中期更新世ヨーロッパの人類における埋葬の可能性の検証

 中期更新世ヨーロッパの人類における埋葬の可能性について、今年(2026年)3月18日~21日にかけてアメリカ合衆国コロラド州デンバーで開催された第95回アメリカ生物学会(旧称はアメリカ自然人類学会)総会で報告されました(Harvati et al., 2026)。この報告の要約はPDFファイルで読めます(P75)。ギリシア南部のマニ半島のアピディマ(Apidima)洞窟では、2点の中期更新世ホモ属頭蓋が発見されており、現生人類(Homo sapiens)系統とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)系統ではないか、と推測されています(関連記事)。この研究は、アピディマ洞窟のホモ属頭蓋が埋葬されたのかどうか、検証しています。

 アピディマ洞窟Aには、1978年に発見された、角礫岩に含まれていた2点の中期更新世化石頭蓋があります。その空間的に近い関連から、2点の頭蓋は同年代の初期ネアンデルタール人を表しており、儀式慣行として埋葬されたかもしれない、と仮定されました。先行研究(関連記事)は、分類学的に異なること(アピディマ2号はネアンデルタール人、アピディマ1号は初期現生人類)のみならず、年代が異なること(アピディマ2号は17万年以上前、アピディマ1号は21万年以上前)も示唆しました。それにも関わらず、この2点のホモ属頭蓋は同年代で埋葬儀式が行なわれていた、との主張が一部で続けられており、「洞窟壁の窪み」における標本の密接な関連、基部における他の遺骸の欠如、断片化のパターン、3点の海岸の小石、儀式仮説を裏づける首長としての堆積物の赤色が指摘されています。

 この研究は、2点のホモ属頭蓋化石とそれらが発見された角礫岩の直接的観察、記録された資料と野外観察、レーザー除去ウラン系列法の結果から、これらの主張を検証します。その結果、頭蓋はアピディマ洞窟Aの天井の裂け目で見つかり、角礫岩に埋もれていて、そこには多くの動物遺骸と骨の断片も含まれていた、と示されます。過去の意図的な人為的痕跡は観察されませんでした。断片化のパターンは、自然の化石生成論的仮定と一致します。堆積物はさまざまな形と大きさの岩で満たされており、洞窟全体に赤みがかった堆積物が見られます。ウラン系列分析から、2点のホモ属頭蓋は元々、完全に異なる地球化学的環境で堆積した、と示唆されます。証拠は全体として、儀式的な埋葬処置を否定する、と結論づけられます。


参考文献:
Harvati K. et al.(2026): Middle Pleistocene funerary ritual at Apidima? A look at the evidence. The 95th Annual Meeting of the AABA.
https://doi.org/10.1002/ajpa.70227

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