インド北部古代人のゲノムデータ

 インド北部古代人のゲノムデータについて、今年(2026年)3月18日~21日にかけてアメリカ合衆国コロラド州デンバーで開催された第95回アメリカ生物学会(旧称はアメリカ自然人類学会)総会で報告されました(Aragon et al., 2026)。この報告の要約はPDFファイルで読めます(P6)。本研究は、インド北東部の、3300年前頃の採食民3個体と歴史時代の24個体の古代ゲノムデータと、現代人57個体の新たなゲノムデータを報告し、これまで知られていなかった遺伝的系統が3300年前頃に存在し、当時すでにアジア東部的構成要素が見られることを示しています。現代人の包括的な最近のゲノム研究はありますが(関連記事)、インドはこれまで古代ゲノム研究が相対的には遅れた地域だったので、今後の研究の進展が期待されます。

 インド北東部はアジアの南部と東部の交差点に位置し、遺伝的および言語的類似性はおもにアジア東部人と共有されています。これらの地域間で共有されている遺伝的歴史を調べるために、インド北東部の採食民の背景の古代人3個体(3300年前頃)と歴史時代の24個体から全ゲノムが生成されました。さらに、チベット・ビルマ語派言語を話、小規模な農耕を行なっている、インド北東部のアルナーチャル・プラデーシュ(Arunachal Pradesh)州(7個体)とミゾラム(Mizoram)州(30個体)とナガランド(Nagaland)州(20個体)の現代人の全ゲノムが配列決定されました。

 世界中の古代および現在の人口集団との、これらの個体の全ゲノム類似性が評価されました。本論文の分析は、3300年前頃の個体群によって表される以前には標本抽出されていなかった狩猟採集民の遺伝的系統を明らかにし、この系統は、黄河流域およびチベットの古代人集団と関連する遺伝的祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)の混合としてモデル化されました。この系統は、インド北東部の標本抽出された歴史時代および現在の個体群に遺伝的祖先系統をもたらし、それによって、早くも少なくとも3300年前頃におけるアジアの東部と南部との間の生物学的つながりが確証されます。

 ナガランド州の歴史時代および現在の個体群では追加のアジア東部遺伝的祖先系統が検出され、これはもっと新しい移住を通じてもたらされた可能性が高そうです。さらに、インド北東部のすべての標本抽出された現在の個体間には高度な遺伝的類似性がありましたが、現在のアルナーチャル・プラデーシュ州およびミゾラム州の個体群における、アジア南部供給源からの追加の遺伝的混合が明らかになりました。本研究は、アジアの東部と南部の交差点における人口動態史を解明し、この地域の現在の遺伝的景観の形成における古代の移住の重要性を浮き彫りにします。


参考文献:
Aragon JU. et al.(2026):Ancient genomes from Northeast India highlight long-term regional continuity and migrations between South and East Asia. The 95th Annual Meeting of the AABA.
https://doi.org/10.1002/ajpa.70227

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