台湾住民の医療および遺伝的データ
おもに漢人系の台湾住民の医療および遺伝的データに関する二つの研究が公表されました。これらの研究によって、台湾住民の大規模な医療および遺伝的データが報告され、精密医療や健康対策や創薬など「実用的な」分野での今後の大きな貢献が期待されます。こうした大規模な医療および遺伝的データについては、まだ不足している地域も多いでしょうから、そうした「空白」地域を埋めていくのが、今後の研究の課題となりそうです。さらに、こうした医療および遺伝的データは、「実用的な」側面のみならず、古代ゲノムデータととともに進化史の解明への貢献も期待されます。
一方の研究(Yang et al., 2025)は、台湾の住民50万人以上の医療および遺伝的データを報告しています。漢人は世界人口の約20%を占めますが、遺伝学研究では依然として充分に代表されておらず、精密医療を進展させるために大規模コホート(特定の性質が一致する個体で構成される集団)が緊急に必要とされています。本論文は、中央研究院が台湾各地の16ヶ所の主要な医療施設と共同で設立した、TPMI(Taiwan Precision Medicine Initiative、台湾精密医療新構想)について紹介します。TPMIには565390人の参加者が登録されており、これらの参加者からは、遺伝子鑑定用のDNA(deoxyribonucleic acid、デオキシリボ核酸)試料提供の同意と、研究目的でのEMR(electronic medical record、電子医療記録)への利用許可が得られています。EMRへの利用許可には後ろ向きと前向きの両方が含まれ、これによって縦断研究が可能になります。遺伝子鑑定は、漢民族系統の集団に最適化された一塩基多型アレイを用いて行われており、これによって、ゲノム規模関連解析やフェノーム(表現型の全体集合)規模関連解析や多遺伝子危険性得点解析を実施して、ありふれた疾患危険性や薬理遺伝学的反応を評価することが可能になります。参加者はまた、将来の研究のために再度連絡を受けることや、健康管理の助言を伴う個別の遺伝学的危険性鑑定を受け取ることにも同意しています。TPMIによって構築された、中央データベースおよび解析基盤であるTPMIデータ利用基盤は、データ安全性を確保するとともに学術研究を促進します。遺伝子鑑定とEMRデータを統合し、縦断的追跡を可能にした非ヨーロッパ系の大規模コホートであるTPMIは、遺伝学的危険性の予測モデル検証、危険性に基づく健康管理の臨床試験実施、健康政策への情報提供に使用できる独特な情報資源となります。最終的には、TPMIコホートは世界の遺伝学研究に貢献し、集団に基づく精密医療のモデルとなるでしょう。
もう一方の研究(Chen et al., 2025)は、とくに漢人を対象とした、台湾住民の医療および遺伝的データを報告しています。個人のゲノム鑑定に基づく複雑な疾患の危険性予測は、ヒトの遺伝学で進歩している分野です。しかし、これまでの遺伝学研究の大半はヨーロッパ系集団に集中しており、精密医療において世界的な不均衡が生じるとともに、非ヨーロッパ系集団のゲノム研究の必要性が浮き彫りになっています。TPMIには台湾居住者50万人以上が参加しており、漢人系の人々についての遺伝子鑑定とEMRデータの大規模なデータセットが利用可能となっています。この研究は、広範な表現型データを用いて、漢人の参照集団と遺伝的に類似した人々について、医学的フェノームにわたり包括的なゲノム解析を行ないました。その結果、集団特異的な遺伝的危険性多様体が明らかになり、さまざまな複雑形質について新たな知見が得られました。この研究は、多遺伝子危険性得点を開発し、心血管代謝疾患や自己免疫疾患や癌や感染症などの疾患に対する強力な予測性能を実証しました。また、独立したデータセットである台湾生物銀行やイギリス生物銀行や全員計画(All of Us Project)のアジア東部系の人々において、一致した知見が観察されました。特定された遺伝学的危険性リスクは、TPMIコホートにおける全般的な健康状態の差異の最大10.3%を説明しました。フェノーム規模のゲノム全体像の特徴付け、集団特異的な危険性予測モデルの開発、それらの性能評価、健康に及ぼす遺伝学的影響の特定に関するこの研究の手法は、他のさまざまな研究集団における同様の研究のモデルとなります。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
ゲノミクス:台湾精密医療イニシアチブは大規模研究のためのコホートを提供する
ゲノミクス:漢民族系の人々の集団特異的な多遺伝子リスクスコア
ゲノミクス:漢民族系集団の大規模コホート
今週号では2報の論文で、漢民族系の人々50万人以上が参加する「台湾精密医療イニシアチブ(TPMI)」と、その大規模コホートを用いて行った遺伝的解析の結果が報告されている。
参考文献:
Chen HH. et al.(2025): Population-specific polygenic risk scores for people of Han Chinese ancestry. Nature, 648, 8092, 128–137.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09350-y
Yang HC. et al.(2025): The Taiwan Precision Medicine Initiative provides a cohort for large-scale studies. Nature, 648, 8092, 117–127.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09680-x
一方の研究(Yang et al., 2025)は、台湾の住民50万人以上の医療および遺伝的データを報告しています。漢人は世界人口の約20%を占めますが、遺伝学研究では依然として充分に代表されておらず、精密医療を進展させるために大規模コホート(特定の性質が一致する個体で構成される集団)が緊急に必要とされています。本論文は、中央研究院が台湾各地の16ヶ所の主要な医療施設と共同で設立した、TPMI(Taiwan Precision Medicine Initiative、台湾精密医療新構想)について紹介します。TPMIには565390人の参加者が登録されており、これらの参加者からは、遺伝子鑑定用のDNA(deoxyribonucleic acid、デオキシリボ核酸)試料提供の同意と、研究目的でのEMR(electronic medical record、電子医療記録)への利用許可が得られています。EMRへの利用許可には後ろ向きと前向きの両方が含まれ、これによって縦断研究が可能になります。遺伝子鑑定は、漢民族系統の集団に最適化された一塩基多型アレイを用いて行われており、これによって、ゲノム規模関連解析やフェノーム(表現型の全体集合)規模関連解析や多遺伝子危険性得点解析を実施して、ありふれた疾患危険性や薬理遺伝学的反応を評価することが可能になります。参加者はまた、将来の研究のために再度連絡を受けることや、健康管理の助言を伴う個別の遺伝学的危険性鑑定を受け取ることにも同意しています。TPMIによって構築された、中央データベースおよび解析基盤であるTPMIデータ利用基盤は、データ安全性を確保するとともに学術研究を促進します。遺伝子鑑定とEMRデータを統合し、縦断的追跡を可能にした非ヨーロッパ系の大規模コホートであるTPMIは、遺伝学的危険性の予測モデル検証、危険性に基づく健康管理の臨床試験実施、健康政策への情報提供に使用できる独特な情報資源となります。最終的には、TPMIコホートは世界の遺伝学研究に貢献し、集団に基づく精密医療のモデルとなるでしょう。
もう一方の研究(Chen et al., 2025)は、とくに漢人を対象とした、台湾住民の医療および遺伝的データを報告しています。個人のゲノム鑑定に基づく複雑な疾患の危険性予測は、ヒトの遺伝学で進歩している分野です。しかし、これまでの遺伝学研究の大半はヨーロッパ系集団に集中しており、精密医療において世界的な不均衡が生じるとともに、非ヨーロッパ系集団のゲノム研究の必要性が浮き彫りになっています。TPMIには台湾居住者50万人以上が参加しており、漢人系の人々についての遺伝子鑑定とEMRデータの大規模なデータセットが利用可能となっています。この研究は、広範な表現型データを用いて、漢人の参照集団と遺伝的に類似した人々について、医学的フェノームにわたり包括的なゲノム解析を行ないました。その結果、集団特異的な遺伝的危険性多様体が明らかになり、さまざまな複雑形質について新たな知見が得られました。この研究は、多遺伝子危険性得点を開発し、心血管代謝疾患や自己免疫疾患や癌や感染症などの疾患に対する強力な予測性能を実証しました。また、独立したデータセットである台湾生物銀行やイギリス生物銀行や全員計画(All of Us Project)のアジア東部系の人々において、一致した知見が観察されました。特定された遺伝学的危険性リスクは、TPMIコホートにおける全般的な健康状態の差異の最大10.3%を説明しました。フェノーム規模のゲノム全体像の特徴付け、集団特異的な危険性予測モデルの開発、それらの性能評価、健康に及ぼす遺伝学的影響の特定に関するこの研究の手法は、他のさまざまな研究集団における同様の研究のモデルとなります。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
ゲノミクス:台湾精密医療イニシアチブは大規模研究のためのコホートを提供する
ゲノミクス:漢民族系の人々の集団特異的な多遺伝子リスクスコア
ゲノミクス:漢民族系集団の大規模コホート
今週号では2報の論文で、漢民族系の人々50万人以上が参加する「台湾精密医療イニシアチブ(TPMI)」と、その大規模コホートを用いて行った遺伝的解析の結果が報告されている。
参考文献:
Chen HH. et al.(2025): Population-specific polygenic risk scores for people of Han Chinese ancestry. Nature, 648, 8092, 128–137.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09350-y
Yang HC. et al.(2025): The Taiwan Precision Medicine Initiative provides a cohort for large-scale studies. Nature, 648, 8092, 117–127.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09680-x
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