オーストラリアにおける12000年前頃の儀式の痕跡
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、オーストラリアにおける12000年前頃の儀式の痕跡を報告した研究(David et al., 2024)が公表されました。文字のない社会において、民族誌的に知られている儀式が数百年以上にわたって考古学的にさかのぼることは稀で、古代の儀式の歴史的記録は、世代を超えて伝えられていく間に変化していった可能性があります。
グナイ・クルナイ人(GunaiKurnai)の長老たちに招かれて、研究者はオーストラリア・アルプスの麓のクロッグス洞窟(Cloggs Cave)で、考古学的発掘を行ないました。グナイ・クルナイ人の土地において、洞窟は植民地時代初期(19世紀半ば)には居住地としてではなく、民族誌学者によって記録されているように、ムラ・マルング(mulla-mullung)として知られている先住民の呪術師による儀式を行なう隠れ家として利用されていました。
本論文は、埋められた11000年前頃と12000年前頃の小型炉床の発見を報告します。この炉床には、非ヒト動物もしくはヒトの脂肪を塗ったモクマオウ属(Casuarina)の木で作られた、突き出て整えられている棒1本があり、19世紀の民族誌に記録された、グナイ・クルナイ人儀式的使節の構成や内容と一致しています。これらの調査結果は、最終氷期末にさかのぼり、オーストラリアの最古級の既知の木製人工遺物を含む、民族誌的に記録された儀式慣行の500世代にわたる文化伝承を表しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
考古学:オーストラリアの洞窟に残る1万2000年前の儀式の痕跡
1万~1万2000年前のオーストラリア南東部の炉床に保存された、文化として伝わる最古の儀式のものである可能性のある証拠について報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。
文字を持たない社会において、民族学的に知られている文化的慣習の考古学的材料が長期にわたって保存されることはまれであり、古代の儀式の歴史的記録は、世代を超えて伝えられていく間に変化していった可能性がある。19世紀のオーストラリアの民族誌の記録によれば、先住民族グナイ・クルナイの儀式として、犠牲者となる人の所有物を、油脂を塗り付けたモクマオウの木の棒に取り付けて火の前に置き、棒が倒れるまで待つことで、病気を治したり害をもたらしたりするという慣習があったという。
今回、Bruno Davidらは、その地域の先住民の人々と共に、オーストラリア南東部のグナイ・クルナイ族の土地にあるクロッグス洞窟で儀式が行われた証拠を得た。発見された2つの小型の炉床にはそれぞれ、1万~1万2000年前のものとされるモクマオウの木でできた棒が1本置かれていた。これらの棒の残留物分析からは脂質の存在が確認されたが、この炉床が調理や暖を取るために用いられていたことを示す証拠は見つからなかった。
得られた証拠から、Davidらは、この洞窟が1万~1万2000年前に儀式目的で使用されていたのではないかと示唆している。これは、19世紀に民族誌学者によって記された儀式とも一致する。Davidらは、同様の儀式はグナイ・クルナイ族コミュニティーにおいて、最終氷期末期以降、約500世代にわたって絶えることなく行われてきた可能性があると述べている。
参考文献:
David B. et al.(2024): Archaeological evidence of an ethnographically documented Australian Aboriginal ritual dated to the last ice age. Nature Human Behaviour, 8, 8, 1481–1492.
https://doi.org/10.1038/s41562-024-01912-w
グナイ・クルナイ人(GunaiKurnai)の長老たちに招かれて、研究者はオーストラリア・アルプスの麓のクロッグス洞窟(Cloggs Cave)で、考古学的発掘を行ないました。グナイ・クルナイ人の土地において、洞窟は植民地時代初期(19世紀半ば)には居住地としてではなく、民族誌学者によって記録されているように、ムラ・マルング(mulla-mullung)として知られている先住民の呪術師による儀式を行なう隠れ家として利用されていました。
本論文は、埋められた11000年前頃と12000年前頃の小型炉床の発見を報告します。この炉床には、非ヒト動物もしくはヒトの脂肪を塗ったモクマオウ属(Casuarina)の木で作られた、突き出て整えられている棒1本があり、19世紀の民族誌に記録された、グナイ・クルナイ人儀式的使節の構成や内容と一致しています。これらの調査結果は、最終氷期末にさかのぼり、オーストラリアの最古級の既知の木製人工遺物を含む、民族誌的に記録された儀式慣行の500世代にわたる文化伝承を表しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
考古学:オーストラリアの洞窟に残る1万2000年前の儀式の痕跡
1万~1万2000年前のオーストラリア南東部の炉床に保存された、文化として伝わる最古の儀式のものである可能性のある証拠について報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。
文字を持たない社会において、民族学的に知られている文化的慣習の考古学的材料が長期にわたって保存されることはまれであり、古代の儀式の歴史的記録は、世代を超えて伝えられていく間に変化していった可能性がある。19世紀のオーストラリアの民族誌の記録によれば、先住民族グナイ・クルナイの儀式として、犠牲者となる人の所有物を、油脂を塗り付けたモクマオウの木の棒に取り付けて火の前に置き、棒が倒れるまで待つことで、病気を治したり害をもたらしたりするという慣習があったという。
今回、Bruno Davidらは、その地域の先住民の人々と共に、オーストラリア南東部のグナイ・クルナイ族の土地にあるクロッグス洞窟で儀式が行われた証拠を得た。発見された2つの小型の炉床にはそれぞれ、1万~1万2000年前のものとされるモクマオウの木でできた棒が1本置かれていた。これらの棒の残留物分析からは脂質の存在が確認されたが、この炉床が調理や暖を取るために用いられていたことを示す証拠は見つからなかった。
得られた証拠から、Davidらは、この洞窟が1万~1万2000年前に儀式目的で使用されていたのではないかと示唆している。これは、19世紀に民族誌学者によって記された儀式とも一致する。Davidらは、同様の儀式はグナイ・クルナイ族コミュニティーにおいて、最終氷期末期以降、約500世代にわたって絶えることなく行われてきた可能性があると述べている。
参考文献:
David B. et al.(2024): Archaeological evidence of an ethnographically documented Australian Aboriginal ritual dated to the last ice age. Nature Human Behaviour, 8, 8, 1481–1492.
https://doi.org/10.1038/s41562-024-01912-w
この記事へのコメント