ペルム紀の初期爬虫類のミイラ化した化石

 ペルム紀の初期爬虫類のミイラ化した化石を報告した研究(Reisz et al., 2026)が公表されました。肋骨による吸引呼吸は、羊膜類(哺乳類と爬虫類と鳥類およびそれらの共通祖先)が陸域を征服する上で不可欠な進化的新機軸でした。現生の羊膜類は、肋間筋によって生じる吸気と呼気のために、統合された胸郭骨格を用いていますまが、これは、より受動的な皮膚呼吸や口腔ポンプによる換気を行う無羊膜類の近縁類とは大きく異なっています。この違いは古生代にまでさかのぼりますが、軟組織の化石が欠如しているため、これらの呼吸様式の間の進化的移行についてはまだ報告がなく、大部分が不明なままです。

 本論文は、前期ペルム紀の爬虫類カプトリヌス(Captorhinus)のミイラ化した標本について報告します。この標本は、三次元的な皮膚の覆い、内因性のタンパク質残存物、軟骨が保存された完全な肩帯と胸郭を含んでいます。これらの軟骨とタンパク質残存物はいずれも、陸生脊椎動物で保存されていたものの中では既知で最古のものとなります。高分解能の中性子コンピューター断層撮影と組織学データにより、軟骨性の胸骨、胸肋骨、肋骨延長部、上烏口骨など、これまで報告されたことのない構造が明らかになりました。この太古の爬虫類の骨格復元によって、胸郭と肩帯の正確な関係、およびそれらが陸上での呼吸様式と移動様式の進化において果たした、きわめて重要な役割が明らかになりました。この知見は、地質学的な時間スケール(ディープタイム)での軟組織の保存に対する予想を大きく変えるもので、祖先的な羊膜類の呼吸機構であった可能性のある仕組みと、それが陸生脊椎動物の進化に及ぼした影響を明らかにしています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


古生物学:ミイラ化した爬虫類が初期の呼吸器系を明らかにする

 約2億8900万~2億8600万年前のものと推定される、ミイラ化した爬虫類の化石の残骸から、初期の有羊膜類(amniotes;爬虫類、鳥類、および哺乳類を含むグループ)が胸郭を動かすことで呼吸していたことが分かった。今週のNature に掲載される論文で報告されるこの化石は、陸生脊椎動物から発見されたものとしては最古とされる軟骨とタンパク質の痕跡を明らかにしている。この発見は、最初の爬虫類が陸上でどのように呼吸していたかについて、新たな手がかりを与えるものである。

 水中から陸上への移行は、脊椎動物の進化における大きな一歩であり、初期の有羊膜類は乾燥した環境で生き残るため、新たな呼吸様式を獲得する必要があった。初期の有羊膜類は、おもに喉や皮膚による呼吸に依存していたのに対し、後の有羊膜類は肋骨と胸部を使って肺に空気を送り込んでいた。軟組織が化石化することはほとんどないため、この変化がいつ、どのように生じたのかを直接示す証拠は、これまでほとんど得られていなかった。

 Robert Reisz、Ethan Mooneyら(トロント大学〔カナダ〕)は、現在の米国オクラホマ州にあるペルム紀(Permian period)初期の洞窟系で発見された、カプトリヌス(Captorhinus)と呼ばれる初期爬虫類の化石を分析した。良好な保存状態の標本は、微細な粘土に包まれ、油分を含んでいたため、これまで知られていなかった構造が明らかになった。これには、保存された三次元の皮膚、肋骨や肩周辺の軟骨、そして軟骨、骨、皮膚に残るタンパク質の痕跡が含まれる。化石には、複数の部分からなる軟骨性の胸骨、少なくとも4対の胸骨肋骨、中間肋骨、長い頸椎肋骨の延長部、および軟骨が含まれている。これらの構造は、肋骨籠が肩帯にどのように連結し、現生の爬虫類と同様の柔軟な呼吸系を形成していたかを示している。

 著者らは、これが軟骨性の呼吸構成要素がそのまま残された、現存する最古の完全な有羊膜類の肋骨籠であると結論づけている。この発見は、初期の有羊膜類が軟骨性の胸骨を持っていたこと、そして肋骨の動きを利用した呼吸が、その後の運動、摂食、体形の進化的変化を支えた可能性を示唆している。また、これらの化石は、軟組織やタンパク質が予想以上に長く保存されることを示しているが、その保存状態はおそらく発掘現場の特殊な洞窟環境に依存していたため、このような発見は今後も稀なものになると考えられる。今後の研究では、これらの特徴がほかの初期の有羊膜類の間でどれほど広まっていたかが明らかにされるかもしれない。


古生物学:前期ペルム紀のミイラ化した爬虫類が明かす太古の羊膜類の呼吸器

古生物学:肋骨呼吸の起源を示す手掛かり

 今回、石油湧出地においてミイラ化した、約2億8900万~2億8600万年前の初期爬虫類カプトリヌス(Captorhinus)の化石標本が報告されている。この標本によって、最初期の爬虫類が、現在の大半の爬虫類とほぼ同じように胸郭を動かして呼吸していたことが示された。



参考文献:
Reisz RR. et al.(2026): Mummified early Permian reptile reveals ancient amniote breathing apparatus. Nature, 653, 8113, 117–123.
https://doi.org/10.1038/s41586-026-10307-y

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