森恒二『創世のタイガ』第14巻(講談社)

 2026年3月に刊行されました。第13巻は、現生人類(Homo sapiens)側の王であるタイガが、現生人類とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)との共存を考えており、現生人類とネアンデルタール人が戦い続けている根本的原因はその王(第二次世界大戦のドイツとフランスの国境付近の戦場から来たドイツ人将校ですが)にある、と指摘したところで終了しました。第14巻は、糸の生産と衣服の製作に、家畜の飼育も大々的に行なわれるようになり、投石器の試作も始まるなど、現生人類側の集落が発展している様子の描写から始まります。

 現生人類側の集落の発展を見ていたネアンデルタール人側の「王族」であるヴォルフ(旧石器時代に時間移動させられた第二次世界大戦時のドイツ軍人5名のうち、将校だったクラウスが頼りにしていた同名の軍人が父親で、おそらく母親はネアンデルタール人)は、これを脅威に感じて、「王」であるクラウスからの帰還命令に従わず、情報収集のため現生人類側の集落の近くに留まります。ユカが沢に息子を連れてきて、ドイツ民謡の「野ばら」を日本語で歌っていると、かつてユカと遭遇し(第10巻)、ともに「野ばら」を歌ったヴォルフ(ヴォルフの方はドイツ語で歌ったわけですが)は、部下を遠ざけてユカに会いに行き、連れて帰ろうとします。ヴォルフはユカの息子を見て、仲間だと思い、ユカに同行するよう要請しますが、ドイツ語の分からないユカは拒否するものの英語で対応したため、二人の意思疎通は上手くいきません。そこへ、現生人類側の男性が現れますが、ユカはヴォルフを庇い、立ち去るよう伝えます。ヴォルフは、ユカを助けたいと伝え、朝に来るので歌うよう、要請します。ユカは、ヴォルフが自分に歌うよう言っているのではないか、と推測します。

 その晩、ユカは亡夫のナクムのことや敵と味方の立場などを考えながら息子とともに寝ます。ユカが迷いつつも沢に行くと、ヴォルフが現れ、ユカの息子を可愛がります。この息子はユカがネアンデルタール人に拉致されたさいに強姦されて妊娠し、生まれた子供なので、ネアンデルタール人に似ており、ヴォルフはユカの子供を「同族」と考えています。ヴォルフはユカの子供を仲間に会わせようとしますが、言葉は通じないものの、その様子を悟ったユカは慌てて息子を抱き、会うのは間違っている、と伝えて立ち去ります。

 それでもヴォルフは諦めきれず、また沢に行ったところで、「長兄」のデニスと遭遇します。デニスはまだ戦意が高く、現生人類攻略の糸口を見つけるべく、現生人類の集落に近づいてきたわけです。デニスはヴォルフにこれまでの自分の強引なやり方を反省していると伝え、「王」であるクラウスと「弟(実際には兄弟ではありませんが)」のゲオルグを説得し、現生人類側の砦の襲撃にゲオルグの指揮下で参陣する、と伝えますが、軍の実権を掌握すべく、何か画策しているようです。

 ユカは現生人類の集落の近くに滞在し続けるヴォルフに会いに行き、初歩的なドイツ語で会話し、さらに打ち解けますが、ヴォルフはユカに、一緒に来るよう懇願します。ユカと、ユカがネアンデルタール人に拉致されて強姦されたさいに妊娠し、現生人類の集落に帰還してから出産した息子を守りたい、というわけですが、ヴォルフはそこまでは知らないようです。ユカはネアンデルタール人が再び攻めてくると察し、逆にヴォルフに自分たちの側に来るよう説得しますが、王家の一員である自分は一族を捨てられない、と言ってヴォルフは断り、ヴォルフがやはり自分たちの敵だと認識したユカは立ち去ります。

 ついに多数のネアンデルタール人が西の砦に押し寄せ、現生人類側は投石機で応戦しますが、充填に時間がかかることを見抜いたネアンデルタール人側の「王族」であるデニスは、その隙に兵士を接近させ、城壁に攻め寄せ、現生人類側は苦戦しますが、そこに狼のウルフの仔も連れて援軍を率いたタイガが到着します。ネアンデルタール人側の「王族」であるデニスは撤退を命じ、捕虜となったネアンデルタール人側には、以前も捕虜となった「王族」の一人であるゲオルグがいました。ゲオルグは、神の意志だから戦うしかない、と観念したようにタイガに告げます。タイガはカシンに偵察を命じ、ネアンデルタール人側にはまだ多くの兵士が残っているいることから、撤退も策の一環ではないか、とカシンは疑います。カシンから報告を受けたタイガは、ネアンデルタール人側が自分たちの壁や櫓の破壊を目的にしていたのではないか、と推測します。兵数で上回っていることから、長期戦で現生人類側の体力を奪っていこう、というわけです。ゲオルグは、すでに捕虜になっていたネアンデルタール人から、お前たちが襲撃してきたから同胞が殺されたのだ、自分たちは現生人類側の「王」であるタイガを選ぶ、と冷たく言い放たれます。タイガは、北の砦からの撤退を決断し、物資を運びだし、施設を破壊します。

 第14巻はこれで終了となり、現生人類とネアンデルタール人(およびその支配者であるドイツ人「王族」)との戦いの激化が描かれ、これまで以上の大規模な戦いになることを予感させています。本作がどのような結末に至るのか、分かりませんが、完結に向かって話が動き始めた感もあります。日本人のタイガたちとドイツ人のクラウスたちがなぜ、旧石器時代の世界へと移転させられたのか、といった本作の根幹的な設定も気になるところですが、それ以上に、現生人類とネアンデルタール人の対立がどのように決着するのか、それが「現代(20~21世紀)」社会にも影響を及ぼすのかも、気になるところです。このところ、1年に1冊の刊行となっていますが、相変わらず面白いので、是非完結を見届けたいものです。なお、第1巻~第13巻までの記事は以下の通りです。

第1巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201708article_27.html

第2巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201801article_28.html

第3巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201806article_42.html

第4巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201810article_57.html

第5巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201905article_44.html

第6巻
https://sicambre.seesaa.net/article/201911article_41.html

第7巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202009article_22.html

第8巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202105article_2.html

第9巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202112article_25.html

第10巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202210article_1.html

第11巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202304article_1.html

第12巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202404article_6.html

第13巻
https://sicambre.seesaa.net/article/202504article_5.html

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