最古級の始祖鳥の特徴
取り上げるのが遅れてしまいましたが、最古級の始祖鳥の特徴に関する研究(O’Connor et al., 2025)が公表されました。本論文は、始祖鳥(Archaeopteryx)の、ほぼ完全で押しつぶされていない状態の14例目の標本を報告します。この標本は、シカゴ・フィールド自然史博物館(Chicago Field Museum of Natural History)が所蔵していることからシカゴ標本(Chicago specimen)と呼ばれ、保存状態がきわめて良好で、マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)のデータに基づいて処理されたことによって、鳥類の初期進化における飛翔能力の獲得に関連した骨格の変化や羽衣の進化についての重要なデータを保持する、この象徴的な分類群のひじょうに優れた標本の一つとなりました。
このシカゴ標本頭蓋骨は腹外側が露出しており、口蓋が、トロオドン類とクラウン群に近い白亜紀の鳥類の中間的な形態をしている、と明らかになりました。この頭蓋骨の変形は、始祖鳥類に見られる、非鳥類型獣脚類のものより柔軟な頭蓋構造への移行を反映しています。完全にそろった脊柱には、対になった前環椎と、これまでに確認されたものより長い尾が認められました。右手の長い指に残された皮膚の痕跡は、以前の解釈に反して、短い方の指が固定されておらず、その先端が可動であったことを示唆しています。
趾蹠の形態は、それらが非ラプトル系恐竜のような陸上移動に適応していたことを示しています。両翼には、三列風切羽と呼ばれる特殊化した内側の次列風切羽が確認されました。上腕部の三列風切羽は、鳥類に近縁の非鳥類型恐竜には見られず、これは、これらの羽毛が飛翔のために進化し、空気力学的に連続した表面を作り出したことを示唆しています。これらの一連の新たな知見は、始祖鳥に存在する形質のモザイク性を明確にし、生態学的予測の精度を高めるとともに、始祖鳥類の独特な進化史を明らかにしており、鳥類の祖先的状態についての手がかりをもたらしています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらす
これまで知られていなかった最古の鳥類化石、始祖鳥(Archaeopteryx)の特徴を報告する論文が、今週のNature に掲載される。シカゴ始祖鳥(Chicago Archaeopteryx)を分析した結果、この象徴的な分類群の骨格、軟組織、および羽毛に関する新しい情報が明らかになった。この発見は、この鳥の生態、そして非鳥類恐竜(non-avian dinosaurs)から現代鳥類への進化の変遷に新たな光を当てるものである。
シカゴ標本(Chicago specimen)は、シカゴ・フィールド自然史博物館(Chicago Field Museum of Natural History)が所蔵していることからそう呼ばれ、始祖鳥の14番目の標本として知られている。Jingmai O'Connorら(シカゴ・フィールド自然史博物館〔米国〕)は、ほぼ完全な保存状態の良い三次元標本を画像化し、失われているのは一本の指のみであった。両翼には、三列風切羽(tertials)と呼ばれる特殊な内側の副羽毛が確認できる。前環椎(proatlases)と呼ばれる対になった骨は、頭蓋骨と脊椎の間にある。以前認識されていたよりも頭蓋骨は硬くなく、そして、尾は長い。軟部組織の分析から、手の小指は自由で動くことができ、鳥の足裏パッドの形状から、地上での移動に適応していたことがわかった。
鳥類に近縁の非鳥類恐竜は、翼の上部に尾状羽毛を持たない。著者らは、シカゴの標本にこの羽毛があることから、この羽毛が飛行用に進化し、連続した空気力学的表面を作り出した可能性があると推測している。他の特徴とともに、これらの発見は、ある程度の飛行に適応し、陸上と樹上とが混合型の生態系を持つ鳥であることを示唆している。
古生物学:始祖鳥のシカゴ標本から得られた鳥類ボディープランの初期進化に関する情報
Cover Story:飛翔への道筋:良好に保存された始祖鳥化石が鳥類進化の詳細を明らかにする
表紙は、約1億5000万年前に生息していた、既知最古の化石鳥類である始祖鳥(Archaeopteryx)の想像図である。今週号ではJ O’Connorたちが、米国シカゴのフィールド自然史博物館が取得したことから「シカゴ始祖鳥」とも呼ばれている、始祖鳥の既知14例目の標本について報告している。この標本は保存状態が極めて良好で、ほぼ完全で押しつぶされておらず、細部までが見事に保持されていることから重要である。研究チームは、この事実と、マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)を用いた念入りな処理によって、この象徴的な生物の骨格、軟部組織、羽衣に関する新たな情報を明らかにすることができた。彼らは、両翼の内側にある三列風切羽と呼ばれる特殊な次列風切羽や、地上での動きに適応したことを示唆する趾蹠などの特徴を発見した。これらの新たに見いだされた一連の特徴から、始祖鳥はある程度の飛翔に適応しつつ、地上でも樹上でも快適に生活していた可能性が示唆された。
参考文献:
O’Connor J. et al.(2025): Chicago Archaeopteryx informs on the early evolution of the avian bauplan. Nature, 641, 8065, 1201–1207.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08912-4
このシカゴ標本頭蓋骨は腹外側が露出しており、口蓋が、トロオドン類とクラウン群に近い白亜紀の鳥類の中間的な形態をしている、と明らかになりました。この頭蓋骨の変形は、始祖鳥類に見られる、非鳥類型獣脚類のものより柔軟な頭蓋構造への移行を反映しています。完全にそろった脊柱には、対になった前環椎と、これまでに確認されたものより長い尾が認められました。右手の長い指に残された皮膚の痕跡は、以前の解釈に反して、短い方の指が固定されておらず、その先端が可動であったことを示唆しています。
趾蹠の形態は、それらが非ラプトル系恐竜のような陸上移動に適応していたことを示しています。両翼には、三列風切羽と呼ばれる特殊化した内側の次列風切羽が確認されました。上腕部の三列風切羽は、鳥類に近縁の非鳥類型恐竜には見られず、これは、これらの羽毛が飛翔のために進化し、空気力学的に連続した表面を作り出したことを示唆しています。これらの一連の新たな知見は、始祖鳥に存在する形質のモザイク性を明確にし、生態学的予測の精度を高めるとともに、始祖鳥類の独特な進化史を明らかにしており、鳥類の祖先的状態についての手がかりをもたらしています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらす
これまで知られていなかった最古の鳥類化石、始祖鳥(Archaeopteryx)の特徴を報告する論文が、今週のNature に掲載される。シカゴ始祖鳥(Chicago Archaeopteryx)を分析した結果、この象徴的な分類群の骨格、軟組織、および羽毛に関する新しい情報が明らかになった。この発見は、この鳥の生態、そして非鳥類恐竜(non-avian dinosaurs)から現代鳥類への進化の変遷に新たな光を当てるものである。
シカゴ標本(Chicago specimen)は、シカゴ・フィールド自然史博物館(Chicago Field Museum of Natural History)が所蔵していることからそう呼ばれ、始祖鳥の14番目の標本として知られている。Jingmai O'Connorら(シカゴ・フィールド自然史博物館〔米国〕)は、ほぼ完全な保存状態の良い三次元標本を画像化し、失われているのは一本の指のみであった。両翼には、三列風切羽(tertials)と呼ばれる特殊な内側の副羽毛が確認できる。前環椎(proatlases)と呼ばれる対になった骨は、頭蓋骨と脊椎の間にある。以前認識されていたよりも頭蓋骨は硬くなく、そして、尾は長い。軟部組織の分析から、手の小指は自由で動くことができ、鳥の足裏パッドの形状から、地上での移動に適応していたことがわかった。
鳥類に近縁の非鳥類恐竜は、翼の上部に尾状羽毛を持たない。著者らは、シカゴの標本にこの羽毛があることから、この羽毛が飛行用に進化し、連続した空気力学的表面を作り出した可能性があると推測している。他の特徴とともに、これらの発見は、ある程度の飛行に適応し、陸上と樹上とが混合型の生態系を持つ鳥であることを示唆している。
古生物学:始祖鳥のシカゴ標本から得られた鳥類ボディープランの初期進化に関する情報
Cover Story:飛翔への道筋:良好に保存された始祖鳥化石が鳥類進化の詳細を明らかにする
表紙は、約1億5000万年前に生息していた、既知最古の化石鳥類である始祖鳥(Archaeopteryx)の想像図である。今週号ではJ O’Connorたちが、米国シカゴのフィールド自然史博物館が取得したことから「シカゴ始祖鳥」とも呼ばれている、始祖鳥の既知14例目の標本について報告している。この標本は保存状態が極めて良好で、ほぼ完全で押しつぶされておらず、細部までが見事に保持されていることから重要である。研究チームは、この事実と、マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)を用いた念入りな処理によって、この象徴的な生物の骨格、軟部組織、羽衣に関する新たな情報を明らかにすることができた。彼らは、両翼の内側にある三列風切羽と呼ばれる特殊な次列風切羽や、地上での動きに適応したことを示唆する趾蹠などの特徴を発見した。これらの新たに見いだされた一連の特徴から、始祖鳥はある程度の飛翔に適応しつつ、地上でも樹上でも快適に生活していた可能性が示唆された。
参考文献:
O’Connor J. et al.(2025): Chicago Archaeopteryx informs on the early evolution of the avian bauplan. Nature, 641, 8065, 1201–1207.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08912-4
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