イベリア半島南部におけるオーリナシアンからグラヴェティアンへの移行
ヒト進化研究ヨーロッパ協会第15回総会で、イベリア半島南部の上部旧石器時代の技術的移行に関する研究(Gomes., 2025)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P88)。[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。この研究は、スペインのムルシア(Murcia)市のムラ(Mula)川支流沿いのランブラ・ペレラ(Rambla Perea)峡谷に位置するラ・ボヤ(La Boja)岩陰遺跡の、オーリナシアン(Aurignacian、オーリニャック文化)からグラヴェティアン(Gravettian、グラヴェット文化)への移行を石器技術の観点から検証しています。
イベリア半島南部におけるグラヴェティアンによるオーリナシアンの置換の時期および様相と、上部旧石器時代社会の技術的および文化的動態に関する理解への影響に取り組んだ研究はほとんどありませんでした。ラ・ボヤ岩陰の石器群は、競合する2モデルの妥当性について知見を提供し、つまり、その置換は人口統計学的過程と関連していたかもしれない深い断絶だったのか、あるいは、ヨーロッパ南西部の他地域の技術的データによって示唆されるように[3]、漸進的で局所的な移行だったのかどうかです。
ムラ川支流のランブラ・ペレラ峡谷と、内陸部と沿岸部との間の自然の回廊に位置するラ・ボヤ岩陰では、居住層準(occupation horizons、略してOH)に分類される保存状態良好な炉床によって定義されるいくつかの別々の居住面が発掘されており、放射性炭素14年代と物質文化によって判断されるように、年代の範囲は中部旧石器時代から新石器時代までにわたります。OH11b~OH20は、層序の最良の連続の一つで、後期グラヴェティアン(OH11b~OH12a)と前期グラヴェティアン(OH12b~OH14)と後期オーリナシアン(OH15~OH16)と発展オーリナシアン(OH17~OH20)の堆積段階が含まれています[3]。事実上完全なオーリナシアンとグラヴェティアンの層序、および保存状態良好な炉床と豊富な石器によって明らかになる居住面の高水準の完全性のため、これはある時代から他の時代への移行期の理解にとって重要な遺跡です。
分析の個々の単位として別々の居住面をつねに考慮しながら、OH11b~OH20層序の石器(11470点)の技術的および類型論的分析と体系的な再接合が実行されました。発展オーリナシアン(Evolved Aurignacian)と後期オーリナシアンと前期グラヴェティアンの段階に関しては、実質的にOH間もしくは段階間の再接合は見つかりませんでした。技術的観点からは、各段階は異なっています。後期オーリナシアン段階は、前期グラヴェティアン石器技術において特徴的となる側面、つまり、豊富な掻器型石核や角柱石核の優越や再加工の様式としての二次加工(backing)の導入を示しており、これは、グラヴェティアンを定義する背付き道具の先が毛と感がることができる様式です。計測的観点からは、発展オーリナシアンから後期オーリナシアンへと移行するにつれて、石刃と小石刃はより大きくなり、より長くてより広くなっていることは、前期グラヴェティアンへと連続する傾向です。
これらの結果から、この地域では、発展オーリナシアンから前期グラヴェティアンへの変化は漸進的な移行だった、と示唆されます。後期オーリナシアンはイベリア半島南部では依然としてよく分かっていませんが、イベリア半島西部の利用可能なデータを考慮すると、石器体系がこの期間に地域化したことを裏づける論拠があります。全体的に、利用可能な証拠が一致する仮説は、グラヴェティアンはその後に拡散した特定の場所に起源があったわけではなく、むしろ、先行するオーリナシアンの細石器インダストリーの汎ヨーロッパ的で同時期に起きた多面的変容を表している、というものです。
参考文献:
Gomes L.(2025): Argument for a progressive Aurignacian-to-Gravettian transition in southern Iberia based on the stone tool assemblages from La Boja rock-shelter (Mula, Murcia, Spain). The 15th Annual ESHE Meeting.
[3]Zilhão J. et al.(2017): Precise dating of the Middle-to-Upper Paleolithic transition in Murcia (Spain) supports late Neandertal persistence in Iberia. Heliyon, 3, 11, e00435.
https://doi.org//10.1016/j.heliyon.2017.e00435
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ムラ川支流のランブラ・ペレラ峡谷と、内陸部と沿岸部との間の自然の回廊に位置するラ・ボヤ岩陰では、居住層準(occupation horizons、略してOH)に分類される保存状態良好な炉床によって定義されるいくつかの別々の居住面が発掘されており、放射性炭素14年代と物質文化によって判断されるように、年代の範囲は中部旧石器時代から新石器時代までにわたります。OH11b~OH20は、層序の最良の連続の一つで、後期グラヴェティアン(OH11b~OH12a)と前期グラヴェティアン(OH12b~OH14)と後期オーリナシアン(OH15~OH16)と発展オーリナシアン(OH17~OH20)の堆積段階が含まれています[3]。事実上完全なオーリナシアンとグラヴェティアンの層序、および保存状態良好な炉床と豊富な石器によって明らかになる居住面の高水準の完全性のため、これはある時代から他の時代への移行期の理解にとって重要な遺跡です。
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これらの結果から、この地域では、発展オーリナシアンから前期グラヴェティアンへの変化は漸進的な移行だった、と示唆されます。後期オーリナシアンはイベリア半島南部では依然としてよく分かっていませんが、イベリア半島西部の利用可能なデータを考慮すると、石器体系がこの期間に地域化したことを裏づける論拠があります。全体的に、利用可能な証拠が一致する仮説は、グラヴェティアンはその後に拡散した特定の場所に起源があったわけではなく、むしろ、先行するオーリナシアンの細石器インダストリーの汎ヨーロッパ的で同時期に起きた多面的変容を表している、というものです。
参考文献:
Gomes L.(2025): Argument for a progressive Aurignacian-to-Gravettian transition in southern Iberia based on the stone tool assemblages from La Boja rock-shelter (Mula, Murcia, Spain). The 15th Annual ESHE Meeting.
[3]Zilhão J. et al.(2017): Precise dating of the Middle-to-Upper Paleolithic transition in Murcia (Spain) supports late Neandertal persistence in Iberia. Heliyon, 3, 11, e00435.
https://doi.org//10.1016/j.heliyon.2017.e00435
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