アウストラロピテクス属の新たな化石
鮮新世のアウストラロピテクス属の新たな化石を報告した研究(Haile-Selassie et al., 2026)が公表されました。エチオピアのウォランソ・ミル(Woranso-Mille)の鮮新世の堆積層(359万年前~333万年前)から出土した化石に対するアウストラロピテクス・デイレメダ(Australopithecus deyiremeda)との命名(関連記事)は、エチオピアのアファール地溝帯(Afar Rift)に、アウストラロピテクス・アファレンシス(Australopithecus afarensis)と同時代の別種が存在したことを示しています。しかし、ブルテレ(Burtele、略してBRT)の2ヶ所の化石産地で見つかった部分的な足(BRT-VP-2/73)と数点の遊離歯は、種水準では特定されていませんでした(関連記事)。
最近アファール地域で回収された歯顎標本によって、ブルテレの人類標本の分類学的類縁性が解明されただけでなく、アウストラロピテクス・デイレメダの食餌と歩行様式にも光が当てられました。本論文は、これらの標本の比較検討結果を提示し、これらがアウストラロピテクス・デイレメダに帰属できることを明らかにします。また本論文では、ブルテレにおける他の人類の欠如に基づいて、同じ地層で発見された「ブルテレの足(BRT foot)」のこのアウストラロピテクス・デイレメダへの帰属が節約的である、と分かりました。
この新たな資料は全体的に、アウストラロピテクス・デイレメダの歯や頭蓋後方(首から下)が、アウストラロピテクス・アファレンシスのものよりも祖先的であることを示しており、それらは特に犬歯と小臼歯の形態的特徴や、足の把持形質の保持の側面で顕著でした。さらに、歯のエナメル質のδ¹³C(炭素13)値が低く、その分布変動が少ないことは、アルディピテクス・ラミドゥス(Ardipithecus ramidus)やアウストラロピテクス・アナメンシス(Australopithecus anamensis)と類似しており、C₃食物への依存を示していた。これは、アウストラロピテクス・デイレメダの食餌戦略が、初期のアルディピテクス・ラミドゥスやアウストラロピテクス・アナメンシスと似ていたことを示唆しています。
ブルテレの足の解析結果と、そのアウストラロピテクス・デイレメダへの分類は、樹上性がアウストラロピテクス属のこの種の位置的行動の重要な要素であったことの決定的な証拠となり、鮮新世人類の間で、ある程度の樹上性が保持されていたことをさらに裏づけています。ただ、とくに化石資料が少ない場合に、種の分類が難しいことは否定できず、極論を言うと、最終的には研究者の好みによって種の分類が行われている側面も多分にあることは否定できないように思います。その意味で、400万~300万年前頃の人類にどのくらいの数の種が存在したのか、確定は今後も難しそうで、あくまでもより妥当な分類提示と割り切って種名を使っていくしかないのでしょう。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
人類学:古代の「謎の」足の持ち主を発見
2009年にエチオピアで発見された340万年前の足の一部は、アウストラロピテクス・デイレメダ(Australopithecus deyiremeda)という古代人類の近縁種に属することが判明した。これは、有名な「ルーシー(Lucy)」(アウストラロピテクス・アファレンシス;A. afarensis)よりも原始的なアウストラロピテクス(Australopithecus)属の種である。今週のNature にオープンアクセスで掲載されるこの発見は、長年の謎を解明すると同時に、約300万~400万年前に東アフリカに生息した古代ホミニン(hominins)の生活様式に関する新たな知見をもたらす。
エチオピアのアファール(Afar)地域では、300万~400万年前に2種のアウストラロピテクスが共存していたことが明らかになった。よく知られたアウストラロピテクス・アファレンシスと、比較的知られていないアウストラロピテクス・デイレメダである。後者はわずか10年前に記載された種である。2009年、アウストラロピテクス・デイレメダが正式に特定される前に、同じアファール地域で340万年前頃のものと思われるホミニンの足骨の一部が発見され、「ブルテレの足(Burtele Foot)」として知られていた。この足骨は、アウストラロピテクス・アファレンシスのものとは明らかに異なっていたが、関連する頭蓋骨や歯の化石が不足していたため、特定の種に分類することはできなかった。
Yohannes Haile-Selassieら(アリゾナ州立大学人類起源研究所、社会変化・人類進化学部〔米国〕)は、同じ地域でさらに347万年から333万年前のホミニン化石を発見したと報告している。これらの化石は、アウストラロピテクス・デイレメダの理解を深めると同時に、ブルテレの足をこの種に帰属させることを可能にした。新たに発見された骨盤、頭蓋骨、および12本の歯を持つ顎骨の断片などの化石は、ブルテレの足と同じ地層から発見され、アウストラロピテクス・デイレメダに帰属できる。歯の形状と、以前に報告された骨の特徴から、アウストラロピテクス・デイレメダは、アウストラロピテクス・アファレンシスよりも原始的であったことが示唆される。エナメル質の同位体分析によると、アウストラロピテクス・デイレメダは、樹木や低木、草本類の葉、果実、およびナッツをおもに食べていたとされ、これはアウストラロピテクス・アファレンシスの食性よりも多様性に欠ける。
ブルテレの足がアウストラロピテクス・デイレメダと関連付けられたことは、鮮新世(Pliocene epoch;約533万~258万年前)に複数の二足歩行するホミニンが存在していたという従来の証拠がさらに強化された。著者らは、この地域でのさらなる化石の探索が、ヒトに似た二足歩行の起源を完全に理解するために不可欠であると結論づけている。
古生物学:アウストラロピテクス・デイレメダの食餌と歩行様式に光を当てる新たな発見
古生物学:「ブルテレの足」の持ち主が明らかに
「ブルテレの足(BRT foot)」は、エチオピアで発見された400万〜300万年前のヒト族の足の部分骨格だが、どの種のものであるかはこれまで謎だった。今回新たな研究で、ブルテレの足が、「ルーシー」で知られるアウストラロピテクス・アファレンシス(Australopithecus afarensis)よりも原始的な、アウストラロピテクス・デイレメダ(Australopithecus deyiremeda)のものであることが明らかになった。また、その形質は、地質年代的により古いアルディピテクス・ラミドゥス(Ardipithecus ramidus)やアウストラロピテクス・アナメンシス(Australopithecus anamensis)に近かったと見られる。
参考文献:
Haile-Selassie Y. et al.(2025): New finds shed light on diet and locomotion in Australopithecus deyiremeda. Nature, 648, 8094, 640–648.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09714-4
最近アファール地域で回収された歯顎標本によって、ブルテレの人類標本の分類学的類縁性が解明されただけでなく、アウストラロピテクス・デイレメダの食餌と歩行様式にも光が当てられました。本論文は、これらの標本の比較検討結果を提示し、これらがアウストラロピテクス・デイレメダに帰属できることを明らかにします。また本論文では、ブルテレにおける他の人類の欠如に基づいて、同じ地層で発見された「ブルテレの足(BRT foot)」のこのアウストラロピテクス・デイレメダへの帰属が節約的である、と分かりました。
この新たな資料は全体的に、アウストラロピテクス・デイレメダの歯や頭蓋後方(首から下)が、アウストラロピテクス・アファレンシスのものよりも祖先的であることを示しており、それらは特に犬歯と小臼歯の形態的特徴や、足の把持形質の保持の側面で顕著でした。さらに、歯のエナメル質のδ¹³C(炭素13)値が低く、その分布変動が少ないことは、アルディピテクス・ラミドゥス(Ardipithecus ramidus)やアウストラロピテクス・アナメンシス(Australopithecus anamensis)と類似しており、C₃食物への依存を示していた。これは、アウストラロピテクス・デイレメダの食餌戦略が、初期のアルディピテクス・ラミドゥスやアウストラロピテクス・アナメンシスと似ていたことを示唆しています。
ブルテレの足の解析結果と、そのアウストラロピテクス・デイレメダへの分類は、樹上性がアウストラロピテクス属のこの種の位置的行動の重要な要素であったことの決定的な証拠となり、鮮新世人類の間で、ある程度の樹上性が保持されていたことをさらに裏づけています。ただ、とくに化石資料が少ない場合に、種の分類が難しいことは否定できず、極論を言うと、最終的には研究者の好みによって種の分類が行われている側面も多分にあることは否定できないように思います。その意味で、400万~300万年前頃の人類にどのくらいの数の種が存在したのか、確定は今後も難しそうで、あくまでもより妥当な分類提示と割り切って種名を使っていくしかないのでしょう。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
人類学:古代の「謎の」足の持ち主を発見
2009年にエチオピアで発見された340万年前の足の一部は、アウストラロピテクス・デイレメダ(Australopithecus deyiremeda)という古代人類の近縁種に属することが判明した。これは、有名な「ルーシー(Lucy)」(アウストラロピテクス・アファレンシス;A. afarensis)よりも原始的なアウストラロピテクス(Australopithecus)属の種である。今週のNature にオープンアクセスで掲載されるこの発見は、長年の謎を解明すると同時に、約300万~400万年前に東アフリカに生息した古代ホミニン(hominins)の生活様式に関する新たな知見をもたらす。
エチオピアのアファール(Afar)地域では、300万~400万年前に2種のアウストラロピテクスが共存していたことが明らかになった。よく知られたアウストラロピテクス・アファレンシスと、比較的知られていないアウストラロピテクス・デイレメダである。後者はわずか10年前に記載された種である。2009年、アウストラロピテクス・デイレメダが正式に特定される前に、同じアファール地域で340万年前頃のものと思われるホミニンの足骨の一部が発見され、「ブルテレの足(Burtele Foot)」として知られていた。この足骨は、アウストラロピテクス・アファレンシスのものとは明らかに異なっていたが、関連する頭蓋骨や歯の化石が不足していたため、特定の種に分類することはできなかった。
Yohannes Haile-Selassieら(アリゾナ州立大学人類起源研究所、社会変化・人類進化学部〔米国〕)は、同じ地域でさらに347万年から333万年前のホミニン化石を発見したと報告している。これらの化石は、アウストラロピテクス・デイレメダの理解を深めると同時に、ブルテレの足をこの種に帰属させることを可能にした。新たに発見された骨盤、頭蓋骨、および12本の歯を持つ顎骨の断片などの化石は、ブルテレの足と同じ地層から発見され、アウストラロピテクス・デイレメダに帰属できる。歯の形状と、以前に報告された骨の特徴から、アウストラロピテクス・デイレメダは、アウストラロピテクス・アファレンシスよりも原始的であったことが示唆される。エナメル質の同位体分析によると、アウストラロピテクス・デイレメダは、樹木や低木、草本類の葉、果実、およびナッツをおもに食べていたとされ、これはアウストラロピテクス・アファレンシスの食性よりも多様性に欠ける。
ブルテレの足がアウストラロピテクス・デイレメダと関連付けられたことは、鮮新世(Pliocene epoch;約533万~258万年前)に複数の二足歩行するホミニンが存在していたという従来の証拠がさらに強化された。著者らは、この地域でのさらなる化石の探索が、ヒトに似た二足歩行の起源を完全に理解するために不可欠であると結論づけている。
古生物学:アウストラロピテクス・デイレメダの食餌と歩行様式に光を当てる新たな発見
古生物学:「ブルテレの足」の持ち主が明らかに
「ブルテレの足(BRT foot)」は、エチオピアで発見された400万〜300万年前のヒト族の足の部分骨格だが、どの種のものであるかはこれまで謎だった。今回新たな研究で、ブルテレの足が、「ルーシー」で知られるアウストラロピテクス・アファレンシス(Australopithecus afarensis)よりも原始的な、アウストラロピテクス・デイレメダ(Australopithecus deyiremeda)のものであることが明らかになった。また、その形質は、地質年代的により古いアルディピテクス・ラミドゥス(Ardipithecus ramidus)やアウストラロピテクス・アナメンシス(Australopithecus anamensis)に近かったと見られる。
参考文献:
Haile-Selassie Y. et al.(2025): New finds shed light on diet and locomotion in Australopithecus deyiremeda. Nature, 648, 8094, 640–648.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09714-4
この記事へのコメント