アラビア半島の過去800万年間の環境

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、アラビア半島の過去800万年間の環境を報告した研究(Markowska et al., 2025)が報道されました。サハラ・アラビア砂漠は地球上において最大の生物地理学的障壁の一つで、過去の人類の移動など、アフリカ大陸とユーラシア大陸の間の分散を妨げてきました。最近の研究は、この障壁が少なくとも1100万年前にはこの場所に存在したことを示唆しています。対照的に、後期中新世と更新世の化石から得られた証拠は、サハラ・アラビア砂漠内部に水に依存する動物相(たとえば、ワニ類、ウマ類、カバ類、長鼻類)が一時的に存在し、それらが今日の乾燥した景観にはほとんど存在しない河川や湖沼によって維持されていたことを示唆しています。過去110万年間にアラビア半島南部では多くの湿潤期が存在しましたが、この時期より以前のアラビア半島の古気候についてはほとんど分かっていません。

 本論文は、砂漠の鍾乳石から得られた気候記録に基づいて、過去800万年間にアラビア半島中央部の内陸部では湿潤期が繰り返されていたことを示します。湿潤期の降水量は、モンスーンの影響が弱まるにつれて、時間とともに減少して変動が大きくなり、これは更新世の間に北半球極域の氷量が増大したのと同時期でした。より湿潤な条件はアフリカ大陸とユーラシア大陸の間の哺乳類の分散を促進し、アラビア半島が大陸規模の生物地理学的交換の重要な交差点として作用していたかもしれません。現生人類(Homo sapiens)のアフリカからの拡散においてペルシア湾が重要な役割を果たした可能性も指摘されているので(関連記事)、アラビア半島の気候変動は人類進化史の研究においてもたいへん注目されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古気候学:過去800万年にわたるアラビアにおける湿潤な期間の繰り返し

古気候学:過去800万年にわたり繰り返されたアラビアの湿潤期

 今回、アラビア南部(現在は地球上で最も気候が乾燥した地域の1つ)では、過去800万年にわたり湿潤な期間が繰り返され、これが哺乳類の分散を促進した可能性があることが示されている。



参考文献:
Markowska M. et al.(2025): Recurrent humid phases in Arabia over the past 8 million years. Nature, 640, 8060, 954–961.
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08859-6

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