アフリカ東部の初期ホモ属化石

 ヒト進化研究ヨーロッパ協会第15回総会で、アフリカ東部の初期ホモ属化石に関する研究(Blasi-Toccacceli et al., 2025)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P26)。[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。ホモ属は280万~190万年前頃の間に、アウストラロピテクス類、つまりアウストラロピテクス属およびパラントロプス属と生態学的に分岐した[2]、と理解されています。アウストラロピテクス類と比較して、ホモ属は樹上移動能力の大きな低下、陸上二足歩行能力や長距離歩行や持久走能力の向上、器用な行動の増加を示す、と予測されます。しかし、これらの行動が絶滅ホモ属の生態的地位をどの程度定義したのか、検証することは、限られた関連遺骸や断片的な化石記録によってかなり妨げられてきており、さらに、さまざまな保存状態や系統発生的な違いやかなり個体差によって複雑になっています。

 この研究は、184万年前頃となるエチオピアのオモ川下流域(Lower Omo Valley)のシュングラ層(Shungura Formation)から発見された1個体「OMO VE 3-10063」に、新たな成人の頭蓋後方(首から下)遺骸を割り当てます。これらの関連以外は、肩部および前肢の半分で構成され、半分の鎖骨遠位端1点や完全な上腕骨1点や部分的な肩甲骨1点や2点の脊椎骨断片や1点の肋骨断片が含まれています。定性的比較解剖学、線形および角度測定、二次元および参事兼幾何学形態測定分析を用いて、この個体の構成要素すべてが、15個体以上の現代人(Homo sapiens)やチンパンジー(Pan troglodytes)やボノボ(Pan paniscus)やゴリラ属と10個体以上のオランウータン属で構成される現生ヒト上科および鮮新世~更新世の人類(最大で14個体)と比較されました。

 比較解剖学的分析から、個体「OMO VE 3-10063」はアウストラロピテクス類と区別される特徴と、分類学的には初期ホモ属により近い特徴の組み合わせを有している、と明らかになります。注目すべきことに、個体「OMO VE 3-10063」は現生人類およびホモ・エレクトス(Homo erectus)と近い遠位上腕骨の形態を示しており、これは人類において分類学的帰属の信頼できると証明されてきた形質です。したがって、この研究は個体「OMO VE 3-10063」をホモ・エレクトスの1種(Homo cf. erectus)に分類し、その肩部複合体はホモ属に確実に分類される最古級で最良の保存状態の遺骸となります。機能的には、シュングラ層の関連する遺骸は複雑な肩部複合体を示しており、この肩部にはよじ登ったりぶら下がったり力学的利点は少なく、たとえば、肩甲骨の関節窩の向きは現代人と現生類人猿の中間で、現代人のような腱板筋群の空間が減少しており、鎖骨は現代人と類似した形態を示します。これが、前肢に作用する制約が現生類人猿よりも現代人の方と近かったことを示唆しています。この結果から、ホモ属の一部の構成員はすでに早くも180万年前頃には樹上移動において前肢の機能が制約されていたことが示唆され、陸上での習慣的な二足歩行および持久走と一致します。

 それにも関わらず、地質学的にやや新しい(177万年前頃)ジョージア(グルジア)のドマニシ(Dmanisi)から得られた上肢の証拠との比較分析から、個体「OMO VE 3-10063」は、アウストラロピテクス類により近い特定の祖先的形質を保持しているドマニシ個体群[5]よりも、派生的な肩および前肢を示している、と明らかになります。これらの差異は、初期ホモ属内の地域的な形態学的および機能的差異を浮き彫りにしており、前期更新世における多様な適応的戦略を示唆しています。この研究の結果をより広範な考古学的背景に統合した場合、石器の製作および使用の強化と初期ホモ・エレクトスを関連づける多くの証拠を考慮すると、ホモ属の肩は器用な動作の強化のため選択されてきたかもしれない、と仮定されます。最後に、この研究はホモ属とアウストラロピテクス類との間の形態学的および行動的差異を確証し、生態学的証拠に基づいて、ホモ属が初期にパラントロプス属から分岐したことを示唆します。


参考文献:
Blasi-Toccacceli A. et al.(2025): Morpho-functional analysis of new hominin associated shoulder remains from the Shungura Formation, Lower Omo Valley (Ethiopia) provides insights on the ecology of early Homo. The 15th Annual ESHE Meeting.

[2]Villmoare B. et al.(2015): Early Homo at 2.8 Ma from Ledi-Geraru, Afar, Ethiopia. Science, 347, 6228, 1352-1355.
https://doi.org/10.1126/science.aaa1343
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[5]Lordkipanidze D. et al.(2007): Postcranial evidence from early Homo from Dmanisi, Georgia. Nature, 449, 7160, 305-310.
https://doi.org/10.1038/nature06134
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