『卑弥呼』第161話「謁見」

 『ビッグコミックオリジナル』2026年2月5日号掲載分の感想です。前号は休載だったので、久々の感があります。前回は、山社(ヤマト)連合の魏への使節団が魏の遼東郡で魏軍と遭遇し、魏軍の総大将の司馬懿(司馬仲達)が山社連合の使節団に、そなたたちの国の女王によろしく、と伝えたところで終了しました。今回は、238年(以下、西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)12月、ミマアキと合流した山社錬三の魏への使節団が、帯方郡太守の劉夏の護衛で魏の都である洛陽へと到達した場面から始まります。

 暈(クマ)国の鞠智里(ククチノサト、現在の熊本県菊池市でしょうか)では、暈国の大夫で実質的な最高権力者である鞠智彦(ククチヒコ)の取り子(養子)となった、日見彦(ヒミヒコ)候補とされているニニギ(ヤエト)が、籠から民に声をかけています。平伏する民に対してニニギは、怖がらずに遠慮なく言うよう、促します。民の中から老人が、大地震の後に邑の近くに凶暴な猿の群れが棲みつき、赤子が二人攫われた、とニニギに訴えます。ニニギは、早急に猿を狩って殺す、と約束します。ニニギはトンカラリンの洞窟の近くの庵に住んでおり、何かあればいつでも訪ねてくるよう、老人に伝えます。庵の近くに戻ってきたニニギを、鞠智彦の配下であるウガヤや志能備(シノビ)たちが出迎え、その様子を林からナツハ(チカラオ)が窺っています。ウガヤが、暈と山社の国境で鞠智彦様が山社の日見子(ヒミコ)、つまりヤノハと対面するが、日見子の提示した条件は、と言いかけると、自分の顔を見たいのか、と皮肉な表情を浮かべてニニギがウガヤに尋ねます。志能備はナツハに気づき、投擲武器で攻撃しますが、ナツハは逃れます。ニニギは冷静に、山社の志能備が自分を殺しに来たのか、ただ顔を見たかっただけなのだろう、と指摘し、まだ話に続きがあるのだろう、とウガヤに促します。ニニギの実の両親が山社の日見子に殺されたこと(ニニギの実の両親はヤノハとナツハですが、ニニギはそのことを知りません)は聞いている、と言うウガヤに、今回の日見子との対面では、日見子を殺さないよう義父(鞠智彦)が言ったのだろう、とニニギは指摘します。自分も生きている日見子を一度見たいと思っていたので、その心配はない、と鞠智彦に伝えるよう、ニニギはウガヤに伝えます。どのように両親の命が奪われたのか聞きたい、と願い出るウガヤに、ニニギは自分の認識を伝えます。

 その2日後、山社の楼観では、イクメがヤノハに、弟のミマアキたち魏への使節団一行が、魏の都に到着した頃で、施設が天子(魏の皇帝)に謁見するのは数日以内だろう、と報告していました。魏の皇帝は倭国との同盟を承諾するだろうか、と不安な様子のイクメに、そのことを自分も天照様にお願いする、とヤノハ答えます。イクメが退去した後、ヤノハは入室してきたチカラオに、新たな日見彦(この時点では、まだ日見彦と広く認められているわけではないでしょうが)の顔を見られたのか、と尋ねますが、チカラオが悲しげな表情を浮かべていたことから、何か隠していることを察します。ヤノハはチカラオに、弟なのだから何があっても隠しごとだけはしないでくれ、と言って、喋ることができないチカラオは、手で答えます。

 鞠智里では、鞠智彦がウガヤから、ニニギは幼い頃に山社の戦人の襲撃で邑を燃やされ、両親を殺されたと言った、と報告を受けていました。すると鞠智彦は不審そうに、自分と日見子(ヤノハ)が不戦の誓いを立てていこう、山社の戦人が暈を襲った事実はないと思う、と言うと、ニニギはおそらく何か勘違いをしているのではないか、とウガヤは指摘します。しかし鞠智彦は、自分の本位が倭の統一と初の倭王になることなので、ニニギがいずれヤノハの止めを刺すのならば、むしろ好都合と考えます。

 238年12月、トメ将軍が率いる山社連合からの使節団は洛陽で魏の皇帝である曹叡(明帝)に謁見し、天子はお加減が悪いと聞いていたが、よく謁見してくれたものだ、とトメ将軍とゴリは語り合います。実際、曹叡は翌月に没します。曹叡は、山社の女王(ヤノハ)を「親魏倭王」と認め、倭国は魏と同盟関係にある、とトメ将軍一行に伝えます。ミマアキは、これできっと倭国に平和が訪れるが、帰国後に、親友で恋仲でもあったクラトをヤノハがアカメとナツハに殺害させたことについて、どうすべきなのか、悩んでいました。山社では、ヤノハがチカラオから、ニニギと名乗る暈の日見彦(候補)が息子であるヤエトだと伝えられ、ヤノハが安堵した表情を浮かべたところで、今回は終了です。


 今回は、ついに魏への使節団が魏の皇帝に謁見し、連載開始当初から予想された本作の山場の一つを迎えましたが、山社連合と、暈や今回は描かれなかった日下(ヒノモト)との関係は簡単には決着しそうにないので、まだ長く連載が続くのではないか、と期待しています。ニニギの養父母の殺害を命じたヒルメは、ニニギがヤノハとナツハ(チカラオ)との間の息子と気づいていると思われますが、鞠智彦にはそのことを伝えていなかったようです。ただ、ヒルメはヤノハとナツハが姉弟の関係であることを知らないでしょう。ヒルメが鞠智彦にそのことを伝えるなどして、ヤノハの日見子としての権威が失墜し、ヤノハは殺害されることになるのかもしれませんが、それは本作終盤に描かれるでしょうから、随分と先のことと思われます。ニニギは両親の復讐のため生きている感じで、すっかり冷酷な人物になってしまったようですが、ニニギとヤノハとの関係、さらにはニニギの実母がヤノハで、ニニギの養父母殺害を命じたのがヒルメだと、ニニギが知るのかどうかは、終盤に向けて本作の注目点の一つです。また、親友で恋仲のクラトの殺害をヤノハが命じた、と確信したミマアキが、帰国後にヤノハにどう対応するのかも注目され、魏への山社連合の使節団が魏の皇帝に謁見し、山場の一つを越えた感はありますが、今後の展開もたいへん楽しみです。

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