梅毒の進化史
取り上げるのが遅れてしまいましたが、梅毒の進化史に関する研究(Barquera et al., 2025)が公表されました。ヒトのトレポネーマ感染は、ひじょうに近縁な梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)ファミリーによって引き起こされ、フランベジア、ベジェル、ピンタ、最も有名な梅毒といった疾患を発症させます。これらの病原菌の共通の起源や梅毒自体の歴史に関する議論では、アメリカ大陸起源であるとする「コロンブス説」の証拠と、中世やそれ以前にユーラシアに梅毒が存在したとする、「先コロンブス説」の証拠が比較検討されてきました。分子データによって、分類された亜種を区別する遺伝的基盤は得られていますが、現在利用可能なわずかな古ゲノムデータから導き出せる結論には限界があるため、これらの亜種群の深遠な進化はまだ明らかにされていません。
本論文は、この進化史を探るために、南北アメリカ大陸へのヨーロッパ勢力の接触が起こる前および起こった頃の南北アメリカ大陸由来の、5系統の古トレポネーマゲノムを解析しました。これらは梅毒(Treponema pallidum subsp. pallidum)系統、フランベジア(Treponema pallidum subsp. pertenue)系統、べジェル(Treponema pallidum subsp. endemicum)系統の古近縁菌です。本論文のデータは、南北アメリカ大陸における梅毒トレポネーマのまだ調べられていない多様性の存在と、ヒトがこの地に定着した後での梅毒トレポネーマの出現を示しています。総合的にこれらの結果は、ゲノム水準で特徴づけられた全ての梅毒トレポネーマは、現在と古代を問わず、アメリカ大陸起源であることを裏づけています。
先行研究では、コロンブス以前の時代にアメリカ大陸の複数の文化でトレポネーマの感染が発生しており、コロンブスがアメリカ大陸に向けて出航する少なくとも500年前には、既にトレポネーマ病がアメリカ大陸に存在していた、との見解が裏づけられていましたが(関連記事)、本論文において改めて、ヒトのトレポネーマ感染の起源が先コロンブス期のアメリカ大陸にある可能性は高い、と示されました。梅毒は中世後期~近世のヨーロッパ、さらには同時代のアジア世界にも多き来な影響を及ぼしたため、関心が高いようで、今後のさらなる研究の進展が期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
微生物遺伝学:古ゲノムから南北アメリカ大陸の梅毒トレポネーマについての深遠な歴史が明らかになる
微生物遺伝学:古ゲノムから梅毒トレポネーマの歴史が明らかに
今回、南北アメリカ大陸で得られたいくつかの古トレポネーマゲノムの解析結果が報告され、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の古代および現在の全ての系統がアメリカ起源であることが裏付けられた。
参考文献:
Barquera R. et al.(2025): Ancient genomes reveal a deep history of treponemal disease in the Americas. Nature, 640, 8057, 186–193.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-08515-5
本論文は、この進化史を探るために、南北アメリカ大陸へのヨーロッパ勢力の接触が起こる前および起こった頃の南北アメリカ大陸由来の、5系統の古トレポネーマゲノムを解析しました。これらは梅毒(Treponema pallidum subsp. pallidum)系統、フランベジア(Treponema pallidum subsp. pertenue)系統、べジェル(Treponema pallidum subsp. endemicum)系統の古近縁菌です。本論文のデータは、南北アメリカ大陸における梅毒トレポネーマのまだ調べられていない多様性の存在と、ヒトがこの地に定着した後での梅毒トレポネーマの出現を示しています。総合的にこれらの結果は、ゲノム水準で特徴づけられた全ての梅毒トレポネーマは、現在と古代を問わず、アメリカ大陸起源であることを裏づけています。
先行研究では、コロンブス以前の時代にアメリカ大陸の複数の文化でトレポネーマの感染が発生しており、コロンブスがアメリカ大陸に向けて出航する少なくとも500年前には、既にトレポネーマ病がアメリカ大陸に存在していた、との見解が裏づけられていましたが(関連記事)、本論文において改めて、ヒトのトレポネーマ感染の起源が先コロンブス期のアメリカ大陸にある可能性は高い、と示されました。梅毒は中世後期~近世のヨーロッパ、さらには同時代のアジア世界にも多き来な影響を及ぼしたため、関心が高いようで、今後のさらなる研究の進展が期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
微生物遺伝学:古ゲノムから南北アメリカ大陸の梅毒トレポネーマについての深遠な歴史が明らかになる
微生物遺伝学:古ゲノムから梅毒トレポネーマの歴史が明らかに
今回、南北アメリカ大陸で得られたいくつかの古トレポネーマゲノムの解析結果が報告され、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の古代および現在の全ての系統がアメリカ起源であることが裏付けられた。
参考文献:
Barquera R. et al.(2025): Ancient genomes reveal a deep history of treponemal disease in the Americas. Nature, 640, 8057, 186–193.
https://doi.org/10.1038/s41586-024-08515-5
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