三畳紀の爬虫類の皮膚付属器
取り上げるのが遅れてしまいましたが、三畳紀の爬虫類の皮膚付属器を報告した研究(Spiekman et al., 2025)が報道されました。鳥類の羽毛や哺乳類の毛のような複雑な外皮付属器は、四肢類の進化において重要な役割を果たしており、断熱や感覚やディスプレイや飛行に不可欠な機能を有しています。羽毛と毛はそれぞれ鳥類と哺乳類のステム系統で生じましたが、それらの根底にある遺伝子調節ネットワークはより古い羊膜類に起源を有しています。しかし、羊膜類の外皮付属器の初期進化については、化石証拠が見つかっていないため、まだあまり解明されていません。
本論文で、中期三畳紀(約2億4700万年前)の小型双弓類ミラサウラ・グラウウォーゲリ(Mirasaura grauvogeli)について報告します。ミラサウラ・グラウウォーゲリは、背に沿って連続的に伸びた長い外皮付属器で形成された特徴的な突起(クレスト)を有しており、この構造はあまり解明されていない三畳紀の爬虫類ロンギスクアマ(Longisquama)とに似ています。ミラサウラ・グラウウォーゲリの頭蓋は表面的には鳥類と似ていますが、ミラサウラ・グラウウォーゲリは鳥中足骨類と近縁ではなく、三畳紀からのみ発見されている爬虫類の単系統群であるドレパノサウルス形類(Drepanosauromorpha)に属しています。
ミラサウラ・グラウウォーゲリの外皮付属器に保存されていたメラノソームの形状は、羽毛のメラノソームのものと一致していますが、爬虫類の皮膚や哺乳類の毛のメラノソームの形状とは一致していません。それでも、ミラサウラ・グラウウォーゲリの外皮付属器の形態とその系統学的な位置づけは、これらのクレストが現生の羊膜類に見られる羽毛やその他の外皮付属器とは構造的に相同ではないことを示しています。本論文の知見は、複雑な外皮付属器が、羊膜類の鳥中足骨類や哺乳型類に限定されたものではなく、全ての現生爬虫類の基部に位置する系統で進化したことを意味しており、爬虫類の外皮の進化に関するこれまでの理解に疑問を提起します。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:トサカを持つ爬虫類が羽毛の進化理論を揺るがす
三畳紀の爬虫類の背中に、羽毛でも皮膚でもない付属器官のトサカがあることを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。約2億4,700万年前の化石を分析した結果、羽毛や毛のような突起は、鳥類や哺乳類に特有のものではないことが示された。
羽毛や毛は、脊椎動物の外側にある複雑な付属器官の一例であり、体温維持や感覚補助、外見上の演出、および飛行への寄与などといった重要な機能を持っている。羽毛と毛は、それぞれ鳥類と哺乳類の幹系統に起源を持つ。しかし、これらの付属器官を発達させる遺伝的ツールキットは、無脊椎動物(爬虫類、鳥類、哺乳類を含む動物の一分野)に深く根ざしている可能性が高い。
Stephan Spiekmanら(シュツットガルト州立自然史博物館〔ドイツ〕)は、背中に最大の長さ153ミリメートルに達する特徴的な付属器官のトサカを持つ小動物を発見した。この爬虫類の頭蓋骨は、表面的には鳥に似ているが、Drepanosauromorphaと呼ばれる三畳紀の爬虫類のクレードに分類され、Mirasaura(不思議な爬虫類の意)と名づけられた。観察は、羽毛を持つ保存状態の良い2体の骨格と、単離された付属器官と軟部組織が保存された80体の標本を基に行われた。すべての化石は約2億4,700万年前のものと推定され、最初の化石は1930年代にフランス北東部で発見されたものの、近年準備が進められるまで、未確認のままだった。これにより、トサカと骨格が互いに関連づけられるようになった。
付属器官内に保存されている組織にはメラノソーム(皮膚、毛、および羽毛に見られる色素産生細胞)が含まれており、爬虫類皮膚や哺乳類毛よりも羽毛によく似ているが、羽毛に見られる典型的な枝分かれパターンはない。これらの発見は、鳥類やその近縁種が誕生する以前から、爬虫類の間でこのような複雑な付属器官が進化していたことを示唆しており、羽毛や毛髪の起源について新たな知見を与えてくれるかもしれない。Spiekmanらは、Mirasauraに見られる付属器官の機能について、飛行やカモフラージュの役割は除外し、代わりに視覚的コミュニケーション(シグナル伝達や捕食者の抑止)の役割の可能性を示唆している。
進化学:三畳紀の双弓類が示す、爬虫類における皮膚付属器の初期の多様化
Cover Story:皮膚付属器の始まり:羽毛の進化に新たな視点をもたらす三畳紀の爬虫類の複雑な「クレスト」
表紙は、特徴的な「クレスト」を持つ、中期三畳紀(約2億4700万年前)の爬虫類Mirasaura grauvogeliが、昆虫を狩っている様子を描いた想像図である。今週号ではS Spiekmanたちが、Mirasauraの化石標本を分析し、この小型の爬虫類が、背に沿って複雑な外皮付属器の突起(クレスト)を持っていたことを明らかにしている。羽毛や毛のような複雑な付属器の進化は、哺乳類、爬虫類、鳥類を含む分類群である羊膜類の化石記録で見つかっている、同等に複雑な付属器と結び付けられることが多い。しかしSpiekmanたちは、Mirasauraの場合、この付属器は羽毛と一部類似点があるものの、明確に羽毛ではないことを示した。むしろこのクレストは、脊椎動物の皮膚が驚くべき意外な形で進化・発達し得ることを示す証拠であり、爬虫類の皮膚、さらには羽毛や毛の起源が、従来考えられていたよりも複雑な進化的論点であることを示唆している。
参考文献:
Spiekman SNF. et al.(2025): Triassic diapsid shows early diversification of skin appendages in reptiles. Nature, 643, 8074, 1297–1303.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09167-9
本論文で、中期三畳紀(約2億4700万年前)の小型双弓類ミラサウラ・グラウウォーゲリ(Mirasaura grauvogeli)について報告します。ミラサウラ・グラウウォーゲリは、背に沿って連続的に伸びた長い外皮付属器で形成された特徴的な突起(クレスト)を有しており、この構造はあまり解明されていない三畳紀の爬虫類ロンギスクアマ(Longisquama)とに似ています。ミラサウラ・グラウウォーゲリの頭蓋は表面的には鳥類と似ていますが、ミラサウラ・グラウウォーゲリは鳥中足骨類と近縁ではなく、三畳紀からのみ発見されている爬虫類の単系統群であるドレパノサウルス形類(Drepanosauromorpha)に属しています。
ミラサウラ・グラウウォーゲリの外皮付属器に保存されていたメラノソームの形状は、羽毛のメラノソームのものと一致していますが、爬虫類の皮膚や哺乳類の毛のメラノソームの形状とは一致していません。それでも、ミラサウラ・グラウウォーゲリの外皮付属器の形態とその系統学的な位置づけは、これらのクレストが現生の羊膜類に見られる羽毛やその他の外皮付属器とは構造的に相同ではないことを示しています。本論文の知見は、複雑な外皮付属器が、羊膜類の鳥中足骨類や哺乳型類に限定されたものではなく、全ての現生爬虫類の基部に位置する系統で進化したことを意味しており、爬虫類の外皮の進化に関するこれまでの理解に疑問を提起します。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:トサカを持つ爬虫類が羽毛の進化理論を揺るがす
三畳紀の爬虫類の背中に、羽毛でも皮膚でもない付属器官のトサカがあることを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。約2億4,700万年前の化石を分析した結果、羽毛や毛のような突起は、鳥類や哺乳類に特有のものではないことが示された。
羽毛や毛は、脊椎動物の外側にある複雑な付属器官の一例であり、体温維持や感覚補助、外見上の演出、および飛行への寄与などといった重要な機能を持っている。羽毛と毛は、それぞれ鳥類と哺乳類の幹系統に起源を持つ。しかし、これらの付属器官を発達させる遺伝的ツールキットは、無脊椎動物(爬虫類、鳥類、哺乳類を含む動物の一分野)に深く根ざしている可能性が高い。
Stephan Spiekmanら(シュツットガルト州立自然史博物館〔ドイツ〕)は、背中に最大の長さ153ミリメートルに達する特徴的な付属器官のトサカを持つ小動物を発見した。この爬虫類の頭蓋骨は、表面的には鳥に似ているが、Drepanosauromorphaと呼ばれる三畳紀の爬虫類のクレードに分類され、Mirasaura(不思議な爬虫類の意)と名づけられた。観察は、羽毛を持つ保存状態の良い2体の骨格と、単離された付属器官と軟部組織が保存された80体の標本を基に行われた。すべての化石は約2億4,700万年前のものと推定され、最初の化石は1930年代にフランス北東部で発見されたものの、近年準備が進められるまで、未確認のままだった。これにより、トサカと骨格が互いに関連づけられるようになった。
付属器官内に保存されている組織にはメラノソーム(皮膚、毛、および羽毛に見られる色素産生細胞)が含まれており、爬虫類皮膚や哺乳類毛よりも羽毛によく似ているが、羽毛に見られる典型的な枝分かれパターンはない。これらの発見は、鳥類やその近縁種が誕生する以前から、爬虫類の間でこのような複雑な付属器官が進化していたことを示唆しており、羽毛や毛髪の起源について新たな知見を与えてくれるかもしれない。Spiekmanらは、Mirasauraに見られる付属器官の機能について、飛行やカモフラージュの役割は除外し、代わりに視覚的コミュニケーション(シグナル伝達や捕食者の抑止)の役割の可能性を示唆している。
進化学:三畳紀の双弓類が示す、爬虫類における皮膚付属器の初期の多様化
Cover Story:皮膚付属器の始まり:羽毛の進化に新たな視点をもたらす三畳紀の爬虫類の複雑な「クレスト」
表紙は、特徴的な「クレスト」を持つ、中期三畳紀(約2億4700万年前)の爬虫類Mirasaura grauvogeliが、昆虫を狩っている様子を描いた想像図である。今週号ではS Spiekmanたちが、Mirasauraの化石標本を分析し、この小型の爬虫類が、背に沿って複雑な外皮付属器の突起(クレスト)を持っていたことを明らかにしている。羽毛や毛のような複雑な付属器の進化は、哺乳類、爬虫類、鳥類を含む分類群である羊膜類の化石記録で見つかっている、同等に複雑な付属器と結び付けられることが多い。しかしSpiekmanたちは、Mirasauraの場合、この付属器は羽毛と一部類似点があるものの、明確に羽毛ではないことを示した。むしろこのクレストは、脊椎動物の皮膚が驚くべき意外な形で進化・発達し得ることを示す証拠であり、爬虫類の皮膚、さらには羽毛や毛の起源が、従来考えられていたよりも複雑な進化的論点であることを示唆している。
参考文献:
Spiekman SNF. et al.(2025): Triassic diapsid shows early diversification of skin appendages in reptiles. Nature, 643, 8074, 1297–1303.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09167-9
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