真核生物の進化
真核生物の進化に関する二つの研究が公表されました。一方の研究(Kay et al., 2026)は、遺伝子重複の年代推定から真核生物の進化史を明らかにしています。生命の歴史において、真核生物の起源は形成的であるもののあまり理解されていない事象です。真核生物の誕生(eukaryogenesis)に関して現在提唱されている仮説には、おもに、ミトコンドリアの内部共生と他の真核生物的な新規性の獲得の時期において相違があります。そうした仮説の見極めは、真核生物誕生の過程の中間段階を代表する現生系統が存在しないため、これまで困難でした。一方、真核細胞の機能には、真核生物誕生の過程で重複事象によって生じた遺伝子に依存しているものが多くあります。そのため、これらの重複の時間的関係から、真核細胞の進化的組み立てにおける段階の順序に関して、手がかりを得ることができます。本論文は緩和分子時計を用いて、真核生物誕生の過程が中太古代から後期古原生代にわたっていたことを示します。本論文は、この年代枠の中でそれらの遺伝子重複の年代を推定し、真核生物宿主の細胞は、ミトコンドリアの内部共生以前に、既に複雑な細胞の特徴を備えていた、と明らかにしました。こうした特徴には、複雑な細胞骨格、メンブレントラフィック、細胞内膜、ファゴサイトーシス装置、核が含まれており、これらはいずれも30億~22億5000万年前に生じ、その後でミトコンドリアの内部共生が起きた、と示されました。これらの結果によって、真核生物誕生におけるミトコンドリア先行仮説が退けられ、代わりに、真核生物の特徴の組み立てについて、古細菌(アーキア)が複雑化した後にミトコンドリアが取り込まれる、との順序が支持されました。複雑な宿主古細菌細胞という本論文の推論は、10億年以上にわたってほぼ無酸素状態にあったと考えられる海洋での、栄養共生の適応的利益に関する仮説とも整合します。
もう一方の研究(Tobiasson et al., 2026)は、真核生物の出現に寄与した古細菌について報告しています。真核生物の起源は、進化生物学における重要な問題の一つです。LECA(last eukaryotic common ancestor、真核生物の最終共通祖先)には既に、ミトコンドリア(アルファプロテオ真正細菌の細胞内共生に由来する細胞小器官)が含まれていた、と実証され、真核生物に最も近縁な古細菌であるアスガルドアーキアが発見されたことで、真核生物誕生の進化的仮説についての情報および制約が得られています。本論文は、制約付き系統樹を用いる進化仮説の検討を中心とした厳密な統計的枠組み内で、LECAまでたどることができる、真核生物の中核をなす遺伝子群の起源について包括的に解析しました。その結果、真核生物の保存された機能系や経路の大部分の起源に、アスガルド古細菌が支配的に寄与している、と分かりました。アルファプロテオ真正細菌(バクテリア)の寄与は限定的で、これらはおもにエネルギー変換系と鉄–硫黄(Fe–S)クラスター生合成に関係することが明らかになった一方で、他の細菌門からの寄与は、真核生物の機能的景観全体にわたり、明確で一貫した傾向のない状態で散在していました。これらの知見は、真核細胞構成の重要な特徴がLECAにつながるアスガルド系統において進化し、その後アルファプロテオ真正細菌内部共生菌が捕捉されて、それが、内部共生が起こる前と後の両方で他の細菌からの多数の遺伝子の散発的な水平獲得によって増補された、という真核生物誕生モデルを示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
進化学:遺伝子重複の年代推定が明らかにする真核生物の進化的組み立て
進化学:真核生物の誕生過程ではミトコンドリアは後から獲得された
今回、地球の生命の歴史の最初期にまでさかのぼる遺伝子重複の解析から、真核生物誕生の過程が長期にわたって続いたことが示唆された。この過程におけるミトコンドリア獲得のタイミングは比較的遅く、大酸化イベント(約24億3000〜22億2000年前)と同時期であった可能性がある。
進化学:アスガルドアーキアの真核生物誕生への支配的な寄与
進化学:真核生物遺伝子の起源は大部分がアスガルドアーキア
今回、真核生物の最終共通祖先(LECA)の再構築された遺伝子セットを調べたところ、それらの大部分がアスガルドアーキアに由来し、他の細菌に由来する遺伝子は全体の半分未満であることが明らかになった。
参考文献:
Kay CJ. et al.(2026): Dated gene duplications elucidate the evolutionary assembly of eukaryotes. Nature, 650, 8100, 129–140.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09808-z
Tobiasson V. et al.(2026): Dominant contribution of Asgard archaea to eukaryogenesis. Nature, 650, 8100, 141–149.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09960-6
もう一方の研究(Tobiasson et al., 2026)は、真核生物の出現に寄与した古細菌について報告しています。真核生物の起源は、進化生物学における重要な問題の一つです。LECA(last eukaryotic common ancestor、真核生物の最終共通祖先)には既に、ミトコンドリア(アルファプロテオ真正細菌の細胞内共生に由来する細胞小器官)が含まれていた、と実証され、真核生物に最も近縁な古細菌であるアスガルドアーキアが発見されたことで、真核生物誕生の進化的仮説についての情報および制約が得られています。本論文は、制約付き系統樹を用いる進化仮説の検討を中心とした厳密な統計的枠組み内で、LECAまでたどることができる、真核生物の中核をなす遺伝子群の起源について包括的に解析しました。その結果、真核生物の保存された機能系や経路の大部分の起源に、アスガルド古細菌が支配的に寄与している、と分かりました。アルファプロテオ真正細菌(バクテリア)の寄与は限定的で、これらはおもにエネルギー変換系と鉄–硫黄(Fe–S)クラスター生合成に関係することが明らかになった一方で、他の細菌門からの寄与は、真核生物の機能的景観全体にわたり、明確で一貫した傾向のない状態で散在していました。これらの知見は、真核細胞構成の重要な特徴がLECAにつながるアスガルド系統において進化し、その後アルファプロテオ真正細菌内部共生菌が捕捉されて、それが、内部共生が起こる前と後の両方で他の細菌からの多数の遺伝子の散発的な水平獲得によって増補された、という真核生物誕生モデルを示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
進化学:遺伝子重複の年代推定が明らかにする真核生物の進化的組み立て
進化学:真核生物の誕生過程ではミトコンドリアは後から獲得された
今回、地球の生命の歴史の最初期にまでさかのぼる遺伝子重複の解析から、真核生物誕生の過程が長期にわたって続いたことが示唆された。この過程におけるミトコンドリア獲得のタイミングは比較的遅く、大酸化イベント(約24億3000〜22億2000年前)と同時期であった可能性がある。
進化学:アスガルドアーキアの真核生物誕生への支配的な寄与
進化学:真核生物遺伝子の起源は大部分がアスガルドアーキア
今回、真核生物の最終共通祖先(LECA)の再構築された遺伝子セットを調べたところ、それらの大部分がアスガルドアーキアに由来し、他の細菌に由来する遺伝子は全体の半分未満であることが明らかになった。
参考文献:
Kay CJ. et al.(2026): Dated gene duplications elucidate the evolutionary assembly of eukaryotes. Nature, 650, 8100, 129–140.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09808-z
Tobiasson V. et al.(2026): Dominant contribution of Asgard archaea to eukaryogenesis. Nature, 650, 8100, 141–149.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09960-6
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