4世代の家系から明らかになる新規変異率

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ヒトの新規変異(de novo mutation、親の生殖細胞もしくは受精卵や早期の胚で起きた変異、略してDNM)率に関する研究(Porubsky et al., 2025)が公表されました。ヒトのDNM率を理解するには、完全な塩基配列情報が必要です。この研究は、5点の補完的な短い読み取りおよび長い読み取りの塩基配列解読技術を用いて、4世代28人からなる1家系(CEPH 1463)において、各二倍体ヒトゲノムの95%以上の位相化と編集を行いました。

 世代間伝達当たりのDNMは98~206と推定され、これには74.5の新規一塩基多様体、7.4の非縦列反復配列挿入欠失、65.3の新規挿入欠失あるいは構造多様体(いずれも縦列反復配列に由来)、4.4のセントロメアDNMが含まれます。男性では、世代当たり12.4の新規Y染色体事象が見られました。短い縦列反復配列と縦列反復配列多型は最も変異しやすく、32座位で複数世代にわたる変異の繰り返しが見られました。

 この研究は、複数世代にわたって288のセントロメアと6つのY染色体の編集を正確に行ない、DNM率が反復配列の含有量や長さや塩基配列の同一性に依存し、1桁変化することを明らかにしました。生殖細胞系列のDNMの全ての種類について強力な父系の偏り(75~81%)が見られましたが、一塩基多様体の16%は、早期の生殖細胞系列モザイク変異など、父系の偏りを示さない接合後起源でと推定されました。

 これら全ての変化を高分解能の組換え地図(約3400塩基対の切断点分解能)上に配置したところ、減数分裂時の交差と新規構造多様体の間に相関は見られませんでした。こうしたほぼテロメアからテロメアまでのゲノム家系図は、ヒトの遺伝的多様性の根底にある最も基本的な過程を解明する、真理集合となります。この研究は、人類進化史の解明にも役立つ基礎的知見を提供している点でも、注目されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


遺伝学:4世代の家系参照から明らかになったヒトのde novo変異率

遺伝学:詳細なゲノム家系図からde novo変異を読み解く

 今回、4世代28人からなる1家系について、ほぼ完全なゲノム塩基配列が解読され、複数世代にわたるヒトのde novo変異の傾向の手掛かりが得られている。



参考文献:
Porubsky D. et al.(2025): Human de novo mutation rates from a four-generation pedigree reference. Nature, 643, 8071, 427–436.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08922-2

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