スペインの洞窟で明らかになった新石器時代の食人行為
新石器時代の食人行為を報告した研究(Saladié et al., 2025)が公表されました。イベリア半島には、集団埋葬や死後の遺体の再分配を含む多様な埋葬慣習の記録が残っています。イベリア半島における人肉食の事例は100万年前頃までさかのぼるかもしれませんが、当時の文化慣習の曖昧さや埋葬条件の不確実性から、人体処理の直接的な証拠は稀で、解釈が困難です。
本論文は、スペインのアタプエルカ山脈のエル・ミラドール洞窟における、食人慣行の証拠を示しています。エル・ミラドール洞窟では、食人の痕跡を示す前期青銅器時代(較正年代で4600~4100年前頃)の6個体が、2000年代初期に発見されました。その後の発掘では、2ヶ所の異なる地点から、同様の痕跡を示す、より古い遺骸が発見されました。放射性炭素年代のベイズ統計分析では、青銅器時代の発見とは関係ない、単一のより古い食人行為の痕跡(較正年代で5709~5573年前頃)が特定されました。これら食人行為のある以外は、より新しい集団埋葬の遺物と混ざり合った状態で発見されました。
222点の遺骸には火葬に伴う色変化が認められ、そのうち69の骨には死後に行なわれたかもしれない解体痕が確認されました。さらに、132の人骨には切り裂きや削り取りや切り刻みなどの切痕が認められ、これらは皮剥ぎや肉除去と関連しているかもしれません。一部の遺骸には、ヒトの歯の跡の可能性を示す痕跡があることも、指摘されています。確認された外傷は、いずれも生前に発生したものとは考えられません。本論文は、人類遺骸の加工パターンにおいて、紛争中に受けた傷や戦利品としての身体部位の切断よりも、解体作業によるものとの一致が最も高い、と指摘します。
Sr(strontium、ストロンチウム)同位体比(⁸⁷Sr/⁸⁶Sr)分析では、食人行為の対象となった人々は地元起源と示されました。この事象は新石器時代の居住の終焉と一致しており、これがエル・ミラドール洞窟の居住者間で一般的な行動ではなかった、と示唆されます。食人行為の対象となった個体群の年代と環境条件を考えると、この年代は飢饉への対応を示唆していません。本研究は、ヨーロッパ先史時代の食人行為の理解を補完し、深めます。この知見から、食人行為は、より深い社会的緊張と紛争の動態を示す、先史時代後期における集団間の暴力と関連しているかもしれない、と示唆されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
考古学:スペインの洞窟で新石器時代の人肉食の証拠が発見される
約5,600年前の人間の遺骨の集合体が、古代スペインにおける人肉食(cannibalism)のさらなる証拠を提供する可能性を報告する論文が、オープンアクセスジャーナルScientific Reports に掲載される。この研究では、アタプエルカ山脈(Sierra de Atapuerca)のエル・ミラドール洞窟(El Mirador cave)で発見された推定11人の遺骨を分析した結果、数十の骨に火葬の痕跡、人間の歯の痕、または解体の痕跡が確認され、死後処理を受けた可能性が示された。
イベリア半島(Iberian Peninsula)には、集団埋葬や死後の遺体の再分配を含む多様な埋葬慣習の記録が残っている。半島での人肉食の事例は100万年前まで遡る記録があるが、当時の文化慣習の曖昧さや埋葬条件の不確実性から、人体処理の直接的な証拠は稀で解釈が困難である。
Palmira Saladié、Francesc Marginedas、Antonio Rodríguez-Hidalgoら(カタルーニャ人類古生態・社会進化研究所(IPHES)〔スペイン〕)は、エル・ミラドール洞窟の2つの異なる地域から発掘された、死後改変の痕跡を示す650点の個人遺骨断片を分析した。これらの遺骨は、5,709年から5,573年前のもので、子供、青少年、および成人が含まれていると推定され、同位体分析から地元住民のものと推定されている。
著者らは、サンプル中の239の遺骨に加工の痕跡を発見した。これらの遺骨は、より最近の集団埋葬の遺物と混ざり合った状態で発見された。222の遺骨には火葬に伴う色変化が認められ、そのうち69の骨には死後に行われた可能性のある解体痕が確認された。さらに、132の人骨には切り裂き、削り取り、切り刻みなどの切痕が認められ、これらは皮剥ぎや肉除去と関連している可能性がある。著者らは、一部の遺骨に人間の歯跡の可能性を示す痕跡があるとも指摘している。
確認された外傷は、いずれも死前に発生したものとは考えられない。著者らは、加工のパターンは、紛争中に受けた傷や戦利品としての身体部位の切断よりも、解体作業によるものとの一致が最も高いと述べている。著者らは、これらの発見は、新石器時代のコミュニティーに特徴的な、より深い社会的緊張と紛争の動態を示す、単一の紛争関連の人肉食事件を反映している可能性があると指摘している。
参考文献:
Saladié P. et al.(2025): Evidence of neolithic cannibalism among farming communities at El Mirador cave, Sierra de Atapuerca, Spain. Scientific Reports, 15, 26648.
https://doi.org/10.1038/s41598-025-10266-w
本論文は、スペインのアタプエルカ山脈のエル・ミラドール洞窟における、食人慣行の証拠を示しています。エル・ミラドール洞窟では、食人の痕跡を示す前期青銅器時代(較正年代で4600~4100年前頃)の6個体が、2000年代初期に発見されました。その後の発掘では、2ヶ所の異なる地点から、同様の痕跡を示す、より古い遺骸が発見されました。放射性炭素年代のベイズ統計分析では、青銅器時代の発見とは関係ない、単一のより古い食人行為の痕跡(較正年代で5709~5573年前頃)が特定されました。これら食人行為のある以外は、より新しい集団埋葬の遺物と混ざり合った状態で発見されました。
222点の遺骸には火葬に伴う色変化が認められ、そのうち69の骨には死後に行なわれたかもしれない解体痕が確認されました。さらに、132の人骨には切り裂きや削り取りや切り刻みなどの切痕が認められ、これらは皮剥ぎや肉除去と関連しているかもしれません。一部の遺骸には、ヒトの歯の跡の可能性を示す痕跡があることも、指摘されています。確認された外傷は、いずれも生前に発生したものとは考えられません。本論文は、人類遺骸の加工パターンにおいて、紛争中に受けた傷や戦利品としての身体部位の切断よりも、解体作業によるものとの一致が最も高い、と指摘します。
Sr(strontium、ストロンチウム)同位体比(⁸⁷Sr/⁸⁶Sr)分析では、食人行為の対象となった人々は地元起源と示されました。この事象は新石器時代の居住の終焉と一致しており、これがエル・ミラドール洞窟の居住者間で一般的な行動ではなかった、と示唆されます。食人行為の対象となった個体群の年代と環境条件を考えると、この年代は飢饉への対応を示唆していません。本研究は、ヨーロッパ先史時代の食人行為の理解を補完し、深めます。この知見から、食人行為は、より深い社会的緊張と紛争の動態を示す、先史時代後期における集団間の暴力と関連しているかもしれない、と示唆されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
考古学:スペインの洞窟で新石器時代の人肉食の証拠が発見される
約5,600年前の人間の遺骨の集合体が、古代スペインにおける人肉食(cannibalism)のさらなる証拠を提供する可能性を報告する論文が、オープンアクセスジャーナルScientific Reports に掲載される。この研究では、アタプエルカ山脈(Sierra de Atapuerca)のエル・ミラドール洞窟(El Mirador cave)で発見された推定11人の遺骨を分析した結果、数十の骨に火葬の痕跡、人間の歯の痕、または解体の痕跡が確認され、死後処理を受けた可能性が示された。
イベリア半島(Iberian Peninsula)には、集団埋葬や死後の遺体の再分配を含む多様な埋葬慣習の記録が残っている。半島での人肉食の事例は100万年前まで遡る記録があるが、当時の文化慣習の曖昧さや埋葬条件の不確実性から、人体処理の直接的な証拠は稀で解釈が困難である。
Palmira Saladié、Francesc Marginedas、Antonio Rodríguez-Hidalgoら(カタルーニャ人類古生態・社会進化研究所(IPHES)〔スペイン〕)は、エル・ミラドール洞窟の2つの異なる地域から発掘された、死後改変の痕跡を示す650点の個人遺骨断片を分析した。これらの遺骨は、5,709年から5,573年前のもので、子供、青少年、および成人が含まれていると推定され、同位体分析から地元住民のものと推定されている。
著者らは、サンプル中の239の遺骨に加工の痕跡を発見した。これらの遺骨は、より最近の集団埋葬の遺物と混ざり合った状態で発見された。222の遺骨には火葬に伴う色変化が認められ、そのうち69の骨には死後に行われた可能性のある解体痕が確認された。さらに、132の人骨には切り裂き、削り取り、切り刻みなどの切痕が認められ、これらは皮剥ぎや肉除去と関連している可能性がある。著者らは、一部の遺骨に人間の歯跡の可能性を示す痕跡があるとも指摘している。
確認された外傷は、いずれも死前に発生したものとは考えられない。著者らは、加工のパターンは、紛争中に受けた傷や戦利品としての身体部位の切断よりも、解体作業によるものとの一致が最も高いと述べている。著者らは、これらの発見は、新石器時代のコミュニティーに特徴的な、より深い社会的緊張と紛争の動態を示す、単一の紛争関連の人肉食事件を反映している可能性があると指摘している。
参考文献:
Saladié P. et al.(2025): Evidence of neolithic cannibalism among farming communities at El Mirador cave, Sierra de Atapuerca, Spain. Scientific Reports, 15, 26648.
https://doi.org/10.1038/s41598-025-10266-w
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