大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第38回「地本問屋仲間之始」

 今回は、蔦屋重三郎と北尾政演(山東京伝)の関係および地本問屋の株仲間の結成を中心に話が展開しました。重三郎は喧嘩別れになった政演と、鶴屋喜右衛門の仲介で和解を試みますが、政演は幕府の弾圧を恐れて、耕書堂での黄表紙の執筆を躊躇います。松平定信(田安賢丸)の政治(寛政の改革)に迎合すれば、黄表紙のみならず娯楽が抑圧される、と主張する重三郎に対して、それが「正論」と認識しつつも、重三郎のような「高遠な理想」とは程遠い動機で作画・執筆してきた、と自覚している政演は、自分が矢面に立つことを決心できません。ここは人間心理として、納得のいくところです。

 そんな政演は、重三郎が版元や絵師や作家に必死に訴え、政演の師匠である北尾重政も重三郎への助力を申し出たことから、執筆を決意します。まあ、そのために政演も重三郎もたいへんな目に遭うわけで、それが次回描かれるようですが、重三郎が日本橋進出後では最大の打撃となるこの危機に対してどのように立ち向かっていくのかが、終盤の見どころとなりそうです。政演もこれで一旦は退場となるかもしれませんが、没年は重三郎の後になるので、朋誠堂喜三二(平沢常富)とともに最終回までに出番がありそうです。

 喜多川歌麿(唐丸、捨吉、雄助)の妻の「きよ」は瘡毒(梅毒)で亡くなり、それでも気が狂ったように「きよ」を描き続ける歌麿を、重三郎は必死に諭します。前半で不在期間はありましたが、歌麿は序盤から間違いなく最終回まで登場するでしょうから、本作で主人公に次ぐ重要人物と思われます。その歌麿の「きよ」の出番は予想より短かったものの、「きよ」の死が歌麿を美人画の大家にまで成長させる契機になった、との構成でしょうか。今回、鱗形屋孫兵衛が久々に登場しましたが、そのすこし前に退場した花の井(五代目瀬川、瀬以)について今回言及されており、花の井の死はまだ明示されていないので、最終回までにどこかで登場するのではないか、と期待しています。

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