第51回衆院選結果

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、議席と得票数が確定したので、先日(2026年2月8日)投票が行なわれた衆院選について取り上げます。各党の確定議席数は以下の通りで、()は公示前の議席数です。

自民党:316(198)
中道改革連合:49(167)
日本維新の会:36(34)
国民民主党:28(27)
参政党:15(2)
チームみらい:11(0)
共産党:4(8)
れいわ新選組:1(8)
減税日本・ゆうこく連合:1(5)
保守党:0(1)
社民党:0(0)
無所属・その他:4(15)

 各党の比例選の得票率(%)は以下の通りで、()は前回の得票率です。

自民党:36.72(26.73)
中道改革連合:18.23(立憲民主党と公明党の前回の合計は30.93)
日本維新の会:8.63(9.36)
国民民主党:9.73(11.32)
参政党:7.44(3.43)
チームみらい:6.66(─)
共産党:4.40(6.16)
れいわ新選組:2.92(6.98)
保守党:2.54(2.10)
減税日本・ゆうこく連合:1.42(─)
社民党:1.27(1.71)

 そもそも、年度内の予算成立が事実上不可能になる上に、1年でも最も寒くなり、雪国が積雪に悩まされるこの時期に衆議院を解散すること自体に私は大反対で、この選挙期間中もそうだったように、軽率な言動が多いことや、他人に任せることが苦手なように思えることから、元々松下政経塾出身のため印象が悪かったのですが、高市首相への否定的印象はさらに強くなりました。高市首相には、政権発足時に、地位が人を作ることもある点に期待するしかないかな、と考えましたが、この点では、第一次政権の失敗を踏まえて、首相として成長したように思える安倍元首相(その政策が日本にとってよかったのかは、別問題ですが)と大きく異なるように思います。率直に言って、高市首相は首相としての器の点で安倍元首相に遠く及ばず、それどころか石破前首相にも劣るのではないか、との考えが、解散から選挙期間の間にさらに強くなりました。高市首相は「改憲派」と一般的には見られていますが、もし憲法を改正するなら、「首相の専権事項」といった解釈がまかり通っている衆議院の解散について、明示的に何らかの制約をすべきと思います。

 改憲に関する問題はさておき、今回の選挙結果について、まずは予想からですが、20世紀末から2010年代までの国政選挙では、1998年の参院選以外では、大手大衆媒体の選挙戦序盤の予想に大きな違いはなく、おおむね予想通りの結果となる傾向にありました。しかし、2020年代になると、序盤と終盤で情勢が大きく変わった、と思われる事例もあり、20世紀末から2010年代までと比較すると、選挙予想が難しくなったように思います。しかも今回は、20世紀末以降自民党と提携してきた公明党が、昨年(2025年)10月の高市内閣の発足にあたって自民党の連立政権から離脱し、しかも先月(2026年1月)には立憲民主党との合流(中道改革連合)が急に発表されたこともあって、まますます予想が難しい選挙になったのは否定できないでしょう。

 これまでの衆院選で公明党は、小選挙区で自民党候補を支援する代わりに、比例選では自民党から一定の支援を受けていたので、これまでの比例選での公明党の得票が、そのまま中道改革連合の比例票になるわけではないとしても、小選挙区で公明党支持者の票が立憲民主党に所属していた議員に流れる影響はやはり大きそうかな、と考えていました。一部の大手大衆媒体では、公明党と立憲民主党の合流の発表前には自民党の単独過半数も予想されていましたが、とても自民党が単独で過半数の議席を獲得するとは思えませんでした。

 ただ、創価学会員の高齢化や、2023年11月15日に創価学会の池田大作名誉会長が死去したこともあり、公明党の集票力が以前よりも落ちていることは否定できず、つい最近まで強く批判していた候補に公明党の支持者が小選挙区でどれだけ投票するのか、予想しにくいところもありました。また、石破政権(とその前の岸田政権)で自民党から国民民主党や参政党や保守党に流れた票が、支持率の高い高市内閣で自民党にどれだけ戻るのか、共産党が中道改革連合に敵対的姿勢を明確に示した影響はどれほどになるのか、安倍内閣まで自民党を支持してきた層と、反自民党層の両側が分裂傾向に見えたことも、予想を難しくした感があります。

 その意味で、公示後の大手報道機関の予想に注目していましたが、序盤では、自民党が単独過半数に届く可能性も読売新聞で指摘されており、正直なところ、自民党は予想より苦戦し、中道改革連合は予想より健闘するのではないか、と考えていました。ところが、選挙戦中盤の朝日新聞の予想では、自民党の下限が278議席で、大手紙は選挙予想に関しては本気なようなので(首相を中心に、政治家の言動の整合性や、間違いもしくは虚偽と思われる発言の網羅的な検証などに、選挙予想並の力を注いでもらいたいものですが)、これには本当に驚きました。

 高市首相が解散を決断する契機となったのは、自民党の独自調査で260議席を獲得できそうとの予想があったから、との真偽不明の情報がありましたが、これは公明党支持票がそれなりに自民党系候補に入ることを前提にしており、中道改革連合の結成でこの前提は崩れたので、自民党は議席を減らすのではないか、との予想もインターネットではそれなりに見かけたように思います。私もそうした見解に傾いていただけに、いかに大手紙の本気の調査と報道とはいえ、懐疑心を抱いていましたが、他紙の終盤予想でも、自民党の単独過半数の可能性は高い、と伝えられていました。ただ、投票当日は、雪などで投票率がさほど高くならなさそうなので、大手紙、とくに朝日新聞が予想していたような自民党の圧勝はないかな、と考えていました。

 今回の衆院選では主要政党のほとんどが「減税」を主張し、私は消費税も含めて現状での減税に大反対なので、この状況は本当に危ういと思いました。立候補者の消費税についての見解の読売新聞の調査では、れいわ新選組と共産党はほぼ完全に「恒久的減税・廃止」、日本維新の会と国民民主党は、「恒久的減税・廃止」が1割未満で、ほぼ完全に「限定的減税」、中道改革連合は3割強の「恒久的減税・廃止」と6割強の「限定的減税」、自民党は7割強の「限定的減税」と2割程度の「現状維持」でした。これだけを見ると、選挙後に減税を行なわないことに賭けて、自民党に投票する選択肢もあるように思えましたが、自民党が大勝すれば、高市首相の求心力が高まり、自民党内の減税慎重派が抑え込まれることは確実で、まあ、このような「減税至上主義」的風潮を許してしまった、私も含めて日本国民に問題があり、反省するところが多々あります。

 上述のように結果は自民党の大勝で、高い内閣支持率からある程度予想はしていましたが、「日本初の女性首相」との肩書は日本社会において私が想像していたよりもずっと肯定的に受け止められているのだな、と思った次第です。また当然ですが、大手紙の本気の選挙予想にはやはり一定以上の精度があり、ここまで自民党が勝つとは、当初まったく予想していなかった、私のような門外漢の予想は単なる思いつきにすぎないのだな、と改めて痛感させられました。自分の見識のなさは当然ですが、加齢によって感性が衰えたことも大きいのかな、と落ち込んでしまいました。投票率は56.26%で、前回の53.85%を上回りましたが、真冬ではなく、最近の大雪がなければ、もっと高くなったのでしょう。

 この自民党の大勝で、自民党提出の法案が参議院で否決されても、衆議院で再可決が可能となり、高市首相が、自身への求心力の高まりから自信を抱き、政治家として成長し、安定して政権を運営するようになることを願っていますが、正直なところ、希土類には困らないとか食料自給率100%とか円安でホクホクとか他責的な傾向とか、この衆院選中も含めて高市首相のこれまでの言動を見ていると、もう政治家として大きく成長することは望めず、せめて、衆院選での大勝によって気分が高揚し、不用意な発言で金融恐慌などが起きないよう、願うしかありません。まあ、1920年代と現代とでは日本国内も世界も状況が大きく異なっているので、首相など政治的要職にある人物の失言によって金融恐慌が起きるのか、私の見識ではとても確信できませんが。

 高市内閣での自民党の大勝によって、日本は終了したとか、中国と戦争になるとか、大騒ぎする人もいるようですが、安全保障面では、中国が台湾やフィリピンに軍事侵攻したり、尖閣諸島など日本領に侵攻して実効支配を試みたりすることがなければ、日本が中国と軍事的に衝突する必要はなく、それは多くの国民の共通認識になっているでしょうし、最近中国では軍部が粛清され、不安定なところがあるようなので、ごく短期的には中国が本格的に対外侵攻を行なう可能性は低そうです。ただ、中長期的には、中国の日本など周辺諸国へのさまざまな軍事的および経済的圧力にどう対抗するのか、難しいところとは思います。なお、日本は中国と軍拡競争をしても勝てないのだから中国を怒らせるな、といった自民党に批判的な人々の間で根強いように思われる言説は、ごく初歩的な詭弁と考えています。日本側には、中国領に攻め込んだり、日中の領土ではないどこかの地域の支配をめぐって中国と争ったりする意思はなく(能力も)、中国側の日本への侵略、もっと現実的には外交交渉に大きく影響するような実効的な軍事的威圧を防ぐだけの(他国とも提携しながらの)軍事力の確保が目的で、中国以上の軍事力を整備する意思も能力もないわけです。ただ、対中国で他国との提携を意識しすぎると、第二次以降の安倍政権のようにロシアに手玉に取られる危険性があるわけで、高市内閣には安倍内閣の失敗を踏まえてもらいたいところですが、それはともかく、妥当な選択を取り上げず、いくつかの(しばしば極端な)選択を提示し、一択を迫るような言説は、詭弁に他なりません。また、中国を「怒らせず」、中国の意向に唯々諾々と従うことが本当に日中間の軍事衝突や中国から日本への軍事および経済的圧力を避けることにつながるのかも、大前提とするのではなく、議論の対象とすべきでしょう。

 高市内閣の継続が確実となって、短期的により問題なのは経済金融面ですが、高市首相は党内基盤が弱いので、自民党には長年与党だった「底力」を発揮して、減税慎重派の議員には、高市内閣の経済金融政策を何とか穏当なものとするよう、説得してもらいたいものです。自民党は組織としては良くも悪くも「緩い」政党なので(この点は民主党系政党も同様ですが)、「非主流派(与党内野党)」の議員の奮闘に期待しています。党内基盤が弱い高市首相は、減税慎重派の主張を取り入れるなどして、「安定した」政権運営を続ければ、支持率が低下して党内から引きずり降ろされそうですし、この大勝で気分が高揚し、ますます「我が道」を進めば、日本経済、当然日本人の生活への打撃が明白になるでしょうから、いずれにしても、高市内閣が長期間続くことはないだろう、と考えています。しかし、これも門外漢の根拠薄弱な思いつきにすぎず、今回の衆院選で見られた「初の女性首相」との肯定的評価から、今後も高市首相への高い支持が続き、長期政権となる可能性も覚悟しておくべきでしょうか。私は今後もずっと日本国民として日本に居住し続けるつもりなので、高市首相が退陣するまでに、少しでも日本への打撃が小さくなるよう、心から願っています。

 中道改革連合は、民主党系の大物議員が相次いで落選するほどの大敗でした。その原因は、高市首相を出し抜くことに注力して、その後の展開について構想がお粗末だったこともあるでしょうが、立憲民主党が公明党の政策を「丸呑み」した、との印象を持たれ、しかも参議院では立憲民主党と公明党が合流せず、「野合」と判断されたことが大きいのでしょう。また、公明党の支持母体である創価学会の動員力が、高齢化や2023年11月に池田大作創価学会名誉会長が亡くなったことで低下したことも大きかったように思います。それにしても、中道改革連合は確かに高市首相を出し抜くことには成功しましたが、その後の展開については、高市内閣や自民党に批判的な大手大衆媒体の支援を期待して、準備不足でも健闘できる、と楽観視していたのか、と邪推したくもなります。中道改革連合では比例で公明党系候補が上位で優遇されたため、公明党系統候補の当選者数(議席)は前回以上となりましたが、立憲民主党系にとっては壊滅的な打撃で、今後の野党の再編がどうなるのか、見通しが立ちにくくなった感もあります。公明党も、創価学会の組織票の威力が以前よりずっと落ちている、と明らかになったため、他の政党に自党を「高く売る」ことは難しくなったように思います。

 中道改革連合は解党する、との予想が一般的でしょうが、ここで踏みこたえて、参議院でも立憲民主党と公明党が合流すれば、今後の国政選で、高市内閣の失政によって躍進する可能性もまだ残っているとは思います。ただ、2005年の衆院選で大敗した民主党が、その次の2009年の衆院選で大勝した事例もありますが、2005年の衆院選での民主党の比例選の得票率は31.02%で(自民党は38.18%)、当時の民主党と比較すると、立憲民主党系勢力の地力が大きく劣ることは間違いなく、自民党というか高市内閣への支持率が低下し、中道改革連合が解党せず、参議院でも立憲民主党と公明党が合流しても、次の衆院選で中道改革連合が単独で過半数の議席を獲得する可能性はきわめて高そうです。ただ、日本の政治が多党化傾向にあることは間違いなく、今回の衆院選は例外的な事態になりそうなので、中道改革連合が今後も存続すれば、次の衆院選で自民党の獲得議席が過半数を大きく下回った場合、非自民党連立政権樹立で中核的役割を果たす可能性も少しはあると思います。

 れいわ新選組は惨敗でしたが、党首頼みのところがあり、最近では参政党にも支持者が流れているように思われる状況で、党首が治療のため第一線から退くことになったわけですから、仕方のないところでしょう。れいわ新選組は最近の国政選挙では共産党より比例の得票率が高かったものの、地方議会への浸透度などで共産党より地力が劣るだけに、このまま消滅に向かいそうで、この点は喜ばしいものの、参政党に多くの元れいわ新選組支持者が流れるとすると、喜んではいられません。その共産党の退潮も深刻で、支持者の高齢化は日本社会全体の傾向よりも急速なのでしょう。共産党はこのまま社民党のように泡沫政党になっていきそうで、その過程は社民党より緩やかなものになる、と予想していましたが、あるいはもっと急激に衰退していくのかもしれません。ただ、共産党は以前より減ったとはいえ地方議会でまだ多くの議員を有しており、今後多少の巻き返しがあるかもしれません。

 国民民主党は伸び悩んだ感があり、比例選での得票率は昨年の参院選を下回りましたが、立憲民主党系勢力が大打撃を受けた中で、腐らず地道にやっていけば、非自民党勢力の受け皿の中核となる可能性はまだ残っているように思います。チームみらいは、古い表現を使うと、正直なところ「書生論」の政党といった感じで、一見すると新旧で対照的ですが、石破前首相と似ているところがあるように思われ、少なくとも現時点ではとても支持する気にはなれません。参政党は昨年の参院選ほどの勢いはなかったものの、それでも前回の衆院選と比較すると躍進しており、高市内閣が支持率低下などによって退陣した場合には、その受け皿となりそうで、今後も警戒が必要と思います。なお、過去の衆院選の記事は以下の通りです。

第45回(2009年)
https://sicambre.seesaa.net/article/200908article_31.html

第46回(2012年)
https://sicambre.seesaa.net/article/201212article_19.html

第47回(2014年)
https://sicambre.seesaa.net/article/201412article_17.html

第48回(2017年)
https://sicambre.seesaa.net/article/201710article_27.html

第49回(2021年)
https://sicambre.seesaa.net/article/202111article_5.html

第50回(2024年)
https://sicambre.seesaa.net/article/202410article_30.html

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