『卑弥呼』第157話「交渉」

 『ビッグコミックオリジナル』2025年11月5日号掲載分の感想です。前回は、金砂(カナスナ)国の石見の陸路を進んでいたヤノハが、話し合ったものの、物別れに終わった自分と事代主(コトシロヌシ)との間には、人が天寿を全うするためには絶対に戦を起こしてならない、との共通の想いがある、と悟ったところで終了しました。今回は、宍門(アナト)国の阿武(アブ)を、ヤノハ一行が進んでいる場面から始まります。イクメ、阿武は漁師の邑で、荒くれ者が多く、宍門のホムタチ王も手を焼いている、と案じています。そこに男性たちが現れ、輿に乗った者(ヤノハ)を置いて立ち去れば、雑魚の命を助けてやる、と脅します。ヤノハの屯長(タムロノオサ)が、我々を山社(ヤマト)の一行と知っての狼藉か、と男たちに詰問すると、祈祷女(イノリメ)が乗っているならば、得られるものは大きい、と男たちの意気はさらに上がります。ヤノハの護衛兵は、男たちの武器は銛で、ただの食い詰めの漁師なので一蹴しようと考えますが、ヤノハはイクメが止めたにも関わらず、輿から降ります。イクメは、男たちが阿武の漁師で、不漁続きなので、人質を取って、穀物や金銀を要求しているのだろう、と推測します。屯長は、歴戦の強者がそろっている自分たちならば、容易に一蹴できる、とヤノハに進言します。しかしヤノハは、ただの漁師なら、銛を逆手に持って投げるしか芸がないが、何人かは槍のように待ち構えており、戦い馴れているので、普段は漁を生業としているが、戦になれば宍門軍に徴集される正規の戦人だろう、と推測します。

 魏の温県では、毌丘倹がヤノハとは旧知の何(カ)と配下のトヒコおよびノヅナを引き連れて、大尉である司馬懿(司馬仲達)の邸宅を訪れていました。毌丘倹は司馬懿に公孫淵の謀叛を報告し、何一行を紹介します。司馬懿から公孫淵の謀叛に気づいた理由を問われた何一行は、代表を演じているノヅナが、倭は魏に使節団を派遣し、魏の天子様に恭順の意を伝えようと考えているが、遼東半島の公孫淵太守が魏への道を阻んでおり、我々の女王(ヤノハ)は公孫淵に直接会って、独立の野心を聞き出した、と答えます。すると司馬懿は、倭国の王が女性であることに驚きつつ、面白い、と言います。何一行は、司馬懿が自分たちの話を信じてくれたようだ、と考えて安堵します。司馬懿は、日見子(ヒミコ)であるヤノハが、帯方郡に2000人の兵を駐屯させ、必要ならば数万人の援軍を送る、との話に興味を示しました。司馬懿は毌丘倹に、自ら討伐軍を率いる、と伝えます。何はノヅナに、ヤノハの最も大切な願いを伝えるよう促し、ノヅナは司馬懿に、公孫淵討伐の最中に、戦場を倭の使節団が通過するので、助けてもらえないだろうか、と要望します。すると司馬懿は不審に思ったようで、何一行に話がある、と伝えて、嘘をついているだろう、と厳しく指摘し、何だけに残るよう命令します。何は自分が殺されると覚悟し、ノヅナとトヒコに逃げるよう促します。

 阿武では、自分たちの勝利は疑いないが、その代償に何人か負傷者と死者が出る、と考えたヤノハは、男たちの前に進み出て、自分が山社の高位の祈祷女で、自分を捕えれば、山社は相当なものを払うだろうが、警固の者がそれを許さず、戦えば多くの犠牲者が出る覚悟はあるのか、と男たちに問いかけます。すると男たちは、我々に失う者はなく、人数も6人多いので、あっという間に殺せる、と自信満々に答えます。ヤノハは、警固の者が敗れ、自分が捕えられた場合、山社は宍門な戦を仕掛けるだろう、と警告しますが、男たちは、一介の漁師の悪さで戦になることはあり得ない、と楽観的です。するとヤノハは、山社が宣戦布告すれば、戦を好まない宍門のホムタチ王はその原因を調べ、一介の漁師ならばともかく、宍門国の戦人ならば、全員の首を山社に指し出し、戦を阻止するだろう、と男たちに伝え、男性の人数は確かに、こちらが8人で、お前たちは14人だが、こちらが10人ならどうなる、と男たちを威嚇します。それでも男たちは、祈祷女が戦えるわけはない、と嘲笑しますが、ヤノハは、自分とイクメがともに勇猛果敢な山社の戦女(イクサメ)で、最近では先の津島(ツシマ、現在の対馬でしょう)王の館を1日で攻め落とした、と警告します。ヤノハは男たちに、妻子や父母など本当に失うものはないのか、と問いかけます。戦いは一番簡単な解決策に思えるが、その後は勝者も敗者も取り返しがつかないほど後悔し、結局はどちらも負けたことに気づくのだから、錨を下ろして無条件で我々を通せ、とヤノハが男たちに命じるところで今回は終了です。


 今回は、ヤノハと漁師たち、および何一行と司馬懿との交渉が描かれました。阿武の漁師の登場は唐突な感がありましたが、今後の話で重要な役割を担うことになるかもしれず、注目されます。宍門は日下(ヒノモト)に降りましたが、今回、王がホムタチと明かされており、以前のニキツミ王は、日下に降伏したさいに退位したか、その後で病死したか、殺害されたのでしょうか。司馬懿は何一行というかヤノハの嘘を見抜いたようですが、何のみに何を伝えるのか、間接的ではあるものの、ヤノハと司馬懿の駆け引きがどう描かれるのか、楽しみです。なお、残念ながら次号は休載のようです。最近は休載が増えてきた感もあり、まだ完結までかなり時間を要しそうなだけに、やや心配ではあります。

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