アリューシャン列島先住民の人口史

 アリューシャン列島の古代人のゲノムデータが、今年(2026年)3月18日~21日にかけてアメリカ合衆国コロラド州デンバーで開催された第95回アメリカ生物学会(旧称はアメリカ自然人類学会)総会で報告されました(Hay et al., 2026)。この報告の要約はPDFファイルで読めます(P78)。この研究は、ヨーロッパ人との接触前の個体も含む、アリューシャン列島の古代人のゲノムデータを報告し、アメリカ大陸への人類の移住とも関連する、ユーラシア北東部圏の人口史の一端を解明しています。

 アラスカからロシアまで1200マイル(約1930km)にわてって連なるアリューシャン列島は、ヒトが居住した最後の場所の一つです。考古学的証拠から、アリューシャン列島を通っての西方への移動は単一の事象ではなく、約6000年間にわたって続いた漸進的過程だった、と示唆されています。以前のゲノム研究では、アリューシャン列島の先住民である、アレウト人(Aleut)とも呼ばれるウナンガン人の祖先は、古イヌイット、つまりサカク人(Saqqaq)と共通する主要な祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)構成要素で構成される遺伝子プールと、アメリカ大陸の最初の人々と共通する低い割合の祖先系統構成要素を有していた、と示されてきました。しかし、その研究には、アリューシャン列島中央部および西部の祖先は含まれていませんでした。

 この研究は、較正年代で2750~260年前頃に生きていた12個体の古ゲノムデータ(全ゲノム、網羅率は0.25~11倍)を用いて、これらの祖先の最初のゲノムの特徴づけを提示します。主成分分析(principal component analysis、略してPCA)や混合分析やF統計での世界規模の祖先系統分析は、アリューシャン列島全体での祖型古イヌイットおよびアメリカ大陸最初の人々の関連する祖先系統の一貫した水準を示しており、アリューシャン列島中央部および西部の個体群は、頭部の個体群の祖先系統と密接に類似しています。

 これらの結果は単一の祖先集団を裏づけ、人口置換を伴う2回の別々の波との以前の主張に反論します。この研究の結果の解像度を高めるために、Shapeit5を用いてゲノムが位相化され、局所的祖先系統を調べるために、参照として1KGP(1000 Genomes Project、1000人ゲノム計画)とHGDP(Human Genome Diversity Panel、ヒトゲノム多様性パネル)を用いて補完されました。その結果、アリューシャン列島全域で東方から西方への地理と相関した遺伝的多様性減少の有意なパターンが見つかりました。このパターンは距離による孤立モデルと一致し、地理と遺伝子流動の密接な関係を強調しています。


参考文献:
Hay S. et al.(2026): Ancient Unangax genomes reveal the population dynamics of the central and western Aleutian Islands Pre-European contact. The 95th Annual Meeting of the AABA.
https://doi.org/10.1002/ajpa.70227

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