの影響を及ぼすかもしれません。

 尾の異常はいくつかのネコ科で報告されてきており、それにはフロリダパンサーやヨーロッパヤマネコが含まれ、遺伝的基盤が示唆されてきました。本論文が把握している限りでは、これはベンガルヤマネコ属における短い尾の個体の最初の報告ですが、この表現型の遺伝的基盤と遺伝性は依然として不明です。

 イエネコにおける短い尾や捻じれた尾の表現型の根底にあると知られている2ヶ所の遺伝子座である、TBXTおよびHES7の検査では、予測される機能的影響を伴う候補多様体が特定されませんでした。これらの調査結果から、STIで観察された表現型は、これらの遺伝子座におけるイエネコの尾の異常と関連する、以前に特徴づけられた変異に起因する可能性は低い、と示唆されます。フロリダパンサーでは、捻じれた尾は近交弱勢の表現型的相関として扱われてきており、遺伝子保護後にはその頻度が減少しました。しかし、原因となる1ヶ所もしくは複数の多様体は依然として特定されていません。ツシマヤマネコ個体群はゲノム近親交配増加によって特徴づけられますが、STIは本研究で調べられた他の個体より高水準のゲノム近親交配を示しているわけではありません。したがって、本論文の結果は、STIの表現型の具体的な説明として異常に高度な個体の近親交配を裏づけるわけではありませんが、高度な金黄土の個体群内で分離している有害な多様体の影響を除外できません。単一の短い尾の個体に基づくと、発達上の異常および外傷も否定できず、本研究は表現型が遺伝性である直接的証拠を提供していません。したがって、短い尾の表現型の根底にある原因は依然として解決されていません。

 本研究には、いくつかの限界があります。本論文の分析は最近のDOMからの遺伝子移入を裏づけませんが、本論文のデータセットの検出閾値未満の水準でのより古いもしくは高度に局所的な遺伝子移入を除外できません。f統計枠組みとADMIXTUREは近い過去の世代からの遺伝子移入の検出にはよく適していますが、とくに小さなデータセットでは、古代もしくは低水準の混合を特定する検出力に限界があります。本研究の小さな標本規模(TLCでは15個体)を考えると、遺伝子移入のあらゆる形態に対する決定的証拠として兆候の欠如を解釈するさいには、注意が必要です。標本抽出は対馬全域で広く行われましたが、短いか異常な尾のいくつかの追加の個体がカメラトラップの写真で特定されましたが、捕獲できなかったので、臨床的もしくは遺伝的検査はできませんでした。明らかな尾の異常を有する複数個体の存在から、そうした表現型は単一の事例に限らないかもしれない、と示唆されます。しかし、利用可能な写真の定性的調査も、個体群における尾の短さの程度における差異の可能性を示唆しました。姿勢や観察角度や画像品質の違いおよび標準化された尺度の欠如によって、信頼できる形態学的比較が不可能だったので、これらの観察が単一の反復的表現型もしくは異なる原因から生じる複数の形態の尾の異常を表しているのかどうか、依然として不明です。これらの表現型が共通の遺伝的基盤を有しているのかどうか、解明するには、追加の短い尾の個体群の詳細な表現型の特徴づけと遺伝的標本抽出が必要で、それは本研究の範囲外でした。

 ただ、本研究は絶滅危惧種のヤマネコにおける雑種を疑われている個体群の、ゲノム規模評価の価値を論証しました。表現型的に異常な1個体を近隣の標本抽出されたヤマネコおよび関連する比較集団と統合することによって、この手法は保全判断に表現型のみに基づく推論よりも強い基盤を提供します。本論文の事例では、ゲノム証拠はSTIもしくは標本抽出された局所的個体群における最近のDOMからの実質的な遺伝子移入を裏づけませんでした。これは、異常な表現型が雑種祖先系統について懸念を引き起こす場合の、遺伝学的評価の重要性を強調しています。本研究は、把握している限りでは、ベンガルヤマネコ属における短い尾の個体の最初の臨床およびゲノムの特徴づけを提供します。これは、この集団の既知の表現型の多様性に付け加えられます。尾の異常性は他のネコ科では近親交配と関連づけられてきたので、小さく孤立した個体群でもその発生には注意が払われねばなりません。これらの調査結果は、絶滅危機のヤマネコ個体群における形態学的異常の記録の必要性を浮き彫りにします。


参考文献:
Matsumoto Y. et al.(2026): Genome-wide assessment of suspected domestic cat introgression in the critically endangered Tsushima leopard cat. Global Ecology and Conservation, 70, e04365.
https://doi.org/10.1016/j.gecco.2026.e04365

この記事へのコメント