指の進化
取り上げるのが遅れてしまいましたが、指の進化に関する研究(Hintermann et al., 2025)が公表されました。椎動物の進化における鰭から肢への移行は、発生がいかに進化的変化の基盤となっているかに関する研究の中核となってきました。この文脈では、新しい特徴の起源を説明するために、Hox遺伝子調節の機能解析を用いた進化の軌跡の推定がきわめて重要となっています。四肢類では、発生中の指におけるHoxd遺伝子の転写は、大規模な調節領域を形成するエンハンサー群に依存しています。指を持たないゼブラフィッシュに、これと対応するシンテニー領域が存在することは、遠位の鰭と肢との間に古い相同性や共通の発生基盤があることを示唆しています。しかし、この調節プログラムがどのように進化したかについては、まだ明らかにされていません。
本論文は、ゼブラフィッシュのHoxd調節領域の機能を、その全体の欠失による影響を比較評価することによって遺伝学的に評価しました。その結果、マウスの場合とは異なり、魚類でこれらの領域を欠失させても、遠位の鰭の発生においてhoxd遺伝子の転写を阻害しないことが示されました。対照的に、この欠失は総排泄腔(祖先的に哺乳類の泌尿生殖洞と関連する構造)での発現喪失につながることや、遠位のhox13遺伝子は正常な総排泄腔の形成に不可欠であることが分かりました。マウスの泌尿生殖洞のHoxd遺伝子調節も、指の発生を制御する当該クロマチンドメイン内に位置するエンハンサーに依存していることから、遠位肢で働いている現在の調節領域は、既存の総排泄腔調節機構が四肢類において丸ごと転用されたものと考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
進化学:指の進化における祖先的な総排泄腔調節領域の転用
進化学:指と総排泄腔の祖先的なつながり
世間一般に、男性の生殖器のサイズと足のサイズの間には相関があるといわれているが、それにはある程度の生物学的裏付けがあるようだ。今回、祖先的な脊椎動物の総排泄腔でHox遺伝子の発現を支配していた調節機構が、進化の過程で四肢類の指の出現、さらには外性器の出現に際し転用されたことが示唆された。
参考文献:
Hintermann A. et al.(2025): Co-option of an ancestral cloacal regulatory landscape during digit evolution. Nature, 648, 8092, 109–116.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09548-0
本論文は、ゼブラフィッシュのHoxd調節領域の機能を、その全体の欠失による影響を比較評価することによって遺伝学的に評価しました。その結果、マウスの場合とは異なり、魚類でこれらの領域を欠失させても、遠位の鰭の発生においてhoxd遺伝子の転写を阻害しないことが示されました。対照的に、この欠失は総排泄腔(祖先的に哺乳類の泌尿生殖洞と関連する構造)での発現喪失につながることや、遠位のhox13遺伝子は正常な総排泄腔の形成に不可欠であることが分かりました。マウスの泌尿生殖洞のHoxd遺伝子調節も、指の発生を制御する当該クロマチンドメイン内に位置するエンハンサーに依存していることから、遠位肢で働いている現在の調節領域は、既存の総排泄腔調節機構が四肢類において丸ごと転用されたものと考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
進化学:指の進化における祖先的な総排泄腔調節領域の転用
進化学:指と総排泄腔の祖先的なつながり
世間一般に、男性の生殖器のサイズと足のサイズの間には相関があるといわれているが、それにはある程度の生物学的裏付けがあるようだ。今回、祖先的な脊椎動物の総排泄腔でHox遺伝子の発現を支配していた調節機構が、進化の過程で四肢類の指の出現、さらには外性器の出現に際し転用されたことが示唆された。
参考文献:
Hintermann A. et al.(2025): Co-option of an ancestral cloacal regulatory landscape during digit evolution. Nature, 648, 8092, 109–116.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09548-0
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