哺乳類の顎関節の収斂進化
取り上げるのが遅れてしまいましたが、哺乳類の顎関節の進化に関する研究(Mao et al., 2025)が公表されました。単一の歯骨から構成される下顎と、歯骨の関節丘および鱗状骨の関節窩の間の二次的な頭蓋下顎関節の進化は、脊椎動物におけるきわめて重要な新機軸で、哺乳類を特徴づける形質と考えられてきました。本論文は、二次顎関節の新規な形状を有する2種の哺乳形類について報告し、哺乳類の顎の進化に関する洞察を提示します。
一方は、中期ジュラ紀の植食性トリティロドン類であるポリストドン・チュアンナネンシス(Polistodon chuannanensis)で、体サイズは比較的大きく、掘削性の生活様式と考えられ、独特に進化した歯骨–頬骨関節を有していました。もう一方は、前期ジュラ期のモルガヌコドン類であるキャムロコンディルス・ルフェンゲンシス(Camurocondylus lufengensis)で、丸く膨らんだ関節丘を欠いている、歯骨–鱗状骨関節を有しており、哺乳類の歯骨関節丘は歯骨の外側の突起の拡大によって形成された、との仮説を裏づけています。
こうした多様な関節は、進化がより進んだキノドン類で繰り返された進化的実験を反映しており、その過程において異なる種類の二次顎関節が独立して生じ、耐荷重性の歯骨–鱗状骨関節が哺乳型類の共有派生形質となりました。体の小型化がこの変化を駆動した可能性もありますが、本論文の知見は、顎筋の再編成や摂餌生態や咀嚼行動などの他の要因が関与したことを示唆しています。これらの分類群の生態形態学的多様性は、表現型の可塑性および環境に誘発された形態的変化による顎関節の進化の形成の可能性を示唆しており、生態的圧力と発生的柔軟性が、哺乳類の祖先でいかに顎構造の多様化を導いたのかを、浮き彫りにしています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
古生物学:哺乳形類における多様な顎関節の収斂進化
Cover Story:顎関節の進化:頭蓋化石が明らかにした哺乳類の顎への複雑な進化経路
哺乳類を他の脊椎動物と区別する特徴の1つは顎である。有顎脊椎動物の多くは下顎に複数の骨を持つが、哺乳類の下顎の骨はたった1つである。この顎構造の進化は、化石記録において、哺乳類を他の脊椎動物と区別する指標として長年用いられてきた。今週号ではF Maoたちが、哺乳類の顎関節の進化に関する新たな詳細を明らかにしている。研究チームは、トリティロドン類のポリストドン(Polistodon chuannanensis、表紙はその想像図)を再検討するとともに、モルガヌコドン類の新属新種Camurocondylus lufengensisを報告し、マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)を用いて、哺乳類の祖先であるこれら2種の頭蓋骨を詳細に調べた。ポリストドンの頭蓋化石は約1億6000万年前のもので、これまで知られていなかった顎関節の形状が見られた。Camurocondylusの頭蓋骨はさらに古く、約2億年前の前期ジュラ紀にさかのぼるもので、顎関節の新規な形状が認められた。こうした多様な顎関節は、哺乳類の顎に至る進化の経路が、生態的圧力への応答により独立して生じた複数の新機軸の1つであることを示していると、著者たちは主張している。
参考文献:
Mao F. et al.(2025): Convergent evolution of diverse jaw joints in mammaliamorphs. Nature, 647, 8089, 403–410.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09572-0
一方は、中期ジュラ紀の植食性トリティロドン類であるポリストドン・チュアンナネンシス(Polistodon chuannanensis)で、体サイズは比較的大きく、掘削性の生活様式と考えられ、独特に進化した歯骨–頬骨関節を有していました。もう一方は、前期ジュラ期のモルガヌコドン類であるキャムロコンディルス・ルフェンゲンシス(Camurocondylus lufengensis)で、丸く膨らんだ関節丘を欠いている、歯骨–鱗状骨関節を有しており、哺乳類の歯骨関節丘は歯骨の外側の突起の拡大によって形成された、との仮説を裏づけています。
こうした多様な関節は、進化がより進んだキノドン類で繰り返された進化的実験を反映しており、その過程において異なる種類の二次顎関節が独立して生じ、耐荷重性の歯骨–鱗状骨関節が哺乳型類の共有派生形質となりました。体の小型化がこの変化を駆動した可能性もありますが、本論文の知見は、顎筋の再編成や摂餌生態や咀嚼行動などの他の要因が関与したことを示唆しています。これらの分類群の生態形態学的多様性は、表現型の可塑性および環境に誘発された形態的変化による顎関節の進化の形成の可能性を示唆しており、生態的圧力と発生的柔軟性が、哺乳類の祖先でいかに顎構造の多様化を導いたのかを、浮き彫りにしています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
古生物学:哺乳形類における多様な顎関節の収斂進化
Cover Story:顎関節の進化:頭蓋化石が明らかにした哺乳類の顎への複雑な進化経路
哺乳類を他の脊椎動物と区別する特徴の1つは顎である。有顎脊椎動物の多くは下顎に複数の骨を持つが、哺乳類の下顎の骨はたった1つである。この顎構造の進化は、化石記録において、哺乳類を他の脊椎動物と区別する指標として長年用いられてきた。今週号ではF Maoたちが、哺乳類の顎関節の進化に関する新たな詳細を明らかにしている。研究チームは、トリティロドン類のポリストドン(Polistodon chuannanensis、表紙はその想像図)を再検討するとともに、モルガヌコドン類の新属新種Camurocondylus lufengensisを報告し、マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)を用いて、哺乳類の祖先であるこれら2種の頭蓋骨を詳細に調べた。ポリストドンの頭蓋化石は約1億6000万年前のもので、これまで知られていなかった顎関節の形状が見られた。Camurocondylusの頭蓋骨はさらに古く、約2億年前の前期ジュラ紀にさかのぼるもので、顎関節の新規な形状が認められた。こうした多様な顎関節は、哺乳類の顎に至る進化の経路が、生態的圧力への応答により独立して生じた複数の新機軸の1つであることを示していると、著者たちは主張している。
参考文献:
Mao F. et al.(2025): Convergent evolution of diverse jaw joints in mammaliamorphs. Nature, 647, 8089, 403–410.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09572-0
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