『卑弥呼』第164話「面縛與櫬」
『ビッグコミックオリジナル』2026年3月20日号掲載分の感想です。前号は休載だったので、久々の感があります。前回は、山社(ヤマト)国と暈(クマ)国の境の庵で、ヤノハと、暈国の大夫で実質的な最高権力者である鞠智彦(ククチヒコ)の取り子(養子)となった、日見彦(ヒミヒコ)候補とされているニニギ(ヤエト)が対面を終えて、ヤノハが庵から出てきたところを、鞠智彦たちが確認したところで終了しました。今回は、山社の楼観で、ヤノハが弟のチカラオ(ナツハ)から、二人の間の息子であるヤエト(ニニギ)を手放した後、チカラオがヤエトを誰に預けたのか、説明を受けている場面から始まります。チカラオは喋れないので、筆談でヤノハの質問に答えます。チカラオは、ヤエトを暈の邑に住むホデリとタマヨリという夫婦に預け、ヤエトはニニギという名を与えられました。しかし、チカラオが久々にヤエトを見に行くと、その邑は賊に襲われ、ホデリとタマヨリは殺されていました。ヤエトに合いに行った理由を訪ねられたチカラオは、地震(なゐ)を伝えるためだった、と答えます。チカラオは、大地震(おおなゐ)が起きることを息子のヤエトに知らせようとしたわけです。ただ、チカラオは、その後でヤエトが日見彦に祭り上げられた経緯は知りません。ヤノハは、自分に代わる日見子(ヒミコ)か日見彦を探していた鞠智彦が、大地震を言い当てた子供の噂を聞いたのだろう、と推測します。
ヤノハは、ニニギがなぜ自分を敵視するのか、理由が分かりません。ニニギからヤノハへの殺意は、鞠智彦に吹き込まれた程度で生じるものではない、とヤノハは考えていました。ヤエトが育った邑に土地勘があるのか、とヤノハに問われたチカラオは狼狽しまする。ヤノハはそれで悟ったのか、そこがヒルメの棲む夜萬加(ヤマカ)に近いのか、とチカラオに尋ねます(ここまで、ヤノハがヒルメの存命を知っている、と明示的に示した場面は描かれていなかったように思いますが)。チカラオはヤノハからの叱責を恐れてますが、ヤノハは微笑み、ヤエトはいずれ自分を殺す運命だが、ヤエトを恨むな、とチカラオを諭します。自分は窟屋の中でヤエトを産み、生きるか死ぬか、一か八かの境遇を科したのだから相子だ、というわけです。ヤノハはチカラオに、自分を殺したとしても、ヤエトを助けるよう命じます。それは、次に倭国を治めるのがヤエトだと、ヤノハは考えているからですが、ヤエトが民の命を何とも思わない暴君なら、その時は父親であるチカラオがヤエトを殺せ、とヤノハは命じます。ヤノハはすぐに明るい表情で、今すぐヤエトを殺せと言っているわけではなく、今は日下(ヒノモト)をどう降伏させるかに専念せねばならない、とチカラオに伝えます。
その110日後、魏の遼東郡の襄平では、山社連合からの遣魏使であるトメ将軍一行が、公孫淵の居城の近くを通りかかっていました。そこには多数の頭蓋骨が積まれており(京観)、公孫淵の一族郎党を皆殺しにしたのだ、とヤノハとは旧知の何(カ)が説明します。何に随行してきたトヒコとノヅナは、司馬懿(司馬仲達)の恐ろしさを改めて痛感します。ミマアキは、襄平には残党や賊が潜んでいるかもしれないので、避けるよう提案します。そこへ、トメ将軍一行を護衛している魏の帯方太守である劉夏の配下が、襄平の城内には呉軍がいるので、急いで引き返すよう提案します。呉の皇帝である孫権が公孫淵に援軍を派遣したものの、その到着前に公孫淵は司馬懿に討伐されたわけです。魏の護衛責任者から、昌黎郡まで戻れば呉郡は来ない、と言われたミマアキは、一刻も早く帰国せねばならない、と焦ります。するとトメ将軍は、ゴリと何に、呉軍をかわして急ぐよう指示します。我々二人なら遼東郡を抜けられる、と自信を見せる何に、魏が倭と同盟を結んだ、と日見子様(ヤノハ)に知らせるよう、ミマアキは要請し、親魏倭王の印を預けます。
金砂(カナスナ)国の出雲では、吉備津彦(キビツヒコ)が日下から金砂国の支配者に任命されたフルネに、兵士とともに去るよう命じていました。物々しい戦人の集団が密集していれば、非戦を唱える事代主(コトシロヌシ)も挙兵してしまう、というわけです。吉備津彦は4人の配下に、武器を置き、下着だけになるよう命じて、棺を担いで出雲の巨大神殿へと歩いていきます。その報告を受けた事代主は、戦に来たのではなさそうだから、手を出さないよう、警備に伝えようとします。事代主は配下のシラヒコから、吉備津彦は油断がならない、と警告されても、案外正直な男なので、殺したいなら軍勢を連れて来るだろう、と平然としています。吉備津彦は、棺を綱で自分の体に括りつけ、神殿の長い階段を登り始めます。事代主は、これが古くから漢に伝わる降伏の作法である面縛與櫬(メンバクヨシン)だと気づきます。吉備津彦が事代主に、日下は出雲に全面降伏する、と伝えるところで今回は終了です。
今回は、ヤノハとチカラオおよび両者の息子であるヤエトの運命、山社連合の遣魏使の帰国の困難、吉備津彦の出雲への唐突な降伏の申し出が描かれました。ヤノハはさすがに非情なだけに、実子のヤエトが暴君になった場合には殺すようチカラオに命じており、本作がヤノハの死後まで描かれるのか、分かりませんが、ヤノハがどのようにヤエトに殺されるのか、それは生物学的な死なのか、政治的もしくは社会的な死なのかは、本作終盤の山場となりそうで、しばらく大きな動きはなさそうです。遣魏使では、遣魏使の一員となった穂波(ホミ)国の重臣の息子でミマアキの親友であるトモが、日下に忠誠を誓っているように思えることもあり、まだ帰国への道は険しそうです。吉備津彦の出雲への降伏の申し出は意外でしたが、日下の支配層、とくに吉備津彦は狡猾なだけに、その意図はよく分からず、次回以降が楽しみです。日下が本気で出雲に全面降伏するとはとても思えませんが、疫病で大打撃を受けたことから、出雲に降伏を申し出て、事代主の優れた医術で復興を進めつつ、勢力で圧倒的に優勢であることを活かして、出雲を実質的に支配していくつもりなのでしょうか。山社連合と日下および暈との関係を中心に今後は話が展開していくでしょうが、まずは出雲と日下との関係がどうなるのか、注目しています。
ヤノハは、ニニギがなぜ自分を敵視するのか、理由が分かりません。ニニギからヤノハへの殺意は、鞠智彦に吹き込まれた程度で生じるものではない、とヤノハは考えていました。ヤエトが育った邑に土地勘があるのか、とヤノハに問われたチカラオは狼狽しまする。ヤノハはそれで悟ったのか、そこがヒルメの棲む夜萬加(ヤマカ)に近いのか、とチカラオに尋ねます(ここまで、ヤノハがヒルメの存命を知っている、と明示的に示した場面は描かれていなかったように思いますが)。チカラオはヤノハからの叱責を恐れてますが、ヤノハは微笑み、ヤエトはいずれ自分を殺す運命だが、ヤエトを恨むな、とチカラオを諭します。自分は窟屋の中でヤエトを産み、生きるか死ぬか、一か八かの境遇を科したのだから相子だ、というわけです。ヤノハはチカラオに、自分を殺したとしても、ヤエトを助けるよう命じます。それは、次に倭国を治めるのがヤエトだと、ヤノハは考えているからですが、ヤエトが民の命を何とも思わない暴君なら、その時は父親であるチカラオがヤエトを殺せ、とヤノハは命じます。ヤノハはすぐに明るい表情で、今すぐヤエトを殺せと言っているわけではなく、今は日下(ヒノモト)をどう降伏させるかに専念せねばならない、とチカラオに伝えます。
その110日後、魏の遼東郡の襄平では、山社連合からの遣魏使であるトメ将軍一行が、公孫淵の居城の近くを通りかかっていました。そこには多数の頭蓋骨が積まれており(京観)、公孫淵の一族郎党を皆殺しにしたのだ、とヤノハとは旧知の何(カ)が説明します。何に随行してきたトヒコとノヅナは、司馬懿(司馬仲達)の恐ろしさを改めて痛感します。ミマアキは、襄平には残党や賊が潜んでいるかもしれないので、避けるよう提案します。そこへ、トメ将軍一行を護衛している魏の帯方太守である劉夏の配下が、襄平の城内には呉軍がいるので、急いで引き返すよう提案します。呉の皇帝である孫権が公孫淵に援軍を派遣したものの、その到着前に公孫淵は司馬懿に討伐されたわけです。魏の護衛責任者から、昌黎郡まで戻れば呉郡は来ない、と言われたミマアキは、一刻も早く帰国せねばならない、と焦ります。するとトメ将軍は、ゴリと何に、呉軍をかわして急ぐよう指示します。我々二人なら遼東郡を抜けられる、と自信を見せる何に、魏が倭と同盟を結んだ、と日見子様(ヤノハ)に知らせるよう、ミマアキは要請し、親魏倭王の印を預けます。
金砂(カナスナ)国の出雲では、吉備津彦(キビツヒコ)が日下から金砂国の支配者に任命されたフルネに、兵士とともに去るよう命じていました。物々しい戦人の集団が密集していれば、非戦を唱える事代主(コトシロヌシ)も挙兵してしまう、というわけです。吉備津彦は4人の配下に、武器を置き、下着だけになるよう命じて、棺を担いで出雲の巨大神殿へと歩いていきます。その報告を受けた事代主は、戦に来たのではなさそうだから、手を出さないよう、警備に伝えようとします。事代主は配下のシラヒコから、吉備津彦は油断がならない、と警告されても、案外正直な男なので、殺したいなら軍勢を連れて来るだろう、と平然としています。吉備津彦は、棺を綱で自分の体に括りつけ、神殿の長い階段を登り始めます。事代主は、これが古くから漢に伝わる降伏の作法である面縛與櫬(メンバクヨシン)だと気づきます。吉備津彦が事代主に、日下は出雲に全面降伏する、と伝えるところで今回は終了です。
今回は、ヤノハとチカラオおよび両者の息子であるヤエトの運命、山社連合の遣魏使の帰国の困難、吉備津彦の出雲への唐突な降伏の申し出が描かれました。ヤノハはさすがに非情なだけに、実子のヤエトが暴君になった場合には殺すようチカラオに命じており、本作がヤノハの死後まで描かれるのか、分かりませんが、ヤノハがどのようにヤエトに殺されるのか、それは生物学的な死なのか、政治的もしくは社会的な死なのかは、本作終盤の山場となりそうで、しばらく大きな動きはなさそうです。遣魏使では、遣魏使の一員となった穂波(ホミ)国の重臣の息子でミマアキの親友であるトモが、日下に忠誠を誓っているように思えることもあり、まだ帰国への道は険しそうです。吉備津彦の出雲への降伏の申し出は意外でしたが、日下の支配層、とくに吉備津彦は狡猾なだけに、その意図はよく分からず、次回以降が楽しみです。日下が本気で出雲に全面降伏するとはとても思えませんが、疫病で大打撃を受けたことから、出雲に降伏を申し出て、事代主の優れた医術で復興を進めつつ、勢力で圧倒的に優勢であることを活かして、出雲を実質的に支配していくつもりなのでしょうか。山社連合と日下および暈との関係を中心に今後は話が展開していくでしょうが、まずは出雲と日下との関係がどうなるのか、注目しています。
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