デニソワ人の新しい高品質なゲノムデータ
ヒト進化研究ヨーロッパ協会第15回総会で、種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)の新しい高品質なゲノムデータに関する研究(Peyrégne et al., 2025)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P175)。デニソワ人についての研究は今年(2025年)になって飛躍的に進展し(関連記事)、シベリア南部のアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)で発見された化石以外でも、台湾本島と澎湖諸島の間の水深60m~120mの澎湖海峡(Penghu Channel)で他の脊椎動物とともに漁網にかかって発見された、「澎湖1号(Penghu 1)」と呼ばれているホモ属の下顎骨がプロテオーム解析によって、中華人民共和国黒竜江省ハルビン市で1993年に松花江(Songhua River)における東江橋(Dongjiang Bridg)の建設中に発見された、と報告されている146000年以上前のホモ属頭蓋(ハルビン頭蓋)がmtDNA解析およびプロテオーム解析によって、デニソワ人系統と示されました。デニソワ人の新しい高品質なゲノムデータによって、デニソワ人の人口構造や現生人類(Homo sapiens)の拡散、デニソワ人と現生人類との遺伝的混合について、さらに詳しく解明されていくことが期待されます。
現生人類がアフリカで出現したことは広く受け入れられていますが、世界のさまざまな地域における現生人類の最初の到来時期と存続は、依然として未解明です。考古学的証拠はアフリカからの現生人類の複数の拡散を示唆しており、一部の化石証拠は中国では10万年前頃、アジア南東部では7万年前頃までの初期現生人類の存在を支持しています。しかし、ゲノムデータから、すべての非アフリカ系現代人は共通の混合事象からネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)を有しているので、現代人はおもに5万年前頃以後の単一の急速な拡散に由来する、と示唆されています。それ以前の移住からの遺伝的寄与は、あったとしても最小限(1%未満)ですが、ユーラシアとオセアニアの祖先人口集団の関係と移動経路に関しては、不確実性が残っています。
初期現生人類と、現生人類の前にアジアに居住していた古代型のヒト【非現生人類ホモ属、絶滅ホモ属】であるデニソワ人との間の相互作用の調査は、こうした(複数の)拡散に光を当てることができます。先行研究では、アジアおよびオセアニアの現代人の祖先は複数の遺伝的に異なるデニソワ人集団と遭遇して混合した、と示されてきました。しかし、単一の高品質なデニソワ人ゲノムのみが利用可能だったため、現生人類におけるデニソワ人祖先系統の多様性を特徴づけ、相互作用の歴史を再構築する能力が制約されてきました。
この研究は、デニソワ洞窟で発見された20万年前頃の大臼歯人第二の高品質なデニソワ人のゲノムを報告します。この個体はデニソワ洞窟のその後のデニソワ人とは22万年前頃に分岐した、初期デニソワ人集団に属していた、と確定しました。現在のこれらの構成要素の地理的分布は、デニソワ人が居住していた場所や、現生人類がアジアとオセアニアに定着したさいに取った経路についての手がかりを提供します。さらに、人口集団間の遺伝子移入されたデニソワ人DNA断片の比較と、遺伝子移入の時期の推定は、これらの移住の回数と時期に光を当てます。これらの調査結果は、初期現生人類拡散の歴史に新たな視点を提供します。
参考文献:
Peyrégne S. et al.(2025): A new Denisovan genome sheds light on the peopling of Asia and Oceania. The 15th Annual ESHE Meeting.
現生人類がアフリカで出現したことは広く受け入れられていますが、世界のさまざまな地域における現生人類の最初の到来時期と存続は、依然として未解明です。考古学的証拠はアフリカからの現生人類の複数の拡散を示唆しており、一部の化石証拠は中国では10万年前頃、アジア南東部では7万年前頃までの初期現生人類の存在を支持しています。しかし、ゲノムデータから、すべての非アフリカ系現代人は共通の混合事象からネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)祖先系統(祖先系譜、祖先成分、祖先構成、ancestry)を有しているので、現代人はおもに5万年前頃以後の単一の急速な拡散に由来する、と示唆されています。それ以前の移住からの遺伝的寄与は、あったとしても最小限(1%未満)ですが、ユーラシアとオセアニアの祖先人口集団の関係と移動経路に関しては、不確実性が残っています。
初期現生人類と、現生人類の前にアジアに居住していた古代型のヒト【非現生人類ホモ属、絶滅ホモ属】であるデニソワ人との間の相互作用の調査は、こうした(複数の)拡散に光を当てることができます。先行研究では、アジアおよびオセアニアの現代人の祖先は複数の遺伝的に異なるデニソワ人集団と遭遇して混合した、と示されてきました。しかし、単一の高品質なデニソワ人ゲノムのみが利用可能だったため、現生人類におけるデニソワ人祖先系統の多様性を特徴づけ、相互作用の歴史を再構築する能力が制約されてきました。
この研究は、デニソワ洞窟で発見された20万年前頃の大臼歯人第二の高品質なデニソワ人のゲノムを報告します。この個体はデニソワ洞窟のその後のデニソワ人とは22万年前頃に分岐した、初期デニソワ人集団に属していた、と確定しました。現在のこれらの構成要素の地理的分布は、デニソワ人が居住していた場所や、現生人類がアジアとオセアニアに定着したさいに取った経路についての手がかりを提供します。さらに、人口集団間の遺伝子移入されたデニソワ人DNA断片の比較と、遺伝子移入の時期の推定は、これらの移住の回数と時期に光を当てます。これらの調査結果は、初期現生人類拡散の歴史に新たな視点を提供します。
参考文献:
Peyrégne S. et al.(2025): A new Denisovan genome sheds light on the peopling of Asia and Oceania. The 15th Annual ESHE Meeting.
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