ヨーロッパ最古級のホモ属の顔面
取り上げるのが遅れてしまいましたが、ヨーロッパ最古級のホモ属の顔面を報告した研究(Huguet et al., 2025)が公表されました。ヨーロッパ西部における最初の人類がどの系統で、その身体的特徴はどのようなものだったのか、また、そうした人類がいつどこで暮らしていたのかは、前期更新世のユーラシアにおける人類の定着についての研究では未解決の問題であす。ヨーロッパ西部の利用可能な古人類学的情報は乏しく、それらはイベリア半島のものに限られています。
本論文は、スペインのアタプエルカ山地(Sierra de Atapuerca)のシマ・デル・エレファンテ(Sima del Elefante)遺跡のTE7層(推定年代は140万~110万年前頃)から出土した人類の中顔面の大部分について報告します。この化石(ATE7-1)は、ヨーロッパ西部でこれまでに特定されたヒトの顔面としては最古級となります。この人類の中顔面に見られる形態的特徴の大半は、ホモ属のクレード(単系統群)としては祖先的で、近隣の同じくアタプエルカ山地にあるグラン・ドリナ(Gran Dolina)遺跡で発見された、90万~80万年前頃と推定されるホモ・アンテセッサー(Homo antecessor)に見られるような、現代人に近い顔つきは認められない。さらに、ATE7-1は、ジョージア(グルジア)のドマニシ(Dmanisi)遺跡で発見された人類や他のほぼ同年代の人類よりも鼻歯槽領域が派生的です。
利用可能な証拠に基づくと、TE7層で今回新たに発見されたヒト化石は、ホモ・エレクトス類似種(Homo aff. erectus)に分類するのが妥当です。シマ・デル・エレファンテ遺跡およびグラン・ドリナ遺跡の下位層から得られた考古学や古生物学や古人類学の情報から、前期更新世末のヨーロッパにおいてヒト集団の入れ替わりがあった、と提案されます。ホモ・アンテセッサーについては、プロテオーム(タンパク質の総体)解析から、現生チンパンジー属よりも現生人類(Homo sapiens)と近いものの、種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)やネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の方が現生人類により近い、と示されています(関連記事)。おそらくATE7-1は、現生チンパンジー属よりも現生人類の方と近い系統であるものの、ホモ・アンテセッサーの方がより現生人類と近縁なのでしょう。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
考古学:西ヨーロッパで発見された最古の顔の一部
西ヨーロッパに生息していたホミニン(hominin;ヒト族)から発見された最古の顔面骨は、約140万– 110万年前のものであることを報告する論文が、Nature に掲載される。
ユーラシア大陸には少なくとも180万年前にはホミニンが定住していたことが示唆されている。西ヨーロッパにおける初期のホミニンの定住の証拠は、イベリア半島から発見された極めて断片的な化石サンプルに限られており、これらのホミニンがどのような外見で、分類学的にどのような位置づけにあるのかについてはほとんど手がかりがない。約85万年前のスペインの遺跡から発見された化石は、ホモ・アンテセソール(Homo antecessor;現生人類に似た細長い中顔面を持つ初期の人類の一種)のものであることが判明した。2007年には、スペイン北部のシマ・デル・エレファンテ(Sima del Elefante)遺跡で、120万–110万年前のホミニンの顎骨(ATE9-1と命名)が発見されたが、ホモ・アンテセソールに属するとは断定できなかった。
2022年、Rosa Huguetらは、シマ・デル・エレファンテ遺跡でホミニンの中顔面の化石の一部を発見した。その断片(まとめてATE7-1と名付けられた)は、成人の左側の上顎と頬骨の大部分から構成されている。著者らは、物理的証拠と3D画像技術の両方を用いて化石の断片を復元し、その年齢を140万–110万年前と推定した。新たに発見された化石の年代は、以前に発見された顎骨(ATE9-1)と区別できないが、ATE7-1の化石は2メートル深い場所で発見されたため、著者らは新しい化石の方が古いと推測している。この遺跡からさらに多くの考古学的遺物(切断痕のある石器や動物の骨)や古生物学的遺物が発見されたことで、このホミニンが暮らしていた環境やそのライフスタイルについて新たな知見が得られたと著者らは指摘している。
著者らは、このホミニンの骨片には、ホモ・アンテセソールの化石に見られるような「現代的な」中顔面の特徴は見られないと指摘している。さらに、この遺骨はホモ・エレクトス(Homo erectus)の系統と類似点があるものの、このグループに明確に分類することはできない。そのため、著者らは暫定的に、さらなる証拠が得られるまで、この化石をホモ・アンテセソール・エレクトス(H. aff. Erectus)に分類し、ホモ・エレクトスとの類縁性を示している。この発見は、前期更新世の時代に西ヨーロッパには少なくとも2種類のホモ属の種が存在していたことを示唆している可能性がある。すなわち、ホモ・アンテセソール・エレクトスと、その後のホモ・アンテセソールである。これらの集団の関係を調査し、分類をさらに明確にするには、さらなる研究と化石標本が必要である。
人類学:西ヨーロッパ最古となるヒトの顔
人類学:100万年以上前の西ヨーロッパの住人の顔
今回、スペインの洞窟から出土したヒト族の化石から、その顔(少なくともその一部)が明らかになった。この化石は100万年以上前のものと推定され、ホモ・エレクトス類似種(Homo aff. erectus)に分類されており、ヒトの顔としては西ヨーロッパで最古となる。
参考文献:
Huguet R. et al.(2025): The earliest human face of Western Europe. Nature, 640, 8059, 707–713.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08681-0
本論文は、スペインのアタプエルカ山地(Sierra de Atapuerca)のシマ・デル・エレファンテ(Sima del Elefante)遺跡のTE7層(推定年代は140万~110万年前頃)から出土した人類の中顔面の大部分について報告します。この化石(ATE7-1)は、ヨーロッパ西部でこれまでに特定されたヒトの顔面としては最古級となります。この人類の中顔面に見られる形態的特徴の大半は、ホモ属のクレード(単系統群)としては祖先的で、近隣の同じくアタプエルカ山地にあるグラン・ドリナ(Gran Dolina)遺跡で発見された、90万~80万年前頃と推定されるホモ・アンテセッサー(Homo antecessor)に見られるような、現代人に近い顔つきは認められない。さらに、ATE7-1は、ジョージア(グルジア)のドマニシ(Dmanisi)遺跡で発見された人類や他のほぼ同年代の人類よりも鼻歯槽領域が派生的です。
利用可能な証拠に基づくと、TE7層で今回新たに発見されたヒト化石は、ホモ・エレクトス類似種(Homo aff. erectus)に分類するのが妥当です。シマ・デル・エレファンテ遺跡およびグラン・ドリナ遺跡の下位層から得られた考古学や古生物学や古人類学の情報から、前期更新世末のヨーロッパにおいてヒト集団の入れ替わりがあった、と提案されます。ホモ・アンテセッサーについては、プロテオーム(タンパク質の総体)解析から、現生チンパンジー属よりも現生人類(Homo sapiens)と近いものの、種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)やネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の方が現生人類により近い、と示されています(関連記事)。おそらくATE7-1は、現生チンパンジー属よりも現生人類の方と近い系統であるものの、ホモ・アンテセッサーの方がより現生人類と近縁なのでしょう。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
考古学:西ヨーロッパで発見された最古の顔の一部
西ヨーロッパに生息していたホミニン(hominin;ヒト族)から発見された最古の顔面骨は、約140万– 110万年前のものであることを報告する論文が、Nature に掲載される。
ユーラシア大陸には少なくとも180万年前にはホミニンが定住していたことが示唆されている。西ヨーロッパにおける初期のホミニンの定住の証拠は、イベリア半島から発見された極めて断片的な化石サンプルに限られており、これらのホミニンがどのような外見で、分類学的にどのような位置づけにあるのかについてはほとんど手がかりがない。約85万年前のスペインの遺跡から発見された化石は、ホモ・アンテセソール(Homo antecessor;現生人類に似た細長い中顔面を持つ初期の人類の一種)のものであることが判明した。2007年には、スペイン北部のシマ・デル・エレファンテ(Sima del Elefante)遺跡で、120万–110万年前のホミニンの顎骨(ATE9-1と命名)が発見されたが、ホモ・アンテセソールに属するとは断定できなかった。
2022年、Rosa Huguetらは、シマ・デル・エレファンテ遺跡でホミニンの中顔面の化石の一部を発見した。その断片(まとめてATE7-1と名付けられた)は、成人の左側の上顎と頬骨の大部分から構成されている。著者らは、物理的証拠と3D画像技術の両方を用いて化石の断片を復元し、その年齢を140万–110万年前と推定した。新たに発見された化石の年代は、以前に発見された顎骨(ATE9-1)と区別できないが、ATE7-1の化石は2メートル深い場所で発見されたため、著者らは新しい化石の方が古いと推測している。この遺跡からさらに多くの考古学的遺物(切断痕のある石器や動物の骨)や古生物学的遺物が発見されたことで、このホミニンが暮らしていた環境やそのライフスタイルについて新たな知見が得られたと著者らは指摘している。
著者らは、このホミニンの骨片には、ホモ・アンテセソールの化石に見られるような「現代的な」中顔面の特徴は見られないと指摘している。さらに、この遺骨はホモ・エレクトス(Homo erectus)の系統と類似点があるものの、このグループに明確に分類することはできない。そのため、著者らは暫定的に、さらなる証拠が得られるまで、この化石をホモ・アンテセソール・エレクトス(H. aff. Erectus)に分類し、ホモ・エレクトスとの類縁性を示している。この発見は、前期更新世の時代に西ヨーロッパには少なくとも2種類のホモ属の種が存在していたことを示唆している可能性がある。すなわち、ホモ・アンテセソール・エレクトスと、その後のホモ・アンテセソールである。これらの集団の関係を調査し、分類をさらに明確にするには、さらなる研究と化石標本が必要である。
人類学:西ヨーロッパ最古となるヒトの顔
人類学:100万年以上前の西ヨーロッパの住人の顔
今回、スペインの洞窟から出土したヒト族の化石から、その顔(少なくともその一部)が明らかになった。この化石は100万年以上前のものと推定され、ホモ・エレクトス類似種(Homo aff. erectus)に分類されており、ヒトの顔としては西ヨーロッパで最古となる。
参考文献:
Huguet R. et al.(2025): The earliest human face of Western Europe. Nature, 640, 8059, 707–713.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08681-0
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