最古級の羊膜類の足跡

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、最古級の羊膜類の足跡に関する研究(Long et al., 2025)が公表されました。陸棲動物の進化における重要な段階は、四肢を持つ生物(四肢動物)が海から陸に出現することでした。羊膜類(現生の爬虫類と鳥類と哺乳類を含む一群)は四肢動物の中で唯一陸上において繁殖する系統で、真の陸上動物となったことから、この進化過程の重要点を示しています。最古の無脊椎動物の体の化石と足跡は約3億2000万年前に発見されたもので、四肢動物が初めて水から出た後、無脊椎動物が進化するのに9000万年かかった可能性を示唆しています。

 クラウン群羊膜類の既知の化石記録は、竜弓類(蜥形類)であるノタラセルタ(Notalacerta)の生痕化石やヒロノムス(Hylonomus)の体化石によって後期石炭紀に始まります。一方、クラウン群四肢類の最初期の体化石は石炭紀の中頃のもので、最古の生痕化石は前期石炭紀にさかのぼります。これは、四肢類のクラウン群が石炭紀の最初期(トルネーシアン期の前期)に起源を持ち、羊膜類のクラウン群が後期石炭紀の前半に出現したことを示唆しています。

 本論文は、この広く受け入れられている時系列に疑問を呈する、オーストラリアで発見された新たな生痕化石データを提示します。ビクトリア州タンガーラン(Taungurung)カントリーのスノウィー・プレーンズ累層(Snowy Plains Formation)から見つかった生痕化石の石板は、年代がトルネーシアン期の前期と確定され、そこには祖先的な竜弓類である可能性の高い、かぎ爪のある足を持つクラウン群羊膜類の足跡が残されていました。これによって、クラウン群羊膜類の起源の推定時期は少なくとも3500万~4000万年さかのぼることになります。

 また、ノタラセルタの存在期間も前期石炭紀まで拡大しました。このオーストラリアの生痕化石は、羊膜類のクラウン群の節(ノード)の年代がデボン紀/石炭紀の境界付近にあるに違いなく、四肢類のクラウン群のノードはデボン紀のかなり古い年代に位置するはずであることを示しており、分子系統樹の枝の長さに基づく推定からは、四肢類のクラウン群ノードのおおよその年代がフラニアン期の前期に位置づけられました。こうした知見が四肢類の初期進化研究にもたらす影響は大きく、ステム群四肢類およびステム群羊膜類の全ての系統は、デボン紀に起源を持つに違いないことになります。四肢類の進化は以前の予想より急速に進んだとみられ、デボン紀の四肢動物の記録はこれまで考えられていたよりはるかに不完全であるようです。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡

 オーストラリアの約3億5,600万年前の岩板から、爬虫類の初期の親戚である羊膜類(amniote)のものと思われる爪痕の化石が発見された。今週のNature にオープンアクセスで掲載されるこの発見は、羊膜類の起源が予想よりも早いことを示唆している。

 陸棲動物の進化における重要なステップは、四肢を持つ生物(四肢動物として知られている)が海から陸に出現することであった。羊膜類(今日、爬虫類、鳥類、および哺乳類を含むグループ)は、四肢動物の中で唯一陸上で繁殖するように進化したグループであり、真の陸上動物となったことから、この旅の重要なポイントを示している。最古の無脊椎動物の体の化石と足跡は約3億2,000万年前に発見されたもので、四肢動物が初めて水から出た後、無脊椎動物が進化するのに9,000万年かかった可能性を示唆している。この見解は、John Longと Per Ahlbergら(ウプサラ大学〔スウェーデン〕)によって報告された足跡によって覆された。

 この足跡は、オーストラリアのビクトリア州にあるスノウィー・プレーンズ層(Snowy Plains Formation)から発見されたもので、約3億5,600万年前のものである。2つの足跡が確認され、同じ動物のものと思われる、と著者らは示唆している。その足跡には、無脊椎動物の爪跡があり、これまで知られていた無脊椎動物の足跡や体の化石よりも4,000万年ほど早かった。前足跡と後足跡の間隔を、同じような形をした足を持つ現代のミズオオトカゲ(modern water monitor)の足跡の間隔と比較することで、著者らは古代の無脊椎動物の体長は80センチメートル程度であったと推定しているが、その動物の正確な全体像は不明であることを指摘している。

 これらの発見は、デボン紀と石炭紀の境界(約3億5,900万年前)までに現生羊膜類の共通祖先が存在し、デボン紀後期の早期(約3億8,000万年前)の早い時期に四肢動物クラウングループノード(現生両生類と羊膜類の系統を統合)が存在していたかもしれないことを示唆している。もしこれが事実であれば、四肢動物が水生生物から完全に陸上で生活する生物へと進化したのは、これまで考えられていたよりも早かった可能性が高い、と著者らは結論付けている。


古生物学:羊膜類の最初期の生痕化石によって再較正された四肢動物の進化の時系列

古生物学:羊膜類の起源を大きくさかのぼらせる生痕化石

 今回オーストラリアで、年代が約3億5600万年前と推定される石板に、かぎ爪を持つ足の跡を残す生痕化石が発見された。この足跡は、両生類よりも羊膜類(爬虫類)に近い動物のものと見られ、以前の既知の羊膜類の足跡や体化石よりも約4000万年古い。



参考文献:
Long JA. et al.(2025): Earliest amniote tracks recalibrate the timeline of tetrapod evolution. Nature, 641, 8065, 1193–1200.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08884-5

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